パッケージ
マブラヴ公式サイトへ
  • アージュ
  • 発売日:2006/09/22
  • 価格:7140円(税込)
  • Amazonで買う
レビューを書く
準備中
マブラヴ
お気に入りタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

最近記事を読んだタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

LINEで4Gamerアカウントを登録
「マブラヴ」吉宗鋼紀との座談会再び!「アージュ」ブランド設立20周イベントで発表された「Muv-Luv INTEGRATE」は吉宗氏の集大成になる
特集記事一覧
注目のレビュー
注目のムービー

メディアパートナー

印刷2020/01/11 00:00

インタビュー

「マブラヴ」吉宗鋼紀との座談会再び!「アージュ」ブランド設立20周イベントで発表された「Muv-Luv INTEGRATE」は吉宗氏の集大成になる

あの人たちは全員,矢面に立って最後まで逃げなかった人なんです


BRZRK:
 僕は体調を崩したため20周年イベントには参加できず,飯を食いながら生放送を見ていたんですが,途中から完全に食べるのを忘れるくらい,出てくる情報がどれも衝撃的すぎました。ここからは当日発表された重要な情報について,いろいろうかがいたいと思います。まず最初に,突然発表された,いわゆる「エロゲースーサイドスクワッド」についてですが――。

吉宗氏:
 僕は「エロゲーアベンジャーズ」って言ったんですが,梶田さんが。

マフィア梶田:
 いやいや,絶対「スーサイド・スクワッド」ですよ。面子的に。

BRZRK:
 僕的にはなんか「キン肉マン」の超人が徒党を組んでいる感じ印象ですけど。


吉宗氏:
 ネットで200万老害パワーズとも言われてましたよ(笑)。

一同:(笑)

BRZRK:
 登壇された方々の経歴を含め,ものすごい人たちが「マブラヴ」に集まってきたなっていうのが正直な印象です。全員しゃべり出すと止まらないですし。

吉宗氏:
 tororoさん以外全員しゃべりたがりですから,尺に収まるか心配でしたよ(笑)。

BRZRK:
 登壇者が名札を回転させると実は次回作に関わるスタッフだということが次々分かるという演出も面白かった。視聴者的には「新しい何かが始まる!」って期待が高まる構成でした。

吉宗氏:
 今回のイベント,たぶんファンの皆さんはこれまで同様に「グダグダトークメインで,実際やれるかわからない将来の構想聞かされて,ミニライヴで終わるんだろうな」って大なり小なり予想していたと思うんですよ。それでも,久しぶりのâgeイベントだから駆けつけたり,ライヴ視聴してくれるんだろうと。
 だからこそ今回は「どれだけ心を動かすエンターテイメントとして昇華させるか」をいつも以上に考え,「20周年イベントなのに予算も人員も手弁当規模でしかやれない」っていうネガティブ要素を,どうポジティブに転換するに注力して,事前のTwitterの流れも込みで「ひとつの物語」として構成,演出しました。âgeの過去の振り返りを見せておきながら,実はそれが新スタッフの紹介だった的なミスリード演出って,âge作品ではおなじみの手法ですよね。

画像集#009のサムネイル/「マブラヴ」吉宗鋼紀との座談会再び!「アージュ」ブランド設立20周イベントで発表された「Muv-Luv INTEGRATE」は吉宗氏の集大成になる

BRZRK:
 なるほど,言われてみれば確かに! 

吉宗氏:
 お恥ずかしい話ですが,「TE」以降,自身の力不足や業界諸事情もあって,吉宗鋼紀としての新作,とくに「マブラヴ」以外の完全新作が世に出なかったことで,この数年で何度も「吉宗はもう書けない」「吉宗はもう終わった」と社の内外を問わず断じられることが多くありました。とくにここ3年くらい,広報はしていても「マブラヴ」からは外れていましたから,そういう不安はファンの間にも強くあったと思います。

