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[CEDEC 2016]ファンの視点からものを考え,昔のIPを復活させよう! 「日本のクリエイターよ,大志を抱き遙かなる大海を超えろ!」をレポート
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印刷2016/08/25 19:41

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[CEDEC 2016]ファンの視点からものを考え,昔のIPを復活させよう! 「日本のクリエイターよ,大志を抱き遙かなる大海を超えろ!」をレポート

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 開発者向けカンファレンス「CEDEC 2016」が2016年8月24日から神奈川県のパシフィコ横浜にて行われている。さまざまな立場からゲームに携わる人々が登壇するのだが,中でもユニークだったのが,Digital Development Management Japan Branch(以下,DDM) のGeneral ManagerであるBen Judd氏による講演「Why Japanese People!日本のクリエイターよ,大志を抱き遙かなる大海を超えろ!」だ。DDMは開発者とパブリッシャを仲立ちするエージェンシー企業であり,近年は「Mighty No.9」「Bloodstained: Ritual of the Night」といったクラウドファンディングも成功に導いている。そんなJudd氏から日本の開発者に送られたのは,「ファンの視点からものを考え,昔のIPを復活させるべきだ」というエールだった。

Digital Development Management Japan BranchのGeneral ManagerであるBen Judd氏
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 まずJudd氏が語ったのは,日本のクリエイターがグローバル市場を相手にビジネスをすべきであるという理由だ。Judd氏は,日本のゲーム業界には鎖国的なところがあるものの,グローバル市場へと打って出られるポテンシャルがあると考えているという。
 かつて日本のゲームは世界市場を相手に大きな成功を収めていた。しかし「Grand Theft Auto III」以降は欧米のゲームに主導権を握られ,国内市場も冷え込んでしまっている。

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 モバイルゲームにシフトし,マネタイズはうまくいったものの,歴史は繰り返され,欧米産ゲームの日本進出が始まっている。最近では「Pokémon GO」が,7月の時点で1000億円の売り上げ突破が容易に想定できるほどの大ヒットとなった。ただ,開発したのは海外のNianticであり,売上の30%がAppleやGoogleといった海外の会社へ送られている,とJudd氏は指摘する。

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 そんな中で氏が日本のゲーム業界に示したのは,「ファンの視点から考える」「クラウドファンディングを活用する」「グローバルトレンドに乗る」という3つの戦略だ。

●「ファンの視点から考える」
 ファンが欲しいソフトを提供するという視点に基づき,Judd氏は「伝統的なIPを復活させるべきだ」と主張する。日本にはかつて世界のファンを魅了したIPがあり,これが復活するとなれば,昔からの熱心なファンに訴求できるからだ。
 ゲームを出すとなると,“広い層に向けて展開し1本でも多く売る”ことが重視されがちだが,これからは“個々のユーザーに目を向け,1人がどれだけのお金を出したか”が重要だと述べる。ここを理解していれば,規模の小さなプロジェクトでも黒字を出すことができるのだという。
 つまり,昔のIPを復活させれば,万人向けのゲームよりもターゲット層は狭くなるものの,その分,昔からのファンなどコアな層に訴えることができる。狭い層をターゲットにするという考え方は,クラウドファンディングとも相性がいい。ファンコミュニティを盛り上げつつ資金集めをすることが可能だし,欧米のパブリッシャはクラウドファンディングに注目しているため,結果次第では彼らから開発資金を引き出すこともできるというわけだ。

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 とはいえ,昔のIPが復活した結果が思わしくなかったことが少なくないのは読者諸兄もご記憶のとおり。ここで重要になるのが「ファンの欲しいものを提供する」ということだ。
 Judd氏が携わったとあるタイトルでは,懐かしいレトロゲームを現代に復活させたものの,ファンの声を聞けずに“オリジナルの良さを継承していないキャラクターデザイン”や,IP復活にありがちな“元々2Dのゲームだったものを3Dゲームにしてしまう”というミステイクにより,芳しい結果を残すことができなかったという。つまりは,ファンが欲しい物を提供できなかったと言うこと。ニーズはあるものの,それに合ったゲームを出せなかったというわけだ。
 単に古いIPであればいいというのではなく,休止から5〜10年ほどになる,時間が経ちすぎていないものが望ましい。また,AAA級タイトル並みの莫大な予算を掛けたプロジェクトとするのではなく,適切な規模感で賢く制作していくことも必要だという。
 ただ,懐かしいIPを求めるファンのニーズをメーカー側も理解はしているものの,上層部のゲームへの理解が薄かったり,リスク回避の傾向が強かったりするという事情でIP復活が進まないこともあるとのこと。日本のメーカーはニーズがあるにもかかわらずIPを寝かせ過ぎている,とJudd氏は指摘した。

