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「Radeon R9 290X」レビュー。シェーダプロセッサ2816基を統合した“モンスター”の実力はいかに
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印刷2013/10/24 13:01

レビュー

久しぶりに登場の“AMD製モンスター”,その実力はいかに

Radeon R9 290X
(Radeon R9 290Xリファレンスカード)

Text by 宮崎真一


R9 290Xリファレンスカード
画像集#010のサムネイル/「Radeon R9 290X」レビュー。シェーダプロセッサ2816基を統合した“モンスター”の実力はいかに
 別途お伝えしているとおり,AMDの新しいハイエンドGPU「Radeon R9 290X(以下,R9 290X)の情報が解禁となった。
 R9 290Xは開発コードネーム「Hawaii」(ハワイ)と呼ばれていたGPUで,先に市場投入されていた「Radeon R9 280X」(以下,R9 280X)の上位モデルとなる。R9 280X以下のRadeon R9&R7 200シリーズが既存のRadeon HD 7000シリーズをベースとする事実上のリネームモデルなのに対して,R9 290Xは新規に開発されたGPUコアであるというのが大きな特徴だ。

 AMDはそんなR9 290Xを,NVIDIAの「GeForce GTX 780」(以下,GTX 780)キラーと位置づけているが,果たしてその実力はどれほどか。AMDから入手したリファレンスカードをテストしてみたい。


GCNアーキの“Ver.1.5”的な大規模コアを搭載

シェーダプロセッサ2816基,メモリI/F 512bitに


HawaiiのGPUパッケージ,表(左)と裏(右)
画像集#013のサムネイル/「Radeon R9 290X」レビュー。シェーダプロセッサ2816基を統合した“モンスター”の実力はいかに
 Hawaiiと呼ばれてきたGPUのアーキテクチャについては別記事で西川善司氏が細かく解説しているが,本稿でも簡単にまとめておくと,「Southern Islands」(サザンアイランド)世代のRadeon HD 7000シリーズで採用された「Graphics Core Next」(以下,GCN)アーキテクチャをベースに,マイナーチェンジには留まらない規模の改良を施してきたコアとなる。AMDがそう言っているわけではないが,イメージとしては「GCNのバージョン1.5」といったところだろうか。

Compute Unitの概要
画像集#014のサムネイル/「Radeon R9 290X」レビュー。シェーダプロセッサ2816基を統合した“モンスター”の実力はいかに
 GCNベースなので,64基のシェーダプロセッサ「Stream Processor」(ストリームプロセッサ)が,キャッシュやレジスタファイル,スケジューラ,テクスチャユニットなどと一緒に「Compute Unit」(旧称:GCN Compute Unit)を構成するという基本仕様で,Southern Islands世代のRadeon HD 7000シリーズとの間に違いはない。「Geometry Processor」(ジオメトリプロセッサ)と「Rasterizer」(ラスタライザ)各1基に,「Render Back-Ends」(レンダーバックエンド)4基を複数個のCompute Unitと組み合わせた“ミニGPU”――AMDは今回,これに「Shader Engine」(シェーダエンジン)という名を与えているので,ここは新要素と見ることもできるが――構成を採る点でも,変更はない。

 ただ,同シリーズの最上位モデルである「Radeon HD 7970 GHz Edition」(以下,HD 7970 GE)と比べると,“ミニGPU”あたりのCompute Unit数が16基から11基に減った代わりに,“ミニGPU”の数は2倍の4基へと増えている。結果として,総Stream Processor数は(64×11×4)で2816基となった。HD 7970 GEだと(64×16×2)で2048基だったため,規模は約37.5%も大きくなったことになる。
 “ミニGPU”を2倍に拡張したことで,Render Back-Endsの数も2倍となり,総ROP数が64基と,HD 7970 GE&R9 280X比で倍増している点も押さえておきたい。

Hawaii(≒R9 290X)のブロック図。Shader Engineあたりのフルスペックは12 Compute Unitであり,1基を冗長性のために確保している気はしないでもないが,AMDの公式発表としては11基がフルスペックとなっている(関連記事
画像集#015のサムネイル/「Radeon R9 290X」レビュー。シェーダプロセッサ2816基を統合した“モンスター”の実力はいかに