マフィア梶田:
 吉宗さんが「マブラヴ」から外れてるってお話を数年前に初めて聞いたときは,本当に驚きましたわ。「いやいや,そうじゃねえだろ!」って。

吉宗氏:
 完全新規企画に集中するため,ixtl()の方針だったんですが,ソシャゲとアニメ化がワンセットで通った4本の企画が,いずれも業界の衰退や謎の掌返しなどでポシャるという悲運に見舞われ,結果的に吉宗鋼紀名義のタイトルが何も表に出ない期間が数年続くことに(笑)。その焦燥感から「ゲームやアニメが着地しないなら,それ以外の小規模で完結するメディアで何か出力しよう」と考え,「公式関与NGなら,同人でやったれ」と,勝手にコミック版の最終回向けに,「exogularity01(オルタ設定本)」後半の設定を仕込み,「Duty」や「TE」小説の続編を進めようとしていたんです。

※ixtl。âgeの版権管理と拡販のために設立された企業。avex買収後,aNCHORに改名。

BRZRK:
 食事会などで定期的にお会いしながらリアルタイムで見聞きしていた状況なので,思い出すと気が重いです(笑)。 

吉宗氏:
 そういう経緯もあって「ゲームやアニメにこだわらない個人で可能な発信に力を入れよう」と思って。もともとâgeは昔から,広報も宣伝も延期中のゴタゴタを含めて,すべてが物語や作品の一環というスタンスでしたから,ある意味原点回帰ですね。だから総裁N()の結婚式でスピーチを頼まれた際にも,「絶対感動で泣かす!」って決めて原稿を書いたりしましたよ(笑)。
 6億5000万円完済で一番お世話になった方ですから,感謝を込めるのは当然ですが,avexの偉い人を含め「マブラヴ」未プレイの業界の偉い人がたくさん出席しますので,その全員を泣かせたら少なくとも「吉宗鋼紀は心を動かす物語を紡ぐことができる」ってアピれる。「マブラヴ」をプレイしたのと同じ効果があるわけです。

※総裁N。ixtlの代表取締役社長。aNCHOR改名時に退任。

マフィア梶田:
 「君のぞ」や「オルタ」を作った人が,いまさらそんなことまでしなきゃならないんですか……生きるって,大変すね。

一同:(笑)

吉宗氏:
 ちなみに結果は,ほぼ全員ガン泣きしていただけました。真っ先に僕が号泣しながらスピーチしたんで,もらい泣きの連鎖効果もあったかと思いますが。僕の裏表を知っている流通の元社長さんとバカ王子,鬼畜人タムー,元経理の4名だけは,苦虫をかみつぶしたような顔で虚空を見つめていましたけど(笑)。

BRZRK:
 出席した偉い人たちのことを考えれば,これ以上のないコンバットプルーフになったんじゃないですか? 作品や物語と同じでスピーチも人の心を動かし,感動させてナンボですし。

吉宗氏:
 その意味で,10月22日のイベントもまったく同じです。Twitterでの開催までの明け透けな道程が無料体験版で,20周年イベントがゲーム本編であると仮定し,イベント自体の構成をâge作品によくある伏線回収や物語構成のスモールパッケージ版に落とし込んだんです。このようにリアルタイムでイベントを体験してもらうことで,短い時間でも容易に,深く没入できます。そうなると人は,もらい泣きの連鎖と同じく,共感によって同じ空間やコミュニティにいる他者の感動が連鎖すると思うんです。

BRZRK:
 あのイベント自体が,ある意味âge久々の新作だったとも言えますね。あの登壇者の皆さんがゲーム前半に登場する主要キャラって感じで。

吉宗氏:
 創業からいろいろ絡んでもらったサーカスのtororo団長,BETAパーカーや戦術機フィギュアでファンにはおなじみのbamboo,直接取引はなかったですが「電気外祭り」や飲み会でお世話になってたnbkzさん,長年âgeの広報ラジオやイベントMCを務めてくれた八木たかおさんなど,前半の壇上は懐かしいメンツが揃った絵面でした。そこに若い新世代の代表として梶田さんやきたくおう君,熊野君がいて,ものすごい助っ人の柏谷さんも加わっていただいて。伝統の血脈に新しい血がガッツリ注入されている感が明確だったかと。この編成は冒頭でお話した「世代をまたいだ垂直関係のサンプル」だと思います。

