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津田大介&南治一徳&清水亮らが語る,ゲームとプログラミングの今は昔。ゲームやプログラムはもちろん,大震災にまで話が及んだ座談会を掲載
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印刷2011/05/03 20:31

インタビュー

津田大介&南治一徳&清水亮らが語る,ゲームとプログラミングの今は昔。ゲームやプログラムはもちろん,大震災にまで話が及んだ座談会を掲載

大震災に向き合う。IT業界やゲーム業界ができることとは?


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清水氏:
 話は変わるけど,津田さんは,つい先日まで地震の被災地を取材してたよね。

津田氏:
 はい。気仙沼や陸前高田に行ってきました。

清水氏:
 どうだった?

津田氏:
 いや,ほんと言葉がないです。とくに向こうに行って感じたのが,被災地の状況っていうのは,だいたい12時間ごとに変わっていくということ。だから,俺も取材で現地に向かう前,2日前とかに電話して「何が足りないんですか」って聞いて,いろいろ持っていたんですけど,現地に着いたら持っていったものはすでに足りてて,ほかの違うものが足りないって言われてしまった。

南治氏:
 なるほど。リアルタイムでどんどん変わっていくんだ。

津田氏:
 そう。だからその意味で言うと,Twitterなんかにしても,今回,一番問題だったのは,デマよりも「デマじゃない情報」なんだよね。

4Gamer:
 どういう意味ですか?

津田氏:
 要するに,最初の第一報のときはデマじゃないんだけど,問題って時間が経てば解決するじゃないですか。

南治氏:
 そういうことか。

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津田氏:
 ええ。例えば,「人が取り残されてる」って情報がタイムライン上に流れたとすると,それが解決したとしても,その情報はそのまま残って,公式RTで飛び回って3日後ぐらいにもあったりするんですよ。もちろん,やってる人は善意でやってるし,本当の情報だしデマじゃないんだけど,時間が経つことによって「実質的にはデマ」になってしまっているのが,すごく問題になってて。だって,人にしろ物にしろ,そこに投入されるリソースがちゃんと適切に運用されれば,助かる人って絶対いるハズなんですよ。

清水氏:
 うーん,そこは難しいね。

津田氏:
 だから,ここで少し今回の話に繋げたいんですけど,そこを例えばGoogleマップなんかと連携して,12時間ごとにステータスが変わって,GPSなんかと組み合わせると,凄くいいサービスができると思うんですよね。

清水氏:
 なるほど。そういうサービスってまだないの?

津田氏:
 「震災info」とかが頑張ってやってはいるんだけど……。

南治氏:
 僕はAmazonがやってる「被災地の人が欲しいものリストあげておくと,みんなが買って送れる」ってやつは,かなり「おおっ」て思ったんですけどね。

津田氏:
 ああ,あれは最高だと思います。実際も相当助かってるって現地の方に聞きましたよ。

南治氏:
 政府とかじゃなくて,一企業がやってるのが凄いなと思います。

津田氏:
 ええ。とくに今は,物流がそれなりに機能し始めているんで,実は物資自体はもう届くんですよ。クロネコヤマトが凄い頑張ってて,「とにかく全部避難所には送ります」ってやってますから。そうすると,避難所の人は,楽天とかAmazonで欲しいもの,足りないものを買えるんですよ。

清水氏:
 いや,そうは言ってもさ……。
 
津田氏:
 そう。ただ問題は,彼らにはお金がないんです。だって,家も財産も全部流されちゃったから。Amazonのあのサービスは,被災地の方に「今,欲しいものを直接送れる」って意味で,もの凄い役に立ってるんですよね。正直な話,日本赤十字社なんかに現金を送るよりも,今はそのほうがいいくらいですよ。だから,1万円を日本赤十字社に送るよりも,1万円分必要なものを送ったほうが,明日の生活が助かる。それか,実際に困っている市区町村単位で支援金を送ったほうがいい。