メモリコントローラは512bitインタフェース化されている
画像集#016のサムネイル/「Radeon R9 290X」レビュー。シェーダプロセッサ2816基を統合した“モンスター”の実力はいかに
 もう1つ重要なポイントとしては,メモリインタフェースがHD 7970 GEの384bit幅から512bit幅へと拡張された点が挙げられよう。メモリクロックは5000MHz相当(実クロック1250MHz)と,HD 7970 GEやR9 280Xの6000MHz相当(実クロック1500MHz)比で下がったが,それでも帯域幅は320GB/sと,HD 7970 GEやR9 280Xの288GB/s比で約11%広くなっている。

 GPUアーキテクチャ以外では,プログラマブルサウンドエンジン「TrueAudio」への対応もR9 290Xの新要素なのだが(関連記事),TrueAudioは,対応ゲームタイトルが出てからでないと判断できないため,今回は評価を保留することになる。
 また,Radeon R9&R7 200シリーズの重要なキーワードとして訴求されているDirectX 11.2は,Southern Islands世代のRadeon HD 7000はもとより,Kepler世代のGeForceも対応してきたが,やはり現時点では対応タイトルがないため,こちらも評価は保留したい。

 といったところを踏まえつつ,R9 290Xの主なスペックを,従来製品や競合製品ともどもまとめたのが表1である。

※HD 7970 GEはDirectX 11.2対応(関連記事)。NVIDIAは,KeplerアーキテクチャのGPUがDirectX 11.2に対応すると公式blogで明らかにしている
画像集#040のサムネイル/「Radeon R9 290X」レビュー。シェーダプロセッサ2816基を統合した“モンスター”の実力はいかに


カード長はHD 7970 GEとほぼ同じ

「Quiet」と「Uber」2つのVBIOSを搭載


カード長は実測で約278mm
画像集#012のサムネイル/「Radeon R9 290X」レビュー。シェーダプロセッサ2816基を統合した“モンスター”の実力はいかに
 それでは入手したR9 290Xリファレンスカードを見ていこう。
 カード長は実測約278mm(※突起部除く)。HD 7970 GEリファレンスカードが同277mmだったので,ほぼ同サイズと言い切ってしまっていいだろう。付け加えると,GPUクーラーが基板の後方へ少しはみ出す格好になっている点も変わりなく,R9 290Xリファレンスカードの場合,基板自体の長さは270mmながら,GPUクーラーが8mmほどはみ出ていた。

GPUクーラーは,最近のハイエンドGPU搭載カードにおける定番の「一直線なエアフローが採用されたもの」になっている
画像集#009のサムネイル/「Radeon R9 290X」レビュー。シェーダプロセッサ2816基を統合した“モンスター”の実力はいかに
 そのGPUクーラーはカード全体をすっぽり覆っており,80mm角相当のブロワーファン1基を用い,外部出力インタフェース部の通気孔からPCの筐体外へ流れる一直線のエアフローで冷却する仕様になっている。AMDから「GPUクーラーを取り外さないように」というお達しが出ているので,クーラーの内部構造は分からないが,基本的には「Radeon R9 270X」リファレンスカードのデザインを踏襲したものになっているのではなかろうか。

大小さまざまな排気孔の並んだブラケット部には,Dual-Link DVI-D×2とDisplayPort×1,HDMI×1の外部出力インタフェースも用意される。外部出力は基本的に「任意の組み合わせで最大3ディスプレイ」。従来は「DisplayPortを使わない限り2台まで」だったので,拡張されたことになる。なお,DisplayPortのMulti-Stream機能を使った場合は最大6台と接続可能だ
画像集#008のサムネイル/「Radeon R9 290X」レビュー。シェーダプロセッサ2816基を統合した“モンスター”の実力はいかに 画像集#017のサムネイル/「Radeon R9 290X」レビュー。シェーダプロセッサ2816基を統合した“モンスター”の実力はいかに

