開発元はスタートアップのWindrome。2026年4月に開発が始まり,本格的な情報公開もこれからという段階の作品だ。そのため,本文中で紹介している画像も開発初期のものである。
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会場を回っていると,アニメ調のキャラクターイラストが目に留まった。試遊の様子を見ると,キャラクターを配置して戦うディフェンス系のゲームだ。
この手のタイトルは今,本当に数が多い。この作品ならではの魅力があるのか,気軽な気持ちで話を聞いてみると,本作は社会問題をテーマに,精神科病院とも連携しながら開発を進めているという。ゲームを通して社会的なテーマを扱う,ある種のシリアスゲームである。
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アートディレクターのキム・ジョンチャン氏によると,舞台となるのは人間の内面世界。AIの発達によってあらゆる身体の病は治療できるようになったが,心の病だけは最後まで治せなかった……という世界観だ。
本作は現代ファンタジーで,プレイヤーは「ソードアート・オンライン」のようなヘッドギアを装着し,他者の内面へと潜っていく。
その内側に広がる空間が「メモリア」だ。崩れかけた「ハートコア」を守りながら,歪んだ記憶と感情を安定させていく構造になっている。
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本作に登場する敵は,単に打ち倒すべきモンスターではない。内面から切り離された不安,重圧,失敗感,喪失など,感情の断片として設定されている。
だからゲームの目的も,破壊ではなく「安定化」と「受容」に置かれている。
ゲームプレイは,エンターテインメントとして成立するよう組み立てられている。ベースはタワーディフェンスだが,キャラクターがその場に留まらず盤面を走り回るため,キム・ジョンチャン氏は「タワーというよりチェスディフェンス」と表現していた。
プレイヤーはキャラクターを配置し,盤面上で動かしていく。単に移動させるだけではなく,動かすたびに「移動スキル」が発動して技を繰り出す仕組みだ。
グラフィックスは2Dと3Dの併用で,キャラクターの原画は2D,バトル部分やロビーは3Dで制作されている。
ロビーにはSDキャラクターが動き回る空間を用意する予定で,等身の高いキャラクターイラストは,必殺技の演出や育成画面など,じっくり見せたい場面で使用するという。
ビジュアル面のベンチマークとして名前が挙がったのは「鈴蘭の剣」だった。課金モデルはまだ確定していないが,ガチャの導入を想定しているという。
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また,開発チームは精神科病院とも連携している。現時点ではゲームを見せてフィードバックを受け,開発に反映している段階だ。
ゲームと並行してウェブトゥーンの制作も進んでいる。
ここで,席を外していたCEO兼ゲームディレクターのキム・ミンソク氏が合流した。以降は,同氏との会話をインタビュー形式でお届けする。
ゲームで心の問題に向き合う。
「Seorin: Ark of Echoes」が目指すもの
4Gamer:
よろしくお願いします。サブカル系のゲームが増えているなか,本作ならではの特徴はどこにあるのでしょうか。
キム・ミンソク氏:
差別化についてはかなり悩みました。最近のサブカルチャー市場では,アポカリプスものや学園ものが流行っていて,その方向の作品が多かったんです。
そこで我々は,アポカリプスのような暗い世界を描くのではなく,現代社会で20代,30代が抱えている困難を扱いたいと考えました。
うつや自殺といったテーマは,どうしてもタブー視されてしまうのですが,あえて直接的に扱う作品を作ってみたかったんです。とはいえ,そのまま出すと文字どおり“重い”ものになってしまうので,ファンタジーの要素を取り入れ,触れやすい形にしています。
4Gamer:
社会問題を,ファンタジーという形に置き換えて伝えていくわけですね。
キム・ミンソク氏:
主にうつについて語ろうとしています。世界観としては,AIによってあらゆる病気が治療できるようになったけれど,物理的な治療を尽くしても,心の病だけは最後まで治せなかった。そういう概念から始まる現代ファンタジーです。
そして私は,実際にそうなっていくと思っています。自殺を図ったものの思いとどまり,その後,社会生活に戻った人たちがいます。ただ,その中には社会の支援から取り残される人もいると感じています。
