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[G★2009]MMORPGに新しい体験をもたらすための「Blade & Soul」開発チームによるアプローチと挑戦とは
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印刷2009/11/28 03:00

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[G★2009]MMORPGに新しい体験をもたらすための「Blade & Soul」開発チームによるアプローチと挑戦とは

 11月26日に開幕したG★2009に併催されている開発者向けイベントICON2009(International Content Creator's Conference 2009)で,NCsoftのBae,Jae Hyun氏がキーノートスピーチを行った。氏は,「Blade&Soul」のプロデューサーだ。
 講演タイトルは「Creating a Different Experience by examples of Blade and Soul」であり,昨年のKGCでの講演タイトルと酷似しているのがやや気になった。内容的には同一のテーマを語るものではあったものの,別モノだったのでひと安心(関連記事)。微妙に重複する部分もあるのだが,それだけ大事な点だということで,今回の内容を追って紹介してみたい。

関連記事:[G★2009]NCsoftブースに展示中の「Blade & Soul」。最新映像から読み解く次世代MMORPG


次世代ゲームの「次世代」の罠


画像集#008のサムネイル/[G★2009]MMORPGに新しい体験をもたらすための「Blade & Soul」開発チームによるアプローチと挑戦とは
Bae,Jae Hyun氏
 ハードウェアのパフォーマンスは絶えず向上を続けている。そこでは往々にして「次世代」という言葉が使われるが,次世代とは別に3D技術の話ではないとBae氏は語る。現状を見れば,ゲームは高解像度に,そしてハイポリゴンになり,Shader Model 3.0で高度な質感表現もできるようになった。かつてはCMで使われていたレベルのCGがリアルタイムに生成できるまでになってきている。
 だがそういった技術の発展は,ゲーム開発者にとって壁ないし罠になるかもしれないと氏は警告している。単にグラフィックスが綺麗なことが次世代であるのなら苦労はないのだが,それは本質ではないという。

 ここで氏は例として,TRPG(テーブルトークRPG)とCRPG(コンピュータRPG)を挙げている。TRPGは人が集まってシナリオやサイコロに従って,想像力を中心にゲームを進める方式であり,口頭で言語によるゲームプレイが行われる。それがCRPGの時代になり,よくなった点としてはゲームの幅が広がって,アクション要素やRTSのようなシステムも取り込むことが可能になったことを挙げる。
 RPGに必要なのは「どんな感情や経験を与えることができるか」だとしたうえで,コンピュータの導入により,表現力はむしろ下がり,TRPGクラスのストーリーは再現できなくなった。ハードウェアの性能が上がってきても,制限は続いているという。

前世代グラフィックスと最新グラフィックスの表現力の違い。「壁」についての話なので壁の画像にしたとのこと
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Blade & Soulの目指すところと数々の課題


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 以上のような前置きに続いて,ようやくBlade & Soulの紹介が行われた。Blade&Soulは,武侠アクションRPGである。登場するキャラクターはすべて武術の大家であり,刀を投げると100mくらいは飛ばせる超人的な存在だ。このゲームで与えたい感情的な要素は,超人プレイができることの満足感であり,人は誰もがスーパーヒーローに憧れるものだとしている。武侠の身体能力は,スーパーヒーローそのものである。
 氏も最初に見たスーパーマンの感動が忘れられず,アメコミにのめり込み,ハルクやアイアンマンに憧れたとしているが,ハリウッドがそれを映像化した結果,実写では幻滅させられるようなものしかなかったという。変な服を着たおじさんでは感情移入ができないのだ。

 この部分に関しては,まさに技術が必要であるという。武侠というのは常識的ではない存在である。まず,普通に歩いたりはしない。屋根を走ったり,空を飛んだりするものである。攻撃力も普通ではない。単に殴ったり切りつけたりといった普通の動きでは済まされない。そこにはオーバーアクションの様式美が必要であるとしている。
 キャラクターも大事だが,より重要なのは実は服装であるという。着物の裾や尻尾がひらひらと自然に動いてこそ意味を成すのだ。そういった表現のために物理演算を取り入れる必要がある。
 スキルなどでは派手なエフェクトは必須である。パーティクルなどのいろいろな技術をフル活用しなければならない。

