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印刷2024/11/25 07:00

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発売30周年を迎えた「かまいたちの夜」のパッケージ&取扱説明書から,意欲的な試みや当時の雰囲気を振り返る。中村光一氏からのコメントも掲載

 本日(2024年11月25日),スーパーファミコン用サウンドノベル「かまいたちの夜」が1994年11月25日に発売されてから30周年を迎えた。

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 サウンドノベルとは,背景画像やサウンドが物語を盛り上げるテキストアドベンチャー形式のゲーム。「かまいたちの夜」は,このジャンルを切り拓いた「弟切草」(1992年3月7日発売)に続く作品で,吹雪によって孤立したペンションで起きる猟奇的殺人事件を題材としたミステリー作品となっている。

 本作はその完成度の高さから,サウンドノベルというジャンルを確立させるヒット作品となり,現在では同ジャンルの中だけでなく,テキスト主体のアドベンチャーゲーム全般においても歴史的名作として語られる存在となった。

 その後も多数の続編がリリースされ,2024年も,6月に舞台化作品「かまいたちの夜 〜THE LIVE〜」が上演され,9月には「かまいたちの夜×3」がPC / PS4 / Nintendo Switch向けにリリースされるなど,今なお新しいファンを増やし続けている。

 そんな「かまいたちの夜」を振り返る本稿では,パッケージや取扱説明書に注目した。パッケージアートは作品のコンセプトを表現するものであり,取扱説明書にはゲームシステムに込められたこだわりが記されているはずだ。
 実物の写真で当時の空気感を今一度味わいつつ,開発チームからプレイヤーへ向けられたメッセージを30年越しに紐解いてみよう。

 そして,本稿の最後には,本作のプロデューサーを務めた中村光一氏からのコメントを掲載しているので,ぜひ読んでほしい。


青と赤のコントラストが強烈なパッケージ


 青白く寒々しい実写の雪景色と,そこに重ねられる血文字のように真っ赤なタイトルロゴの強烈なコントラストが印象的なパッケージ。内容を知らない人にも「怖そうなゲーム」という第一印象を与える,秀逸なデザインだ。このデザインは,カートリッジや取扱説明書にも採用され,さらに「かまいたちの夜」関連媒体の多くでも使用されたことから,本作のアイコン的な存在となっている。

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取扱説明書の表紙と裏表紙を並べると,パッケージに写っているのが結構な大木だと分かる
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 パッケージの裏面には本作の特徴がまとめられている。要点は「サウンドノベル第2弾」「吹雪に閉ざされたペンションで起こる惨劇」「ミステリー作家・我孫子武丸によるシナリオ」という3項目だ。

 ここで目に止まったのが,隅の方に小さく書かれている「本ソフトは、使用漢字等で、中学生以上を対象とした内容となっています。」という注釈だ。余談だが,筆者が初めて本作をプレイしたとき,1ページ目のテキスト「ようやく覚えたボーゲンでなんとか麓のレストハウスまでたどり着き」……の「麓」(ふもと)がさっそく読めなかったことを思い出した。

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 殺人事件を扱う作品なので,現代なら「暴力」や「流血」の表現に対する注釈が必要になるところだが,1994年にはCEROレーティングも存在していないため,「使用漢字」に関する注意書きにとどまっている。今見るとちょっと新鮮だ。


開発チームの「自信に満ちた」挨拶


 続いて取扱説明書を見ていこう。冊子を広げると,冒頭に「ごあいさつ」というテキストが掲載されていて,早くも開発チームからのメッセージが強く打ち出されている。形式的な挨拶や注意事項ではなく,「かまいたちの夜」のコンセプトを端的に紹介するものだ。

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 「音の付いた小説を、テレビ画面を通して楽しむことができるソフトです」と,ゲームジャンルを平易な言葉で伝えて,「きっと皆様にご満足いただける仕上がりになったと自負しております」と誇らしげに続けている。
 ここまで自信を持ったタイトルであることを,マニュアルの1ページ目から断言しているゲームは珍しいのではないだろうか。この言葉どおりにすばらしい作品だったという実感も相まって,実にインパクトのある1ページ目となっている。