BRZRK:
 少なくともâgeでは「水平の関係だけで問題を克服できるターンは終わった」ことを明確に示したというわけですね。

吉宗氏:
 世界で悩みの8割を占めると言われている人間関係にしても,今の日本が直面している様々な問題にしても,いろいろな垣根を越えた人材の叡知を混ぜ合わせることが唯一の突破口だと僕は思います。同一性や類似性でつながる相手を水平的に選ぶだけじゃなく,レイヤー間で垂直的にどうブリッジをつなげていくかに掛かっている。そういう枠組みや構造をあのイベントでお披露目できた。これは後々思い返したときに「なるほど!」とニヤついてもらえる伏線というか,「この段階で公開できるネタバレ」的なものですね(笑)。

マフィア梶田:
 吉宗さんはゲーム以外のいろんなところに伏線仕込んでくるから,ファンとしては気を緩められねえっすわ(笑)。ただ,やっぱり自分が心配なのは,新しいスタッフ同士で意見が対立したときにものすごいことになりそうだなと。

BRZRK:
 それは僕も思いましたね。「アベンジャーズ」でも意見対立で分裂して大変なことに。

マフィア梶田:
 それぞれが一家言持っている人たちじゃないですか,それが「船頭多くして船山に登る」っていうパターンにならないよう絶対的な権力者は必要だと思うんですよ。そういった部分のコントロールって吉宗さんが考えるんですか?

吉宗氏:
 自分が原作者のポジションをかざして全てをコントロールしようとは思っていません。それは最終的にプロデューサーの仕事ですから。ではなぜtororoさんに「吉宗鋼紀」と「マブラヴ」のプロデュースをお願いしたかというと,僕らは常にライバルとして,戦友として,物作りの姿勢や信念,成功も失敗も良いところも悪いところを互いに見てきたんです。その過去の経験から客観的に判断して「この人なら」と思えたからこそお願いしたわけです。

マフィア梶田:
 なるほど。

吉宗氏:
 とくに僕は,人の縁にはとても恵まれていると常々実感しています。僕のような性格破綻者にわざわざ関わってやろう,助けてやろうなんて人は,基本的に善良ですごい人だけですよ。業界には当然「吉宗鋼紀はロクでもないヤツだ」という噂が広まっています。実はこれが僕にとって「人の噂だけ聞いて決めつけるような人」や「やり方が合わない人」「面倒臭い人」が近寄ってこないフィルターとして機能しているので助かっています。それでも助けに来てくれる人は大抵「そういうことはどうでもいい」か「それでも利益になるから」か「何も知らない」かなので,「何も知らない人」だけを丁寧に「やめたほうがいい」と説得するだけで済みますので楽です(笑)。

マフィア梶田:
 吉宗さんのゲームのメッセージと同じく,良いも悪いもある意味さらけ出してきたからこそ,自然と信用できる人脈ができあがっていったと。

吉宗氏:
 さらに言うと,あのステージに上がった人は全員,「矢面に立って逃げなかった人たち」なんです。イベントではbambooが僕だけをそう言って持ち上げてくれてましたが,本当はあの壇上にいた全員がそう。会社を簡単に潰さず,きちんと畳んで着地させたり,引き継いだり,すごい難度のことを最後までやりきった人たちなんです。それ以上の信頼ってないですよ。

