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GeForce GTX 600
  • NVIDIA
  • 発表日:2012/03/22
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「N680GTX Lightning」レビュー。「オーバークロックに特化したGTX 680カード」が持つゲーム用途の価値を探る
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印刷2012/08/06 00:00

レビュー

オーバークロックに特化した「Lightning」のシリーズ最新作を試す

MSI N680GTX Lightning

Text by 宮崎真一


N680GTX Lightning
メーカー:MSI
問い合わせ先:MSIコールセンター 0800-100-9998(平日11:00〜18:00,携帯電話やPHS,IPフォンからは047-328-7671)
実勢価格:6万4000〜7万円程度(※2012年8月6日現在)
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 2012年3月の「GeForce GTX 680」(以下,GTX 680)発表から数か月が経ち,カードベンダー各社から,独自設計のクーラーや基板を搭載した製品の数々が登場してきた。MSIのハイエンド製品シリーズ「Lightning」の新作,「N680GTX Lightning」もその1つだ。

 N680GTX Lightningはいわゆるメーカーレベルのクロックアップモデルだが,単に動作クロックが引き上げられただけでなく,それ以外にもかなりユニークな設計になっているのが特徴だが,その分実勢価格は6万4000〜7万円程度(※2012年8月6日現在)と,端的に述べて非常に高い。ブランドやクーラーなどを問わなければ5万円弱くらいから搭載製品を購入できるようになっているこのタイミングで,果たしてN680GTX Lightningをあえて選ぶ理由はあるのだろうか。

 今回4Gamerでは,MSIの日本法人であるエムエスアイコンピュータージャパンから実機を入手できたので,その存在意義をテストから明らかにしてみたい。


オーバークロックに特化した仕様

カード長も293mmと大きなものに


 テストに先立って,N680GTX Lightningの基本スペックから見て行こう。
 N680GTX Lightningの動作クロックはコア1110MHz,ブースト1176MHz,メモリ6008MHz相当(実クロック1502MHz)。GTX 680のリファレンスクロックと比べると,GPUコアクロックは約10%,ブーストクロックは約11%引き上げられている一方,メモリクロックは変化なしという設定だ。
 GTX 680との間にあるスペックの違いは表1にまとめ,「N680GTX Lightningならではの部分」は表中で背景色を変えているが,簡単にまとめるなら,GPUの動作クロックを引き上げ,それに合わせて補助電源コネクタも強化してきたモデルということになる。

画像集#029のサムネイル/「N680GTX Lightning」レビュー。「オーバークロックに特化したGTX 680カード」が持つゲーム用途の価値を探る

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補助電源コネクタは8ピン×2。マザーボードへカードを差したとき,マザーボードに対して垂直方向を向く仕様だ
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リファレンスデザインを採用するInnoVISION Multimedia製GTX 680カードと並べたところ。N680GTX Lightningはかなり大きい
 表1で示したとおり,N680GTX Lightningの補助電源コネクタは8ピン×2だが,MSIによれば,単に供給容量を増やしただけではなく,リファレンスデザインだとグラフィックスメモリチップへの電力供給がPCI Expressスロット経由なのに対し,N680GTX Lightningでは片方の8ピンコネクタ経由になるよう変更され,より安定的な電力供給を行えるようになっているという。メモリクロック自体は定格ながら,メモリクロックのオーバークロックには配慮されているというわけである。

 カード長は実測で293mm(※突起部含まず)。GTX 680のリファレンスカードだと同253mmだったので,40mmも長くなった計算だ。N680GTX Lightningでは,MSI独自のGPUクーラー「Twin Frozr IV」(ツインフローザー4)を搭載する関係で,クーラーがカードの後方へ15mmほどはみ出している構造なのだが,それを無視しても278mmあることになる。
 また,SLIブリッジコネクタのすぐ後方から基板は10mmほど,クーラーも入れると14mmほど突き出ており,結果,リファレンスカードと比べると相当に大きなシルエットになっているのも分かるだろう。

