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印刷2026/06/07 03:00

プレイレポート

「ペンギン・コロニー」はH.P.ラブクラフトのコズミックホラーをテーマに,人間が狂気に堕ちていく姿を南極ペンギンの視点で描く

 Fellow Travellerは本日(2026年6月7日),ORIGAME DIGITALが開発する新作ナレーティブADV「ペンギン・コロニー」PC / Switch2)のPC版プレイアブルデモの配信を開始し,ストーリーを紹介する最新トレイラーを公開した。

ORIGAME DIGITALのナフタリ・ファルクナー氏。2020年の「ウムランギジェネレーション」は,第24回文化庁メディア芸術祭のエンターテインメント部門で新人賞を獲得した(関連記事
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 5月末に開催されたBitSummit Punchにて,開発チームを率いるディレクターのナフタリ・ファルクナー(Naphtali Faulkner)氏から事前にデモをプレイしつつ,ゲームについて解説してもらう機会があったので紹介しよう。

 「ペンギン・コロニー」は,H.P.ラブクラフトの小説「狂気の山脈にて」をベースに,南極に暮らすペンギンの視点から描かれるコズミックホラー・アドベンチャーゲームだ。
 舞台となるのは,原作の出来事から約8年が経過した1939年の南極大陸。プレイヤーは現地のペンギンとなり,分厚い氷の下から湧き上がる超自然的な古代の力を巡って対立する2つの人間勢力を観察していくことになる。

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 南極で対立しているのは,ナチスの探検隊と,それを阻止しようとするニュージーランドのマオリ(Māori)のキャラクターたちだ。ナチスは南極の地下で目覚めつつある古代の存在「サーマン」(Surman:偉大なる蛇の囁き手,旧支配者の幼子)をアーリア人の神だと盲信し,その復活を目論んでいるが,実際にはサイキック信号によって無意識のうちに呼び寄せられ,利用されているに過ぎない。

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 こうして人間たちが宇宙的恐怖によって次第に狂気へと陥っていく様を,攻撃手段を持たない動物の客観的な視点から見つめるという,これまでにないアプローチが特徴の作品となっている。
 ナレーションもニュージーランドの調査メンバーの一人によって語られていくのだが,彼自身もすでに旧支配者のパワーで狂気に触れてしまっており,ゲーム中のイベントは必ずしも時間の流れに沿ってはいない様子だ。

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 ペンギンを操作するのが大前提となるゲームプレイでは,よちよち歩きや腹滑り,水中へのダイブといったアクションで,凍てついた南極を探索していく。氷上を滑るアクションはペンギンにとって自然な行為であるためスタミナを消費しないが,急斜面を登るなどの無理な行動や火に触れるなどのダメージを受けると,体力も兼ねているスタミナが急速に減少していく。

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 特徴的なのは,プレイヤーは一羽のペンギンをプレイするのではなく,その場にいる群れの中から小・中・大の3サイズを見つけては,用途に応じて乗り移っていくことだ。個々のペンギンには名前などなく,自由にスワップしながら使い捨てていくようなイメージである。これは,ペンギンが群れとして宇宙的なイベントを体験しつつ,人間たちの狂気を傍観する存在であることを強調するためだと思われる。
 小さな幼体のペンギンであれば,人間の基地の破れた金網や,岩の隙間などに入り込めるが,海は成体でなければ泳げないといった特徴がある。さらに,高いジャンプ力を持つイワトビペンギンなども登場し,それぞれの特徴を活かしたパズル要素が盛り込まれているという。

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 操作中のペンギンが死亡した場合でもゲームオーバーにはならず,直前に近くにいた別のペンギンへと操作が即座に切り替わるという,独特のペナルティシステムが採用されている。
 また,個々のペンギンは狂気そのものに冒されることはないものの,旧支配者の影響がある特定のエリアで,“エルドリッチ・テクノロジー”に触れた個体は,壁に刻まれたヒエログリフを読めるといった能力を獲得することもある。
 このあたりについて,ファルクナー氏は「Bloodborne」における「啓蒙」のシステムにインスパイアされたと話していた。

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 そんな「ペンギン・コロニー」には,単なる探索アドベンチャーに留まらない,植民地主義への批判という裏テーマが込められているという。
 ファルクナー氏は「ヨーロッパの探検隊という人間が南半球に入植してきたのに対し,ペンギンこそが南極の先住民である」と語る。人間たちのエゴや侵略の歴史を,ペンギンという先住民の目を通じて客観的に描くことで,その行為がどれほど狂気的なものであるかを批判しているのだ。

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 また,アートや演出の面でも強いこだわりが見られる。昨今のトレンドであるAI生成アートをファルクナー氏は意図的に拒絶しており,リアルな質感を持った「手作り」の表現を重視している。例えば,オープニングなどに登場する炎の実写映像は,同氏が自身のガレージでゴミ袋を実際に燃やして撮影・再現したものだという。
 その2Dと3Dを組み合わせたようなグラフィックスは随所で確認でき,青と白を基調にした重苦しい雰囲気が美しいSF・コズミック的なクオリティは一見の価値がある。

 さらに,今回新たに公開された本作のキーアートは,ファルクナー氏の友人である日本のホビーアーティストが手がけており,小島秀夫監督の「スナッチャー」(Snatcher)のアートスタイルから強いインスピレーションを得て制作された。
 サウンド面でも,手の動きに反応する電子楽器「テルミン」のようなSF映画風の不穏な音響が取り入れられており,耳からも恐怖を演出している。

新たに公開された「ペンギン・コロニー」のキーアートは日本人の手によるものであるという
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 もともとは昨年のリリースを予定していたが,ストーリー重視のゲームに強いパブリッシャであるFellow Travellerから「1年待って一緒にパブリッシングしよう」と提案されたことで,さらに作り込む期間を得て,現在の形に落ち着いたという。
 ここ数年のインディーデベロッパを取り巻く厳しい環境の中で,ストーリーの重要性を深く理解してくれるパブリッシャと組めたことは非常に幸運だったとファルクナー氏は振り返っていた。

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 「ペンギン・コロニー」は6月10日の正式発表を控えており,同時に開催される「Steam Next Fest」に合わせてデモ版の配信を予定している。また,9月に開催予定の「東京ゲームショウ2026」への出展も計画中とのことで,ファルクナー氏は日本での展開に強い意欲を示していた。
 「ペンギンになって宇宙的恐怖を体験してみたい」という人は,ウィッシュリストに追加してその発売を楽しみにしておこう。

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