BRZRK:
 それは長年業界を見てきたファンであれば,余計分かっていることですもんね。だからこそ,大きな反発もなく受けいれられてむしろ盛り上がったわけですし。

吉宗氏:
 僕はtororoさんのプロデュースを社外からずっと見てきたわけです。「ダ・カーポ」での大きな方針転換の事情や想いをリアルタイムで聞いていて,その後の展開も見てきた。だからこそ今の「マブラヴ」,とくにaNCHORには絶対に欠かせない人なんだと思います。tororo団長の所属は弊社ACID()ではなくaNCHORですが,元ACIDの開発メンバーのほかに,BtoBや新しいテクノロジーに強い人がいっぱいいるという強みがあります。
 ですが逆に,IPや原作,オタク向けのクリエイティヴをそういうビジネスやテクノロジーにブリッジしたり,翻訳してうまく落し込める能力や,ネガやトラブルに向き合って着地させる胆力と交渉力などのプロデューサー能力を持つ人がいないのが最大の弱点でした。それをixtlでは総裁Nが,âgeでは僕が担っていたわけです。
画像集#011のサムネイル/「マブラヴ」吉宗鋼紀との座談会再び!「アージュ」ブランド設立20周イベントで発表された「Muv-Luv INTEGRATE」は吉宗氏の集大成になる
 いまも僕は原作者で他人事ではないのですが,それを担おうとしても,社外の人間です。ですから厳密には「無責任な外部の意見」にしかなり得ません。そのうえ性格破綻者なので,何を言っても,言われる側としては過去の経験や先入観のフィルターがかかってしまうので,素直に聞いてもらえなかったりします。

 だから,独自IPの開発運用と会社経営の経験があり,プロデューサー能力もあって,中立的な立場となると,自分の周囲にはもうtororo団長しかいなかったんです。それで飯を食いに言ったとき「俺と『マブラヴ』のプロデューサーをやって」といきなりお願いしたら「分かりました。まぁ僕にできることならやります」って即答(笑)。内容とか雇用条件とかなんも聞かずに引き受けてくれて……漢ですよ,まさに。

※ACID。âgeブランドを展開する吉宗鋼紀が代表取締役を務める企業。

BRZRK:
 そりゃ,すごい……。まさに漢っすね。

吉宗氏:
 答え方も一見軽く聞こえると思いますが,実は軽くないってのが同じ戦場で20年戦ってきた者同士だからこそ分かるんです。tororo団長は会長職で僕よりもっとキツい立場だったのは明白だし,経営とモノ作りっていう相反するものを1人でやる地獄の苦しみを味わいながら続けてきた人です。
 ネットや某巨大掲示板などではtororo団長がやってないことまで彼がやったかのように叩かれ続けた。それは責任連鎖上,会長職として受けいれるべきことなので仕方がない。立場的にも本当のことは言えないのも当然です。でも,それをやりきるのは並の責任感と胆力では無理なことも知っている。
 これは物語類型でいう「泣いた赤鬼」パターンです。常日ごろから言っていますが,僕はこの類型が大好きなんですよ。僕のタイトルで冥夜とか水月とか,クリスカとか,やせ我慢系女子が際立つのも「泣いた赤鬼」の青鬼リスペクトなんです。だから髪の毛も赤は利益享受する天然系で,青は黙って去るやせ我慢系(笑)。あの話は日本が誇るべき美学だと思うぐらいで。登壇したメンバーもまた,表現の差はあれど同じような美学を持ってるメンツなんです。

マフィア梶田:
 なんか,すごくカッケェっすね……。

吉宗氏:
 それぞれ自分の戦場で戦い抜いたメンツが,もう一度「マブラヴ」のために戦おうって言ってくれたわけじゃないですか。こんな泣ける物語,最近あります?(笑)

BRZRK:
 ないっていうか,これ物語じゃなくてリアルですし。いや,本当にあったかいですね。

マフィア梶田:
 それを聞いて安心しました。意見対立で空中分解ってのはまずなさそうっすね。

吉宗氏:
 少なくともタイトルに込めてきたものがブレることはないと思いますね。これって簡単なようで実は大変な労力が必要で,「マブラヴ」の企画会議では関係者7人全員出席の20時間朝まで生会議とかやってたぐらい。例えば「ここはブルージェンダー()のこのシーンなんだよ」って説明して分からないスタッフがいると,即近くのTSUTAYAで借りてきて該当シーンまで頭から見る。じゃないと文脈的な積み上げがわかないから。それが16話とかだったりすると最悪。そのまま夜が明けて,新人が吉牛テイクアウトを買いにいって,ちょうど食べ終わったぐらいにそのシーンが来て一次停止しながら「ここね!」って(笑)。

※ブルージェンダー。1999年に放映されたテレビアニメ。

一同:(爆笑)