Twin Frozrは100mm角相当のファンを2基搭載。ファンの羽には,従来のTwin Frozrクーラーと同様,一般的なGPUクーラーのファンと比べて風量が20%高められているという「Propeller Blade」が採用されている
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本体背面部。カードを覆うように補強板兼放熱板が搭載されるが,何よりもMSIロゴ入りの丸い盛り上がりが目を引く
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MSIロゴのところが透明になっていて,中の基板を覗き込めるようになっている
 カード背面を見ると,MSIロゴ入りの盛り上がりがあることに気づくが,これは,「GPU Reactor」(GPUリアクター)と呼ばれる追加基板のカバーである。
 GPUクーラーの分解はメーカー保証外の行為となるので十分に注意してほしいが,レビュー記事ということであえてカバーを外してみると,「MS-4280」という型番の刻まれたGPU Reactorへアクセスできるようになっている。

 MSIはこのGPU Reactorを,リップルノイズの低減と,電流容量の増加を図るための基板と位置づけているが,リップルノイズというのは簡単にいうと,電源の直流出力に乗るノイズのこと。本来,一定の直線状であるべき出力がリップルノイズによって波を打つようになると,それによって動作が不安定になることがあるのだが,GPU Reactorによってそれを抑えることで,オーバークロック設定時における電源出力の変動を抑え,安定性を高めているのだそうだ。

GPU Reactor。6個載っている黒いチップのところには,空きパターンも含めて「C1」〜「C8」とシルク印刷があり,また,極性もあるように見えるので,おそらくタンタル型コンデンサだろう。チップタイプのタンタル型は高価なのだが,ハイエンド市場向けということで,コスト度外視で搭載してきたように見える
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 なお,電源関連ではもう1つ,カード後方終端部に用意されたピンコネクタ「V-Check Point」(Vチェックポイント)の存在も紹介しておく必要があるだろう。ゲーマー向けの機能というよりは,いわゆる極冷システムを用いたオーバークロック用途向けだが,付属のプローブを使ってテスターなどと接続すれば,GPUコア電圧とメモリ電圧,PCI Express電圧をモニターできる。

 電源周りをひととおりチェックしたところで,Twin Frozr IVをN680GTX Lightningから取り外してみよう。
 Twin Frozr IVは,カード背面側の補強板兼放熱板,クーラー本体,カード前面側のメモリチップ&電源部用放熱板といった順番で取り外せる。クーラー本体でGPUと接触するベース部分は銅製で,そこから8mm径のヒートパイプ5本が放熱フィンまで伸びる構造だ。
 放熱フィンはニッケル製。カードのほぼすべてを覆う大きさである。

Twin Frozr IVを取り外していったところ。クーラーの取り外しは自己責任だが,作業自体はそれほど難しくない
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写真でMSIロゴの左に見えるのがPCI Express用電源回路
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 一方,クーラーを取り外したカード側だが,GPU Reactorだけでなく,基板上の電源回路も相当に豪華だ。N680GTX LightningはMSIの提唱する電源規格「Military Class III」(ミリタリークラス3)に準拠しているため,「Dark Solid Capacitor」や「SSC」(Solid State Choke),Hi-c CAP(Highly-conductive Polymerized Capacitor)や,「CopperMOS」を搭載しているのだが,これらコンポーネントがずらりと並んでいるのは壮観と言える。
 ちなみにGTX 680のリファレンスデザインだと,電源回路はGPU用が4フェーズ,メモリ用が2フェーズ,PCI Express用が1フェーズだが,N680GTX Lightningだと順に8フェーズ,3フェーズ,1フェーズとなった。これにより,リファレンスデザインだと200Aまでしか対応できないところが,360Aまで対応できるようになっているとのことだ。

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主要電源回路部のカード前面側(左)と背面側(右)。コンデンサにはDark Solid Capacitor,チョークコイルにはSSC,タンタル型コンデンサにはHi-c CAP,背が低く,低発熱で,高い電流容量も持つとされるMOSFETにはCopperMOSといった具合に名前が付けられている
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搭載するGTX 680 GPU(左)とメモリチップ(右)。メモリチップがHynix Semiconductor製のGDDR5「H5GQ2H24MFR-R0C」(6Gbps品)というのはGTX 680リファレンスカードと同じだ


活用にはAfterburner 2.2.3が必須

オーバークロックで1300MHz超えを実現


Afterburner。ここで示したのはバージョン2.2.2のものとなる
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 ところで,N680GTX Lightningの発売自体は7月上旬のことだった。なので,なぜ今さらレビューなのかと違和感を覚えている人もいるのではないかと思うが,その理由は簡単で,MSI製オーバークロックユーティリティ「Afterburner」(アフターバーナー)のバージョンアップを待っていたからだ。

