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レッドオーシャン化が進むハイパーカジュアルゲーム開発で成功するには何が必要なのか。「黒川塾 八十五(85)」聴講レポート
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印刷2022/02/26 17:13

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レッドオーシャン化が進むハイパーカジュアルゲーム開発で成功するには何が必要なのか。「黒川塾 八十五(85)」聴講レポート

 オンライントークイベント「エンタテインメントの未来を考える会 黒川塾 八十五(85)」が,2022年2月25日にオンラインにて開催された。このイベントは,メディアコンテンツ研究家の黒川文雄氏がホストを務め,招いたゲストとともに,ゲームを含むエンターテイメントのあるべき姿をポジティブに考えるものである。

画像集#001のサムネイル/レッドオーシャン化が進むハイパーカジュアルゲーム開発で成功するには何が必要なのか。「黒川塾 八十五(85)」聴講レポート

 今回のテーマは,「ハイパーカジュアルゲームのトップランナーが最前線を語る」。New StoryのCEO 因 雄亮氏と,タツマキゲームズのCEO 畑佐雄大氏をゲストに招き,現在のハイパーカジュアルゲームの潮流と,その成功の裏にある計算されつくしたゲーム開発におけるデータの分析とその方程式,そして収益性を支える広告モデルに関するトークが繰り広げられた。

 最初のテーマは,そもそもハイパーカジュアルゲームとは何かというもの。畑佐氏は,プレイヤーが目的を持って能動的にプレイするコンシューマゲームなどに対して,ハイパーカジュアルゲームは「隙間時間を埋めるツールや手段」とした。すなわち後者は,何の気なしにスマートフォンの画面を見たら,アイコンが目に付いたので何となくプレイして,用事ができたから止めるといった遊び方をされているというわけである。

 また因氏は,大前提として広告を活用したユーザー獲得とマネタイズがあるとし,「その上に「国籍を問わず誰でも遊べるゲーム」「手軽に誰もが幸せになれる,クリエイターにとって楽しいゲーム」が乗っていると表現。加えて,ハイパーカジュアルゲームを展開するある会社では,扱うタイトルに「スナッカブルであること」が求められる──つまりスナック菓子のように「手軽で簡単に満たされること」が求められるという事例を紹介しつつ,「スナック菓子は,簡単に作れるものではない。本気で向き合って初めて,手軽に満足感を得られるものを作れる」との見解を示した。

 ハイパーカジュアルゲームの開発について,畑佐氏は「玩具を作るような感じ」とし,「コアとなるゲームメカニクスで,プレイヤーの原初的な欲求を満たす体験をさせる必要があるので,クリエイターとしてはやりがいがある」と語った。
 因氏は「国籍を問わない部分が難しい。グローバルに共通する文化を考えたときに,アメリカの文化に合わせると,どの国や地域でも何となく理解される」とし,その理由を「アメリカのコンテンツが世界中に供給されたことにより,多くの人に共通の価値観をもたらしたのではないか」と説明した。

 NewStoryは,創業から800日で自社ハイパーカジュアルゲームの1億ダウンロードを達成している。その背景を因氏は「多くの人に助けてもらった」とし,タツマキゲームズやカヤック,芸者東京といった先達の蓄積したノウハウがあってこそのものと語った。因氏によると,そうした先達の言葉選び1つにも答えが示されていたという。

 ハイパーカジュアルゲームの市場規模は,グローバルで年間約3400億円規模だという。一方,日本国内はというと,因氏の見立てでは100億円程度とのことだ。また畑佐氏は,2020年頃から国内でもハイパーカジュアルゲームがランキングに入るようになったことを指摘し,「Z世代を中心に,人々の広告に対する抵抗が減ったのではないか。今後は日本でも伸びていく可能性がある」と展望を示した。

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 スマホアプリパブリッシャの世界におけるダウンロードランキング(ゲーム以外を含む)を見ると,日本の企業では上から順にカヤック,芸者東京,セガ,New Story,バンダイナムコエンターテインメントが100位以内に入っている。因氏は「世界的に見ると,日本の企業は圧倒的に劣勢」と分析し,「『国内ですごい』ではなく,その先に行かなければならない。突き抜けている上位勢に入るにはどうすればいいのか,日々考えている」と語った。

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 日本のハイパーカジュアルゲームパブリッシャが世界を席巻するには,何が必要なのだろうか。畑佐氏は,AppLovinやVoodooといったランキング上位の企業が,社外のデベロッパと協力して何千何万のプロトタイプを集めてハイパーカジュアルゲームを開発しているのに対し,日本の企業は基本的に社内だけで作っていることを指摘。「国内も結構健闘している」とする一方で,「世界を席巻するためには,もっと大きなチームや団体として戦っていく必要がある」と見解を示した。

 また畑佐氏は,とくに個人のゲームクリエイターにハイパーカジュアルゲームの魅力を伝え,開発に関わってもらうことを提案していた。実際,セミナーでそうした呼びかけをしたところ,タツマキゲームズに問い合わせが相次いだという。その理由を,畑佐氏は「ゲームを作るからには,誰しも一発当てたいという気持ちがある。今,そこに一番近いのがハイパーカジュアルゲームだから」とした。

 因氏はいわゆる「ヒト・モノ・カネ」に加えて,「情報」が最重要だとする。単に「一発当てる」のではなく「一発当てる確度を上げる」には「いいものを作ったから行ける」ではなく,きちんと市場と向き合い情報を分析する必要があるとし,「僕らは,もの作りとビジネスの楽しさを両立できていると思っている。片方を満たしたら,もう片方を満たせないという話ではない」と語った。