清水氏:
 実を言うと俺,親戚が被災者なのよ。だから先週末に俺も現地に行ったの。相馬の津波がきたところに。本当に凄い状態だよね。

津田氏:
 俺は,最初に気仙沼に入って,その後で各地を回ったんだけど,やっぱり街によって全然被害が違ってて。どこの被災地もだけど,陸前高田は桁違いというか……。とにかく壊滅的でした。

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南治氏:
 それでも凄いですよね……。

津田氏:
 でも,俺らはカーナビを見ながら陸前高田に行ったんですけど,市役所から6kmぐらいの地点から,もう何もなかった。6kmだよ? ずっとそこから何もないって状況で,町全体が壊滅してしまって,市役所にしても「かつて市役所だった建物」っていう状態。陸前高田は現時点での生存率が2割強くらいしかないんだよね……。

清水氏:
 生存率が!? たったの?

津田氏:
 そう。被災地はどこもかしこも瓦礫が町中に積まれているんだけど,陸前高田の瓦礫だけは,高さが違うんです。俺らの身長よりも,さらに高い瓦礫がつまれた街になっちゃってる。

南治氏:
 うーん。

津田氏:
 街ごとに必要なものとか被害の状況とか全然違うし,あそこをどう整理していくのかっていう情報は,ものすごく混乱している。だから,プログラマとか技術者に求められているもの,あるいはできることって,本当は凄くたくさんあるんだと思う。

清水氏:
 そうだよなぁ……。

津田氏:
 で,そんな中でね。政府は「PDFで情報出すようになりました!」とか言ってる。しかも改ざん防止でテキストのコピペすら不可。放射線のデータとか,簡単に取り込めて,ビジュアライズして出せるようなサービスを作りたくても作れないんだよね。

清水氏:
 CSVで出せと。

津田氏:
 いや,実際担当の人と折衝する機会もあったから要望として「CSVでも出した方がいいですよ」って伝えたんですよ。でも,彼らは「情報の改ざんが怖いから」とかいって応じない。「元ソースあれば改ざんの心配はある程度防げるでしょう。PDFとCSVで両方出しましょう」と言うと,担当の人はその意味もわかってるんだけど,デジタルのことがよくわからない“中の人”から抵抗されるからまずはPDFで,みたいな話になっちゃう。

清水氏:
 ちなみに僕が今回の震災で,そして被災地の親戚に会って凄く思ったのは,「お金って凄く虚しい」ってことなんだよね。

津田氏:
 どういうこと?

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清水氏:
 いや,その親戚に会いに行ってみると,金もないんだけど,仕事もないんだよね。今は,被害に遭わなかった知人の家に家族ぐるみで身を寄せてる状態なんだけど,仕事がない状態だと,もうこれから先どうにもならないんだよ。で,一時金も35万円しかもらえないじゃん。だからお金って虚しいなって,凄い思ったの。

津田氏:
 もちろん,お金は大事なんだけど,本当はポンって35万円を渡すんじゃなくて,月10万の仕事与えないとだめなんだよね。

清水氏:
 そうそう。孫さんの100億円とかは「すげえ」とは思ったんだけどね。

津田氏:
 だからIT業界やゲーム業界も,雇用で被災地に協力すべきなんだよ。漁業やりたいって人も,港は壊滅しちゃってるから,当面は無理じゃん。でもまた漁業に復活できるようなるには,生活を維持するための仕事が,今必要なんだよね。例えば,中国やインドとかに出しちゃってる単純なデスクワークみたいなものをやれるだけでも状況は全然違う。そういうワークシェアリングみたいなもんも含めてやってかないと,あそこで暮らしている人達は希望を持てないと思う。

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清水氏:
 その意味では,ディー・エヌ・エーはカスタマーサポートで被災者を採用したよね。

津田氏:
 俺,実はあれが一番偉いと思ってる。100人も被災者から雇用するっていうのは本当に英断だと思う。すべての人を救えるわけではないけど,雇用って被災地では一番必要とされていることだからね。