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 また,格闘になると技術的な上限というものがなくなってくるという。
 キャラ数分の動きを用意したり数100種に上るMobの動きを用意したりする。そのうちアニメータでは対応できなくなってくる。ゲーム内にマウント(馬乗りでの攻撃)を取り入れようとしても,普通は30秒くらい考えて取りやめる。組み合わされるキャラクターやMobのパターン数分の動きを用意することを考えると,それは実現可能ではないと気付くからだ。

 そこで技術が必要になる。

 コンソールゲームであればまだいくらか簡単なのだが,ネットワークゲーム,MMORPGでは非常に難しい処理が必要になるという。どうやら,Blade & Soulの開発の過程では,どんなキャラと組み合わせても破綻しない格闘システムが作られたようである。
 
 そういった,マウントや,刀のクローンを飛ばしての派手な攻撃を行えるようにすることでプレイヤーにカタルシスを与えることができる。そういったものを実現するためにも技術力は非常に重要だ。

 次の重要なものとしては感情移入が挙げられた。種族の紹介で,グラフィックスチームにとくに指定なしでキャラクター画像を選ばせたのだそうだが,どうやらBlade & Soulのデザインチームは綺麗系よりも可愛い系が好きらしいとのこと。個人的な好みには非常に多様性があり,多くの人に自分の分身として感情移入できるアバターキャラクターを提供するためには,非常にたくさんのパターンを用意する必要がある。

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 また,ゲーム内のNPCにも感情移入できなければならない。NPCに感情移入してもらうには,まず時間が必要だという。
 不謹慎な例えではあるが,アフリカで1000人が死んでいるというニュースを聞いたときよりも自分の飼っている一匹のペットが死んだときのほうが,人は深く悲しむものであるというのは,多分真実だろう。愛着というのは計算できるものではなく,培うには長い時間が必要になる。
 また,魅力的なNPCを実現するためにはさまざまな手段が必要だという。人間の脳は,思考でも研究でもなくコミュニケーションのためにその大部分を使用するといわれており,とくに人の表情やモーションが重要になる。NPCをただのクエストベンディングマシンから脱却させるためには,そういった部分に多大な注意を払う必要があるという。

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生き生きとしたNPC

 続いてのテーマは「制限と除去」というものだが,制限は主にUI(ユーザーインタフェース)に関するもので,除去とは,面白くない部分を除去すれば面白くなるかもしれないというアプローチのようだ。
 コンピュータを使ううえで,UIが制限されている状況はいくらでもある。そういった場合に,新しいUI(ハード的なものなど)を作るのではなく,工夫によって対応していくことが重要だという。

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 例として挙げられた「アーケードゲーム」は,非常にUIが制限されている好例だ。1本のスティックとボタンがいくつか。それを使いこなしてきた先人の知恵に学ぶところは大きいという。ストリートファイターなどの格闘ゲームは偉大な発明であると氏は語る。非常に制限された状況下で実に多彩な動きを可能としている。
 次に挙げられたのはHALOだ。通常のFPSでは,たくさんの武器を持ち運んで,切り換えながら戦闘を行うのだが,ジョイパッドではインタフェースは非常に制限されている。HALOでは,携行できる武器を2種類に制限することで,武器の組み合わせが非常に重要となり,むしろゲーム性を向上させている。
 また,マウスというのはFPSにとって欠かせないデバイスなのだが,ターゲッティングをサポートすることで,従来は非常にハードコアなゲーマーのためのジャンルだったFPSを,一気にカジュアルなものに変化させるという革命を引き起こしている。