 ハイパーカジュアルゲームはシンプルであるがゆえに,模倣されやすい。そうした,いわゆるパクり問題について畑佐氏は,自身はそうしたことをしないようポリシーを持っているとしつつ,「事実としてパクりを専門としているパブリッシャもあるが,二番煎じ三番煎じなので見た人に『見たことがある』と思われてしまって,コピー元には勝てない」と説明した。

 また畑佐氏は,今の時代に本当のオリジナルを作り出すのは困難であることを指摘し,インスパイアやオマージュにしても「『ここまでやったら,さすがに同じじゃないか』という倫理観を働かせる必要がある」と語った。

有料ゲームによく似ているハイパーカジュアルゲームが,プレイヤーのクレームによりストアから取り下げられた事例も示された。因氏いわく「ユーザーが真実を見抜くようになった」とのこと
画像集#004のサムネイル/レッドオーシャン化が進むハイパーカジュアルゲーム開発で成功するには何が必要なのか。「黒川塾 八十五(85)」聴講レポート

 「ハイパーカジュアルゲームは,ブルーオーシャンかレッドオーシャンか」というテーマでは,過去にリリースされたタイトルがランキングに入る機会が増えていると因氏が指摘した。すなわち新作の入る隙がなくなり,レッドオーシャン化しているというわけだ。

 その要因としては,AppleのiOS 14アップデートに伴い,広告トラッキングの許諾がAppTrackingTransparency (ATT) システムによって管理されるようになり,データドリブンのハイパーカジュアルゲーム開発に影響が出たことが挙げられるという。そのため,それまでに知見を蓄積していたNew Storyやタツマキゲームズを含むパブリッシャはまだ勝負できるが,これからハイパーカジュアルゲームに参入するのはかなりの困難を強いられるというのが,因氏の見解である。仮に参入するのであれば,知見を持った信頼できるパブリッシャの協力を得たほうがいいそうだ。

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 一方畑佐氏は「ランキング1位を狙うといったように大きなビジネスをするのは難しいかもしれないが,ビジネスとして成立させることは可能」「パブリッシャとして参入するのは無理かもしれないが,デベロッパなら勝ち筋はある」とし,「海外では新しいデベロッパも参入している。確かにレッドオーシャンではあるが,普通のスマホゲームのようにブラックオーシャンまではいかない」と語った。また最近では,各社とも広告収入だけでなく課金収益を採用したり,継続率やプレイ時間を延ばす施策を盛り込んだりした「ハイブリッドカジュアルゲーム」に注力する傾向が見られるとのこと。

 因氏は,デベロッパと広告事業者の2つの視点があるとし,前者は長く遊んでもらえるもの,課金してもらえるものに向かっているとする。一方,後者は最新技術が投入される分野であることから,外部からの観測がしづらい状況になっているとのこと。そのため,ダウンロードランキングの上位に立つパブリッシャが,彼ら以下のパブリッシャと大きく差が開いているのは,独自の分析ツールなどを使っているからではないかというのが,因氏の見解だ。

 話題は,「クリエイターはハイパーカジュアルゲームに挑戦すべきか」というところにもおよんだ。先日,ゲームクリエイターの中 裕司氏がハイパーカジュアルゲーム「SHOT2048」をリリースし話題になったが,畑佐氏も因氏も「作ること自体が素晴らしい」「こういう事例が増えてほしい」と絶賛。
 また畑佐氏は中氏とオンラインで対話したこともあるそうで,中氏が「大変だったけれど,楽しかった」「遊んだ人の反応を見られて嬉しい」と話していたというエピソードも披露した。

 そうしたハイパーカジュアルゲームを開発することの楽しさについて,畑佐氏は「少人数で作れるので,自分の影響力が大きい」ことを挙げ,「ストアへの申請など,それまでにやったことがなかった業務を体験できることも新鮮」とした。またハイパーカジュアルゲームは軽く見られがちだが,実際にやってみると原初的な面白さを生み出すことが難しいうえに,実際の市場の反応と照らし合わせながら,高速で試行錯誤を繰り返さなければならないので,「ゲーム開発の登竜門になっている。ぜひゲーム会社の研修に採用してほしい」とも話していた。

 因氏は,多くの人にハイパーカジュアルゲーム開発にチャレンジしてほしいと語る。完成したタイトルを,遊んだ人からボロクソにいわれることも少なくないが,「それを乗り越えて,よりよいものを届けていかないと成立しないジャンル。自分の作ったゲームを数千万,数億という人数に遊んでもらえる経験ができる機会は,ほかにない」と語った。

 ハイパーカジュアルゲームは広告と切り離すことはできないが,プレイヤーからすると広告を見せられるのは退屈だし,パブリッシャとしては広告を見てもらわないと収益が上がらない。そのトレードオフを,どう捉えているのかという話題も出た
 因氏は「広告は,基本的にネガティブな影響を及ぼす」とし,「楽しいゲームであるほど広告を見てもらえる。したがって,いいゲームを作ることこそがメディアとしての最大価値を作ることにつながる」と語った。
 また畑佐氏は,若い世代ほど広告を受け入れる傾向にあることを改めて指摘しつつ,「広告を見てでも遊びたいと思ってもらえるゲームを作ることに尽きる」と話していた。

 最後のテーマは,「両氏が目指すエンターテイメントについて」。畑佐氏は,「作り手自身が面白いと思える環境を作りたい」という思いからタツマキゲームズを立ち上げたとし,「将来的には,コアなゲームやファンが生まれるゲームにもチャレンジしたい」と展望を語った。
 因氏はNew Storyが「デジタル遊園地を作る」というビジョンからスタートしたこと,その手始めとして市場が大きく反応がダイレクトに返ってくるハイパーカジュアルゲームの開発を選んだことを紹介。将来的にはハイパーカジュアルゲームで学んだノウハウを,さまざまな分野に応用していきたいとまとめていた。
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