彼らのことを,作中では「フェイラー」と呼びます。「失敗者」を意味する作中用語で,主人公もそのひとりです。
一度そうした経験をした人は,その後も同じ危機に直面する可能性があります。作中では,そうした人たちを支えるために,心の中にある「メモリア」という空間へ入っていくわけです。
4Gamer:
ターゲットとして想定しているのは,今まさに心の不調を抱えている方なのでしょうか。それとも,そうした人たちが置かれている状況を広く知ってもらうことを目指しているのでしょうか。
キム・ミンソク氏:
実は,どちらも当たっています。治療そのものを目的にしているわけでも,治療薬として使われることを目指しているわけでもありません。
そうした苦しさに共感し,少しでも気持ちを楽にできる方向性を提示したい。そういう意味では,広く知ってもらう役割もあります。また,プレイヤーの中に心の不調を抱えている方がいれば,ゲームを通じて少しでも自分自身を癒やしていくきっかけになってほしいとも考えています。
テレビではこうしたテーマを扱う番組がたくさんありますが,ゲームではまだ少ないと感じています。だからこそ,我々がやろうと考えました。
4Gamer:
まずは知ることが,ひとつの核になるんですね。
キム・ミンソク氏:
はい。そして,実際の心理療法で行われている内容と同じものを伝えたいと思っています。
「頑張って」とか「あなたなら乗り越えられる」といった言葉だけでは,心理療法が目指すアプローチとは異なるんです。
そうした安易な励ましではなく,専門家の知見も踏まえた内容を,ファンタジーの仕組みに置き換えて伝えることが一番の核心です。
YouTubeなどで見かける手軽な解決策ではなく,より実践的な考え方を届けたいんです。
4Gamer:
では,そうした苦しさを抱えている人には,どのようにアプローチするのでしょうか。
キム・ミンソク氏:
ここでは,触れやすさが重要になります。韓国でも,精神科の治療や心理療法を受けることへの見方は以前より開かれてきたとはいえ,まだ「自分はそうじゃない」と考えたり,「あの人はそういうところに通っている」と否定的に見られたりすることがあります。
だから,うつや自殺といった言葉を検索することさえ,ためらう人がいます。そうしたテーマを,ゲームの中に自然に溶かし込んで伝えようとしています。
そして何より,自分自身の経験を語ることが,一番真摯に伝わると考えています。私自身,長く治療を受けてきました。
精神科に入院した経験もありますし,つらい状況をいくつも経験してきました。今も治療を続けていて,10年ほどになります。
だからこそ,医師や心理療法士の方々にも力を貸していただいています。自分がつらかった分,そうしたことをきちんと伝え,多くの人に少しでも気持ちを楽にしてほしいと思っています。
4Gamer:
この作品をプレイして,少しでも心が安らぐことを目指しているのでしょうか。それとも,「自分はまだ病院に行くほどではない」と考えている人が,専門家への相談や受診を考えるきっかけになることも目指しているのでしょうか。
キム・ミンソク氏:
病院に行くよう認識を変えるというより,つらさに共感し,そのうえで少し気持ちを持ち直して生きていく。それだけでも一歩進めるのだと提案したいんです。
韓国には社会から孤立している若者もいますが,そうした人もゲームには触れることがあります。外に出たり,社会との接点を作ったりすることが難しい場合もある。そこで,ゲームの中から何かを提案しようと考えています。
我々のコンセプトのひとつに「人生の列車」があります。主人公はその列車に乗ることができない。主人公が持つ目的地の書かれていない切符では,改札を通れないんです。
そこで,自分の中にある問題と向き合いながら,「目的地のある列車に,そもそも乗らなければいけないのか」と比喩的に問いかけます。
列車から降りてもいい。「あなたはあなた自身のままで大丈夫だ」と伝えるわけです。
そして身近なところから,まずは家族に一度連絡してみよう,と提案する。そういうメッセージです。
その一歩がとても難しくて,私自身もつらい思いをしました。同じような経験をした人もいます。入院中には,同じ悩みを話せる人が本当にたくさんいました。その中には,一歩をなかなか踏み出せず,ようやく病院にたどり着いた人もいたんです。
そういう状況を語ろうとしていますし,これは私の話であり,私の知人たちの話でもあります。
4Gamer:
お話を聞いていると,伝えたいメッセージと,ゲームとしての面白さをどう両立させるかも重要になりそうですね。そうしたテーマを,ゲームの中ではどのように伝えていくのでしょうか。
たとえば,キャラクターごとの物語を通して描くのか,それとも全体のストーリーで伝えていく形ですか。