画像集#006のサムネイル/「Radeon R9 290X」レビュー。シェーダプロセッサ2816基を統合した“モンスター”の実力はいかに
補助電源コネクタは6+8ピン構成
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カードの背面から見ると,CrossFireコネクタがないと分かる
 なお,外部補助電源限コネクタは6ピン+8ピン仕様で,これはHD 7970 GEやR9 280Xのリファレンス仕様と同じ。基板の背面を見る限り,電源部は5+2(もしくは5+1+1?)フェーズといった気配だが,断言はできない。

 ここまでの写真を見て,CrossFire用のブリッジケーブルを接続する端子がないことに気づいた人も多いと思うが,これは,R9 290XがCrossFireに対応しなくなったから……ではもちろんなく,今世代から,ブリッジコネクタなしでCrossFire動作できるようになったためだ。今回は残念ながら1枚しか入手できていないので,CrossFire性能は分からないが,機会があれば試してみたいと考えている。

“CrossFireコネクタ跡地”的なスペースの後方(※写真では右側)にスライドスイッチが用意されている。初期設定だと,スイッチは外部出力インタフェース側に設定されている。この状態だとQuiet Mode動作だ
画像集#005のサムネイル/「Radeon R9 290X」レビュー。シェーダプロセッサ2816基を統合した“モンスター”の実力はいかに
 さて,そんなR9 290Xで面白いのは,スライドスイッチによって2つのグラフィックスBIOS(以下,VBIOS)を切り替える機能が刷新されたことだ。
 Southern Islands世代の幕開けを告げた「Radeon HD 7970」では,リファレンスカードに「Dual BIOS Toggle Switch」というスイッチが用意され(関連記事),標準のVBIOSを破損した場合には,2番めのVBIOSから起動できるようになっていた。これはHD 7970 GEでも引き継がれていたが,R9 290XのデュアルVBIOSでは,片方が「Quiet Mode」(クワイエットモード),もう片方が「Uber Mode」(ユーバーモード)となっているのである。

 このうち初期設定は,AMDが「安定動作を優先した設定で,静音性も得られる」とするQuiet Mode。それに対して,PCをシャットダウンした状態でスイッチをカード後方へ設定し,その後起動すると,AMDが「より高い性能を求める設定」とするUber ModeでR9 290Xは動くことになる。

アイドル時にはQuiet ModeでもUber Modeでも動作クロックはGPUコア300MHz,メモリ600MHz相当にまで下がった
画像集#019のサムネイル/「Radeon R9 290X」レビュー。シェーダプロセッサ2816基を統合した“モンスター”の実力はいかに
 では,これら2モードでは何が違うのかだが,まず押さえておきたいのは,R9 290Xが「AMD PowerTune Technology with Boost」(以下,PowerTune with Boost)をサポートしていることだ。つまり,負荷状況に合わせて動作クロックが動的に変更されるわけである。そして,Quiet Modeの場合,OSの起動後30分間放置した時点(以下,アイドル時)にGPUコアクロックが300MHz,メモリクロックが600MHzへ下がるのだが,実のところ,この挙動はUber Modeでも変化はなかった。

 一方,3Dアプリケーション実行時はということで,3Dベンチマーク「3DMark」(Version 1.1.0)の「Fire Strike(Extreme)」をループ実行させ,その間の動作クロック推移をGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.7.3)で追ってみたところ,Uber Modeにしたときのほうが,動作クロックが最大の1000MHzに貼り付く時間が長かった。ただし,950MHz程度にまで落ちる場面も見られたので,「Uber Modeだと高負荷時のクロックが1000MHzで固定される」と断言できるわけではないようだ。
 AMDは,PowerTuneによる実際の動作クロック切り替えが非常に高速で,正確に追うためには,未公開の専用ツールが必要と述べている(関連記事)。つまり,GPU-Zで取得したデータがどこまで正しいのかはなんともいえないところなので,ひとまずは結論を保留して話を先に進めたいと思う。
 なお1つだけ追記しておくと,今回使ったGPU-Zでは,R9 290Xのコア電圧情報を取得できなかった。


