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激戦のライトノベル戦線に新レーベルが創刊! 「放課後ライトノベル」第71回は『魔法使いなら味噌を喰え!』で味噌まみれ
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印刷2011/12/10 10:00

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激戦のライトノベル戦線に新レーベルが創刊! 「放課後ライトノベル」第71回は『魔法使いなら味噌を喰え!』で味噌まみれ



 もう12月ということで,振り返ってみれば2011年も大変な一年でしたが,皆さんはいかがでしたでしょうか。ライトノベル界隈でも,いろいろなことがありました。

 4年ぶりにハルヒの続編が出たり,秋山瑞人の新刊が今年も出なかったり。フェザー文庫やKCG文庫など,ネット上の小説を書籍化するレーベルが登場し,ネット出身の作家の活躍が目立つ一方で,秋山瑞人の活動が一切見られなかったり。業界最大手の角川ホールディングスが人気レーベルMF文庫Jを吸収したかと思ったら,秋山瑞人と古橋秀之が手を組んだ『龍盤七朝』シリーズの続きが一冊も出なかったり……。

 とまあ,いろいろあったりなかったりしましたが,ライトノベル界隈に関する限り,なかなか刺激的で楽しい年だったのではないでしょうか。2012年もさまざまな作品を紹介していきたいと思いますので,今後とも「放課後ライトノベル」をよろしくお願いいたします。

 ……みたいな感じで,適当にそれっぽくまとめて,凜子と迎えるクリスマスに向けての準備を進めよう,ああ忙しい,と思っていたら,一年を締め括ろうとしたこのタイミングで大ニュースが。新レーベル,「講談社ラノベ文庫」創刊ですと!? 師匠が走るほど忙しい時期によくもこんな真似を! こいつぁタダじゃおけねえぜ,というわけで今回紹介するのは,記念すべき第1回講談社ラノベ文庫新人賞〈大賞〉を受賞した,『魔法使いなら味噌を喰え!』だ。……え? 味噌? なんで?

激戦のライトノベル戦線に新レーベルが創刊! 「放課後ライトノベル」第71回は『魔法使いなら味噌を喰え!』で味噌まみれ
『魔法使いなら味噌を喰え!』

著者:澄守彩
イラストレーター:シロウ
出版社/レーベル:講談社/講談社ラノベ文庫
価格:651円(税込)
ISBN:978-4-06-375207-6

→この書籍をAmazon.co.jpで購入する


●「MISO」……それは世界を変えた物質


 さかのぼること,約100年。第一次世界大戦の最中,人類は魔法の存在を発見する。その力に驚愕した各国は発展しつつあった科学技術と共に,魔法研究に邁進した。それは人類史の新たなる幕開けであるかに見えた。しかし,魔法には一つ大きな弱点が隠されていた。

 そして時は流れて現代。高校生・八丁屋将太(はっちょうやしょうた)が朝から味噌汁を飲んでいると,突然窓を破って一人の少女が部屋に転がりこんできた。少女の名は,アルテミシア・ジュヌヴィエーヴ・デ・マジエール(通称アル)。13歳。魔法大国マジエールの第二王女である彼女は,戦闘ヘリに追われていた。アルは魔法の力で対抗しようとするものの,うまく魔法を発動させることができない。なぜなら戦闘ヘリは「魔法抑止物質」を散布することで,彼女の魔法を封じていたからだ。

 魔法抑止物質。あらゆる魔法を無効化するこの物質は,英語にすると「the Material of an Impediment to the Sorcerer’s Orders」。独特の香りを発し,とある微生物によって生み出されるこの物質は,その頭文字をとって「MISO」と呼ばれる……って,ダジャレか!

 一時は戦争の勝敗すら左右するほどの力を持った魔法は,このMISOの発見によって駆逐され,科学技術の大規模な発展もあり,以前のように特別視されることはなくなってしまった。本作の帯には,「魔法と味噌、二つが交わるとき物語が始まる!」と書かれている。つまり,某上条さんが味噌になったと考えてもらえれば話は早い。

 冒頭から絶体絶命の状況に陥っていた将太とアルだが,ここで将太の持つ特別な魔法が発揮される。その名も「MISOキャンセラー」。MISOが散布された環境下でも魔法行使を可能とする,特別な魔法だ。二人はこの力で窮地を脱したものの,アルは将太から離れようとしない。アルによると,彼女は将太の母に言われて,将太から魔法を教えてもらいにきたのだという。

 しかし,将太は「MISOキャンセラー」以外はろくに魔法を使えない。当然断ろうとするが,母の命令には逆らえないし,アルはほかに行くあてもないということで,二人の共同生活がスタートする――。


●次々に訪れる,MISO嫌いな魔法使いたち


 魔法が存在する世界なので,そこには魔法を教える学校もある。来日したアルは,飛び級の転校生として,魔法教育の最先端である国立みなとの丘学園に将太と共に通うことに。しかし,転校生は彼女一人では終わらなかった。アルを連れ戻そうとする,彼女の姉・セレスティーヌ(通称セレス)によって,クールビューティーな魔法使い・マヌエラが刺客として送り込まれていたのだ。

 マヌエラとの話し合いの末,アルは勝負に負けたら国に帰ることになってしまう。勝負は学園に迷惑がかからないよう,平和的な形でということで,水泳や数学の小テスト,そしてクラスを巻き込んだサッカー勝負などで,毎日行われることに。年齢のハンデがありながらも,将太と手を組み,あの手この手を駆使して毎回引き分けに持ち込むアル。そんな騒がしくも楽しい日常を送っていたところ,ついにしびれを切らしたセレスが直々に学園を訪れる。

