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プレミアムエージェンシー,国産ゲームエンジン「千鳥」をライセンス提供するアライアンスを発足
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印刷2010/03/08 16:06

インタビュー

プレミアムエージェンシー,国産ゲームエンジン「千鳥」をライセンス提供するアライアンスを発足

画像集#001のサムネイル/プレミアムエージェンシー,国産ゲームエンジン「千鳥」をライセンス提供するアライアンスを発足
 ゲームデベロッパのプレミアムエージェンシーは,3月9日に「千鳥ワールドステージアライアンス」を発足することを発表した。これは業界初のアライアンス形態事業で,加盟デベロッパには,同社のゲーム開発用マルチプラットフォームエンジン「千鳥」のライセンスおよび付随するサービスが提供される。また,アライアンス内の技術情報の共有と人材育成支援,加盟各社の開発環境の向上および共同開発スキームの展開なども促進していく。

Flashを用いたユーザーインタフェース設計ツール
画像集#003のサムネイル/プレミアムエージェンシー,国産ゲームエンジン「千鳥」をライセンス提供するアライアンスを発足
 千鳥エンジンとは,プレミアムエージェンシーが開発し,すでに同社のゲーム開発で使用されているゲームエンジンである。千鳥エンジンの最大の特徴は,PC/PlayStation 3/Xbox 360/Wii/PSP/PlayStasion 2の六つのプラットフォームに対応している点だ。PSPと据置機,あるいは同じ据置機といっても,WiiとPS3/Xbox 360の違いから生ずる差異などへの対処は当然必要となるが,それでも基本となる描画やユーザーインタフェースといった部分は,全プラットフォームとも共通のソースコードを使って開発を進められる。

Mayaのプラグインになっているエフェクトツールの例
画像集#004のサムネイル/プレミアムエージェンシー,国産ゲームエンジン「千鳥」をライセンス提供するアライアンスを発足
 したがって,例えばベースとなるゲームをPCで開発,WiiでSDバージョンを先行リリースしたのち,コンシューマ機それぞれの普及率を考慮して日本ではPS3版,海外ではXbox 360版を中心にHDバージョンを展開するといった戦略の組み立てが容易になる。その一方で,携帯機のPSP向けに開発したゲームを,WiiウェアやPlayStation Network配信タイトルのような形で据置機に展開する戦略,逆に配信タイトルをPSPに落とし込む戦略なども考えられるだろう。

髪の毛シェーダの例。いわゆる天使の輪に対応している。そのほか,ツールでライティングやさまざまな設定を変更すると,ただちに実機上で連動して確認できる環境も実現されていた
画像集#005のサムネイル/プレミアムエージェンシー,国産ゲームエンジン「千鳥」をライセンス提供するアライアンスを発足 画像集#006のサムネイル/プレミアムエージェンシー,国産ゲームエンジン「千鳥」をライセンス提供するアライアンスを発足

 なお,プレミアムエージェンシーが千鳥エンジンを使って開発したタイトルには,PS3「四季庭」(SCE),Xbox 360「Death by CUBE」(スクウェア・エニックス)などがある。またマルチプラットフォームタイトルとしては,「Bakugan Battle Brawlers」(Activision,日本未発売)をPS3/Xbox 360/PS2向けに開発している。

さまざまな自然現象のエフェクトが確認できる「四季庭」。左は雨のシミュレーション。水に濡れた地面などがリアルだ
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雪が降り積もる様も自動で生成される
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 「千鳥エンジン」上では,3Dシェーディング/ポストエフェクトライブラリ「葵」を利用できる(HD機専用)。「四季庭」で実現していた,雨による路面の変化や降雪なども,このライブラリで表現できる。
 「千鳥ワールドステージアライアンス」は,この千鳥エンジンのライセンシーとプレミアムエージェンシーによる,一種の同盟的な存在となる。ゲームエンジンのライセンスというよりは,開発コミュニティの形で提供されるという珍しい戦略を取っている。
 このアライアンスに加盟するメリットとしては,第一にコストパフォーマンスが挙げられる。会費は,1プロジェクトあたり通常会員で月額35万円,既存開発環境とのマッチング検証などのサービスが強化される上級会員で月額50万円。プロジェクト単位での料金設定は行われるものの,売り上げに対するロイヤリティはかからないため,既存のゲームエンジンよりも低コストで開発を進行できるという。当然ながら,デベロッパとしてパブリッシャに企画を提案する際にも,それだけ有利になるというわけだ。また,加盟した時点で千鳥エンジンの正規版が提供されるため,デモを作成してから企画提案に臨むこともできるだろう。そのほか,このアライアンスは海外展開も視野に入れているため,世界中の加盟各社から最新の技術/市場動向を入手できるとのこと。
 取材時点では,肝心の料金がいくらくらいになるかは未定とのことだったが,当然ながら既存のエンジンよりは格段に安いものになるという。また,料金を払うタイミングはいつなのかなどについても,同社も一開発会社として日本の事情をよく把握しているため,柔軟な対応をしていきたいと話していた。

