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SIEの子会社から新設スタジオへ。「アンチャーテッド」「ラスアス」のディレクターが独立して感じた,ゲーム開発の“シンプルだけど大事なこと”[GDC 2026]
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印刷2026/03/14 12:00

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SIEの子会社から新設スタジオへ。「アンチャーテッド」「ラスアス」のディレクターが独立して感じた,ゲーム開発の“シンプルだけど大事なこと”[GDC 2026]

 2025年の終わりに開催された「The Game Awards 2025」で,“鳥足のおばあちゃん”が主人公の少し風変わりなゲームのトレイラーが流れたのを覚えている人もいるだろう。

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 本日,世界的ゲームアワード「The Game Awards 2025」が開催された。今年は「ACE COMBAT 8: WINGS OF THEVE」や「ロックマン:デュアル オーバーライド」「GANG OF DRAGON」といった新作が発表。Game of the Yearに輝いたのは「Clair Obscur: Expedition 33」だ。本イベントの記事をまとめておこう。

[2025/12/12 15:08]

 そのタイトルは「Coven of the Chicken Foot」。ソニー・インタラクティブエンタテインメントの「Uncharted」シリーズ「The Last of Us」のメインクリエイターとして知られる,ゲームディレクターのBruce Straley氏が立ち上げた独立スタジオ,Wildflower Interactiveのデビュー作だ。

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 「The Game Awards 2025」にて,「Coven of The Chicken Foot」が発表された。「アンチャーテッド」シリーズや「The Last of Us」でディレクターを務めたBruce Straley氏のゲームスタジオ・Wildflower Interactiveのデビュー作で,親しみのあるアートスタイルにも注目だ。

[2025/12/12 11:07]

 アメリカ・サンフランシスコで開催された「GDC Festival of Gaming 2026」(以下,GDC 2026)では,フェスティバルホール(展示エリア)内の特別ステージで,Straley氏によるセッション「From a Naughty Dog to a Wildflower: The Fears, Failures, and Freedoms Found」が行われた。

 本セッションは,長年在籍した開発会社のNaughty Dogを離れ,独立スタジオを立ち上げた経験を振り返りながら,AAA開発と独立開発の違い,そしてその中で見えてきた失敗や恐怖,自由について語るものだった。

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AAA開発の成功の裏にあった「燃え尽き」


 まず押さえておきたいのは,Straley氏がNaughty Dogを離れることになった背景だ。
 彼はNaughty Dog在籍中,次の大型タイトルを連続してディレクションしている。

  • アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団(ゲームディレクター)
  • The Last of Us(Neil Druckmann氏と共同ディレクター)
  • アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝(共同ディレクター)

 いずれも,数百人規模のチームが数年をかけて制作するAAAタイトルであり,業界でも屈指の成功作として知られている。しかしその裏側には,極度のプレッシャーと疲労があった。

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 Straley氏は「アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝」完成後,いわゆるバーンアウト(燃え尽き症候群)に近い状態に陥ったという。海外メディアのインタビューなどでも語られている通り,彼はその後,長期休暇(サバティカル)を取るほど消耗していた。

 講演の中でも彼はこう語っている。

 「自分は長い間,この業界で走り続けてきた。そしてある時,ふと“もう次の課題がワクワクしない”と感じたんだ」

 成功の頂点にいたクリエイターが,なぜスタジオを離れたのか。その理由は,単純なキャリアの転換ではなく,長年の開発による疲労と,自分自身の創作の動機を見つめ直す時間を必要としたからだ。

 2017年に,Straley氏はNaughty Dogを退社した。しばらくはゲーム開発から距離を置き,別プロジェクトや個人的な活動に取り組んだが,やがて再びゲーム制作へと戻ることを決める。
 そうして設立されたのが,独立スタジオのWildflower Interactiveだ。

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Naughty Dogで学んだ「ゲーム中心」の文化


 大手スタジオと独立スタジオは何が違うか。それを説明するには,まず“大手スタジオ”のことを知ってからだ。
 Straley氏がNaughty Dogに入社した1999年当時,スタジオの規模はまだ小さく,14人ほどだったという。