南治氏:
 地方によくコールセンターとかがあるから,そういうのがやれたらいいのかな。

津田氏:
 あと,俺が最近ずっと思ってるのは,「飽き」の問題なんだよね。

清水氏:
 確かに。

津田氏:
 今は,かつてないほどの勢いで義援金が集まってるじゃない。でも,ゴールデンウィークが過ぎたあたりから,みんなの関心が薄くなっていっちゃうと思うんだよね。マスメディアもずっと震災についての報道をするわけじゃないだろうし,そうなるとどうしてもみんな忘れちゃうでしょ。
 10年間,今のレベルで義援金が集まり続ければ,復興のスピードも相当速まると思うんだよね。だから,現地の人達が情報を出し続けて,「また義援金送ろう」って気運を維持し続けるのが大事。それには,ネットの力が大事なんじゃないかって気がする。

南治氏:
 インプレスの○○watchみたいなのを作るとか。

清水氏:
 震災watchとか。

南治氏:
 「今,これが困っている!」みたいな。

清水氏:
 いやでもほんと,飽きるって問題が一番の敵。例えば薬害エイズ問題とかも,最初の頃は盛り上がっていたんだけど,途中で飽きちゃうわけじゃん。応援してるほうも。だんだんムーブメントの火が消えていく。結局,義援金ブームにしても,ある種の祭りだからね。やっぱり雇用だよ。

津田氏:
 雇用をITとかでどれだけ,何ができるかっていうね。雇用をちゃんと増やしている企業を褒めるような文化を作ったほうがいいな。問題はね,それでもね,3000万円の船が流されちゃって,俺はもう漁師しかできねえよって人をどうするか。
 今はもう仕事がないって人には,とにかくPCは結構重要で。仙台とかに出稼ぎできるとこはないか,とネットで探してるらしいんだよね。そういうことはやったほうがよくて。

清水氏:
 うーん,そこまでいうなら,俺もなにかやろうかな。いくらかかるかなそれ。

津田氏:
 やっぱり,Twitterをやってるような人って,被災地ではある種すごく重要で,ネットで「スーパーが空いた,物資はどうだ,ガソリンはどこだ」みたいな細かい情報を得た人が,紙新聞しか読まない老人に対して,こうだよって教えてあげるのが命綱になってる。
 結局今までって,「デジタルデバイド」とか「情報格差」って言われても,まだ笑えるレベルだった。「俺はやんないから」っていってればよかったんだけど,被災地では,もう情報格差が生き死にのレベルになっちゃってるから,ネットの重要度が高まっている。そこでちゃんと老人に教えてるような人が,当面は,それ自体が仕事になればいいんだけどね。

南治氏:
 なるほどね。

津田氏:
 相馬で話聞いてきた人なんかは,本業は植木屋さんで,でも植木屋って豊かな生活してるうえでの余剰産業として成り立っているものだから,震災以降,仕事は一切ないみたいな状況になってて。そういう彼らに対して,どういう仕事を作っていけるかっていうのが……。

清水氏:
 難しいね。津田さんはジャーナリストだから,そういう問題を正面から捉えてやってこうって感じだと思うけど,僕とか南治さんは,ただのゲーム屋だからね。

南治氏:
 それこそ娯楽ですからね……。

津田氏:
 いやでも,娯楽は半年後から絶対重要になってくると思いますよ。なぜかって,被災地の方のメンタルが娯楽なしでは持たないから。だから今すぐには必要とはされてなくても,そこまでの準備だったりとか,そこの雇用だったりとか。被災地には若い子も結構いるし,そういう子にプログラムを教えて,生きる力を身に付けさせるっていうのも,長い目で見たら絶対生きてくると思うよ。

清水氏:
 とりあえず仙台では,プログラムのキャンプを2回はやろうと思ってるんだけど,もうちょっと継続的にやっていくのもいいかもね。

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津田氏:
 社会的に地位のある技術者がもっといっぱい表に出てきて,多少間違っててもいいから,厨二っぽくてもいいから,僕はもっと声をあげてほしいと思うね。「俺はこのプログラムで東北を復興してやる」とか「ゲームで東北を復興してやる」とかさ。そういう人達が出てきてもいいと思う。

