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印刷2022/04/19 12:00

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福岡ゲームコンテスト「GFF AWARD 2022」レポート。ゲスト審査員のさいとうなおき氏が,自身の転機とキャラを描くことについて語る一幕も

 福岡ゲーム産業振興機構(GFF,九州大学,福岡市)は2022年3月26日,第15回福岡ゲームコンテスト「GFF AWARD 2022」をオンライン配信した。本イベントは,ゲームソフト,グラフィック・アート,企画の3部門で行われるアマチュア向けコンテストで,15回目の開催となる今回は,全部門合計で過去最多の1883作品(ゲームソフト部門315作品,ゲームグラフィック・アート部門1122作品,ゲーム企画部門446作品)の応募があったという。

 イベント当日は,優秀作品の表彰と,ゲームソフト部門4作品の公開プレゼンテーション&最終審査,そしてゲスト審査員を務めたイラストレーターのさいとうなおき氏によるスペシャルトークショーが行われた。

画像集#002のサムネイル/福岡ゲームコンテスト「GFF AWARD 2022」レポート。ゲスト審査員のさいとうなおき氏が,自身の転機とキャラを描くことについて語る一幕も

 コンテストの最終審査を行ったのは,以下の4名にさいとう氏を加えた計5名だ。

日野晃博氏 / 株式会社レベルファイブ 代表取締役社長/CEO
松山 洋氏 / 株式会社サイバーコネクトツー 代表取締役
山倉千賀子氏 / 株式会社ガンバリオン 代表取締役社長
松隈浩之氏 / 九州大学 大学院 芸術工学研究院 准教授

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福岡ゲームコンテスト「GFF AWARD 2022」公式サイト



ゲーム企画部門 優秀賞:「NEVER HANDS」


画像集#005のサムネイル/福岡ゲームコンテスト「GFF AWARD 2022」レポート。ゲスト審査員のさいとうなおき氏が,自身の転機とキャラを描くことについて語る一幕も

 ゲーム企画部門の優秀賞に選出されたのは,京都コンピュータ学院 京都駅前校 ゲーム学科 企画設計コース 3回生 豊田龍斗さんの作品「NEVER HANDS」。豊田さんによると,本企画は「つながる」をテーマに,「手をつなぎたいという純粋な欲求」をベースに考案されたという。

 コンセプトは「手をつなぐのが待ち遠しくなるRPG」で,ストーリーは恋人を亡くした主人公が,霊体の彼女とともに彼女自身を生き返らせるための旅に出たというもの。主人公と霊体の彼女が一緒にいられるのはバトル中だけ,そして2人が手をつなぐことで強力な一撃を繰り出せるという形で,遠距離恋愛における「手をつなぐ喜び」と「別れの切なさ」を表現している。

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 バトルのポイントとなるのは「手をつなぐか,つながないか」のジレンマとのこと。システム的にはシンプルなコマンドバトルだが,「存在力」と「バトルゲージ」が特徴となる。前者は霊体の彼女を存在させる力で,バトル中は常に減少し続ける。そして後者のバトルゲージは,存在力を消費しすぎないようにする目安を示すという。

画像集#007のサムネイル/福岡ゲームコンテスト「GFF AWARD 2022」レポート。ゲスト審査員のさいとうなおき氏が,自身の転機とキャラを描くことについて語る一幕も

 バトルは主人公と霊体の彼女が手を離してお互いにバフをかけ合いパワーアップする「サポートパート」と,上記の手をつないで強力な一撃を放つ「攻撃パート」があり,2つのパートを交互に行うことで有利になる。

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 山倉氏は,本企画について「ゲームらしいリスクとリターンが織り込まれている企画で,ゲームとして成立させやすい」とコメント。キーとなる「手をつなぐ,離れる」という着想のヒントを問われた豊田さんは,「テーマである『つながる』を面白さにしようと考えたとき,手をつないで楽しそうにしているカップルを連想した」と回答し,「さらに,より手をつなぎたくなる瞬間はいつかと考えて,遠距離恋愛のアイデアを思いついた」と話していた。

画像集#009のサムネイル/福岡ゲームコンテスト「GFF AWARD 2022」レポート。ゲスト審査員のさいとうなおき氏が,自身の転機とキャラを描くことについて語る一幕も