 そこで彼が体験したのは,後の大成功を支える独特の開発文化だった。
 特徴的だったのは,次のような点だ。

・リーンな組織構造
 管理レイヤーが少なく,コミュニケーションは直接的。問題があればすぐに担当者同士で解決する。

・プロアクティブな文化
 ゲームをプレイして問題を見つけた場合,「誰かが直すだろう」とは考えない。見つけた人が責任を持って改善に関わる。

・常にゲーム内で作る
 仕様書や理論だけで議論するのではなく,まずゲーム内に実装し,プレイできる形で検証する。

・オーナーシップの強さ
 担当した要素は,自分の作品として責任を持つ。立場に関係なく,アイデアを提案できる環境があった。

 Straley氏自身も,ディレクターとして常にデスクに座るのではなく,スタジオのフロアを歩き回りながらチームと直接会話するスタイルを取っていたという。

 彼は講演で,こう語った。

 「ゲームを作るのはスプレッドシートじゃない。ゲームを作るのは,人なんだ」

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 開発の中心にあるのはツールでもスケジュールでもなく,人と人の関係性だという考え方だ。
 この“人と人の関係”は,氏が制作するゲームでも大事な要素になっている。「アンチャーテッド」のネイトと兄のサム,サリーにエレナ,「The Last of Us」のジョエルとエリー,そして「Coven of the Chicken Foot」の魔女のおばあさんと怪物といったように,さまざま形で“Relationship”は描かれ,それは物語上だけではなくゲームプレイにも深く関わる。

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「見せる」のではなく「プレイさせる」ゲーム


 Straley氏のディレクション思想の中心には,もうひとつ重要なテーマがある。
 それは,ストーリーを“操作させる”ことだ。

 「アンチャーテッド」シリーズの制作当時,多くのアクションゲームでは,派手なシーンはカットシーンとして見せる形が一般的だった。
 しかし彼は違う考えを持っていた。

 「爆発も,ヘリコプターも,崩れる橋も,プレイヤーに“見せる”だけじゃなく,体験させたい」

 この思想は「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」で大きく発展し,「The Last of Us」ではチームの合言葉として定着する。

 合言葉は,
 「それはプレイできるか?」

 ストーリーイベントを考えるたびに,それをプレイヤーの操作として体験できないかを考える。
 この思想が,Naughty Dog作品の特徴的なゲーム体験を形作っていった。

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独立スタジオで直面した現実


 しかし,Naughty Dogを離れてスタジオを立ち上げたとき,Straley氏はまったく別の現実に直面する。
 それは,ゲーム制作以外の仕事の膨大さだった。

 独立スタジオでは,ディレクションだけをしていればいいわけではない。採用,契約,資金調達,組織設計といった,会社運営そのものが仕事になる。

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 さらに,AAAスタジオとの大きな違いとして彼が挙げたのが,「信頼」と「証明」の差だ。
 Naughty DogではSIEとの長年の関係があり,スタジオの判断が基本的に信頼されていた。しかし独立スタジオではそうはいかない。資金提供者に対して,定期的に進捗を証明する必要がある。

 Wildflower Interactiveでは,3か月ごとに成果物を提出する契約だったという。

 だがその準備や振り返りに多くの時間が取られ,結果として実際にゲームを作る時間が大きく削られてしまった。
 さらに,小規模チームでは1人の離脱が致命的な影響を与える。知識や文脈が失われ,開発は簡単に停滞してしまう。
 AAAスタジオでは人員の厚みで吸収できる問題が,独立スタジオではそのまま危機になるのだ。

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それでも残ったシンプルな理念


 開発は決して順風満帆ではなかった。資金問題,契約交渉,チームの再編。講演のタイトルにある通り,そこには「恐怖」と「失敗」があった。
 その中で,Straley氏が最後に立ち返ったのは,非常にシンプルな理念だった。

 「Good people making good stuff」(良い人たちが,良いものを作る)

 業界を変えるとか,革命を起こすとか,そうした大きな言葉ではない。
 信頼できる仲間と,誇れる作品を作る。その環境を守ることこそが,彼にとってのゲーム開発の本質だった。

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 今回の講演を通して浮かび上がったのは,AAAと独立開発の違いだ。
 AAA開発では,大規模なチームと実績に基づく信頼のもと,作品の完成度を突き詰めることができる。
 一方で,独立開発ではより自由な発想が可能な反面,会社運営や資金面のリスクを直接背負うことになる。

 Straley氏は最後に,ゲーム開発の原動力についてこう語った。

 「ゲームの魔法は素晴らしい。でも,本当に大事なのは人なんだ」

 ゲームを作るのは,最終的には人間の集まりである。
 だからこそ,チームとして互いを支え合える環境が必要なのだ。

 AAAの第一線で活躍したクリエイターが,独立の現実に向き合いながら語った内容は,ゲーム開発の本質をあらためて考えさせるものだった。

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  • 関連タイトル:

    Coven of The Chicken Foot

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