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[GDC07#16]欧米産MMORPGの中で,なぜWoWだけがアジアでも成功しているのか? 魏 晶玄氏が語る,西洋と東洋におけるゲーマーの違い
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印刷2007/03/09 16:13

業界動向

[GDC07#16]欧米産MMORPGの中で,なぜWoWだけがアジアでも成功しているのか? 魏 晶玄氏が語る,西洋と東洋におけるゲーマーの違い

ソウル中央大学教授 魏 晶玄(ウィ・ジョヒン)氏
 2月22日,23日に東京で開催された,Asia Online Game Conference 2007においてソウル中央大学教授 魏 晶玄(ウィ・ジョヒン)氏は,「なぜ欧米のオンラインゲームはアジア市場で失敗したか」をテーマに講演を行った(関連記事)。
 その場での,「欧米のタイトルはほとんど失敗していますが,World of Warcraftだけは大成功を収めています。それについての分析は,Game Developers Conferenceで講演する予定です」との予告どおり,現地時間の3月7日,ウィ氏はGDCで「Catch a Tiger by the Tail: How Korean Online Games Are Successful in Asian Markets」(尾をつかんで虎を捕まえる:なぜ韓国オンラインゲームはアジア市場で成功しているのか)という講演を行った。

■まずはおさらい。西洋と東洋での,好みの違いについて


 氏はまず,大勢の受講者(主に欧米のゲーム開発者)達に向かって,「オンラインゲームのメッカは,アジアだと思う」と切り出した。“そうだと(うすうすにせよ)感じているから,この講演を聴きに来た”という人が多いとは思うが,聞きようによっては,なかなか強烈な先制パンチである。
 そして氏は,聴衆に向かって,次のような質問を出した。
 「アジアのオンラインゲーム市場は,トラなのか,ネコなのか」。

 「私のためですかね? ネコだと言われたら,帰ろうと思っていましたから」とウィ氏がジョークを交えて語ったように,来場者の大半は「トラ」に手を挙げていた。このトラの尾を捕まえる方法を,これからウィ氏が伝授しようというわけだ。

 話の序盤に関しては,AOGCでの講演と重なる部分が多いので,簡単に紹介するだけにとどめておく。
 アメリカにはアジアの,アジアにはアメリカの(ゲーマーの好みなどの)情報が伝わって来にくく,そのためウエスタンスタイルのゲームは,それほどアジアでは成功していない。アメリカでは人気の「EverQuest II」も,韓国では,数か月以内にサービスが終了せざるを得ない状況になっているという。一方,日本や中国,さらには中近東までの広大なアジア地域は,韓国産のMMORPGが席巻している。
 西洋のゲームが東洋で成功するには,アジアのゲーマーの好みを知らなければならない,というのがウィ氏の主張である。その好みの一例として出されたのが,PK……プレイヤーキリングである。
 下の図を見てほしい。中国ではなんと,91.3%のゲーマーが,PK(PvPではない点に注意)の経験があると答えているのだ。アメリカでは逆に,過半数がPK未経験である。中国では,PKはもはや,ゲームの重要な一要素なのである。



■日欧米はプロセス志向,中韓は結果志向?

 アメリカのゲーマーと,アジアのゲーマーの,さまざまな好みの違い……例えば,アメリカでは「グラフィックス」「クエスト」を重視する人が多いのに対し,アジアでは「キャラクターの多様性」「アイテムのバラエティ」を重視する人が多い,といったことを,ウィ氏は簡潔な言葉で説明した。これは,ウィ氏が以前から指摘していることではあるが,アメリカで行われているGDCの聴衆者達にとっては,ちょっとした衝撃を持って受け止められたようである。そこであらためて,この考え方について説明していこう。



 簡単に言えば,アメリカ(含む西洋)は,「プロセス志向」。そして韓国や中国は,「結果志向」だというのだ(ちなみに日本はその中間,ややアメリカ寄りに位置しているという。納得,という人も多いだろう)。

 例えばアメリカのゲームには,請け負ってから達成するまでに,1年かかるようなクエストもある。“過程”を楽しむアメリカのゲーマーにとって,一つのクエストにかかる時間が長いのは,それだけ長い間楽しめることを意味しているが,これをもしアジアでやったら,「とても辛抱できない。それに,ほんのわずかでも辛抱するのがイヤなんです」とウィ氏。
 また,氏はAOGCでも話題にした「コミュニティの重要性」に触れ,アメリカのゲーマーは,友人を作りたくてコミュニティに所属するが,アジアのゲーマーは,「有利になるから」所属する,と説明する。つまり,アメリカのゲーマーにとって,コミュニティは所属することそのものが一つの目的であり,そこに意味を見いだしているわけだが,アジアのゲーマーにとっては,より強くなるための手段に過ぎないというのだ。
 ここで氏は,さらにアジア……とくに中国市場の特異性を示す資料を提示した(下の画像参照)。Auto programとは,文字どおり一連の作業を自動化するためのプログラム。要は,BOTである。氏は,実に52.8%の人が,日常的にそういったプログラムを使っていると指摘した(never useがわずか4.1%という時点で驚きだが)。しかもその次の資料では,実に63.8%が,BOTの使用は問題ないと考えていることが示されている。アメリカと同じくプロセス志向の日本人としては,想像を絶する数値だが,結果志向のゲーマーにとっては,プロセスは重要ではない……むしろBOTを使って楽をしたほうがいい,というところなのだろうか。



 氏はこのあと,「SPECIAL FORCE」「FreeStyle」の例を挙げて,“レベル”というものがアジアのゲーマーに対して強いアプローチになることを話したが,こちらもAOGCでの記事の内容とほぼ同じなので,割愛する。
 そして,多くの聴衆者が待ちに待った話題へと移った。



■WoWはなぜ,アジア市場で成功したのか?