「かまいたちの夜」の魅力が凝縮されたページ


 次のページでは,「サウンドノベルとは」として,当時はまだ前例が「弟切草」のみだった新しいゲームジャンルをあらためて紹介している。

 「リアルで高品位な、背景グラフィック」「思わずドキリ、迫力のステレオサウンド」「千変万化、魅力のマルチシナリオ」という3つのポイントが挙げられているが。時代性を感じるのは,グラフィックスに関するトピックを最初に挙げているところだ。

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 当時を知らない人であれば,テキスト主体のゲームである「かまいたちの夜」がグラフィックスをアピールするのは,少々的外れに感じるかもしれない。だが,当時のゲームはジャンルにあまり関係なく,まずグラフィックスが注目されるような風潮があった。当時はドットグラフィックスが主流だったが,それでも各メーカーがこぞって画面の美しさをアピールしていた。
 もちろん,「かまいたちの夜」は根拠もなく「リアルで高品位」を謳っていたわけではなく,実写取り込みという,当時としては珍しいチャレンジが説明されている。

 この見開きでは,「音声はぜひステレオサウンドで」というコラムも目を惹く。この頃のスーパーファミコン用ソフトにはたいてい「ステレオ / モノラル」のオプション項目があったので,ステレオ対応自体は特に珍しくもないのだが,そのメリットを丁寧に説明したうえで,テレビが非対応の場合にヘッドフォンやラジカセの使用を推奨していることは興味深い。それだけ,「かまいたちの夜」がサウンドにこだわり抜いた作品であるということだろう。

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 続く「『かまいたちの夜』の楽しみ方」のページでは,作中での殺人事件発生までの大まかなシナリオと,プレイヤーに与えられた目的が紹介されている。これからどんな事件が起きるのか,というネタバレを含む内容ではあるが,本作では事件発生までそこそこ時間がかかるので,プレイヤーを不安にさせず,最低限の心構えを促す意味では大事な説明といえる。

 注目は,「『かまいたちの夜』へようこそ」と題された,原作者の我孫子武丸氏自身が本作の魅力を紹介するコメントだ。ここに記載されているプロフィールを読めば分かる通り,当時の我孫子氏はすでに人気ミステリー作家ではあったのだが,当時スーパーファミコンで遊んでいた層の多くには「『かまいたちの夜』を作った人」として強く刻まれたはずだ。

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 我孫子氏は当初シナリオライターとして開発に参加したものの,最終的にはゲームシステムの根幹にも関わるアイデアを数多く提案した,本作のキーパーソンと呼べる存在だ。氏の功績については,2024年4月に掲載したインタビューでも詳しく振り返ってもらっているので,興味がある人は読んでほしい。

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 スーパーファミコン用ソフト「かまいたちの夜」の発売30周年を機に,その開発を振り返ってもらうインタビューを2回にわたってお届けする。前編では,ディレクターを務めた麻野一哉氏と,シナリオを手がけた我孫子武丸氏に,ゲームシステムとシナリオについて聞いた。

[2024/04/26 08:00]
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[2024/04/27 10:00]


操作方法の紹介ページに超重要情報が


 ここからはゲームの具体的な操作方法の説明に移っていく。「カセットを、スーパーファミコン本体にしっかりと差し込み」から始まる説明は実に丁寧で,コントローラを初めて触るようなプレイヤーにも配慮した表現になっている。

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 チュンソフト(当時)の社長で,本作のプロデューサーを務めた中村光一氏は,サウンドノベルについて,いくつかのインタビューで,「文字を読んでボタンを押すだけで先に進み、反射神経がいらず、どんな人でも遊べるゲームを作りたかった」と語っている。「かまいたちの夜」の取扱説明書における徹底した丁寧さは,その思いが反映されたものにも感じられる。

