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印刷2025/12/31 10:30

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第2部がついに完結する「Fate/Grand Order」。10年も支持された要因と,その歴史を振り返ってみた

 2025年12月20日,「Fate/Grand Order」iOS / Android。以下,FGO)の物語を締めくくる「第2部 終章」の幕が開けた。

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 FGOが始まったのは,2015年7月30日(Android版。iOS版は8月12日スタート)のこと。それから10年を数え,ついに一連の物語が完結()を迎えようとしている。長年にわたる謎,そしてすべての真相が明らかになるこのタイミングを待ち望んでいたマスター(プレイヤー)も多いことだろう。
 この記事が掲載されるころには,リンゴや聖晶石を使いまくって12月23日に始まったレイドバトルを周回しているか,もしかするとすでに物語の完結を迎えているのかもしれない。

※第1部にもエンディングはあったが,多くの謎を残してのものだった

 さて,これほど長く,そしていままさに熱狂的に盛り上がっているFGOだが,いったいなぜ,これほどまでにファンの心を魅了し続けてきたのだろうか。10周年という節目,そして物語の結末を迎えるいま,FGOの軌跡とともに振り返ってみたい。

第2部 終章の開幕に際して,ただ真っ白になったタイトル画面。これが意味するところは……
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TYPE-MOONの物語


 10年ものあいだFGOは多くのマスターに遊ばれ,支持されてきた。その理由の大半は,やはりTYPE-MOON作品であり,その最新の物語が読めることだろう。

 歴戦のマスターならばご存じだろうが,原点はTYPE-MOONが2004年にPCで発売した「Fate/stay night」(以下,Fate/SN)にある。主人公,衛宮士郎が冬木の街で聖杯戦争に巻き込まれるビジュアルノベルだ。記憶を消して遊び直せるのなら,当時と変わらぬ驚きと面白さを再体験できる傑作であることに疑いの余地はないだろう。

 その核となるのが,異なる結末へプレイヤーを誘う3つのストーリーだ。起点こそ大きな差はないが,士郎が目指す物語でいうところの着地点,視点が異なることで違う顔を見せる登場人物やサーヴァントたち,そして徐々に紐解かれていく伏線や謎の先にある真相と結末。TYPE-MOONの奈須きのこ氏が描いた密度の濃いシナリオは,当時多くのファンを魅了した。

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 そんなTYPE-MOONの最新作,それもサーヴァントや聖杯などFate/SNの設定が色濃く残る作品となれば期待しないファンはいないし,それが形となったFGOも(少なくともシナリオ面で)期待した以上の面白さがあった。モバイルゲームという,これまでのTYPE-MOON作品になかった形態ではあるが,それが時代にマッチした幸運もあっただろう。

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 現代のエンタメ,とくにモバイルゲームは,可処分時間の奪い合いが激しい。それもあってか,多くの作品は物語(いわゆるメインクエスト)を細かく分け,短期間で実装する傾向にある。これは,できるだけプレイヤーを離脱させない施策でもあるのだろう。
 一方,FGOといえば,大枠の物語はあるものの,一度のアップデートで実装される各章は(一部は前後半などに分かれることはあったが)大ボリュームで,物語としてしっかりと完結しているのが特徴だ。たしかに読み進めるには時間がかかるのだが,章の完結まで感情の高ぶりが途切れづらいので,クライマックスで得られるカタルシスは間違いなく大きくなる。
 もちろん,それが必ずしもモバイルゲームとして正解であるとは言えないし,TYPE-MOONの物語だからこそ,それが許された,ファンが望んだという面もある。

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 ただ,その分だけ実装には時間がかかる。第1部こそテンポよくメインクエストは実装されていたが,第2部は各シナリオの実装にかなり間が空いていた。それが完結までに10年かかった一因であるのは,物語の内容とは別に評価の分かれるところかもしれない。
 もっとも,第1部はサービス開始前からの準備があったであろうこと,そして2019年以降はCOVID-19の影響もあり,それ以降に元の開発環境から状況が変わってしまったと思われる点は,考慮すべきだろう。

 もう1つ,現代のモバイルゲームを語るうえで忘れてはならないのが,リアルタイム性だ。シナリオを読み,SNSなどで感想を述べたり議論したりすることで得られる共感と理解が,作品の土台を強固にする。
 FGOもその例に漏れず,マスター同士のコミュニケーションが,そのままFGOの拡大につながっている。その極致が,レイドバトルではなかろうか。
 レイドボスの体力の減るスピードは,言葉を交わすよりも雄弁なコミュニケーションで,同じゲームを同じ時間に,同じ目的でプレイし続けていたことは,FGOがスマホゲームにならなければ味わえなかった体験の1つだ。

 そして,それらと同じぐらいFGOの魅力として挙げられるのがサーヴァントの存在だ。
 Fate/SNを始めてとして,あらゆるFate派生作品からも登場しており,FGOで生まれたサーヴァントを含め,その数はなんと450を超える(※非プレイアブルも含む)。これらサーヴァントは,世界中の神話の人物や偉人をもとにした英霊(キャラクター)である。だからこそ,その原典を調べる入り口としての楽しみ方もFGOならではの体験だ。実際に,とあるサーヴァントの実装後に,それに関連する書籍が多く売れたといった現象もあったほどである。