 4Gamerでは,N680GTX Lightningの発売とほぼときを同じくして実機を入手していたが,そのとき公開されていたバージョン2.2.2のAfterburnerだと,N680GTX Lightningに用意される機能で,GPUコアとグラフィックスメモリ,PCI Expressの電圧を変更できる「Triple Overvoltage」(トリプルオーバーボルテージ)を利用できなかったのである。

Afterburner 2.2.2でオーバークロックを試みたところ
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 バージョン2.2.2のAfterburnerだと,GPUコア電圧しか変更できない。そのため,後述するテスト環境で,テストに用いたアプリケーションがすべて完走することをもって「安定動作した」と判断することにした結果,Afterburner 2.2.2からPower Targetの設定値である「Power Limit」を上限の133%に設定したとき,安定動作した設定はGPUコアが「+60MHz」,メモリは「+200MHz」(≒400MHz相当)が上限だった。このときのGPUブーストクロック最大値は1249MHz,メモリクロックは6412MHz相当だ。
 GPUコア電圧を上限の+100mVに設定したり,GPUクーラーのファン設定を,動作音的になんとか我慢できるレベルに引き上げたりしても,変化はなかった。

左はN680GTX Lightningのファン回転数デフォルト設定で,右が今回引き上げた結果。端的に述べてかなり音を立てるようになったが,ここまでしてもAfterburner 2.2.2でのオーバークロック上限は変わらなかった
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Afterburner 2.2.3を導入し,同アプリケーションのプロパティから「電圧制御のロック解除」を選ぶと,Triple Overvoltageが利用可能になる
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 これに対して,7月下旬に公開されたバージョン2.2.3をMSIのAfterburner配布ページからダウンロードして導入してみると,まず,Triple Overvoltageが有効化され,GPUコアとグラフィックスメモリ,PCI Expressの3項目で電圧設定が変更可能になった次第である。
 そこで各電圧設定を上限にまで引き上げてみると,今度はコアクロックを「+100MHz」,メモリクロックを「+350MHz」(700MHz相当)にまで引き上げても安定動作するのを確認できた。このときの動作クロックはGPUが最大1302MHz,メモリクロックが6696MHz相当だ。

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Afterburner 2.2.3でオーバークロックを試みたところ。GPUコア電圧設定項目「Core Voltage」が「+100mV」なのは2.2.2と変わりないが,新たに「+100mV」上限の「Memory Voltage」と「+50mV」上限の「Aux Voltage」が設定可能になった
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というわけで,今回はすべてを上限に設定したのだが,この状態で適用ボタン[Apply]を押すと,Core Voltageがなぜか「+93mV」に固定される現象が見られたので,今回はこの設定でテストしている。おそらくアプリケーションのバグだろう

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基板上のDIPスイッチ。ここで標準モードとLN2 Modeの切り替えが行える
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「GPU-Z」(Version 0.6.2)からVBIOSバージョンを確認したところ。80.04.09.00.F7となっている
 なお,話はやや前後してしまうが,N680GTX Lightningの基板上にはDIPスイッチが用意されており,搭載される2種類のBIOS(VBIOS)を切り替え可能だ。このスイッチは,「Radeon HD 7970」のリファレンスカードなどに用意される「Dual BIOS Toggle Switch」と,機能的にはまったく同じものである。

 ただ,N680GTX Lightningの場合,セカンダリは液冷窒素冷却に特化した「LN2 Mode」になっているのが特徴だ。LN2 Modeへ切り替えると,標準では上限が「+133%」となっているPower Limitを「+300%」にまで引き上げられるようになる。
 ゲーマーがLN2 Modeを選択する必要はまずないが,そういう機能があることは憶えておいて損はないだろう。

※2012年8月27日追記:
 MSIの日本法人であるエムエスアイコンピュータージャパンより,「N680GTX Lightningでは,初期ロットと第2ロット以降でVBIOSのバージョンが異なり,初期ロット品以外ではLN2 Modeで『+300%』設定が行えなくなっている」との情報が得られたため,入手した固体のVBIOSバージョンに関する言及を加えました。