清水氏:
 enchant.jsの話に戻ると,ゲームはキッカケに過ぎないんだよね。僕らが目指しているのは,ゲームを作ることをじゃなくて,プログラミングを覚えてもらうこと。もしくはプログラミングの魅力を知ってもらうこと。その取っ掛かりとしてゲームっていうのはありかなと。

南治氏:
 ゲームってすぐ画面になるしね。あと,いろんな人に知ってもらったり,遊んでもらったりできるからモチベーションが維持しやすいよね。

清水氏:
 もちろん,何か実用的なサービスとかでもいいんだけど,そういうサービスは,似て非なるものがいっぱい出てくる状況って好ましくないと僕は思ってい。例えば,さっき津田さんがいっていたようなアイデアって,確かにそうなんだけど,もの凄く頭が良くないと作れないし,10人が同じものを作っても,利用者側が分散するだけで意味ないんだよね。

4Gamer:
 インフラ的なサービスって,1個だけであったほうが,人も情報もそこに集約されるから便利になるんですよね。

清水氏:
 うん。さっきのAmazonの話だって,Amazonがやるからいいのであって,例えば,俺がいきなり「被災者お助け商店」とかをやっても,ただ怪しいだけじゃない。

津田氏:
 それは確かに。

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清水氏:
 やっぱ,俺ができることってプログラムだけだからさ。とにかくできることは,プログラムを教えたりとか,プログラムやる奴にPCあげたりするくらいだからさ。

津田氏:
 被災地でも,PCが4台ぐらいあってそれが凄く役に立ってるとこもあれば,1台しかないとこもある。そういうのを調べて,避難所のPCの台数が増えるだけでも全然違うと思うよ。

清水氏:
 なるほど。じゃあ,PC配るのはいいかもね(※)。

津田氏:
 PCは,即効性と実効性があると思う。さっきも言ったけど,避難所にいる人達は,PCを使って日雇いの仕事を探してたりとかするから。どうしてもネットで調べるのって時間かかるじゃん。だから,2台ぐらいしかない避難所だと,すぐに席が埋まっちゃったりしてるみたいだから。そこの台数が増えると助かるんじゃない?

清水氏:
 どうやって増やそうかな。PC寄付するのって1万円とかじゃすまないじゃん。

南治氏:
 とりあえず,最近うち会社でリプレイスしたマシンなら,4,5台余ってるな。

津田氏:
 ただ大事なのは,現地に行く前に,ちゃんと事前に調べて,とにかく足りてないところを探すこと。足りてますかって聞いていって,足りてないっていうところに「1台寄贈しますね」ってやっていくのがいいと思う。

南治氏:
 もう電気とかネットのインフラはちゃんと復旧してるんですかね。

津田氏:
 避難所レベルであればあると思います。もちろん全部ではないでしょうけど,インフラ周りは大分復旧しているみたいです。

南治氏:
 なんだかこの話を聞いていたら,それこそゴールデンウィークにPCを持っていって,どこか避難所に設置して帰ってくるとかもアリかもしれないなって気がしてきた。

津田氏:
 いや,全然ありだと思いますよ。PCとかは,おそらくそんなに持っていく人はいないから,足りてない避難所は結構あるかもしれない。

南治氏:
 ネットをやるだけだったら,Windows XPとかのマシンでも十分使えるしね。

津田氏:
 あとは,Twitterの入門本とかを一緒においてくるとかさ。

清水氏:
 じゃ,津田さんの本とか(笑)。

画像集#035のサムネイル/津田大介&南治一徳&清水亮らが語る,ゲームとプログラミングの今は昔。ゲームやプログラムはもちろん,大震災にまで話が及んだ座談会を掲載
南治氏:
 上手くまとまりましたね(笑)。そういえば,津田さんの本は無料公開されてましたね。

津田氏:
 はい。無料化しました。……俺の本は入門本じゃないけど(笑)。

清水氏:
 あれも凄いよね。突然やるとかいって。よく出版社が了承してくれたなと思って。

津田氏:
 まぁ電子化してる時点で,出版社の了解云々はクリアしてるんで。そういえば,東北のコンビニで俺の本が置いてあったのみて,なんか衝撃だったな。

清水氏:
 感動したの?