 豊田さんによると,本企画で一番苦労したのは「いかにしてジレンマを生み出すか」という部分だったそうで,多くのコマンドバトルRPGを研究・分析し,自分なりの形に仕上げたとのことだ。


ゲームグラフィック・アート部門 優秀賞:「DYSTOPIA」


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 ゲームグラフィック・アート部門の優秀賞に選出されたのは,HAL東京 ゲームデザイン学科 2年 洪 暁ブンさんの作品「DYSTOPIA」。洪さんはテーマである「革命」について,香港出身の立場から思い浮かぶキーワードを組み合わせ,本作品の世界観を作っていったという。その世界観は,あたかも理想社会を確立しているかのように見えるが,その裏では洗脳などを駆使して恐怖政治が行われているディストピアと,その実態を知った主人公達が革命を起こして自由を取り戻そうとするというもの。

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 舞台が未来都市ということで,キャラクターデザインにあたってはサイバーパンクを意識。コスチュームのベースとなるのはジャージで,配色は警告色の「黒×黄」とし,背景の暗い青と補色の関係にすることで目立たせたという。

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 武器は敵を感電させるマチェテ(山刀)や遠距離攻撃が可能なクロスボウなど,ステルス行動に必要な音を立てないものをチョイスしたそうだ。

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 ロゴはサイバーパンクを意識していくつかデザインした中から,もっとも視認性の優れたものが選ばれた。

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 制作過程も披露された。背景にボスらしき人物と,彼に操られている人々を配置することで,ストーリー性を表現していることにも言及がなされた。

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 構図は三分割法を用いて視線誘導を行ったとのこと。

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 さいとう氏は「パッと見た瞬間に目を惹く密度感と,印象的な画面作りが巧み」「手前の主人公側は,赤と黄色など暖色を印象的に使ってキャッチーに仕上げつつ,背景の敵側には意識的に寒色を使っているのが見事にマッチしている」とコメントし,ゲームのパッケージイラストに必要とされる要素がそろっていると称賛。また,さいとう氏自身が20代前半の頃は,そういったことを意識していなかったと明かすと,洪さんは専門学校で学んだ色彩理論や,さいとう氏の配信している動画などを参考にしていると答えていた。


ゲームソフト部門 優秀賞:「Lost Forest」


 ゲームソフト部門は4作品が優秀賞に選出され,イベント当日のプレゼンを経て最終審査が行われ大賞が決まった。

画像集#017のサムネイル/福岡ゲームコンテスト「GFF AWARD 2022」レポート。ゲスト審査員のさいとうなおき氏が,自身の転機とキャラを描くことについて語る一幕も

 プレゼンのトップを飾ったのは,九州大学 聶 健威(ジョウ ケンイ)さんの作品「Lost Forest」である。この作品は高難度の2D横スクロールアクションゲームで,プレイヤーが主人公の少女を操作し,果物を集めつつ森から脱出するという内容だ。

 少女は移動などのアクションに加え,しゃがみや壁ジャンプができるほか,マップ内に配置された魔法陣やアイテムのキノコやツタ,コケなどのギミックを活用しながら進んでいく。敵も配置されているが,アイテムを寄生させると一定時間動きが止まるなど,少女が有利に活用できるようになる。そのほかに探索要素も用意されており,ヒントをもとに特殊なルートを通ると,より多くの報酬をもらえるようになっている。

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 この作品について,山倉氏は「森の深さがスクロールと美しいグラフィックスによって表現されている」とし,「スピード感があり,先に進むにつれどんどん難しくなっていくが,自分の思ったとおりの動きができたときの喜びがある」とコメント。一番自信がある部分を問われた聶さんは,滑らかなドット絵のアニメーションを挙げた。聶さんによると,大学で学んだ知識を駆使してオリジナルのツールを作り,3D映像をドット絵のアニメーションに落とし込んでいるそうで,初のゲーム開発かつ3か月という短期間で多くのモーションを作成することに成功したという。