※注意
 AfterburnerなどのGPUカスタマイズツールを用いたオーバークロック設定はメーカー保証外の行為です。最悪の場合,グラフィックスカードをはじめとする構成部品の“寿命”を著しく縮めたり,壊してしまったりする危険がありますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。本稿を参考にしてオーバークロック動作を試みた結果,何か問題が発生したとしても,メーカー各社や販売代理店,販売店はもちろん,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。


リファレンスデザインのGTX 680カードと比較

オーバークロック状態でもテスト


 テスト環境に話を移そう。今回,比較対象には,リファレンスデザインを採用したInnoVISION Multimedia製GTX 680カード「Inno3D GeForce GTX 680」を用意した。
 N680GTX Lightningのオーバークロックを行ったときのデータも併記するため,以下,文中,Afterburner 2.2.2からGPUコアクロックを「+60MHz」設定したものを「N680GTX Lightning(+60MHz)」,Afterburner 2.2.3から「+100MHz」設定したものを「N680GTX Lightning(+100MHz)」と表記して区別することや,グラフ中では「N680GTX」の表記を省略することもあらかじめお断りしておきたい。
 そのほかテスト環境は表2のとおりだ。

画像集#030のサムネイル/「N680GTX Lightning」レビュー。「オーバークロックに特化したGTX 680カード」が持つゲーム用途の価値を探る

 用いるグラフィックスドライバはテスト開始時点の公式最新β版「GeForce 304.79 Driver Beta」。テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション12.2準拠だが,今回はテストスケジュールの都合から,「Sid Meier's Civilization V」と「DiRT 3」を省略している。
 テスト解像度は,ハイエンド市場向け製品であることを踏まえ,1920×1080ドットと2560×1600ドットの2パターンとした。

 なお,これはいつものことだが,テストに用いたCPU「Core i7-3960X Extreme Edition/3.3GHz」の自動クロックアップ機能である「Intel Turbo Boost Technology」は,テストのタイミングによってその効果に違いが生じる可能性があるため,同機能をマザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化している。


標準状態でもGTX 680から1割弱の性能向上

オーバークロックの恩恵はまずまず


 以下,順にテスト結果を見ていきたいと思うが,まずグラフ1は,「3DMark 11」(Version 1.0.3)で「Performance」と「Extreme」の2プリセットにおける総合スコアをまとめたものだ。N680GTX Lightningは,GTX 680に対して8〜9%程度高いスコアを示し,動作クロックを考えると順当な結果に収まった。
 N680GTX Lightning(+100MHz)は,N680GTX Lightningに対して6〜7%程度,GTX 680に対して15〜16%程度高いスコアを示しているので,オーバークロックの効果もはっきり出ていると述べていいだろう。

画像集#031のサムネイル/「N680GTX Lightning」レビュー。「オーバークロックに特化したGTX 680カード」が持つゲーム用途の価値を探る

 続いてグラフ2〜5は,「S.T.A.L.K.E.R.:Call of Pripyat」(以下,STALKER CoP)の公式ベンチマークテストから,「Day」と「SunShafts」の両シークエンスにおける結果である。
 全テストシークエンス中,最も描画負荷の低いDayから見ていくと,N680GTX LightningとGTX 680のスコア差は2〜7%程度(グラフ2,3)。3DMark 11と比べるとやや縮まったが,傾向自体は変わっていない印象だ。一方,「標準設定」の1920×1080ドットでは,N680GTX Lightning(+100MHz)とN680GTX Lightning(+60MHz)で,CPUボトルネックによるスコアの頭打ちも見られる。

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 一方,最も描画負荷が高いSunShaftsの結果をまとめたグラフ4,5だと,N680GTX LightningとGTX 680との差が,標準設定で8〜10%程度のところ,「高負荷設定」で4〜5%程度と縮まり,加えてN680GTX Lightning(+100MHz)やN680GTX Lightning(+60MHz)のオーバークロック効果がなくなっているのが目を引く。
 この理由はおそらく,SunShaftsシークエンスにおける演算負荷が極めて高いためだろう。描画負荷が“重い”状況だと,消費電力的な余裕が少なくなり,GeForce Boostは効果を発揮しにくくなる。そのため,GPUコアクロックを引き上げた分の効果が相応に出た一方で,そこからの伸びが得られなかったということではなかろうか。

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 グラフ6,7は「Battlefield 3」(以下,BF3)の結果だ。スコアは総じて3DMark 11の傾向を踏襲するものとなっており,N680GTX LightningのスコアはGTX 680比で5〜6%程度高い。N680GTX Lightning(+100MHz)は,N680GTX Lightningより9〜11%程度,GTX 680に対しては15〜16%程度高い水準にある。