ライターとイラストレーターの手により,原典から比較的忠実に再現されたサーヴァントもいれば,独自の解釈であったり,伝承やパーソナリティのわずかな一面であったりが要素として盛り込まれたサーヴァントもいる。それはともかく,なぜライオンヘッドになったのか……
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 それにしても……FGOは完結までに10年,第1部で一度は完結したと考えても,ここまで7年近くかかっている。過去のインタビューで,第1部を「当初予定していた内容の半分」と原作者の奈須きのこ氏が話していたように,おそらくサービス開始当初からあったであろう大筋の物語を変えることなく,10年を走り切るというのは,ある種の狂気を感じさせずにはいられない。

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 スマートフォン向けRPG「Fate/Grand Order」の第1部が,2016年12月22日に公開された「終局特異点 冠位時間神殿 ソロモン」をもって完結した。「FGO」はこれまでどのような軌跡を描いてきたのか。そして先の未来において,どのような展開を見せるのか。TYPE-MOONの奈須きのこ氏と,ディライトワークスの塩川洋介氏に話を聞いてみた。

[2017/03/11 00:00]

 だが,そんな狂気を孕んだシナリオも楽しいと感じているのがマスターたちだ。しかも,サービスが続くかぎりTYPE-MOON最新の物語が楽しめるということでもあるのだから,まだまだ続いてほしいというのが正直な心情だ。


FGOのゲームシステムはどう感じる?


 ストーリーについて触れたなら,ゲームシステムについても触れておくべきだろう。
 FGOはジャンルでいうとRPGに分類されており,ゲーム性に当たるものはシナリオ中に発生するバトルと,サーヴァントや概念礼装の育成部分となる。FGOは大ヒットしたスマホアプリといって過言ではないが,上記で挙げたゲームシステムが優れているからFGOを遊び続けているという人は,シナリオを楽しんでいる人に比べれば,かなり少ないだろう。

FGOの前身にあたる「Fate/stay night」がノベルゲームであり,筆者も「デバイスを通して,画面に介入した結果が変化するものは全部ゲーム」だと考えているので,FGOのアドベンチャーパートもゲームではあるとは思うが,ここではそれ以外を対象としている
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 それこそサービス開始直後は,それはもういろいろと厳しいものだった。ガチャを回しても,礼装ばかりでサーヴァントに出会えないこともあれば,育成素材も常に枯渇する。フリークエストで戦っても得られる素材は少なくて,あげくイベントで素材稼ぎで周回するとフリーズしたりサーバーが落ちるなんてことも。

「歌うカボチャ城の冒険 〜マッドパーティー2015〜」や「ぐだぐだ本能寺」のあたりは,宝具を撃つたびフリーズしないかヒヤヒヤしたものだ
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 とはいえ,当時に比べて現在はかなり快適になっている。サーヴァントの数も膨大にはなったが,それらを十分に育成できるくらいに素材はあふれている(なお,宝具レベル5,レベル120のいわゆるパーフェクトな育成はその限りではない……あれは育成効率から逸脱した愛の結晶である)。

育成素材に余裕があるといっても,それはちゃんと素材が出る場所を回ったうえでの話。それを怠ると素材は当然厳しくなる。まあ,RPGってそんなものだ
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ちなみに,本稿の担当編集者は全サーヴァントコンプ勢らしい……(※編注:戦力というより,キャラと物語が欲しい勢なので。所持状況はマテリアルの一覧が分かりやすいが,最終再臨のアイコン表示になるためこちらの画像を載せる
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 ただ,個人的なところではあるが,イベントなどの超高難度バトルはともかくとして,第2部のシナリオ上における難度の高いバトルを,強制された編成で戦う場面が多く,そこでストレスがたまることもあった。
 しかし,困ったことに(?),そういうバトルがあったシナリオほど思い出に残っていて……過酷さゆえに「楽しかった」と記憶が変換されている気もする。
 古くは「ドラゴンクエストII」,近年では「ELDEN RING」のように,過酷なプレイ体験こそが記憶に刻まれるのだとしたら,終章までたどり着いたマスターは,もうFGOがキツ楽しいゲームとして,しっかりと刻まれているのかもしれない。


第2部の完結後はどうなるのか? 大晦日のTVスペシャルが気になる!


 さて,本稿を読んでいるころに,まだレイドバトルが続いてるのか,その結末が語られているのかは分からないが,第2部が完結する。もしかしたら,FGOロスになってしまうという人もいるかもしれない。

 ただ,第2部が終わるからといって,FGOそのものがここで終わるというわけではないだろう。
 少なくとも,オフラインイベント「Fate/Grand Order カルデア・サテライトステーション 2026」の告知も出ているし,終章_序で配布されたサーヴァントについては,「バレンタインイベントの概念礼装(チョコレート・お返し)の受け渡しイベントはございません」という説明もあるわけで,イベントに向けての準備が行われている=まだ続くことは示唆されている(きっと新録のボイスもあるだろう)。


 そうは言っても,2026年以降のFGO,そして中核コンテンツであるメインクエスト,それに変わるものはどうなるのかといったところは,どうしたって気になってしまうのだが……。

 ともあれ,12月31日には恒例となった大晦日TVスペシャルが放映/配信される予定だ。番組では,FGOの10年の軌跡を関係者や特別ゲストがインタビューを通して振り返るそうだが,その中に“次の展開”への発表,もしくはヒントは出てくるのか。この特番に注目したいところだ。

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 ここで本稿の大筋は締めたいと思うが,次のページではこの10年で実装されたメインクエスト,イベントストーリー(キャンペーンのみのイベントは省略)を簡単な年表にして,FGOの10年の軌跡を振り返りたい。大晦日の番組と合わせて,ご覧いただきたい。
 
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