マフィア梶田:
 今のご時世だと,そんなブラックなまね絶対できないっすね(笑)。

吉宗氏:
 でもそれを最後までやり続けたから,「マブラヴ」は個別の作業に入っても一切ブレがなかったんです。

BRZRK:
 作り手側の意思統一というか,意図の共有を徹底的にやったんですね。

吉宗氏:
 そうです。ディテールの差異は大した問題じゃないんです。やっていたのはそのタイトルのテーマやメッセージなど,ユーザーに訴えたいものや姿勢の統一化なんですよ。
 例えば「マブラヴ」のアニメ化を尺や予算,納期でリアルに考えれば内容は当然薄まるし,そのままなんて物理的に絶対不可能なのは分かると思います。じゃあ何かを切り捨てなきゃいけないとき,何を選択するのか。「マブラヴ」の本質を見誤っている者がやれば失敗を意味する。とはいえ,アニメの文法やリズムが本質的に理解できいない者がそれをやったところで,うまくいくとは思えない。
 でもイベントに登壇したメンバーならできると思う。とくにtororo団長は客観的にâgeや吉宗鋼紀が大事にしてきたものやそのファンを見ているから。そして彼らにも自社作品のアニメ化経験があり,その蓄積と教訓を持っています。「ここは譲れても,ここは変えちゃダメ」っていう原作者やファンの視点と,経営都合のラインを意識した取捨選択を僕の代わりに的確に,根拠を伴って指摘できると信じています。

BRZRK:
 うーん,なるほど。

吉宗氏:
 前にも言いましたけど,当時のアダルトゲーム業界は流通もショップも業界団体もほとんど何もやってくれずにメーカー丸投げなので,僕たちは全ての矢面に立って,ユーザーの全てに向き合い続けてきました。でもそうやって鍛えられたからこそ僕らは今の一般企業が対処できないユーザーの感情的なクレームや炎上に対処できるんです。これは僕らが,avexみたいな一般の大企業と組んだとき,提供できる高いバリューの1つです。そういう今より無茶苦茶な時代に得た老害なりの資産があるからこそ,役に立てるわけです。
 合理と数字で精錬され,コンプライアンスで整地された昨今のビジネス環境を生きてきた人は,そこが弱い。だから,ユーザーを怒らせた時の対処方法がさらに相手を逆上させ,「そういうつもりじゃなかった」と言いながら大炎上させてしまう。そんな悪循環に陥る人がすごく多い。

マフィア梶田:
 修羅場の経験がないとパニクってしまい,普段以上に相手を見たり相手に合わせることなく,自分の思ったことだけを口に出して相手に押しつけてしまうんでしょうねえ……。

吉宗氏:
 かつての同業ライバル達が集う少年誌の王道展開の影で,業界屈指の各ブランドを支えてきた途轍もなく実戦経験豊富なスタッフたちも参加してくれています。イベントでも見えないところで支えていただき,そのおかげで無事イベントを終え,大成功と評価していただけるものにできたんです。
 âge時代のイベントでは,定期的に大きなトラブルが発生して,その度にユーザーさんに謝っていました。今回,開始20分経った時でもうまくいく確信がないくらいの手弁当突貫イベントだったにも関わらず,大きなトラブルがなかったこと自体が,わずか数日前に合流してくれた彼らの精鋭ぶりを証明していると思います。

BRZRK:
 配信のコメント欄を見返しても,イベントに対しては,ほぼほぼ高評価だった印象がありますね。

吉宗氏:
 とてもありがたい半面,怖さもありますね(笑)。高評価の背景には,スタッフの尽力や古参ファンの協力,âge再起動のご祝儀相場などがあると思いますが,つまるところ大きかったのはやはりなんと言っても,予想以上の新規コンテンツが動いていたからだとは思います。

BRZRK:
 待てど暮らせど1ミリも動かなかったâgeが動いていることを実感できたうえに,まさかの夢のアクションゲーや続編,アニメ化発表の連打ですからね。ファンにとってこれが大事件でなくて何だというんだって感じです。

