そうした横のつながりを,実際の開発にどう生かせばいいのか。そのヒントになりそうなセッションが,gamescom 2026の開幕前日に開催された開発者向けカンファレンス「gamescom dev」で行われた。
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セッションのタイトルは「Don’t Solve Everything Alone: The Power of Indie Studio Networks」。登壇したのは,Playing Mantis Studioの共同創業者兼テクニカルディレクターであるYannik Jansen氏と,Green Parrot Gamesの共同創業者兼テクニカルディレクターであるTom Bockhorn氏だ。
2人は両スタジオの協力事例をもとに,何を共有でき,何は無理に共有しないほうがいいのかを語った。その模様をレポートしよう。
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すべてを共有するのではなく,必要なところから協力する
Playing Mantis Studioは,デスクトップ上にカプセルトイショップを作る放置ゲーム「Tiny Capsule Collector」を,Green Parrot Gamesはデッキ構築型ローグライク「Lucky Punk」を開発している。作品のジャンルや対象とするプレイヤーは異なるが,両スタジオは技術や開発経験を共有しながら,それぞれのプロジェクトを進めているという。
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両スタジオは,マーケティングや管理業務などを支援するFourth Moon Gamesを共通のパートナーとしている。Fourth Moon Gamesはそれぞれのスタジオに出資しているが,両スタジオ同士に直接の資本関係があるわけではなく,Fourth Moon Gamesを介してつながっている形だ。
Jansen氏とBockhorn氏は,現在のスタジオを設立する以前から,インディーゲーム開発者のネットワークを通じて面識があった。イベントなどで交流するなかで互いを知っていたため,最初から一定の信頼をもって協力を始められたという。
さらに2人は,ともにスタジオの技術部門を担当し,それぞれのスタジオでゲームエンジン上の実装を担っている者同士。担当する仕事や抱えやすい悩みが重なっていることも,その後の協力関係を作る土台になったそうだ。
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講演ではまず,スタジオがほかの開発者と協力する方法として,従来からある4つの形が整理された。
その1つがアウトソーシングだ。アートや音楽,QAなど,開発の一部を別のスタジオやフリーランスへ依頼する分かりやすい形だが,当然ながら費用がかかる。受託する側で考えれば,安価すぎれば十分な報酬を得られていない可能性もある。
共同開発やジョイントベンチャーでは,プロジェクトの立ち上げ段階から複数の会社が深く関わり,新作や既存IPを使った作品を一緒に作る。それは双方に大きな負担がかかり,管理も難しい。仕組みをきちんと整えなければ,プロジェクトだけでなく参加したスタジオにも影響が及びかねないため,主に規模の大きなスタジオで行われる方法だと説明された。
経験豊富なコーチやコンサルタントから知識を得る方法もある。しかしそれも,自分たちの調整負担は小さいものの費用は高く,ゲームそのものを一緒に開発してもらうというより,長期的に役立つ知識を得るための取り組みとなる。
一方,ほかのスタジオや開発者コミュニティとの知識共有なら,大きな予算をかけずに始められる。ただし,ネットワーキングイベントやDiscord,パネルなどに参加し,自分たちの考えや抱えている問題を外へ向けて話す必要がある。
スライドでは,必要な労力が5段階で示されていた。コーチ/コンサルタントが1,アウトソーシングと知識共有が2,共同開発が5という整理だ。ただし,これは金額ではなく,関与や調整にかかる負担を表したもの。コンサルタントは労力1でも,金銭的には高額になりやすい。
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そこで両氏は,正式な共同開発だけでなく,インディースタジオ同士でどのような協力ができるのかを,負担の小さいものから大きいものへ整理した。
最初にあるのは,インディー開発者のミートアップやDiscordといったコミュニティへの参加だ。そこから,SNSで互いの作品を紹介する,Steam上で相互に告知する,Steamバンドルを組むといったクロスプロモーションへ進む。
さらに,技術相談やコードレビュー,マーケティングで得た知見,パブリッシャーやプラットフォームとの経験,Steam Nextフェスのデータといった知識を共有する方法がある。
QAやプレイテスト,業界内の連絡先,ツール,テスト端末,イベント機材など,手元にあるリソースを持ち寄ることも可能だ。
最も負担が大きいものとして挙げられたのが,合同ライブ配信や共同ニュースレター,コミュニティの共有,イベントブースの共同出展,連携したキャンペーンといった共同マーケティングだった。協力の規模が大きくなるほど,準備や運用に必要な時間も増えていく。
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では,このなかで両スタジオが実際に取り組み,うまくいったものは何だったのか。
挙げられたのは,SNSやSteamでの相互紹介,専門知識の共有,コードレビュー,パブリッシャーやプラットフォームとの経験,Steam Nextフェスのデータ,開発ツール,地域の業界関係者とのつながりだった。
たとえば,Steamページへの訪問数がどの程度ウィッシュリスト登録につながっているかを比較し,それぞれのページで改善できる部分を一緒に検討した。また,Steam Nextフェスに参加した際のデータや,パブリッシャー,プラットフォームとのやり取りについても情報を交換している。
技術面では,互いにコードを確認したり,開発に使うツールやプラグインについて相談したりしている。同じゲームエンジンを使っていることから,UnityからSteamまでの開発パイプラインも,それぞれが一部分ずつ担当して構築した。一人で最初から最後まで作るのではなく,得意な部分を持ち寄ったわけだ。
もちろん,検討した協力がすべて実現したわけではない。スライドでは「うまくいかなかったもの」としてまとめられていたが,試した結果失敗したものだけでなく,負担や作品同士の相性を考えて実施しなかったものも含まれている。