津田氏:
 感動したというか,それぐらい必要とされてるっていうのがね。向こうでは,Twitterが注目されてて。Twitterだけじゃなくて,東北では,Skypeを使ったりスマートフォンを使ったりする老人が増えている。人は生き死にがかかると,いろいろ覚えるんですよ。

4Gamer:
 Skypeも結構偉いですよね。震災の直後に日本人アカウントは無料でサービスが使えるようにしたり。

津田氏:
 あれって,実は事前に決めていたことらしいですよ。というのも,ハイチで地震が起きたときにも被災者がSkypeを利用して連絡を取り合ってたってのがあったらしくて,次にまた大震災が起きたら「すぐアクションを取れるようにしよう」と決めていたらしいんです。凄いですよね。そういうことを考えて実施するのが,これからのIT企業の役目だと思います。

南治氏:
 そういう意味では,日本の企業は準備が足りなかったのかもしれないなぁ。

※ちなみにこの座談会の次の日には,彼らは「#givePC4Japan」プロジェクトを立ち上げ,すぐに実行に移している。……この行動力は見習いたい。


2010年代ならではの黎明期を


清水氏:
 要するに。君(田中氏)とかでも,できることっていっぱいあると思うんだよ。例えば,enchant.jsだって,ゲームを作れるようにして,そこからめっちゃ凄いゲームが出てくるとするじゃん。そしたらお金稼げるじゃん。そのお金が作った人やその周りとかに還流していくわけじゃん。だから,東北に行って君も同世代の子にプログラムを教えたり勧めたりしてさ。なんかもう,そういうところからでもいいと思う。

田中氏:
 はい。

南治氏:
 そうですね。

津田氏:
 というわけで,今日の結論は。

清水氏:
 「これからの日本は,若いプログラマが救っていく」ってことかな。そういう結論でまとめておきましょうか。

4Gamer:
 プログラマだけじゃなくてじゃなくて,IT業界やエンターテイメント業界も地震と向き合わないといけないのは確かですよね。

清水氏:
 そしてそのためにも,「新しい産業の黎明期」が必要だと思うんだよね。この昔のI/Oに載ってるような人達だって,そういう環境の中で芽が出て成功していったんだし。

南治氏:
 ほんと,そう思いますよ。

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清水氏:
 この本(I/Oの初号)の説明したっけ。この本って,日本で最初のマイクロコンピュータ雑誌であるだけじゃなくて,この本に書いてた人達がその後全員めちゃめちゃ出世してんだよね。まずこの本の編集長の西和彦さんは,アスキー(現アスキー・メディアワークス)という会社を立ち上げた人だし,そのアスキーがMSXを作りマイクロソフトの日本法人の設立に関わり,日本のコンピューター/ソフトウェア業界を切り拓いていったんだ。

4Gamer:
 その意味で,これからの「黎明期」っていうのが。
 
清水氏:
 やっぱり僕は,それが今のスマートフォン関連だと思うんだよね。日本でも世界でも,急速にスマートフォン/タブレットの時代が本格化するわけで。多分,今年から爆発的に普及すると思うんですよ。今でも,すでにちょっと初速が出始めてるけど。

津田氏:
 一般層への普及はここからだろうね。

清水氏:
 で,スマートフォンが主流化したとき,開発プラットフォームとして中心に来るものの一つが,HTML5でありJavaScriptなんですよ。それらにしても,言語としては生まれてから十数年が経っていて,確実に世の中の主流になりはじめている。
 その流れの中で,それらを活用するインタフェース/デバイスとして,スマートフォンが世の中に流通していく。そこで動くプログラムをちゃんと書けるようになれば,いろいろなことができるだろうし,それこそ今のソーシャルゲームみたいな,めちゃくちゃ儲かるゲームやサービスがスマートフォンで展開される時代が,もうすぐそこにあると思うんだよ。

