
業界動向
任天堂,第3四半期決算/経営方針説明会実施。任天堂はスマートデバイスにどう向き合っていくのか
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冒頭で,岩田氏は,年末商戦における主に海外市場での販売が想定を大幅に下回ったことを謝罪し,任天堂として今後新しく展開していく部分の説明の前に,「今後も変えないこと」について語った。
「当社が、「ハード・ソフト一体型のビデオゲーム専用機プラットフォームを経営の中核とすること」は、今後も変わりません。当然のことながら、今までと変わらず、将来のために新しいハードの研究開発も進めていますし、当社が自社ハードを捨てて、他のプラットフォームに軸足を移すということも考えていません」(岩田氏)
一連の発表は,一部で期待されている,単純なスマートフォンゲームへの参入やハード開発をやめて他社製ハードにソフトを供給するといった方向性はないという牽制と見ていいだろう。
そういった自社のコンシューマゲーム専用機を主軸にしたビジネスを変えないという宣言とともに,時代に応じてビジネスを変化させてきたのも任天堂のスタイルであるとし,インターネットやスマートフォンの普及に対しても生活環境の変化として認識し,任天堂なりの対応をしていく方針であることを明らかにした。
過去の説明会でも,ソーシャルゲームやスマートフォンなど,急激に伸びてきた市場の影響について問われる場面が何度かあったが,一貫してモバイルゲームやソーシャルゲームが伸びてきても大きな影響はないという回答が行われてきた。しかし1月17日の発表会では,普及の進んだスマートフォンをプロモーションなどで活用する方向はアリではないかといった感じで,態度が少し変化してきているようにも思われた。今回の発表会では,その点で少し具体的な方向性が示されたわけだ。
最初に,別のプラットフォームに軸足を移すようなことはしないと断言しているわけだが,次に打ち出されたのが,「プラットフォームの定義を変える」という方向性だ。
これまではプラットフォームというと,特定のゲーム機そのもののことを指していたわけだが,今後はニンテンドーネットワークID自体をプラットフォームの中核と見なすことで,デバイス依存をなくすという。そしてそのアカウント管理についてはスマートフォンなどを使ったものに移行するという方向のようだ。
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Wii Uのような据え置き機,ニンテンドー3DSのような携帯機などで今後新機種が発表されたとしても,ニンテンドーネットワークIDをベースにユーザーコミュニティを引き継げるようにしていくということらしい。今後,iPhoneやAndroidでコミュニティ管理アプリが公開されることになるのだろう。
スマートデバイスへのゲーム提供については,例えばマリオをスマホに移植するといった単純な展開は行わないと,岩田氏は強調している。現状の任天堂が得意とするゲームは,コントローラからの入力にシビアなアクションゲームが多く,はっきり言ってスマートデバイスとの相性はよくない。そのあたりは十分に認識しているようで,開発チームにはスマートデバイスでのゲーム開発も禁止していないとしつつも,主軸はゲーム機に置く姿勢は変わらないようだ。
スマートデバイスの活用は,ゲーム機の機能を補完する方向で展開されるようで,まず,ゲーム機本体で行うより,PCやスマートデバイスで行ったほうが簡単なものについては,ゲーム機以外で展開していく“off device”を進めていくという。これまでゲーム専用機では,ゲーム機のブラウザでWeb閲覧ができたり,ゲーム機を使ったコミュニティサービスなどが提供されたりしていたわけだが,誰でもスマホを持っている世の中になったら,そちらに任せたほうが使い勝手が上がるという判断だろう。
コミュニティ機能をスマートデバイスで強化するといっても,いま一つ具体的な姿は見えてこないのだが,アカウント機能の強化策には,ソフトの購入本数に応じた割引や,友達間の口コミを活用するソーシャル的なアプローチも含まれるようだ。限定的な「すれちがい通信」だけでもコミュニケーションを活用した独自のエンターテイメントを築いてきた任天堂だけに,スマートデバイスでどのような展開を見せてくれるのか期待したいところである。
Wii Uはどうするのか
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- Wii U GamePadを活用したゲームの拡充
- Wii U GamePadのNFC(Near Field Communication)機能の活用
- Wii U GamePadの高速起動メニュー導入
- ニンテンドーDSのバーチャルコンソール
と,ほとんどがWii U GamePadをなんとかするという方向性であった。同機の最大の特徴をアピールすることが重要だということだろう。
Wii Uについては,なぜ売り上げが伸びないのかに対する分析が示されていないのだが,対応を見れば,Wii U GamePadの魅力が示せていないことにあると任天堂が認識しているのは間違いないだろう。Wii U GamePadだからこそできるキラータイトルが登場するかどうかが命運を分けることになりそうだ。
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また,前述のアカウント情報を活用した販売法については,Wii Uで実験的なプロジェクトが徐々に開始されていくという。
健康産業への進出
最後に,今後10年間の挑戦として,健康産業への参入が表明された。これまでWii FitやニンテンドーDSの歩数計などで健康管理に関するアプローチもないではなかったのだが,本格的な事業として取り組むことになったようだ。詳細については発表されていないが,これまでと同じように,ハードウェアとソフトウェアが一体となったサービスを提供するという。
特徴は「ノンウェアラブル」で,身に着ける必要のない機器を使った健康状態をモニタリングできるサービスが展開される模様だ。
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2014年内には詳細も発表され,2015年4月から事業展開が開始されるという。同社の経験を生かし,多分にゲーミフィケーション要素の盛り込まれたサービスになりそうなので,ゲーム関連ではない事業だが注目しておきたい。
平成26年3月期 第3四半期累計期間の連結業績 及び 通期の連結業績予想の説明
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