合同ライブ配信は,成果につなげるには週に一度,場合によっては週に複数回続ける必要があり,ゲームを開発しながら実施するのは難しいと判断した。両スタジオともニュースレターを運用していないため,共同ニュースレターも見送っている。
gamescomでひとつのブースを共有する案もあった。しかし,問題になったのは金銭よりも準備や運営にかかる時間だったという。イベント機材の共有も,実施しなかった項目に挙げられている。
コミュニティやインフルエンサーとの関係も,必ずしも共有しやすいとは限らない。「Lucky Punk」と「Tiny Capsule Collector」では,ゲームのテーマも遊び方も異なる。それぞれの作品を扱うインフルエンサーや興味を持つプレイヤー層が重ならなければ,無理にまとめても大きな効果は期待できない。
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こうした経験から得たポイントは,4つにまとめられた。
1つめは「小さく始める」こと。開発者は皆忙しい。まずは調整の手間と作業負担の少ない取り組みから始めることが,協力を続けるうえで重要になる。
2つめは「共通点を見つける」ことだ。一方だけが利益を得る関係では,任意の協力は続かない。互いの得意な部分と不得意な部分を見ながら,双方に意味のある取り組みを探す必要がある。
3つめは「担当を明確にする」こと。「一緒に何かをしよう」と話すだけでは,日々の開発に追われるうちに立ち消えになってしまう。誰が,何を,どのように進めるのかを決め,予定を立てて動くことが大切だという。
そして最後は「必要性に集中する」ことだ。協力したという実績を作るために取り組むのではなく,互いが実際に抱えている問題を解決するために行う。協力できるからといって,必ず協力しなければならないわけではない。
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協力相手を探す方法としては,地域の開発者コミュニティやゲームジャム,カンファレンスなどが挙げられた。
スライドにはDiscordとRedditも記載されていたが,Jansen氏は,オンラインで相手を探すなら,Redditよりも開発者や地域のゲーム業界コミュニティが運営するDiscordのほうが,相手の活動を知り,関係を深めやすいと話した。地域の開発者向けDiscordだけでなく,助成プログラムの参加者向けDiscordが交流の場になることもあるという。
ただし,可能であれば実際に会って話したほうがいいとも強調した。知識や技術だけでなく,人として一緒に仕事ができそうかを知るうえで,対面でのやり取りは大きな意味を持つ。
協力が始まった後は,DiscordやSlack,Google Meetなどのオンライン会議,クラウドドライブ,Git,Notion,コード共有サービスのCodeshare,ゲーム開発向けプロジェクト管理ツールのCodecksなどが役立つ。
両スタジオでは,私的な会話にも使うDiscordと仕事上の連絡を分けるため,Slackの共有チャンネルを利用している。連絡の目的が分かりやすくなり,協力に関する話題を追いやすいからだ。また,共有ドライブに告知用の画像や資料を置いておけば,必要になるたびにファイルを送り直す手間も省ける。
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情報共有は,開発技術だけに限らない。資金調達や助成金の申請過程,実際に提出した資料なども,ほかのスタジオにとって有用な情報になる。
自分たちが困っていることを率直に話せば,それを解決できる相手から声をかけてもらえる可能性もある。ただ待つだけでなく,自分から働きかけることも必要だとした。
質疑応答では,こうした小規模な協力関係を,より大きなネットワークへ広げられるのかという質問が寄せられた。
Jansen氏は,Fourth Moon Gamesが今後さらに多くのスタジオへ出資すれば,共通のパートナーを介したネットワークも自然に広がっていくと答えた。一方で,スタジオ同士が独自に関係を築くこともできる。とくに1人または少人数で開発するチームなら,プログラマーがアーティストに協力を求めるなど,足りない技能を補い合う関係から始められる。
コードを共有する関係と,同じ開発チームに加わることの違いについても質問があった。
Bockhorn氏によると,会社やプロジェクトが異なっていても,コードレビューという形なら協力できる。実際に同氏がカードゲームのアビリティシステムを開発した際には,その構造が十分に柔軟かどうかをJansen氏に相談し,経験に基づく意見をもらったという。
法的な手続きや開発スケジュールの違いから,相手を正式なチームメンバーとして迎えることが難しくても,技術や経験を共有することはできる。その前提になるのは,互いを信頼することだ。
ゲームが同じストアやイベントに並ぶ以上,インディースタジオ同士にも競合する面はあるし,考え方や相性が合わない相手も当然いる。ただ,インディーゲームは1つの正解に向けて競い合うものではなく,それぞれの作り手が自分の表現を形にして並べる場だ。だから技術や知識の共有は,優劣を競うというより,隣で作品を作る相手から刺激を受け,自分の表現を磨くことにつながる。
以前から,インディースタジオとインディーバンドは似ていると感じている。同じ日のライブハウスに出演したバンドが,互いの演奏に刺激を受け,楽屋で機材や録音について話す。そこから対バンやレコーディングへの参加へと関係が深まり,一方のファンがもう一方にも興味を持つことで,そのつながりはさらに広がっていく。もちろん,誰とでも合うわけではない。それでも,ちょっとした会話が次の何かにつながることはある。
インディースタジオ同士の協力も,必ずしも大規模な共同開発や正式な契約から始める必要はない。ゲームジャムや開発者の集まりをきっかけに話すようになり,SNSで相手の作品を紹介する。困っていることを相談する。コードを見てもらう。作っているゲームのジャンルが違っても,考え方や問題の受け止め方が近い相手はいる。
「すべてを一緒にやれる相手」を探すのではなく,ある部分だけ持ち寄れる相手と,小さなやり取りから始めればいい。そこから,自分たちだけでは見つけられなかった解決策や,思いがけないアイデアが生まれるかもしれない。今回のセッションは,そうした小さなつながりが実際の開発を支える関係へ育っていくことを,両スタジオの実例を通してあらためて見せてくれた。
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