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 コントローラの操作方法を記した「ゲームのすすめ方」のページで特に見逃せないのが,「いったんエンディングを迎えた場合」の項目だ。その最後に,「あなたが迎えたエンディングでは、スタッフロールが流れましたか? もし流れていなければ、まだまだ事件を解決したとはいえないのです」という一文がある。

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 「かまいたちの夜」はマルチエンディングが特徴的な作品だが,ゲーム画面でグッドエンド・バッドエンドの区別が明示されない作りとなっている。このため,スタッフロールの有無が判断基準になるという情報は,この取扱説明書の中でも特に重要なものだった。


犯人推理の必須アイテムだった「登場人物の横顔」と「シュプールの謎」


 「登場人物の横顔」のページでは,ゲーム内と同じ青いシルエットで描かれたキャラクターたちが紹介されている。「かまいたちの夜」ならではの,想像力をかき立てる作りだ。

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 本作には13人もの人物が登場するので,特に初回プレイではそれぞれの名前とシルエット,プロフィールを把握するのに時間がかかり,「この人誰だっけ?」となりがち。それを常に確認できる点でこのページはとても役に立つ。身長や体格の情報も細かく書いてあり,それが犯人推理のヒントにもつながっているのだ。

 「『シュプール』の謎に迫る」のページでは,物語の舞台となるペンション・シュプールの間取り図イラストが,実写取り込みを用いたゲームのグラフィックスとともに掲載されている。ゲーム中にマップ機能などは用意されていないので,こちらも推理の参考に役立つことは間違いない。

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 こうした図を見ながら推理を進めていくこと自体がミステリー小説ならではの楽しさであり,ゲーム外からの演出として重要な要素のひとつであるとも思う。


メディアミックスにも抜かりなし


 「かまいたちの夜」のソフトと同時期に発売された関連書籍やCDの紹介ページもある。ゲーム本編とは違った結末の小説版を収録した「かまいたちの夜 公式ファンブック」,本編の隠し要素にまつわる重大なヒントを含む「かまいたちの夜 CDドラマ」など,いずれも単なるファンアイテムという意味合いを越え,ゲーム本編と強くつながる内容だ。

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 「かまいたちの夜 サウンドトラック」は,「ピンクのしおり」(詳細は後述)出現以降の楽曲もほぼ網羅していたため,「こんな曲知らないぞ?」という気づきから,ゲームのやり込みを促す意味合いも持つCDだった。
 これらは総じて,「かまいたちの夜」という作品の楽しさを全方位で拡張している秀逸なメディアミックスとなっている。

 それにしても,ゲームソフトを指す言葉として「カセット」という言葉が連呼されるところに時代を感じる。


ゲームの次に読むのは? 「中村光一流 読書のすすめ」


 この取扱説明書の内容の中でも,特に印象深いものとして記憶に刻まれているのが「中村光一流 読書のすすめ」のページだ。本作のプロデューサーである中村光一氏が,我孫子武丸氏の著作「0の殺人」「探偵映画」「殺戮にいたる病」をオススメしている。

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 「かまいたちの夜」から離れた内容となっている点も興味深いが,単なる告知といった趣きではないうえ,紹介文が抜群にうまいので,これを見て実際に各作品を読んでみたいと思った人は少なくないだろう(実際,筆者はここで「0の殺人」を知り,すぐ書店に走った)。1ページのミニコーナーながら,「かまいたちの夜」で我孫子氏を知った人やミステリーの入門者を,さらに深い世界へと導くようなコラムとなっている。

 さらに,ここで初めて名前が登場した「中村光一」が何者かについて,特に説明されていないことにも触れておきたい。つまり,「チュンソフトの中村光一」と言えば,当時すでに説明不要の有名クリエイターであったということだ。