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 DirectX 11世代のGPUからすると極めて負荷の低いタイトルとなる「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)のテスト結果がグラフ8,9である。
 Call of Duty 4はグラフィックスメモリ負荷が極めて低く,かつ,(DirectX 9世代のアプリケーションを前にしたときの)GPU性能差がそのままスコアに反映されやすい。そのため,N680GTX LightningがGTX 680に対して5〜8%程度,N680GTX Lightning(+100MHz)がGTX 680に対して11〜16%程度,それぞれ順当にスコアを伸ばしてきているというのは注目しておきたいポイントだ。

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 3D性能検証の最後となるのはグラフ10,11に結果を示した「The Elder Scrolls V: Skyrim」(以下,Skyrim)である。
 Skyrimの場合,標準設定の1920×1080ドットでCPUボトルネックによるスコアの頭打ちが見られるが,それ以外のテスト条件では,動作クロック順でキレイに並んでいる。とくにN680GTX Lightning(+100MHz)やN680GTX Lightning(+60MHz)が,高負荷設定の2560×1600ドットでも平均60fpsを上回っている点は特筆すべきだろう。

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GTX 680比で“順当に”上がる消費電力

Twin Frozr IVの冷却能力は良好だが,静かではない


 さて,オーバークロックというとどうしても消費電力の増加が懸念される。そこで,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を比較してみることにしよう。
 テストにあたっては,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。

 その結果はグラフ12のとおり。N680GTX Lightningは電力周りが増強されたことに加えて,動作クロックも高いため,各アプリケーション実行時の消費電力はGTX 680比で6〜17W大きくなっている。
 オーバークロック設定を行ったN680GTX Lightning(+100MHz)とN680GTX Lightning(+60MHz)だと,後者は電圧設定を変更していないため,カードの定格動作と比べたときの消費電力増大率は低いのだが,さすがにTriple Overvoltageを活用した前者は飛び抜けて高い数字となった。このあたりは電圧変更を伴っている以上,やむを得ないところだ。

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 最後は,3DMark 11の30分間連続実行時を「高負荷時」とし,アイドル時ともどもTechPowerUp製のGPU情報表示ツールである「GPU-Z」(Version 0.6.3)からGPU温度を追った結果となる(グラフ13)。
 テスト時の室温は24℃。システムはPCケースに組み込まず,いわゆるバラック状態に置いているが,N680GTX Lightningだと,GPU温度は高負荷時でも60℃。GTX 680より相当に低い。

 ちなみに,このときのファン回転数をGPU-Zから確認すると1470rpmだった。筆者の主観であることを断って続けると,動作音はリファレンスクーラーより若干大きな印象なので,少なくとも静音クーラーとは言えない。ただ,高負荷時のGPU温度で,N680GTX Lightning(+100MHz)をリファレンスカードより10℃低いところに抑え込んでいるのは立派といえる。製品の方向性に沿った結果が出た,といったところか。

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価格が最大のネック。動作音も気になるが

オーバークロック前提なら検討に値する


製品ボックス。かなり大きい
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 LN2 Mode,V-Check Pointといった機能が,競技性の高いオーバークロックに向けたものであることに疑いの余地はほとんどない。そのため,ゲーマーがN680GTX Lightningを買うと,そういった「まず使わない機能」のコストを余計に払わされることになるのは確かだ。
 冒頭で紹介したとおり,実勢価格は6万4000〜7万円程度(※2012年8月6日現在)で,一般的なGTX 680カードの相場を大きく上回ってしまっている。また,自己責任を覚悟すればAfterburnerから調整できるとはいえ,標準設定のファン動作音がやや大きめなのも気になった。

 ただ,オーバークロック時のGPU温度を見ても分かるとおり,N680GTX Lightningなら,GPUコアやメモリ,PCI Expressの電圧を引き上げてオーバークロックを試みても,まったく問題のない温度で運用できるのは確かだ。オーバークロック状態での常用を前提にこれからGTX 680カードを選ぶときに“安心を買いたい”ということであれば,N680GTX Lightningは選択肢として検討に十分値するだろう。

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エムエスアイコンピュータージャパンのN680GTX Lightning製品情報ページ

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