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日本で先行きが明るいのはコンテンツ分野だけ? 産官学一体のコンテンツ学会発足
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印刷2008/10/12 03:28

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日本で先行きが明るいのはコンテンツ分野だけ? 産官学一体のコンテンツ学会発足

日本で先行きが明るいのはコンテンツ分野だけ? 産官学一体のコンテンツ学会発足
 10月11日,東京秋葉原でコンテンツ学会の設立総会とシンポジウムが開催された。設立総会では,初代会長に,一橋大学の堀部政男氏,副会長には,デジタルハリウッド大学の杉山知之氏,東京大学の玉井克哉氏氏,慶応義塾大学の中村伊知哉氏,スクウェア・エニックスの和田洋一氏の4名,そして事務局長に慶応義塾大学の金正勲氏が選出された。
 以下は,その設立趣旨である。

 近年、デジタル技術の発展によるメディア環境の変化に伴い、コンテンツ分野に対する関心は急速に高まっています。それに合わせ、社会科学、人文科学、工学をはじめとする各学術領域において、関連する研究の蓄積と公開が徐々に行われ始めている段階にあります。

 しかしそれらの活動は、現状においてコンテンツ分野を専門的に取り扱う中心的基盤が存在しないためにきわめて分散的な状況にあり、人材の交流と育成、学術的水準の向上に不可欠となる透明で統合的な評価指標、そしてその成果の実社会への還元等の観点から見て、未だ十分な水準に達してはいません。今後、社会・経済全体の中でのコンテンツの持つ重要性が更に増大していくとすれば、コンテンツ分野を支える知的・人的基盤を継続的に強化していくことは不可欠であると言えます。

 こうした問題意識に立ち、我々はコンテンツ分野を総合的に取り扱う新しい学会、「コンテンツ学会(仮称)」を立ち上げることと致しました。本学会は、コンテンツ関連の緒問題に関する学術的研究の推進や人材育成に加え、表現の創出、技術の開発、ビジネスモデルの設計、政策の立案等を通して、創造社会の実現に資することを目的とします。


コンテンツ学会会長に選出された一橋大学名誉教授堀部政男氏。個人情報保護法など多くの法案に関わってきた第一人者だ
 コンテンツ学会が扱う「コンテンツ」は,非常に広範なものとなりそうだ。かつては「デジタルコンテンツ」に関する諸々の法制度や問題などが議論されていたことを思い起こす人もいるかもしれない。今回は,それから「デジタル」の外れた広義の「コンテンツ」を対象としている。デジタルコンテンツについては,かつて官民でいろいろ取り組んでいたわけだが,アカデミック分野からの協力がなかったことなどが反省材料ともなり,今回のコンテンツ学会は,産官学一体,むしろ学生などを主体としていくものとなるという。表現,産業,技術,政策の4分野を担う人々が共同でコンテンツのあり方を考えるということで,業界のハブとなることが期待される学会だ。

 では,コンテンツとはどんなものを指すのだろうか。映画やテレビ番組,音楽,絵画,マンガ,小説,アニメ,ゲーム,Webページ……など,一般的なものだけでも挙げればキリがないくらい多岐にわたっているが,さらに料理,デザイン,果てはメールなど,人類の活動のほとんどはコンテンツに含まれるという見解が示されるなど,この学会では非常に広い範囲で扱うことが確認された。

 続いて行われたシンポジウムだが,会長,事務局長の挨拶に続いて行われた来賓挨拶では大方の予想どおり(?)内閣総理大臣麻生太郎氏の登壇はキャンセルとなり,民主党衆議院議員原口一博氏も多忙につきビデオメッセージでの挨拶となった。氏は,著作権法の改正などに携わっており,コンテンツ学会には人材育成などを期待するなどのコメントを贈っていた。国会期間中に「地方なので解散前は忙しい」とコメントするのは問題がある気もしないではないが,まあいろいろ地元で忙しいのだろう。解散前らしいし。

 官を代表しては,コンテンツに関係する省庁から来賓がこぞって集まり,経済産業省の村上敬亮氏,総務省の小笠原陽一氏,内閣官房から大路正浩氏,文化庁の山下和成氏が挨拶を述べた。それぞれ,コンテンツ関係ではいろいろ苦労している部署らしく,コンテンツ学会に寄せる期待も大きいようで,持ち時間5分枠に収まらぬなかなか熱いトークが展開された。興味深かった部分をいくつかピックアップして紹介してみよう。
 村上氏は「音楽を例に挙げると,かつては音楽=レコード業界だった。CDの売り上げが3割落ちたというが,原因はカラオケであり,音楽全体での売り上げで見ると1.5%しか下がっていない。昨今は流通の選択肢が増えており,業界の中心は一時,流通から制作者寄りのところにシフトしてきている」とするものの,コンテンツ制作者側のビジネスモデルはまだまだなってないとし,業界の変化に対応できていないとする。
 また,コンテンツをほかの産業を結びつけることの重要性も強調していた。優秀な技術を広く知らしめるにもコンテンツと連携し,どのようなライフスタイルの変化をもたらすのか,どういう体験をもたらすのか示すことが重要とする。「日本のソフトパワーはとてつもないものがある」と欠席した麻生氏風にまとめていた。