プレイヤーのモチベーションを高めた「ピンクのしおり」


 「かまいたちの夜」では,殺人事件を解決する「ミステリー編」をクリアすることで,通称「スパイ編」「悪霊編」といった新たなシナリオが開放される仕組みになっている。それらのシナリオをプレイし,あらゆるエンディングを見ると,セーブデータ(しおり)の色がピンクに変化し,さらに新たなシナリオが開放される。このセーブデータが「ピンクのしおり」だ。

 前作「弟切草」にもあった要素なので,取扱説明書では「サウンドノベル恒例!」と紹介されている。また,「ピンクのしおり」の画面写真をチュンソフトに送った先着3000名にプレゼントがあるという告知もされている(「抽選」ではなく「先着」なのがポイント)。そのプレゼントは,「ちょっとエッチなミニドラマCD」という大変興味をそそられるものだ。

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 さらに,ここには書かれていないが,本作におけるやり込みの究極形,つまりシナリオ踏破率100%を表す「金のしおり」の画面を送ると,作品の撮影ロケ地となったペンションの宿泊券が先着でプレゼントされたという。

「金のしおり」のプレゼントキャンペーンは、なんとゲームのテキスト上で告知される。「ピンクのしおり」を出してから特定条件を満たすことでプレイできる「不思議のペンション編」の終盤に表示されるのがこのメッセージだ
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 なお,「ちょっとエッチなミニドラマCD」の内容は,1998年に発売されたPlayStation用ソフト「かまいたちの夜 特別篇」で「金のしおり」を達成することで聴けるようになった。PS3やPS Vitaのゲームアーカイブス版でも可能なので,プレイ環境がある方はぜひ挑戦してほしい。

 見どころ満載だった取扱説明書の締めくくりは,初代サウンドノベルであり,チュンソフトのオリジナルソフト第1弾でもあった「弟切草」の情報。このページには「チュンソフト質問ダイヤルのお知らせ」も掲載されているが,ゲーム内容に関する質問を電話で受け付けるあたりも,ネットの攻略情報などない当時ならではかもしれない。

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実は見逃せない? アンケートはがき考察


 「かまいたちの夜」発売当時の様子を伝える資料としては,パッケージに付属しているアンケートはがきも見逃せない。

 アンケートには,ゲームをプレイした感想についての項目が並んでいるが,中でも「取り込み画面の感想を聞かせて下さい」「人物の影による表現の感想を聞かせて下さい」という2つが印象的だ。

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 この2つは本作の絵作りにおいて斬新な,言葉を変えれば“攻めた”部分だっただけに,開発側としても評価が気になっていたのだろう。1998年に発売されたセガサターン用サウンドノベル「街」では人物も実写になったが,このときのアンケート内容がある程度は反映されたのかもしれない。


メーカーの努力や開発チームからのメッセージが伝わってくる


 「かまいたちの夜」は,ゲーム中にノベル本文以外の説明的なテキストが入ってこない作りになっている。序盤にチュートリアルがあったり,「ここからは大事な推理パートです。選択肢は慎重に選んでください」とったフォローが入ってきたりすることもない。

 ゲーム自体が説明的ではない分,取扱説明書はきわめて親切で,手取り足取り教えてくれる内容だ。1994年当時はまだ新しかった「サウンドノベル」という概念とその楽しみ方が,ビデオゲームのプレイ経験がゼロの人にも伝わるような丁寧さがある。

 そして,関連書籍やCDの紹介ページからは,開発者や原作者からの「メディアを問わず,『かまいたちの夜』の世界を存分に楽しんでほしい」というメッセージが強く感じられる。

 キャンペーンやアンケートなどでプレイヤーのリアクションを積極的に促すあたりには,インターネット普及前のソフトメーカー側の努力もにじみ出ている。特に「ピンクのしおり」チャレンジキャンペーンは,細かい部分の作り込みまで見てほしいという思いが象徴された試みと言えるだろう。