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ゲームソフト部門優秀賞:「オシダスシューティング」


 ゲームソフト部門優秀賞2作目は,国際情報工科自動車大学校 チーム・オシダスの作品「オシダスシューティング」だ。この作品は,弾や爆弾を駆使しながらより多くの相手を場外へ“押し出す”対戦シューティングゲームで,最大の魅力は自分の狙いどおりに相手を大きく押し出したときの爽快感とのこと。プレイ人数は最大4名となる。

画像集#024のサムネイル/福岡ゲームコンテスト「GFF AWARD 2022」レポート。ゲスト審査員のさいとうなおき氏が,自身の転機とキャラを描くことについて語る一幕も
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 単純明快なルールだが,各プレイヤーはエネルギーを消費してシールドを展開できるので,易々と相手を場外に押し出せるわけではない。そこで連射可能な弾を使って,相手のシールドが薄くなったところで爆弾を使い一気に押し出すなどのテクニックが必要となる。
 また,エネルギーはシールド以外にも弾の発射や自機を浮かせるホバーで消費する。そのため,エネルギーをどう使うかが戦術上極めて重要となる。なおホバーは,押し出された時に使うと場内に復帰できることもある。ただしエネルギーの消費量が大きいそうだ。

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 場内には,定期的にアイテムが配置される。アイテムは,エネルギーを回復するバッテリーと爆弾の2種類となる。弾を反射するリフレクターやプレイヤーを跳ね返すバンパー,爆弾で壊せるブロックといったステージギミックもあり,これらを利用していかに有利に駆け引きを進めるかが勝利のカギとなる。なお,キャラクターは汎用性の高い「LASER」と,攻撃力の高い「TANK」の2種類が用意されている。

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 さいとう氏は「『オシダス』というタイトルにゲームのルールが集約されており,『押し出せばいいんだ!』と分かり,すごく遊びやすかった」「基本的な操作も直感的で,普段ゲームを遊ばない人も簡単にプレイできる。審査だということを忘れるくらい,楽しく遊べた」とコメント。

 また,開発上で苦労した点を問われたオシダス代表の渡辺拓己さんは「4人対戦ということもあり,さまざまな要素が勝敗に関係してくるのでバランス調整が大変だった」と回答した。さらに,コロナ禍の影響により開発はリモート環境下で行われたが,テストプレイだけは教員に頼み込んで学校で行ったエピソードも紹介された。


ゲームソフト部門優秀賞:「SHADOW ROAD」


 ゲームソフト部門優秀賞の3作目は,総合学園ヒューマンアカデミー横浜校 チーム・無機ELの作品「SHADOW ROAD」。この作品は「光を避ける」をコンセプトとした横スクロールアクションゲームで,プレイヤーの操作する主人公が,さまざまなギミックにより発生する光を避けたり,動く床の上を進んだりしながらステージを進んでいく。光が照らす範囲やタイミングはギミックによって異なるため,それらを踏まえて攻略する必要がある。

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 ビジュアル面では,光の存在を強調するため,暗闇の表現に注力したとのこと。また,2Dと3Dを組み合わせたグラフィックスにより,奥行きを感じさせる画面構成を実現したという。さらに暗闇からもたらされる不安感を表現するべく,試行錯誤を重ねたそうだ。

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ギミックの一部も紹介された
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全3ステージで構成。それぞれ特徴のあるレベルデザインが施されており,どのステージから遊んでもいい仕様となっている
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 この作品について日野氏は,「独特の世界観とゲーム性で,不思議な世界に迷い込んだ感覚を得られる」「ストーリー仕立てにして,主人公への感情移入を深めながら進めるような形になっていたら,もっと楽しめるのでは」とコメント。また,本作はいわゆる“死にゲー”のように,主人公が簡単に死んでしまうそうで,その理由を問われた無機EL代表の遠藤悠馬さんは,「ホラーよりの世界観なので,プレイヤーに恐怖を与える意味で“死”を強調した」「『リトルナイトメア』や『Hollow Knight』をリスペクトして,雰囲気を織り込んだ」と回答した。さらに「光に当たると死ぬ」という設定にした理由については,「当初は影をコンセプトにしていたが,インパクトに欠けるので光に変更し,『光が当たると,影の存在である主人公が死んでしまう』という設定にした」と話していた。