R9 290XのAMD OverDriveに変化あり

QuietとUberの両モードでテストを実施


 というわけでテストのセットアップに入っていくが,今回は表1でその名を挙げたGPUを用意した。つまり,下位モデルとしてのR9 280Xと,Radeon HD 7000シリーズの最上位モデルとなるHD 7970 GE,さらにAMDが対抗製品と位置づけるGTX 780,そしてその上位モデルとなる「GeForce GTX TITAN」(以下,GTX TITAN)が比較対象だ。
 このうち,R9 280X搭載製品であるASUSTeK Computerの「R9280X-DC2T-3GD5」は,メーカーレベルで動作クロックが引き上げられたクロックアップモデルであるため,MSIのオーバークロックツール「Afterburner」(Version 2.3.1)を用いて,リファレンス相当にまで動作クロックを引き下げている。

R9 290X搭載環境へCatalyst 13.5 Beta V5を導入し,AMD OverDriveを開いたところ。表示が刷新されていた(※クリックすると全体を表示します)
画像集#018のサムネイル/「Radeon R9 290X」レビュー。シェーダプロセッサ2816基を統合した“モンスター”の実力はいかに
 テストに用いたグラフィックスドライバは,Radeon用が,R9 290Xのテスト用としてAMDから全世界のレビュワーに配布された「Catalyst 13.11 Beta V5」だ。
 このドライバは,R9 290Xを差したシステムに導入すると,AMD OverDriveがアップデートされているのを確認できる。従来,「電力制限設定」と「GPUクロック設定」は個別になっていたが,R9 290Xではそれらがリンクし,横軸が電力制限,縦軸がGPUクロックの2次元マップから選択する格好になった。自己責任を覚悟すれば,このマップを使って,どの程度“無茶”なのかを色で判断しながら,OverDrive設定を行えるようになったわけである。

 なお,GeForceのテストに用いたグラフィックスドライバは,テスト開始時の最新版となる「GeForce 331.58 Driver」だ。そのほかテスト環境は表2のとおりとなる。

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MAXIMUS VI FORMULA
ゲーマー向けのハイエンドZ87ボード。基板全体を覆う「ROG Armor」の採用が特徴的
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:テックウインド(販売代理店) info@tekwind.co.jp
実勢価格:4万1000〜4万7000円程度(※2013年10月24日現在)
画像集#021のサムネイル/「Radeon R9 290X」レビュー。シェーダプロセッサ2816基を統合した“モンスター”の実力はいかに
SMD-32G28CP-18ML-Q
PC3L-14900仕様のDDR3Lモジュール,8GB×4枚セット
メーカー:サンマックス・テクノロジーズ
問い合わせ先:パソコンショップ アーク
パソコンショップ アーク販売価格:3万5980円(税込,※2013年10月24日現在)
 テスト方法は基本的に4Gamerのベンチマークレギュレーション14.0に準拠する。ただしバージョン15.0を先取りする形で「SimCity」と「F1 2012」を廃し,代わりに「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」(以下,新生FFXIVベンチ キャラ編)と「GRID 2」のテストを追加した。
 新生FFXIVベンチ キャラ編のテストでは,「グラフィック設定プリセット」から「標準品質(デスクトップPC)」と「最高品質」の2つをピックアップ。いずれのプリセットでも,解像度ごとに2回ずつテストを実行し,その平均値をスコアとして採用する。一方のGRID 2では,グラフィックス設定のメニューから「ULTRA」プリセットを選択したうえで,ゲーム側に用意された公式ベンチマークツールを用いることにした。こちらも解像度ごとにテストを2回実行し,その平均をスコアとして採用している。
 いま話が出たテスト解像度は,R9 290Xがハイエンド市場向けということもあって,1920×1080ドットと2560×1600ドットを選択した。新生FFXIVベンチ キャラ編とGRID 2以外のゲームテストでもこの解像度となる。

 なお,今回のテストではR9 290XのQuiet ModeとUber Modeの両方でテストを行うことから,以下,テスト考察の段では前者を「R9 290X Quiet」,後者を「R9 290X Uber」と書いて区別しつつ,基本的にはR9 290X Quietを主役として扱う。
 もう1つ,これはいつもどおりだが,テストに用いたCPU「Core i7-4770K」は,テスト時の状況によって自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」の挙動が変わる可能性を排除すべく,同機能をマザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化しているので,この点もあらかじめお断りしておきたい。