 本作は,ミステリー編の真犯人当ての難度が高めだったことから,スタッフロールと「完」の字を一度見たところで「いいゲームだった!」とプレイを終えてしまう人が少なくなかったように感じる。もちろん,それもひとつの楽しみ方ではあるのだが……。この記事を読んで,取扱説明書から周辺媒体まであらゆるアプローチで当時のプレイヤーにアピールされた,本作の作り込みの深さにあらためて注目してもらえたら嬉しい。

 では,本作のプロデューサーを務めた中村光一氏からのコメントで,本稿の締めとしよう。

中村光一氏からのコメント

 30周年記念の「かまいたちの夜×3」が発売されるということで、改めて、かまいたちのプレイ動画を、YouTubeで見ました。本当に大勢のYouTuberの皆さんが動画をアップしていて、しかも、面白いんですよね。透や真理のセリフに、いちいち、突っ込んだりして(笑)。

 そして、すごく感じたのが、30年経っても、全然、色褪せてないことです。本当に、よくできている(すみません、手前味噌で……)。
 そしてそして、どんどん画面に引き込まれていき……自分がまさに、その現場にいる。当時、我孫子武丸さん、麻野一哉さんをはじめ、スタッフのみんなが、ひたすら真面目に一生懸命作っただけあって、本当によくできていると思います(すみません、本当に、自画自賛で(笑)。

 「かまいたちの夜」のパッケージについては、タイトル名そのものがインパクトのあるパワーワードだったので、それをわかりやすくデザインしましょうということで、あのデザインになったことを覚えています。
 説明書では、制作を担当をしたチームの人達が実際にプレイをして疑問に思ったことや,「こういうところを楽しんでもらいたい」と感じたところが、しっかりと説明されていると感じました。

 メディアミックス的な展開も思い出深いです。ファンブック、ドラマCD、アンソロジー本、お芝居、後にはテレビドラマまでも……。思いつく限り、なんでもやりました。
 そして、ゲームの舞台、ロケ地となったペンション「クヌルプ」さんをファンブックでご紹介したことがきっかけで、ファンの皆様がいっぱい訪ねてくれたようです。まさに、聖地巡礼の先駆けではないかと……。

 ファンの皆様の反応というつながりでは,「ピンクのしおり」「金のしおり」も記憶に残っています。ピンクのしおりについては,説明書にあるように公式に募集していましたので、かなりのペースで応募がありました。ですが金のしおりのほうは、ゲーム内のかなり深いところのシナリオに書かれている形でしたし、実際に金のしおりにするのが難しかったので、なかなか集まりませんでした。
 ペンションの宿泊券を50名様分用意していたのですが、それがなくなったのが発売翌年の夏くらいだった記憶がありますので、半年以上ですね。

 そんな「かまいたちの夜」の発売から30年が経ち,今回の「かまいたちの夜×3」発売に向けて、クヌルプさんへ,ご挨拶に行きました。

 嬉しかったのが、本当に当時のまま、現場を残していただいていることです。テーブルやソファーはもちろんのこと、シーツとか、カーテンとか、2階廊下の奥にかけている布まで、当時のデザインのままでした。本当にタイムスリップというか、そのまま、かまいたちのシナリオの中に戻ってきた気分でした。

 その夜、美味しい食事をいただきながら、懐かしい話をたくさんしたのですが、同行した我孫子さんから「当時かまいたちを遊んだ少年が大人になって、結婚をして子供ができ、その子が大きくなり、そして、そのお子さんと一緒に、かまいたちの夜をプレイして楽しみ、一緒にこのクヌルプを訪れて、かまいたちのシーンを記念撮影して、SNSにアップして楽しんでいるんだよね」という話を聞いて、私は、本当に涙が溢れ出るのを抑えるのに大変なくらい嬉しかったです。

 自分の手がけた作品を、何十年もの時を経て親子で楽しんでもらっているなんて……クリエイターとして、これほど嬉しいことはありません。スタッフみんな頑張ってよかったなぁと、心底思います。


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「かまいたちの夜」30周年記念サイト

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