 なお,最初からステージを選べる仕様にしたのは,コンテストの審査でさまざまな要素をアピールするためで,実際に製品としてリリースするのであればストーリー仕立てにしたり,段階的に難度やギミックの複雑さを上げたりして,物語が進行していると実感できるような仕様にするという。


ゲームソフト部門優秀賞:「Debri Collect」


 ゲームソフト部門優秀賞の4作目は,日本電子専門学校 Team UltraRareの「Debri Collect」だ。この作品は,中央の軌道を回っている地球を守りつつ,スペースデブリを破壊して回収する全方位シューティングゲームで,コンセプトは「見て気持ちいい! プレイして気持ちいい!」とのこと。

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 「見て気持ちいい!」については,序盤はシンプルな画面だが,ゲームが進行すると背景がカラフルになっていくことで表現している。

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 「プレイして気持ちいい!」は,まずホーミング機能を搭載したこと。方向がある程度合っていれば発射した弾がデブリに当たるようして,狙ったとおりに当たる気持ちよさを追求したという。

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 さらに,最初は出現するデブリを順番に壊していけばいいが,ゲームが進行して難度が上がると同時に複数のデブリが登場するなど,壊す優先順位を考えなければならなくなる。瞬時に考えた優先順位に沿って,うまくピンチを切り抜けることも「プレイして気持ちいい!」につながっているそうだ。

画像集#041のサムネイル/福岡ゲームコンテスト「GFF AWARD 2022」レポート。ゲスト審査員のさいとうなおき氏が,自身の転機とキャラを描くことについて語る一幕も

 この作品について松山氏は,「パッと見た瞬間のカジュアルなお洒落さと,デブリの破壊・回収がミスマッチなのに,ゲーム自体がまとまっていて現代的。フォントや視覚効果といったゲームプレイと直接関係ない部分にさまざまな仕掛けが施されていて,全体としてずっと楽しさが続くような好感の持てるゲームになっている」とコメント。さらに「想像の付かない新しいマッチングのデザインにすることによって人の目を惹くのは,ゲームに限らず商品を作る上で重要」「ホーミングのようなちょっとプレイヤーを助ける機能の追加は,ゲームクリエイターとして大切な配慮」とも話していた。

 またアートワークをポップな方向に持っていった理由を問われたTeam UltraRare代表の石田 舞さんは,「気持ちよさをポジティブに捉えられるよう,意識的にポップなデザインにした」と回答した。


さいとうなおき氏スペシャルトークショー「神絵師誕生のきっかけに迫る」


 ゲームソフト部門大賞の発表前には,さいとう氏のスペシャルトークショー「神絵師誕生のきっかけに迫る」が行われた。モデレーターを務めたのは,松山氏だ。

 さいとう氏が絵を描く仕事を志したのは,小学生の頃だったとのこと。ただ,高校生になっても具体的な職業のイメージはなかったそうで,当時は漫画を描く才能はないと感じていたという。

 もっとも影響を受けたのは,高校時代にハマっていた「ストリートファイターII」で,以降もカプコンの格闘ゲームが自身の「格好いい」につながっていると,さいとう氏は話す。漫画では「ドラゴンボール」が好きだそうで,「筋肉を描きたかったんでしょうね」と当時を振り返っていた。

 高校を卒業したさいとう氏は,多摩美術大学に入学しグラフィックデザイン科を専攻。この頃には,ゲームやイラストの仕事に就きたいと考えていたという。ただ,具体的にどのゲーム会社に入るといったイメージはなく,入れるところに入ってイラストを描くくらいに考えていたそうだ。

 その結果,さいとう氏は大学4年のとき,アーティストとしてコナミデジタルエンタテインメントから内定をもらう。イラストが描けるということで当初は「遊戯王」チームに配属される予定だったのだが,入社前に「サッカーに興味ある?」と問われ,「ここで断ったら内定を取り消されるかも」と思ったさいとう氏は,つい「なんでもできます」と答えてしまったという。そんな経緯で,さいとう氏は「ウイニングイレブン」チームに配属されることとなった。最初の仕事はサッカー選手の顔モデル作成だったとのことで,「似顔絵のスキルが必要な作業だったので,チーム内ではできるほうだった」と話していた。