GTX 780に勝ったり負けたりのテスト結果

GTX TITANといい勝負に持ち込む場面も


 グラフ画像はクリックすると「より負荷の高いテスト条件」のスコア順で並び変えたものを表示するようにしてあるとお知らせしつつ,テスト結果を順に見ていこう。

 グラフ1は3DMarkの結果だが,R9 290X QuietはR9 280X&HD 7970 GEに対して30%以上高いスコアを示した。3DMarkではGCNアーキテクチャのRadeonがKeplerアーキテクチャのGeForceよりも高いスコアを出す傾向にあるので,驚くには値しないが,それでも,R9 290X QuietがGTX TITANより3〜4%程度,GTX 780より約11%高いスコアを示している点は目を引く。
 気になるのは,より高い性能を目指しているはずのR9 290X UberがR9 290X Quietよりわずかに低いスコアとなっていることだが,これだけでその理由を探るのは難しい。スコア差は1%以下なので,測定誤差という可能性もあると思われる。

画像集#023のサムネイル/「Radeon R9 290X」レビュー。シェーダプロセッサ2816基を統合した“モンスター”の実力はいかに

 続いてグラフ2,3は「Far Cry 3」のテスト結果となる。まず,アンチエイリアシングとテクスチャフィルタリングを適用していない「標準設定」だと,R9 290X QuietはGTX 780の99〜105%というところに落ち着いた。TahitiコアのR9 280XやHD 7970 GEと比べると7〜21%程度高いスコアだ。
 一方,4xアンチエイリアシングと16x異方性フィルタリングを適用した「高負荷設定」だと,R9 290X QuietはGTX 780の87〜92%程度。Far Cry 3は高負荷設定になるとGeForceがスコアを伸ばすのだが,その傾向はR9 290Xの512bitメモリインタフェースをもってしても打破できないようだ。

 なお,R9 290X Uberのスコアは,R9 290X Quietの99〜108%程度だった。高負荷設定の1920×1080ドットにおいて,測定誤差といえないレベルのスコア差が出ているのは目を引く。

画像集#024のサムネイル/「Radeon R9 290X」レビュー。シェーダプロセッサ2816基を統合した“モンスター”の実力はいかに
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 「Crysis 3」のテスト結果がグラフ4,5だ。ここで注目したいのは,1920×1080ドットと比べて2560×1600ドットのほうが,相対的にR9 290X Quiet有利となっていること。とくに高負荷設定の1920×1080ドットでGTX 780の約90%というスコアに留まるR9 290X Quietが,2560×1600ドットでは逆に約103%と逆転を果たしているのは興味深い。512bitメモリインタフェースと320GB/sものメモリバス帯域幅が,解像度とグラフィックスメモリ負荷の極めて高い局面でR9 290X Quietを優勢としているのだろう。
 R9 290X Uberのスコアが,ようやっとすべてのテスト項目でR9 290X Quietを上回った点も指摘しておきたい。

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 Radeonに最適化されたタイトルとして知られる「BioShock Infinite」のスコアがグラフ6,7だが,ここでR9 290X QuietはGTX 780比で97〜99%程度のスコアとなった。R9 290X Uberは「High」プリセットでGTX 780を上回るものの,「UltraDX11_DDOF」プリセットで逆転を許しており,全体としてはFar Cry 3と似た傾向に見える。

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 グラフ8,9は「The Elder Scrolls V: Skyrim」(以下,Skyrim)のテスト結果となる。公式の高解像度テクスチャパックを導入済みとはいえ,このクラスのGPUにとってSkyrimの負荷はもはや低すぎるため,標準設定ではR9 280XとHD 7970 GEを除く4製品で,CPUボトルネックによるスコアの頭打ちが生じてしまった。
 そこで今回は「Ultra設定」のスコアを見ることになるが,ここではR9 290X Quietのスコアがあまり振るわない。2560×1600ドットで,対GTX 780のスコアは約92%だ。

