連載
インディーズゲームの小部屋:Room#387「Don’Yoku」
七夕にかこつけて,お星さまに早く梅雨が明けてほしいとお願いした筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第387回は,Dark-Spot Studioの弾幕シューティング「Don’Yoku」を紹介する。肌寒いので長袖を着ると,じめじめと蒸し暑くて,一体どうしたらいいのやら……。
本作は,空賊が飛行船の航路を荒らし,旅行会社によって彼らに多額の懸賞金が懸けられた架空の1920年を舞台に,一攫千金を狙う賞金稼ぎとなって空賊と戦う,スペイン生まれの縦スクロールシューティングだ。
タイトルを見て「もしかして?」と思った人がいるかもしれないが,“Don’Yoku”はそのままずばり日本語の“貪欲”のことであり,タイトル画面にもでかでかと漢字のロゴがあしらわれている。それにしても,何というネーミングセンス……。
日本人的な感性におけるカッコよさはさておき,とにもかくにもインパクト抜群なタイトルを持つ本作だが,ゲームのほうも1990年代の日本のアーケードゲームを意識した,レトロスタイルのシューティングゲームとなっている。プレイヤーは,自機の性能がそれぞれ異なる,Iron Chin,The Baron,Matilde Di Canossaという3人のキャラクターから一人を選び,空賊が跋扈する大空に飛び立つのだ。
操作体系は,方向キーでの移動に加え,攻撃と“貪欲開放”の2ボタンで行う方式。正直,何を言っているのかよく分からないと思うが,順番に説明を試みるので,しばしお待ちください。
まず攻撃ボタンだが,これは連打することでマシンガン(通常ショット),長押しで極太のエナジービームを発射するというもの。マシンガンを敵に当てると“貪欲ゲージ”が上昇し,ゲージが最大になると貪欲を開放できるという貪欲な仕様だ。
一方のエナジービームは威力が高く,ビームを当てた敵を得点アイテムであるコインに変換できる。ただし,エナジービームの使用中は貪欲ゲージが増えないため,臨機応変に切り替えながら戦うべし。
で,先ほどから何度も出ている“貪欲”とは一体何かというと,これは要するに“ボム”のこと。貪欲を開放すると,敵弾をコインに変換すると同時に,敵にダメージを与えられる。ボスがばら撒いてくる,どう見ても避けきれないような弾幕は,貪欲を開放して相殺してやろう。説明はしてみたが,やっぱり意味が分からんね……。
本作は日本語表記に対応しており,ゲーム難度は簡単なほうから順に,プラクティス,ノーマル,アーケード,マニアックの4段階あり,プラクティスとノーマルでは被弾した際にオートで貪欲が発動する“自動貪欲”となっている。これはつまり,オートボムのことなのだが,あまりの言葉のインパクトに頭がくらくらしそうだ。自動貪欲!
下に掲載したムービーでも,「ファスト」「テンス」「輝かしい」といった,分かるような分からないような日本語が踊っており,なんとなく微笑ましい気持ちになれる。
肝心のゲーム内容はというと,どことなくケイブのシューティングゲームを思わせる,ごくオーソドックスな弾幕系シューティングなのだが,全体的に作りが荒く,目の肥えた日本のゲーマーにはやや物足りないかもしれない。
せっかく,弾やキャラクターが大きめで,見た目にも派手な極太ビームまで用意されているのに,効果音やエフェクトが地味なせいか,いまいち“撃ち込んでる感”に乏しく,全5ステージとボリュームが少なめな点も残念に感じられる。
とはいえ,日本のアーケードゲームへの愛情が感じられる,それなりに遊べるゲームではあるので,奇妙な日本語をどどーんと使った,スペイン産の弾幕シューが気になる人は試してみてはいかがだろうか。BGMは徹頭徹尾,バリバリのメロディックパワーメタルという実に貪欲なチョイスで,終始ノリノリでプレイできたのも個人的に好感触だ。そんな本作は,SteamやMagino Driveで,1180円で発売中です。
■「Don’Yoku」公式サイト
http://donyoku.com/- この記事のURL:
キーワード