画像集#012のサムネイル/プレミアムエージェンシー,国産ゲームエンジン「千鳥」をライセンス提供するアライアンスを発足


マルチプラットフォーム展開を促進し,新規タイトル開発のリスクを軽減するためのアライアンス展開


プレミアムエージェンシー 代表取締役社長 山路和紀氏
画像集#002のサムネイル/プレミアムエージェンシー,国産ゲームエンジン「千鳥」をライセンス提供するアライアンスを発足
 プレミアムエージェンシーの代表取締役社長である山路和紀氏は,日本の一デベロッパとして現状の世界的なゲーム市場を見た場合,このアライアンス事業が重要な存在になる可能性があることを示唆する。というのも,ことあるごとに指摘されているとおり,現在のゲーム開発費は高騰しており,日本のゲーム市場から得られる売上だけでは賄えないため,どうしても世界展開を視野に入れる必要があるからだ。しかしそこには,世界の地域ごとに普及しているプラットフォームが異なるという大きな壁が存在する。


 「現在,世界のマルチプラットフォーム環境では,日本はコレ,北米はコレ,ヨーロッパはコレと,地域ごとに普及しているハードが異なります。多くのデベロッパにとって,マルチプラットフォームに向けた開発環境を構築するのは大変ですから,大きなフランチャイズ以外はなかなかチャレンジしにくい状況になっています」(山路氏)

 その一方で,大手フランチャイズにも大きな穴があると,山路氏は指摘する。開発費の高騰もあってか,大手メーカーでも昨今では新規タイトルの開発は鈍くなっている。山路氏の小学生になる息子さんは,往年のアクションゲームや超大作RPGといった作を重ねているシリーズものにはあまり関心を示さないそうだ。

 「最新作を見せても『でも,これってパパみたいな大人の人が遊ぶゲームでしょ』というんですよ。それは私と同年代の人達が,映画『寅さん』シリーズに抱いていた感情と同じかもしれません。最初から知らないと,なかなか入っていけない。そういった大きなフランチャイズには子供達はついてこれませんし,それは日本以外の市場でも同じでしょう。例えば、アジアのある国にいきなり超大作RPGシリーズの十数作目を持っていっても,市場はどうしても狭くなってしまいます」(山路氏)

 そこで山路氏は,同社の千鳥エンジンを提供するアライアンス事業を企画したという。すなわち中小のデベロッパであっても,低コストの千鳥エンジンを使ったマルチプラットホーム開発環境によって,新しいアイデアにチャレンジできるのではないかというわけだ。

 「最初からマルチプラットフォームを視野に入れた開発ができれば,新規タイトルであってもリスクを分散できます。またリージョンごと,プラットフォームごとの売上が振るわなかったとしても,トータルで利益を出すことが可能になるでしょう。また業界の一人として,一般のお客様から『新しいゲームが増えたよね』といってもらえる状況にもしたい。そうやって,業界全体に貢献したいという思いがアライアンスのベースにあります」(山路氏)

マルチプラットフォームで同じデモを走らせてみたところ。左のデモ実行画面から順にPC,PlayStation 3,Xbox 360,Wii,PSPだ。ほぼ同一のプログラムで6機種に展開できるという
画像集#013のサムネイル/プレミアムエージェンシー,国産ゲームエンジン「千鳥」をライセンス提供するアライアンスを発足

 業界初の試みとなるアライアンス事業だが,プレミアムエージェンシーでは,加盟各社の技術的なリクエストや,さまざまな相談に対して柔軟に対応していくとのこと。同社は2003年の設立以来,現在に至るまでデベロッパ事業に取り組んできているだけに,そのノウハウが業界や市場全体にいい影響を及ぼすことを期待したい。

千鳥ワールドステージアライアンス公式サイト

http://chidoriengine.com/

プレミアムエージェンシー公式サイト

http://www.premiumagency.com/
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