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 新生FFXIVベンチ キャラ編のスコアをまとめたものがグラフ10,11である。標準品質(デスクトップPC)の負荷は,このクラスのGPUからするとさすがに低く,結果,2560×1600ドットでもR9 290X Quietは15000超のスコアを示している。ただ,冷静にGTX 780と比較すると,95〜96%程度に留まっているのも確かだ。
 一方,このクラスのGPUにとって,より現実的なグラフィックスプリセットとなる最高品質だと,R9 290X QuietはGTX 780と互角の勝負に持ち込んでいる。Crysis 3と同様に,極めて広いメモリバス帯域幅がその要因だろう。
 スクウェア・エニックスの示す指標では,スコア7000以上で一番上の評価「非常に快適」を得られるのだが,R9 290X Quietが2560×1600ドットでその指標を軽々と上回ってきた点も要チェックだ。

画像集#032のサムネイル/「Radeon R9 290X」レビュー。シェーダプロセッサ2816基を統合した“モンスター”の実力はいかに
画像集#033のサムネイル/「Radeon R9 290X」レビュー。シェーダプロセッサ2816基を統合した“モンスター”の実力はいかに

 フレームレートでスコアを確認したいという人のため,グラフ10’,11’も用意してみたので,興味のある人はチェックしてほしい。

画像集#038のサムネイル/「Radeon R9 290X」レビュー。シェーダプロセッサ2816基を統合した“モンスター”の実力はいかに
画像集#039のサムネイル/「Radeon R9 290X」レビュー。シェーダプロセッサ2816基を統合した“モンスター”の実力はいかに

 性能検証の最後は初登場となるGRID 2だが,グラフ12,13を見るに,R9 290X Quietのスコアは良好だ。標準設定の1920×1080ドットではCPUボトルネックによると思われるスコアの頭打ちが見られるものの,それ以外のテスト条件だと,R9 290X Quietは安定的にGTX 780のスコアを上回った。R9 290X Uberが高負荷設定の2560×1600ドットでGTX TITANを逆転している点も押さえておきたい。

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 以上のテスト結果からすると,R9 290X Uberはどちらかというと,描画負荷の低いテストで,R9 290X Quietより高いスコアを出す傾向があるといえそうだ。負荷の低い局面において,より高い動作クロックに入る時間が長くなっているのだとすれば,そういう結果が出ているのも納得できよう。
 ただ,そうはいったところで,スコア差は最大でも8%。ほとんどのケースでは3〜4%程度かそれ以下だ。OverDriveと組み合わせれば状況は変わってくるのかもしれないが,安定したゲーム環境を狙うというのであれば,初期状態でもあるQuiet Modeのままで構わないように思われる。


消費電力はGTX TITAN以上

GPUクーラーのデキもあまりよろしくない


 今回,AMDはR9 290Xの消費電力に関する情報を公開していない。レビュワーに対して配布されるレビュワーズガイドにも消費電力関連の記載は一切ないという徹底ぶりだ。
 もちろん,補助電源コネクタの構成と,公称典型消費電力が250WとされるR9 280X(やHD 7970 GE)の上位モデルであるということから,典型消費電力が250〜300Wの間なのだろうということは容易に想像できるが,実際にはどの程度なのか。ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を比較してみよう。

 テストにあたってはゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,前述のアイドル時と,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点とで,スコアを取得した。
 その結果がグラフ14で,なんといっても注目は,アプリケーション実行時におけるR9 290X QuietのスコアがGTX TITANより14〜30W高いことだ。ワンビッグチップの“モンスター路線”は久しくNVIDIAの専売特許だったが,R9 290XでAMDが戦場に帰ってきた,といったところか。
 R9 290X Uberのスコアは,3DMarkを除くとR9 290X Quiet比で1〜10W高いので,やはり,3DMark以外では高い動作クロックに入っている時間が長そうな気配である。

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 なお,アイドル時の消費電力もR9 290X Quiet(とR9 290X Uber)は若干高め。もっともR9 290Xでは「AMD ZeroCore Power Technology」(以下,ZeroCore)に対応しており,アイドル時にディスプレイ出力が無効化されるように設定しておいた場合,R9 290X QuietとR9 290X Uberはいずれも75Wまで下がっていた。GCNアーキテクチャを採用するGPUのメリットは失われていない。

 ここまで消費電力が高いと,GPU温度も気になるところである。今回は,アイドル時に加え,3DMarkの30分間連続実行時を「3DMark時」として,GPU-Zから各GPUの温度を追った結果をグラフ15にまとめてみた。テスト時の室温は24℃。テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラック状態に置いてテストを行ったときの結果だ。