 つまり,「World of Warcraft」の開発者達は,徹底的にアジアのゲーマーの好みを研究したからだ,とウィ氏は説明する。それはゲーム内容を見ても分かるが,開発者達自ら認めているという。
 「StarCraft」「Diablo II」を韓国で大ヒットさせたBlizzard Entertainmentは,韓国をはじめとするアジア市場に早くから注目しており,その研究結果が,WoWに生かされている。つまり,プロセス志向型ゲームデザインと,結果志向型ゲームデザインの融合が図られているのだ。



 多くのアメリカ産MMORPGが,高レベルになるほどパーティプレイを強制するのに対し,WoWは,みんなと一緒に仲良く楽しむ(プロセス志向)ことも,ソロでストイックにレベルを上げること(結果志向)もできる。また,実にクエストが充実している(プロセス志向)かと思えば,アイテムも充実している(結果志向)。
 さらに拡張パックでは,攻城戦のようなシステムまで導入された。つまるところ,西洋と東洋の,いいとこ取りのゲームなのである。
 ……まぁ,説明を受けてみればなんてことはない話なのだが,Blizzard Entertainmentはそれを徹底的に実践したために,WoWはアジアでもヒットしたというのは,確かにかなりの部分で当たっているのではないだろうか。

(写真左)ウィ氏は,日本のアニメーションが,今後アジアでヒットするオンラインゲームのキーワードになるかもしれないという予想も披露。アメリカで生まれたアニメを,日本人は独自に改良してきた。昔は予算が足りないために,「止め絵」や「口パクのみ」を多用して“やりくり”してきたわけだが,それでも今や,ジャパニメーションは世界的な人気になっている。ゲームでも同じことが見られるのではないか,と語っていた (写真右)実はこの講演では,韓国mGameのChief Marketing & Publishing Officer,D. Youn Shin氏も壇上に立った。が,氏のノートPCが講演直前にクラッシュし,講演用のファイルがすべて破損してしまったそうで,(アジアのゲーマーに人気のある)「熱血江湖オンライン」のムービーを流し,同作を紹介するにとどまった


 講演の大まかな内容は,以上だ。この講演内容には多くの(西洋の)開発者達が大いに興味をそそられたようで,たくさんの質問が寄せられていたのが印象的だった。中には,「どうすれば,こういったことを知ることができるのか」という非常に曖昧な質問もあったほどである(ちなみにウィ氏は,「考え方があまりにも違うため,西洋の開発者が,東洋のゲーマーの好みを完全に知るのは難しい。チームに,アジアの開発者を入れるのも手だろう」と回答)。

 さて,氏の持論である,「プロセス志向」「結果志向」という分け方に対しては,「ゲーム文化の成熟度合い」という微妙な論点を保留しておく限り,すんなり納得できる人も多いのではないだろうか。確かにアメリカ産MMORPGの名作の多くは,プレイしている瞬間瞬間が(たとえ苦況だとしても)楽しいし,逆にアジア産MMORPGの名作は,(レベルアップやレアアイテムの入手,攻城戦での勝利など)“達成感”を頻繁に感じられるように思える。
 まぁ,日本人はどちらかというとプロセス志向なのだから,もう少しアメリカ産のMMORPGが人気を得ても良さそうな気もするが,考えてみたら日本で人気のあるゲーム,例えば「ファイナルファンタジーXI」にしろ「ラグナロクオンライン」にしろ,「より強くなりたい」という結果志向的な遊び方でなく,ほかのプレイヤーと交流したいというプロセス志向的な遊び方をする人も,少なくないのではなかろうか。ほかのプレイヤーとの交流は,必ずしも“プロセス”を進めることを意味しないが,そこでの体験を重視している点は共通だろう。

 そこでちょっと,こんな思考実験をしてみる。プロセス志向を極限まで進めたMMORPGのプレイとは,どのようなものになるか? とりあえずBOTやRMTの問題は,“問題”ではなくなるのではないだろうか。どこまでも戦闘や生産,その行為だけがプレイの魅力として機能するのであれば,わざわざ他人やプログラムに代わってもらう必然性がない。まあ,とはいえ実際のところ,結果を求めない限りプロセスは生じないのが普通であり,そうすっぱり切り分けられるハズもないのだが。
 そんな観念論はさておき,個人的な思いとして,プロセス志向の国に住む開発者達には,結果志向のゲーマーを取り込むことにやっきになって,自分達のゲームが本来持っているプロセスの魅力を,忘れてしまわないよう願う次第だ。(Iwahama)

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