 実はセレスは,アルを一人前の魔法使いにしなければ,母親が選んだ男と無理やり結婚させられてしまうのだという。そのため,アルを強引に連れ戻そうとしていたのだが,セレスは将太を見て,別の作戦を提案する。それは,将太を偽の恋人に仕立て上げ,婚約を反故にしてしまおうというものだった。おかげで将太はアルとの同居生活だけでなく,セレスとの偽カップル生活をスタートさせることになるのだが,そんな二人の様子を見てアルは不機嫌に……。


●癖があるようで,意外と素直な王道ライトノベル


 タイトルと設定だけを見ると,いかにも色物といった感じの本作だが,意外や意外,内容は結構スタンダードだったりする。ヒロインの性格も,魔法少女を目指して一生懸命なアルに,クールなドSのマヌエラ,高飛車で他人を自分のペースに巻き込むセレスと,バリエーション豊か。魔法によるバトルあり,変身シーンあり,学園でのドタバタあり,お風呂でのちょっとエッチなイベントありと,お約束要素を含みつつも,映像化された際には,より楽しめそうなイベントも多く取り入れられている。

 それでいて,味噌を中心とする魔法設定を始め,アルの呪文の詠唱が「ヤンヌさん家のケルベロス、ちょいと左のお口から火の玉出してくださいな」といった具合に妙にメルヘンチックだったり,担任の女教師が極度に緊張すると,デフォルメなしのリアルなカバに変身してしまったり(イラストがまた気持ち悪い)するなど,この作品ならではの個性もしっかり持っている。

 癖はありつつも,ライトノベル読者が自然と馴染める要素を併せ持つ本作は,あたかも日本人にとっての味噌のような作品だ。レーベル名に“ラノベ”を冠した,講談社ラノベ文庫の船出に相応しい一作と言えるだろう。

 これまでも講談社では,講談社ノベルスから西尾維新をデビューさせたり,講談社BOXというレーベルを立ち上げ,本連載の第67回でも紹介した『異界兵装 タシュンケ・ウィトコ』のように,ライトノベルと一般小説の境界上の作品を出したりしている。その講談社が,このたびついに講談社ラノベ文庫で,さまざまなレーベルが跳梁跋扈するライトノベル戦線に殴り込みをかけた。今後の展開が楽しみである。

■大物作家が目白押しの創刊ラインナップをまとめてチェック

『セクシャル・ハンター・ライオット』(著者:築地俊彦,イラスト:はましま薫夫/講談社ラノベ文庫)
→Amazon.co.jpで購入する
激戦のライトノベル戦線に新レーベルが創刊! 「放課後ライトノベル」第71回は『魔法使いなら味噌を喰え!』で味噌まみれ
 講談社ラノベ文庫の創刊ラインナップとして発売されたのは,本作だけではない。ほかにも大物作家たちによる新シリーズが目白押し。その顔揃えは野球で言うなら巨人軍,マージャンで言うなら,配牌役満イーシャンテンみたいな感じだ。それでは,ノベライズ作品を除く各作品を順番に紹介していこう。
 最初は,築地俊彦の『セクシャル・ハンター・ライオット』。タイトルの頭文字をとってみると「セクハラ」。まあ,要はそういう話なのだが,本作が世にある似た傾向の作品と違うのは,皆大真面目であるという点。人類に仇なすキリオーニラと戦うためには,選ばれたハンターの力が必要なのだが,その力の源は性欲! 〈性欲〉と書いて「ちから」と読ませる新感覚異能バトルなのだ! というわけで,みんな変態行為に勤しむのだが,そこにエロさを求める欲望は感じられない。みんな真剣です。
 榊一郎の『アウトブレイク・カンパニー』は,オタクの引きこもりが,新たに発見された異世界への親善大使として,アニメやゲームを輸出しようとするお話。現代の日本で世界に誇れるのは,やっぱりジャパニメーションを筆頭とするオタク文化ですよねーと思うものの,相手がファンタジー世界だと大きな困難がある。だって,向こうは平気で種族による身分差別とかあるんだもの。我々が普段楽しんでいるマンガやライトノベルが,いつもは気づかないような,文化によって支えられていることが再認識できる一作だ。
 竹井10日の『彼女がフラグをおられたら』は他人の死亡フラグや友情フラグを見ることができる主人公による,ハーレムラブコメ。作者が得意とする,だだ甘なお姉ちゃんや,どこかズレているお嬢様も健在なので,竹井ファンなら買い。また,作者のほかの作品で見られるようなドギツい下ネタも比較的抑えめで,舞台も一応普通の学園なので,竹井10日を知らない人もこれを機に読んでみるといいだろう。
 そして最後に紹介するのは,杉井光の『生徒会探偵キリカ』。生徒会予算8億円の巨大学園を舞台に,生徒会会計兼探偵のキリカと,主人公のひかげがさまざまな事件を解決していく話。ヒロインのキリカが普段は生徒会室に閉じこもっていることもあり,ニート探偵が主人公である作者の別作品『神様のメモ帳』を彷彿とさせるが,大きな違いとして,事件が学園内で完結していることと,ヒロインが会計なので,すべての事件にお金が関わっていることが挙げられる。事件だけではなく,生徒会とそれに対抗する別組織との権力闘争も楽しめそうだ。

■■柿崎憲(ライター/仏教徒)■■
『このライトノベルがすごい!』(宝島社)などで活動中のライター。数えてみたら約2か月ぶりの登場となった柿崎氏。講談社ラノベ文庫の創刊ラインナップの中で一番驚いたのは,高校1年生になったどれみちゃんが主人公の『おジャ魔女どれみ16』だとか。「そうか,おんぷちゃんも,もう16歳かぁ。俺も年を取るわけだなあ……」としみじみ語っておりました。16歳で魔女見習いってどうなのよと思わないでもないですが,19歳で魔法少女という前例もあるので,まあアリなのかな。
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