 しかしさいとう氏は,やはり絵が描きたいと考え,1年半ほどでコナミデジタルエンタテインメントを辞め,フリーランスに転向。当初は,学生時代に描いていたTCG「デュエル・マスターズ」のカードイラストの仕事を再開しつつ,細々とイラストを描いて生計を立てていたという。

 やがて,さいとう氏は知り合いのイラストレーターから,漫画「刃牙」シリーズの着彩の仕事を紹介されることに。「刃牙」シリーズの著者・板垣恵介氏が,さいとう氏の着彩を気に入って「ぜひ単行本のカバーなどの着彩を任せたい」と推薦したことから,最初は半信半疑だった週刊少年チャンピオン編集部からも信頼を得たそうだ。

 以降,さいとう氏は8年ほど「刃牙」シリーズの着彩を手がけることとなる。あるとき,さいとう氏が「刃牙」シリーズのキャラクターを使った4コマ漫画を描いてみたところ,板垣氏は単行本の開いたページへの掲載を許可してくれたそうだ。それがきっかけとなって,さいとう氏は「刃牙」シリーズのスピンオフ「バキどもえ」をWebで連載する運びとなったのだ。

さいとう氏が描いた漫画「バキどもえ」も紹介された
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 大の漫画好きで知られる松山氏は「バキどもえ」のさいとう氏の印象が強かったこともあり,「ポケモンカードゲーム」のような可愛い絵柄でさいとう氏が有名になったとき,同一人物だとは思わなかったとのこと。その絵柄の変化について,さいとう氏は当時「このまま続けても,第一線の目立つ場所にはいけない」と考え,ほかの活躍している人の絵を研究しながら,今の絵柄にたどり着いたというエピソードを披露。「それまで積み上げた全部を捨てちゃってもいいかなと思った」と,当時を振り返った。

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 そうやって“新しいさいとうなおき”を目指すにあたり,さいとう氏は「ゲームのメインキャラクターを描いてみたいという夢がある一方,仮にチャレンジして失敗したら怖いという思いがあった」とのこと。しかし,「この機会にやらないと,一生やらないだろう」と本腰を入れてチャレンジしたそうだ。

 さいとう氏の動画の中から,松山氏がオススメする3本も紹介された。「【完全版】イラスト最速上達法」は,さいとう氏によると,絵柄を変えるにあたって実際にやったことをそのまま紹介しているとのこと。
 「【要注意】こんな人は絵が下手になります!!」は,松山氏いわく絵を描く人は必見だという。そして「見栄えアップ!色塗り講座!!」は,影やハイライトなどを重ねていく順番が一切無駄なく紹介されているそうだ。松山氏は「暇さえあれば,これ以外のさいとうさんの動画も見ておくと,絶対絵が上手になる」と話していた。

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 トークの後半は,職業としてのイラストレーターがテーマとなった。まず「イラストレーターに求められるスキル」について,さいとう氏は「格好よく描いて」と発注された場合に,自身と依頼者の考える「格好いい」が往々にして一致しないことを示し,「発注者の考える『格好いい』を理解する能力」を挙げた。すなわち,発注者が求めているのであればそちらに寄せるのが正解というわけである。

 続いての話題は,「キャラクターを描くうえで大切にしていること」。さいとう氏は,YouTuberとしてデビューする2019年頃まで約7年間,キャラクターデザインの仕事ばかりしていたとのこと。週に2体くらいのペースで作業していたそうだが,それはスマートフォンゲームのキャラクターデザインだったからとのこと。より深い設定を必要とする漫画やアニメのキャラクターではそうはいかないという。

 さいとう氏がキャラクターデザインで重視しているのは「顔」だそうで,「引きの画面で見たときに見分けが付くようシルエットが大事だとも言われるが,それを踏まえても顔が悪ければ人気は出ない。何を置いても顔のよさ」と持論を披露した。
 また「新しくしすぎないこと」も重要とのことで,「クリエイターとしては『古い=ダサい』というイメージがあるけれども,古いものは皆が分かるのでキャッチーになる。新しさだけだと理解できない人が増えるので,あえて古い部分を残しておく」と話していた。