吉宗氏:
 今は「クララが立った!」みたいな状態で(笑)。そこに冷水を浴びせるような大きなトラブルもなく,おめでたい雰囲気にすることができたのは本当にありがたいことです。いろんなファンが帰ってきてくれて,Twitterでは一時「マブラヴ」がトレンド入りするなど「#age20th」に集まる皆がそれぞれ,思い思いのイベントを主催するなどして,20周年を盛り上げてくれています。そういえば秋葉原のプラモデル屋から,コトブキヤさんの戦術機プラモの在庫が全部消えたらしいですよ。

マフィア梶田:
 おお,それはやりましたねえ! 本丸が動きだせば「マブラヴ」ファンは再点火が早いっすね。

BRZRK:
 みんな昔を思い出して「作りてぇ!」って高まっちゃったんでしょうねぇ(笑)。となると,昔は学生で金銭的にも余裕がなかったけど,今は働いて少し余裕ができたなんてファンが,当時買えなかったものを大人買いしてる感じですかね?

吉宗氏:
 逆に,結構多かったのは最近ファンになってくれた若い人たちですね。「手に入らなくなった古いグッズが欲しい」って感じで物販にも来てくれるんですよ。むしろ,先日のイベントをたまたま配信で見てて,それがきっかけで「マブラヴ」にハマったみたいで。Twitterで「メカ本が欲しい」と言ってきた人もいました。やっぱりブランドが目に見えるアクションをするってのは大事ですね。
 僕らはこの熱が冷めないうちに次のアクションを起こさないとダメだと思っています。「マブラヴ」にこれだけ優秀なスタッフが集まるのだから,僕がきちんとやりきれなかった進行管理なんかも「そういう人たちがやってくれるんだ」っていう安心感の担保にしたつもりなんです。

画像集#028のサムネイル/「マブラヴ」吉宗鋼紀との座談会再び!「アージュ」ブランド設立20周イベントで発表された「Muv-Luv INTEGRATE」は吉宗氏の集大成になる

BRZRK:
 「1âge=3年」が死語になりそうな予感。

吉宗氏:
 かつて競い合って距離があった者同士が力を合わせる今の状況って「君のぞ」の「時間が一番残酷で優しい」っていうメッセージが生むものと同じなんですよ。このイベントで心がけたものの1つに「âgeの追体験」っていうのがあって,古参ファンには「君のぞ」や「マブラヴ」発売当時の流れや高揚を,新規ファンにはその類似体験をしてもらうことで「このブランドって,こういう心を揺さぶったり楽しいことをバカみたいにやるメーカーなんだ」って感覚を思い出したり,新たに実感してほしかった。イベント全体の設計を,そう感じていただけるように考えて構成したつもりなんです。

マフィア梶田:
 新旧ファンどちらにも,しっかり心に響いて,揺さぶられまくるイベントだったと思いますよ。

BRZRK:
 ここまでの段階ですでにてんこ盛りですし。きたくおうさんのプレゼン,スーサイド・スクワッドの発表ときて,予想外の新規タイトルの「Project MIKHAIL」の発表ですからね(笑)。

「Project MIKHAIL」。画像はイベント配信をキャプチャしたもの
画像集#016のサムネイル/「マブラヴ」吉宗鋼紀との座談会再び!「アージュ」ブランド設立20周イベントで発表された「Muv-Luv INTEGRATE」は吉宗氏の集大成になる 画像集#017のサムネイル/「マブラヴ」吉宗鋼紀との座談会再び!「アージュ」ブランド設立20周イベントで発表された「Muv-Luv INTEGRATE」は吉宗氏の集大成になる
画像集#018のサムネイル/「マブラヴ」吉宗鋼紀との座談会再び!「アージュ」ブランド設立20周イベントで発表された「Muv-Luv INTEGRATE」は吉宗氏の集大成になる 画像集#019のサムネイル/「マブラヴ」吉宗鋼紀との座談会再び!「アージュ」ブランド設立20周イベントで発表された「Muv-Luv INTEGRATE」は吉宗氏の集大成になる