南治氏:
 開発環境のTitanium(タイタニウム)とか,けっこう便利っすよね。iPhoneとAndroid両方作れるとか。

清水氏:
 むしろあくまでも普通の,ピュアなHTML5とJavaScriptでやるべきじゃないかな。今ってまだ過渡期で,なんかちょっとやりにくい感じもあるでしょ。iPhoneとAndroidで動きがあまりに違ってるから。だから,そのやりにくさを上手いことカバーするようなライブラリとかゲームエンジンが必要で,それがあれば大きく時代が動くと思うんだよ。

南治氏:
 なるほど。

清水氏:
 さっきのマイコンの話に戻るとさ。あの頃は,業務用のどでかいコンピュータを扱ってる本職の人達からは,マイコンで騒いでる奴らって馬鹿にされていたからね。でも,その馬鹿にされていた当時の大学生達が,今じゃみんな偉くなっているわけだから。

4Gamer:
 そうですね。

清水氏:
 今,僕らがやっている「wise9」だって,凄く細々としたコミュニティでしかない。だけど,ここから凄いものが出てきたっておかしくない。

南治氏:
 たしかに。

清水氏:
 だから田中君が頑張れば,大学を卒業するまでに年収が1億超えるかもしれないじゃん。そう考えれば夢があるだろ。……いや,できるかどうかなんて分かんないけどさ(笑)。

田中氏:
 うーん(笑)。

画像集#009のサムネイル/津田大介&南治一徳&清水亮らが語る,ゲームとプログラミングの今は昔。ゲームやプログラムはもちろん,大震災にまで話が及んだ座談会を掲載
津田氏:
 まぁ,2010年代ならではの黎明期……つまり,若者達が存分に力を発揮できる場,活躍できる場を考えていこうよってことだな。

4Gamer:
 僕らオッサン的な見地から言えば,そういうことですね。

津田氏:
 で,俺が言うのもなんだけど,なんかもう,地震の話やらなにやら言いたいことを言っただけの集まりだったけど,この座談会は本当に記事にできるの?(笑)

4Gamer:
 ま,まぁなんとかなるんじゃないですか。……多分。

清水氏:
 よろしく!

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 どんな産業でも,黎明期には独特の“熱”があるように思う。過去には日本の自動車産業が,あるいはエレクトロニック産業がそうであったように,日本のコンピュータ産業やゲーム産業もまた,有象無象のチャレンジと失敗を繰り返した胎動期を経て,爆発的な急成長を果たしていった。

 いったいどんな話になるかと,オファーを受けたときは戦々恐々とした今回の座談会だが,終わってみれば,ただ昔を懐かしむ話でもなければ,今の若者を卑下する話でもない。過去,日本のコンピュータ業界が体験した黎明期と,そこから生まれた“伝説”の数々を振り返りながら,次の新しい何か,津田氏の言うところの「2010年代の黎明期」を探す……そんな内容になっていたように思う。

 近年,急速に立ち上がるスマートフォン市場。電子書籍やさまざまなアプリケーションなどが乱立する今,この市場が今後どういった動きを見せるのかは未知数である。しかしこの市場に,かつてコンピュータ業界やゲーム業界が体験した,なんとも言えない「熱」があるのも,また確かであろう。
 眠っているであろうビジネスチャンスに対して,果敢に取り組む若者を引き合わせることこそが“黎明期”を生み出す必要条件なのではないか。今回の座談会では,そんなことを考えさせられた次第だ。

 ゲーム開発の裾野を広げる「enchant.js」の取り組み,そして学生を対象としたゲームコンテンスト「9leap (ナインリープ)」共々,彼らの今後の活躍に期待したいと思う。

関連記事:
「enchant.js」でゲームを作ろう! HTML5とJavaScriptによるアクションゲーム制作入門

「9leap (ナインリープ)」公式サイト

 
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