 アクションゲームやFPSではなく,RPGについて見てみると,その歴史からいろいろなことが分かる。まず,CRPGが生まれた土台であるApple IIやCommodore 64には独立したカーソルキーもなかったという。そんな環境で生まれたCRPGが。タイピングが非常に難しい日本に入ってきて,メニュー選択式などの新しいインタフェースが広まっていった。さらにドラゴンクエストなどでメニュー方式は洗練され,CRPGの本流に逆輸入されるまでになっている。
 さらに携帯電話の制限されたUIなどの話も少し出てきたのだが,詳しい話は割愛されていた。とにかく,新しいインタフェースというものは,登場すると必ずゲームを変えてきていたという。マウス,アナログスティック,タッチスクリーン。いずれも,ゲーム業界に大きな影響を与えているのは事実であろう。


Blade & Soul


 ここからはまたBlade & Soulの話に立ち返り,実際の開発スタイルに還元した例が紹介された。
 例えばスキルについて。普通のMMORPGには40〜80くらいのスキルがあるということだが,UIとしては12個のスロット,それが3〜12ページあるというインタフェースが多いという。さらに,アイテムの使用などでもスロットは必要になる。
 開発チームは,ここであえて制限を加えてみたのだという。
 Blade & Soulでは,基本的に8個のスロットとW/A/S/Dキーと少しのキーだけを使うようにしている。制限されたUIでプレイヤーが不満を抱くかというと,必ずしもそうではないという。意図的に制限したUIが持つ可能性は計り知れない。

 次に,やっていても面白くない要素の除去でゲームが面白くなる可能性について語られた。どんなものが面白くないかというと,例えば採集や勝てない戦争,Botが跋扈するような状況,(理由は忘れたが)最終ボスだそうだ。
 プレイヤーにとって苦痛になりそうなものが並んでいる。こういったものから解放されるというBlade & Soulではどのようなゲーム体験が提示されるのだろうか。非常に楽しみである。

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 新しい要素を開発していくためには,たくさんのものが必要になるし,また,そういったものを受け入れる姿勢で開発を続けているという。Blade & Soulでは,戦闘システムに格闘を加えた。また軽功での自在な移動も取り入れた。空中戦闘やマウントなど,諸々のカッコいい要素を入れている。それらの実現に,開発チームは日々努力を重ねているという。
 さらに,防御や反撃といった要素も取り入れたことで,新しいアニメーションシステムが必要になり,新しいターゲッティングシステムを作る必要も出てきたとのこと。今回は,広報からNGが出たとかで,開発中の映像公開を取りやめざるをえなかったということなのだが,実例を提示できないのをBae氏は非常に残念がっていた。しかし,もうすぐ面白いものを見せられるだろうとのことなので,これには期待したい。

 最後に質問に答える形で,UIや技術の重要性などを再度説いた。新しいジャンルのゲームができると,多くのゲームはそのUIを踏襲するのだが,それではどうしても同じようなゲームしかできてこないと氏は語る。
 最重要なのは感性の部分であるという。NPCが延々としゃべっても,そのセリフは実際に読まれているのか? 感動が抜けたRPGとはなんなのか? と問いかけ,ゲーム開発では感性に対する配慮が最重要であることを強調していた。

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 あまりおおっぴらには語られることはないが,かつて「Lineage III」として作られようとしていたゲームから,開発チームの大半が分離してTERAが作られた。ある意味Blade & Soulは,その従兄弟のようなゲームであり,多分に似通った特徴を持っている。おそらくはTERAとの差別化という難題を前に考え抜かれた末に生まれたのがBlade & Soulのシステムであろう。
 TERAは,「次世代MMORPG」と呼んでも差し支えないくらいにアクションやビジュアルでの変革をもたらしているのは事実である。しかしBlade & Soulでの格闘システムの導入は,その次世代よりも,さらに先の世代に足を踏み入れている感がある。恐ろしいことに,こういったチャレンジは格闘部分のみに限った話ではない。「システム一つが,ほかのゲーム一つの開発と同じ規模」という言葉には偽りはないのだろう。
 マウントシステムを始めまだ未完成な要素が多く,日々改良が続けられているとはいうものの,講演を終えたBae氏は自信に満ちていた。これは,講演で語られていたように,制限されたリソースのなかで,知恵を振り絞って新しいものを生み出してきた成果によるものではなのだろう。
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