Judd氏が推薦する,欧米ファンが欲しがる懐かしの日本製IP。中にはモバイルで復活しているものもあるが,ファンはやはり家庭用ゲーム機で遊びたいと考えているのだという。また,「パロディウス」のように海外コミュニティで熱心に語られ続けているものもあるとのこと
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●「クラウドファンディングを活用する」
 昔のIPを復活させる上で強力な武器となるのがクラウドファンディングだ。
 パブリッシャにとって,クラウドファンディングは脅威となり得る。なぜならば,ユーザーが欲しがるものを出さなければ,誰かがクラウドファンディングでそのニーズを満たし,顧客を奪ってしまうからだ。一方,正しく使えば効果は大きい。プロトタイプを作るよりも,クラウドファンディングでキャンペーンを行う方が少ないリスクでフォーカステストをすることもできる。そもそも使っていなかったIPなのだから,失うモノはなにもない。ユーザーが望むソフトを作れれば,彼らは熱心なファンとなってサポートしてくれる。

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 クリエイターにとってはどうだろうか。クラウドファンディングをしたにも関わらず,出来が悪かったりゲームを出さなかったりすれば,クリエイターとしての評価に大きな傷が付く。出資する人々は熱心なファンなので,こうした出来事を忘れない。しかし,良いゲームを作れれば,これをきっかけに会社を強化できるし,ファンがずっとサポートし続けてくれる。

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 ただ,単にクラウドファンディングをすればよいというものではない。最初と最後は盛り上がるものの,その中間となる期間は中だるみ的な状況が続くのが通例だが,この期間を盛り上げ,ファンの興味を維持するための施策が必要だという。Judd氏が携わった「Bloodstained: Ritual of the Night」(関連記事)では定期的に情報を公開することで注目を集めることに成功したそうだ。

同時期にクラウドファンディングを行った,「Yooka-Laylee」と「Bloodstained: Ritual of the Night」における投資額のグラフ。「Yooka-Laylee」(左写真)は,最初と最後が盛り上がり,中間期は停滞するという典型的な推移を示した。「Bloodstained: Ritual of the Night」(右写真)は中間期でも「Yooka-Laylee」以上の額を集めているが,これは週3回というペースで定期的に新情報を明かすことにより,ファンの注目を集めた結果だという
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●「グローバルトレンドに乗る」
 こうした中で重要になるのが,「e-Sports」「アイテム課金」「インフルエンサー」という,ここ数年のグローバルトレンドを把握・活用することであるという。

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 ゲームを作る段階からe-Sportsを意識し,フェアな形のアイテム課金を導入。そして,インフルエンサー(動画配信などでほかの人々に対して影響力のある人)を巻き込んでPRを行っていく。欧米におけるインフルエンサーの影響力は大きなものがあり,ハリウッドがタレントとして押さえようとしているほどだというから侮れない。

新たなグローバルトレンドであるe-Sportsは大きな成長を遂げているという
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アイテム課金はフェアなものであればユーザーに受け入れられやすいという
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インフルエンサーの影響力は大きく,ハリウッドがタレント化しようとする動きもあるという
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 「パブリッシャは,ビジネス的な数字ではなく,ファンの視点でコンテンツを見るべきだ」とJudd氏はアドバイスする。ゲームが好きで,ファン的な立場からゲーム業界に入ってきたのだから,そうした初心を忘れずにプロジェクトを判断してもらえればありがたい,と氏は講演を締めくくった。
 まとめると,懐かしいIPが復活して欲しいというニーズがあるのだから,これを満たせればファンとクリエイターは互いに幸せになれる。熱心なファンを満足させれば強力なサポートが得られるが,そのためには単に名前を使うだけでなく,彼らが本当に欲しいものを出すことが必要だ。そのためにはファンコミュニティなどでしっかりと調査を行い,クラウドファンディングでアピールし,インフルエンサーの活用などトレンドを意識した施策を行えばいい……というのがJudd氏の考え方だ。今の時代に合わせたやり方を使い,昔のファンが望む形で懐かしいIPを復活させるというわけで,昔からのゲームファンとしては共感できるところの多い講演だった。
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