 「ゲーム業界で求められる魅力的なキャラ設定の作り方」については,松山氏が「今まさに,さいとうさんがおっしゃられたこと」とし,「8割の共感と,2割の意外性」を挙げた。それは,ゲームジャンルや世界観の設定についても当てはまるとのこと。また「グラップラー刃牙」のキャッチコピー「予想は裏切り,期待は裏切らない」も紹介された。

 加えて,身長や左右の瞳の色が違うといった特徴をキャラクターに持たせる場合,「なるほど」と思わせる理由も必要だと松山氏。さいとう氏が,スマホゲームでは無駄な要素をどんどん増やすことが美徳とされがちであることに言及すると,松山氏は漫画やアニメの制作を例に挙げ,「スマホゲームはキャラクター1体につき1枚の絵でビジネスができるが,漫画やアニメは同じキャラクターを何回も描くことになる。作画コストを考えると,線は1本でも減らしたいという事情がある」と説明した。

 さらに「ゲームも今はモデルを一度作ってしまえばいかようにもできるので,足し算がしやすい。ただ,キャラクターやIPを長く愛してもらおうと思うなら,子どもが真似して描いたときにきちんと判別できるデザインが最適。王道で普遍的なものが求められる」と続けた。

 「ゲーム業界の変化と未来について」という話題では,最初にさいとう氏が最近は動画の制作・配信に注力しており,ゲームの仕事はほぼ「ポケモンカードゲーム」だけになってきていることを明かした。ただ今後はゲームの仕事を受けない,あるいはイラストを描かないといったことはないという。
 松山氏はこの10年でゲームエンジン周辺が進化し,作ろうと思えば誰でもゲームを作れる環境が整ったことを説明し,若い世代の才能と10年20年とゲームを作ってきた人達のノウハウが組み合わさることで,新しい何かが生まれることに期待していると語った。

 トークの終盤には,さいとう氏が「革命」をテーマにしたライブドローイングを披露した。さいとう氏はゲームにおける革命を「視覚的なもの」と考えているそうで,「眼」を描くことにしたという。

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今回のライブドローイングには,さいとう氏の「何かすごいものが見たい」という思いが込められているとのこと
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 最後にさいとう氏が,未来のクリエイターに向けて「今は変化の時代。10年先を見据えずに,目の前の今起きていることにどんどん反応して,作品を生み出していくことが重要になっている」とし,「AIなどの便利なツールの登場により,もの作りが簡単にできるようになったことから,自分の根本的な考え方が魅力的かどうかが問われる機会が増えている。どんなものを作るか,自分から労働を取り除いたときにどんな価値を生み出せるか。自分をむき出しにして,全力で駆け抜けていってほしいですし,僕自身そうでありたいです」と呼びかけて,トークをまとめた。


ゲームソフト部門表彰式


 ゲームソフト部門の表彰式では,大賞の発表に先駆けて協賛のツクモから贈られる「TSUKUMO賞」が発表された。今回のTSUKUMO賞に選出されたのは,日本電子専門学校 Team UltraRareの「Debri Collect」である。

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 そして大賞の座に輝いたのは,国際情報工科自動車大学校 チーム・オシダスの「オシダスシューティング」だ。

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 イベントの最後には,日野氏が「コロナ禍の中,たくさんの人達が応募してくださったことを大変うれしく思っています。1か所に集まることができず,打ち合わせもリモートでやらなければならないという状況の中,作品をきちんと作って,きちんと賞を授与できるクオリティに達したということがすばらしい。エンターテイメントは人々を元気づける要素を持っているので,こういうときだからこそ真面目に取り組んでいきたい」と語った。

 大賞に選出した「オシダスシューティング」については,さいとう氏も言及していたとおり,審査中なのに思わず熱中してしまい,普通に遊んでしまったというエピソードも明かされた。日野氏は「それはもう,審査員の負け」だとし,今後も新しい才能を発見するべく,GFF AWARDを続けていくとまとめた。

第16回福岡ゲームコンテスト「GFF AWARD 2023」の開催予定も公開された
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福岡ゲームコンテスト「GFF AWARD 2022」公式サイト

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