吉宗氏:
 「Project MIKHAIL」のディレクターである熊ちゃん(熊野 淳氏)にも色々物語があるんです。最初はきたくおう君と同じく,7年ぐらい前にTwitterで「『マブラヴ』でこういうソシャゲを作りたい!」って直談判してきたんです。結局その時は着地しなかったんですが,一昨年,出張で大阪に行ったとき午前中のアポがバラしになったんですが,数年ぶりに彼から「いま大阪にいらしてるんですね」ってメッセージが。で,急遽待ち合わせしてランチしながら勧誘したら,その場で転職を決めてくれて(笑)。最初に熊ちゃんが提案してくれた企画こそが,「Project MIKHAIL」の原型なんです。

BRZRK:
 熊野さんの執念ですね。それにしても「Project MIKHAIL」は参加している方がメチャクチャすごいですよね,鼻血が出るレベル(笑)。イベントでは熊野さんと柏谷佳樹さんの経歴が紹介されていましたけど,あれって全部じゃなくイベント用にチョイスされたものですよね?

吉宗氏:
 あれは「マブラヴ」を意識してロボ寄りのタイトルに絞ったそうです。あの2人が関わったタイトルはあんなもんじゃないですよ。べらぼうな数です。これまでは予算捻出や開発リソースに四苦八苦してきましたけど,こんなにすごい人が「マブラヴ」に集まってくれるっていうのは,やっぱりアクションを起こし続けた結果,機が熟したというか,天命みたいなものを感じますね。って,こんな見た目のすごい人達を前に言うのもアレなんですけど(笑)。

こんな見た目
画像集#010のサムネイル/「マブラヴ」吉宗鋼紀との座談会再び!「アージュ」ブランド設立20周イベントで発表された「Muv-Luv INTEGRATE」は吉宗氏の集大成になる

BRZRK:
 いやいや,我々は誰が見ても好青年ですよ(笑)。

マフィア梶田:
 それにしても,天命まで感じるとは。「マブラヴ」はやはり人生ですねえ(笑)。

吉宗氏:
 天命とか我ながら大げさだと思いますけど,信じたくもなりますよ。âge復活の狼煙となる20周年イベントをやった10月22日は,冥夜が現れて武のループ起点になった「マブラヴ」にとって重要な日。だからイベント開催もここにこだわったんですが,この設定って18年ぐらい前に決めたものですよ? そんな日に即位礼正殿の儀が行われ,大雨が草薙の剣をかざした時刻に快晴,一斉に鳥の鳴き声が響き渡って東京に低い虹が架かるって,もうこれどんだけ天命だよって(笑)。

BRZRK:
 あの日の出来事は確かにファンタジーかよって感はありましたよね。日本人に生まれてよかった的な。

吉宗氏:
 それに陛下が被災者に配慮してパレードが延期になるっていう。もしあの日にパレードがあったら,avex前はものすごい混雑と交通機関の混雑で,物販とかできるレベルじゃなかったかもって考えると,本当に運命的なものも感じざるを得ないですよ。オカルトチックな言い方ですが,自分が動いているんじゃなくて「マブラヴ」をやれと動かされているなって。いや,本当に物語を紡ぐ生業の末席に身を置かせてもらえてよかった。良い人生だったなあ……。

マフィア梶田:
 いやいや,これからですから! 遺言みたいなのはヤメましょう(笑)。
 
  • 関連タイトル:

    マブラヴ

  • 関連タイトル:

    マブラヴ オルタネイティヴ

  • 関連タイトル:

    マブラヴ オルタネイティヴ トータル・イクリプス

  • 関連タイトル:

    シュヴァルツェスマーケン 紅血の紋章

  • 関連タイトル:

    マブラヴ:ディメンションズ

  • 関連タイトル:

    Muv-Luv INTEGRATE

  • この記事のURL:
AD(最終更新日:2024/01/17)
マブラヴ(全年齢版)
Software
発売日:2006/09/22
価格:
amazonで買う
4Gamer.net最新情報
プラットフォーム別新着記事
総合新着記事
企画記事
スペシャルコンテンツ
注目記事ランキング
集計:04月24日〜04月25日