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[GDC 2012]“シミュレーションゲームの父”ことシド・マイヤー氏が語る「デザインとは,興味深い選択の連続」の真意
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印刷2012/03/08 17:14

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[GDC 2012]“シミュレーションゲームの父”ことシド・マイヤー氏が語る「デザインとは,興味深い選択の連続」の真意

シド・マイヤー(Sid Meier)氏
画像集#001のサムネイル/[GDC 2012]“シミュレーションゲームの父”ことシド・マイヤー氏が語る「デザインとは,興味深い選択の連続」の真意
 業界のリーダーによる基調講演がなくなったGDC 2012ではあるが,誰もが認める実力者の一人であるFiraxis Gamesのシド・マイヤー(Sid Meier)氏がセッションを行い,自らのデザイン哲学について「デザインとは,興味深い選択の連続」だという熱弁を振るった。“シミュレーションゲームの父”という異名を持つマイヤー氏について細かい説明をする必要はないだろうが,彼は「Sid Meier’s Civilization」や「Sid Meier’s Pirates!」など数々のヒット作を生み出し,現在もFiraxis Gamesにおいて第一線で活躍しているゲームクリエイターだ。

 そもそも「デザインとは,興味深い選択の連続」というセリフは,1989年のGDCの講演において,マイヤー氏の口から飛び出した何気ない言葉だった。それが現在でも,ネット上でゲーマーや開発者達に語り継がれているという事実を,マイヤー氏は“自分の名前で検索”して知ったという。
 しかも自分の発言にはさまざまな尾ひれがつき,賛否両論となっているらしく,今回のセッションではあらためて,この「興味深い選択」(Interesting Decisions)について考え直してみたという。

画像集#002のサムネイル/[GDC 2012]“シミュレーションゲームの父”ことシド・マイヤー氏が語る「デザインとは,興味深い選択の連続」の真意

画像集#003のサムネイル/[GDC 2012]“シミュレーションゲームの父”ことシド・マイヤー氏が語る「デザインとは,興味深い選択の連続」の真意
画像集#004のサムネイル/[GDC 2012]“シミュレーションゲームの父”ことシド・マイヤー氏が語る「デザインとは,興味深い選択の連続」の真意
 マイヤー氏は,「もちろん,リズムゲームやパズルゲームのような,答えが一つしか導き出せないタイプのジャンルには当てはめられないが」と前置きしつつ,とくにゲーム開発のデザイン過程においては,「興味深い選択」について強く意識しながら,ゲームを組み立てていくと語った。
 この「興味深い選択」が何なのかについてだが,マイヤー氏は「プレイヤーが何かを決めるときに,どちらのチョイスを優先するか」という選択肢を与えることだと明言。例えばRPGで,今500ゴールドの剣を買えば,戦闘には有利だがサブクエストの達成が遅れてしまうというケースや,レースゲームで自分の車のハンドリングをアップグレードするか,それともエンジンを先にアップグレードするかで変化する,その後のプレイスタイルなどが当てはまる。マイヤー氏のCivlizationにおいては,スカウトを先に生産することで拡張を急ぐか,戦士を生産してバーバリアンの侵攻に備えるかで,中期的なゲームの展開が変わってくるという類の話だろう。
 このように「興味深い選択」とは,短期,中期,長期的な複数階層に及ぶ影響をゲームに与えていくもので,さらにプレイヤーのプレイスタイルやパーソナリティによっても変化していくべきというのが,マイヤー氏の持論である。

画像集#005のサムネイル/[GDC 2012]“シミュレーションゲームの父”ことシド・マイヤー氏が語る「デザインとは,興味深い選択の連続」の真意
 また,マイヤー氏はこういったさまざまな選択が,どのような影響を生むのかをゲーム内で明確に提示しなければ,“興味深い”ものにはなり得ないという。何かを選んだ結果,ゲームが思いも寄らない方向に進展してしまうのであれば,プレイヤーはとても楽しめないだろうと続ける。マイヤー氏自身が歴史をテーマにしたゲームを好んで作るのは,「プレイヤーが理解できる状況がすでに提示されているから」とのこと。モンゴル(ジンギスカン)と国境を接していれば,自国へ侵攻されるのは時間の問題だということは,多少の歴史的知識があれば十分に予測できるというわけだ。

 そんなマイヤー氏は,「常にプレイヤーの席に座ったつもりでゲーム開発をするべきだ」と,会場に集まった若手開発者たちに説く。実際マイヤー氏は,自分ですべてのプログラミングをしていた時代から,テストプレイを兼ねて制作中のゲームで遊ぶことを繰り返し,内容をブラッシュアップさせる手法を取っているが,今でも開発期間の半分は,彼自身によるテストプレイの時間だという。「アイデアを提供してくれそうな歴史マニアや,自分の思い通りにゲームを展開できないと満足しないゲーマーから,役に立つフィードバックが得られることは少ない」が,そういう人々がコンピューターの向こうに座っているのを意識すべきだということである。

 マイヤー氏は最後に,「もっとも,興味深い選択を並べていくだけで,良いゲームが生まれるわけではありませんよ」と会場に念を押した。そして,こういったゲームシステムの無機質な部分を,ファンタジーというオブラートで包んでしまうことが,プレイヤーとゲームの友好関係を築いていくための秘訣であると締めくくった。

画像集#006のサムネイル/[GDC 2012]“シミュレーションゲームの父”ことシド・マイヤー氏が語る「デザインとは,興味深い選択の連続」の真意
  • 関連タイトル:

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