 総務省の小笠原氏は,国民からの苦情や意見などを参考にいろいろな規制や管理を行う部署だけあって,数多く寄せられる意見は重く厳しく受け止めているとしたうえで,メール,電突などの意見,提言を引き続き歓迎する旨を述べた。続いて,氏がコンテンツ政策での判断時に重視している2点を披露した。
 1点は,「技術の進歩で,それまでの生活より不便になることがあってはいけない」というもの,もう1点は「作る人あってのコンテンツ行政である」ということだ。政策判断の参考に,実際にコンテンツを作っている人に意見を聞くことも多いという氏だが,最近はクリエイターと国内でコンタクトを取ることが難しくなっているという。
 ジャンルを問わず,優秀なクリエイターは海外に流出しつつあり,なんでも報酬が2桁ほど違うということなので,まあ人材流出もやむなしかなという状況らしい。コンテンツ立国を目指す日本だが,このままでは10年後には誰がコンテンツを作るのかと不安を隠さない。クリエイターの報酬が多くなるような政策とユーザーの利益を保護する政策はときに矛盾することもあり,ダビング10あたりでは双方から板挟みで叩かれてなかなか大変だったようだ。

 知財関連を担当する大路氏は,今後の日本はITとコンテンツを2本柱とする方針だという。曰く「儲けるための手法は2種類しかなく,コストをかけないようにするか,高く売るかだ」であり,コストを抑えるのがITの方向性,そして製品に付加価値をもたらすのがコンテンツの方向性で,両者は車の両輪の関係となり,国家戦略の柱であるとしている。また,課題として,海外とネットへの展開が不可欠であるとし,日本にあるよいものがまだまだ海外に十分知られていないことが問題であり,デジタル時代の新しいコンテンツ利用形態に対応することなどが必要であるとの見解を示し,続けて知財関連の法案などでコンテンツ業界を側面的に支援したいとした。

 文化庁の山下氏は,最近話題になったノーベル賞を例に挙げつつ,科学技術では国家が基礎研究を支援しないと,その国は衰えていくというのが定説になっていると紹介した。
 今回のノーベル賞は数十年前の研究が評価されたものであり,現在の研究が評価されているわけではないこと,数十年間,日の目を見なかったものが急に大きく評価されることもあることなどから,科学技術だけではなく,文化についても同様に国家の支援が必要かもしれないとしていた。数十年後に大きな成果となるかもしれないものとはいえ,目的の明確な技術開発とは違って得体の知れないものに投資するのはかなり冒険のような気はしないではない。しかし,文化の裾野が広がることで,新しいモノを生み出す土壌も広がるのかもしれない。

 最後に行われたパネルディスカッションでは,いろいろな立場からいろいろな視点の意見が出てきた。関連した法律を得意とする東大の玉井氏は,コンテンツを日本で「明るい話題が出てきそうな唯一の場」としたものの,法律家はクリエイティブでない人が多いので信用してはいけないと,(自己矛盾としつつ)諭していた。
 慶応大学の中村氏は,コンテンツ学会自体がさまざまな意味で非常にチャレンジングだと語った。多くの分野のまったく違う視点の人々をどうまとめるのか,(Googleのいうように)人類の活動がすべてデータ化されたとして,それをどう活用するのかなど課題は多いとする。


 そのほか,会場からも意見が求められ,コンテンツクリエータはほとんどが弱小企業みたいなもので,銀行がお金を貸してくれない,なんとかならないか,といった切実なものから,学生はどう対応していくことが求められているのか,源氏物語は1000年残ったが,数十年前にフロッピーに記録したデータは全部読めなくなった。1000年後にデジタルデータを残すにはどうするべきかなど,多くの問題意識を伴った意見が積極的に交わされていた。

 今後,コンテンツ立国を目指す日本の方向性は,ゲームにとっても無関係ではない。先日行われた東京ゲームショウの基調講演で,日本はゲーム開発のトップではなくなったという認識からの提言がなされていたが,コンテンツ学会と問題意識は共通しているように思われる(和田氏はコンテンツ学会の副会長でもあるわけだが)。ゲームのよりよい未来のためにも,コンテンツ学会が成果を挙げることに期待したいところだ。

コンテンツ学会公式サイト

http://contents-gakkai.org/
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