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キム・ミンソク氏:
オムニバス形式で,さまざまなエピソードとして扱おうとしています。ひとつの問題だけではなく,複数のテーマを扱う形です。
たとえば,生涯周期で見ると,自殺率が高い年代は若い世代に限らず,実は50代でも高いんです。そうした部分をユーザーにも理解してもらいたいですし,医師の方がYouTubeでこうしたゲームを紹介しながら話すなど,そういう使われ方もしてほしいと思っています。
物語を引っ張っていくのは,記憶を失っているように見える主人公です。自分がどういう人生を送ってきたのか分からないまま,そうした状況をひとつずつたどっていきます。
そして映画「インサイド・ヘッド」では,感情のキャラクターが主人公をサポートしますよね。あのような形で,本作のキャラクターにも感情の要素を持たせています。むしろ,キャラクターたちが感情そのものだと言えます。
4Gamer:
特定の世代だけでなく,人生のさまざまな段階で生じる問題を描くということですか。
キム・ミンソク氏:
それぞれの年代で,その時期に直面する問題を扱います。就職できないという話もできますし,燃え尽きて心身をすり減らし,働けなくなったり,うつの症状が悪化して社会に出られなくなったりする人の話もあります。
そういうものをひとつずつ語っていく予定です。
4Gamer:
ここまでの話を聞くと,買い切り型のゲームとも相性が良さそうに感じます。それでも,ガチャを含むライブサービス型を選んだのはなぜでしょうか。
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キム・ミンソク氏:
スマートフォンとPCで考えていて,ライブサービスを志向しています。今お話ししたフェイラーの物語は,シーズン1に当たるものです。
その後は,プレイヤーの皆さんから寄せられた話を,ひとつずつシーズン2の物語に取り入れていきたいと考えています。
それに,1人のフェイラーにすべての問題を詰め込むことはできません。複数のフェイラーを登場させ,物語を広げていく構想です。
そのなかでキャラクターたちを活用していきます。感情のキャラクターがいるからこそ,その感情をどう組み合わせるかが,問題を解決するエピソードになるわけです。
4Gamer:
では,ガチャで入手するのは,こうした感情を表すキャラクターなんですね。
キム・ミンソク氏:
基本的なキャラクターはこちらですべて提供します。そこからさらに強くしていけるかどうか,という部分ですね。
属性には「理性」「連結」などがあり,たとえば社会から孤立した人のエピソードであれば,「連結」のキャラクターを多く配置すると有利になる,という仕組みです。ひととおりはこちらで提供しますが,より多く揃えれば,より簡単にクリアできるようになります。
4Gamer:
キム・ミンソク氏は,もともとゲーム会社で働いていたんですか。
キム・ミンソク氏:
ゲーム会社には,13年ほど勤めていました。大きな会社で,プロジェクトのサイクルも速く,つらい部分は多くありました。ただ,そうした経験のおかげで,自分でゲームを作る力を身につけられたとも思っています。
4Gamer:
タイトルの「서린(ソリン)」には,どのような意味が込められているのでしょうか。
キム・ミンソク氏:
私の心にわだかまっていた物語を語る,という意味です。
4Gamer:
現在,開発はどのあたりまで進んでいますか。
キム・ミンソク氏:
紆余曲折があり,かなり変更を加えたのですが,実際にメンバーが集まって開発を始めたのは4月からなんです。まだ数か月しか経っておらず,進捗は15%から20%ほどだと見ています。
ただ,これまで一緒に開発してきたメンバーがそろっているので,スピード感を持って,きちんと作るのは得意なんです。開発チームは17人で,2027年3月のリリースを予定しています。
4Gamer:
社会問題は変化していくものだけに,タイミングも重要になりそうですね。
キム・ミンソク氏:
そうですね,我々も早くローンチしたいと考えていますし,グローバル展開もかなり検討しています。
海外の方々と話をすると,日本や中国でも同じような問題を抱えているという声を多く聞きました。
海外のパブリッシャからも関心を寄せてもらっています。そうした声を聞きながら,韓国国内を題材にしつつ,ほかの国の人にも共感してもらえるメッセージを早く形にしたいと思っています。
4Gamer:
ありがとうございました。
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