 当然のことながらGPUクーラーもファン回転数の制御方法も,果ては温度センサーの位置もカードごとに異なるので,厳密な横並びには使えない。その点はくれぐれも注意してほしいが,それでも,R9 290X QuietとR9 290X Uberのスコアが完全に抜けた数字になっているのは一目で分かるだろう。
 まず,アイドル時は明白な理由がある。GPUクーラーの回転数が1000rpm強に抑えられており,冷却能力よりも静音性を重視した仕様になっているためだ。

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AMD OverDriveを見ると,目標GPU温度が95℃になっていた
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 問題となりそうなのは90℃超えとなる3DMark時のほうだが,Catalyst Control CenterのAMD OverDriveで「目標GPU温度」が「95℃」になっているので,実のところAMD的には「仕様どおりの温度」ということになる。PowerTune with Boostでは,目標GPU温度の枠内で,より高いクロック状態を維持しようとする仕様なので,AMDはできる限り高いクロックで動作する(というか,GTX 780と勝負できるクロックで動作する)よう,高い温度を許容したということなのだろう。
 ただ,さすがに90℃オーバーというのは世界規模でインパクトが大きかったようで,AMDは「95℃でも問題なく動作するよう設計している」と,異例の声明を出していたりする。

 なので,95℃という温度をOKとするかどうかは,AMDを信じるかどうかという話になってくるのだが,むしろ気になるのはリファレンスGPUクーラーの完成度のほうだ。
 筆者の主観であることを断りつつ述べておくと,R9 290Xのリファレンスカードに装着されたGPUクーラーの音は,「うるさい」というレベルではないものの,少なくとも競合製品であるGTX 780のそれより確実に大きい。「Radeon HD 7990」リファレンスカードのGPUクーラーにAMDは並々ならぬ気合いを入れ,冷却能力も静音性も高いものを仕上げていたにも関わらず,R9 290Xでそのノウハウがまったく活かされていないように見えるのは,非常に残念と言わざるを得ない。それとも,R9 290Xで,リファレンスデザインを採用するカードはほとんど出てこないという暗示なのだろうか?


その実力はまさにGTX 780対抗

あとは「549ドル」が日本円でいくらになるか……


画像集#011のサムネイル/「Radeon R9 290X」レビュー。シェーダプロセッサ2816基を統合した“モンスター”の実力はいかに
 以上のテストからするに,R9 290Xの性能はざっくりGTX 780と同等レベル,といったところだ。消費電力がGTX TITAN以上という強烈さで,消費電力対性能比は近年のAMD製GPUとしてはよろしくないものの,AMDにとって久々のビッグチップということで,むしろその強烈な消費電力に胸の高鳴りを覚える人もいるのではないかと思う。
 懸念材料はリファレンスGPUクーラーの残念さだが,これは,AMDのパートナー各社が優秀なGPUクーラーと組み合わせてくれば解決する話だ。リファレンスデザインを採用するカードがあったら避ければよいというだけの話である。

 あとは,北米市場における搭載カードの価格が549ドルとされるなか,どの程度の国内価格が設定されるかだろう。GTX 780搭載グラフィックスカードの実勢価格は,特殊なクロックアップモデルなどを除くと7万〜8万円程度(※2013年10月24日現在)なので,このあたりを下回ってくれば,「消費電力は高いが,コストパフォーマンスは良好」ということになるはずである。


※2013年10月25日11:00頃追記
 25日朝になって,「Sapphire Technology本社が,日本におけるR9 290Xカードの想定売価を6万9800円前後としていること」が明らかになった。同社製カードの価格が7万円弱であれば,もう少し低い価格で流通するカードも出てくるだろう。それでも“ドル円相場”は約127円であるものの,GTX 780カードと同等以下なのは評価に値する。
 あとは,カードメーカー各社のオリジナルGPUクーラー搭載製品が出揃うのを待つだけだ。

Radeon R9 290シリーズ「Hawaii」のアーキテクチャを丸裸にする

AMDのRadeon R9シリーズ製品情報ページ(英語)

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    Radeon R9 200

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