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[GDC 2015]アメリカのフリーランスライターが「Steam」を統計学の観点から独自調査。なぜかアカウント総数がValveの公称値より1億人も多い?
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印刷2015/03/07 00:00

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[GDC 2015]アメリカのフリーランスライターが「Steam」を統計学の観点から独自調査。なぜかアカウント総数がValveの公称値より1億人も多い?

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 Valveが運営する「Steam」について,「公式発表されているセールスデータを統計学の観点から調査したレポート」がGame Developers Conference 2015のセッションで公開された。そのセッション名は「Analyzing the Steam Marketplace Using Publicly Derived Sales Estimates」(セールスデータからSteam Marketplaceを分析する)で,スピーカーは海外メディアArs Technicaなどで活躍するフリーランスライターのKyle Orland(カイル・オーランド)氏である。

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スピーカーを務めたKyle Orland氏
 4Gamer読者にお馴染みのSteamでは,ユーザーのアカウント名のほかに,17桁の数字からなる固有番号「Steam ID」が存在する。今回の調査にあたって,オーランド氏は「ウェブスクレイピング」と呼ばれる,Webサイトから情報を自動的に抽出する手法を用いて,Steam IDのデータを収集しようとしたという。だが,それがValveの目に止まって問題になり,結果的にはValveからデータ解析用API,その名も「Valve API」の提供を受けることで調査を続行できたそうだ。
 オーランド氏は,1日あたり17万人から22万人のプレイヤーを3日間連続で追跡するという手法を繰り返し,そこから得られたデータと大手パブリッシャが発表する販売本数を比較したところ,その差は10%以内に抑えられるほどの精度になったという。

 しかし,その調査の過程で,オーランド氏は不思議なことに気付いた。氏によると,Steam IDの最も大きな番号から最も小さな番号を引くと,Valveが公表しているアカウント総数の「1億2500万」よりもかなり多い「2億2100万」になったというのだ。
 この点については,セッションの終盤に行われた「Q&A」でも話題になったが,「Free-to-Playゲームを遊ぶため」または「悪さをするため」の“捨てアカ”が,その理由ではないかと推測されていた。Valve側が捨てアカの実態を正確に把握し,アカウント総数の公表時に除外していたのではないかというわけだ。
 もちろん,あくまでも推測の域を出ないが,オーランド氏は「そのような可能性を含め,今後もデータを収集し続けて答えを見つけたい」と語っていた。

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 さて,Steamの調査データを公開する前に,オーランド氏はいくつかの注意を促していた。
 まずはゲームソフトのプレイ時間についてだが,2009年3月以前は個々のプレイ時間が非公開だったため,古いゲームはプレイ時間の総計が導き出せず,誤差が大きくなるという。
 また,公式発表では約2600万本のセールスがあるとされる「Dota 2」,同じく約2000万本の「Team Fortress 2」は,Steamで最も人気があるValveのゲームだが,なぜかValve APIでは弾かれてしまうというバグ(もしくは仕様?)になっていたとも語っていた。

 さらに付け加えると,SteamはPCゲーム市場の75%近くを占有するといわれているが,当然ながら市場には競合としての「GoG.com」や「Origin」などが存在するため,Steamだけを調査したオーランド氏のデータは“完璧”ではない。「GamersGate」や「Humble Bundle」などで購入されたゲームが,Steamにリンクされる形でセールスデータに反映されることもあるので,そうした点も考慮しなければならないだろう。

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 というわけで,最初のデータは,Steamのユーザーが「所有しているゲーム」の上位10本。前述の理由からDota 2とTeam Fortress 2は入っていないが,それでも「Counter-Strike: Source」(約1270万本)を筆頭にValveのソフトがずらりと名を連ねている。
 気になったのは,僅差で2位につけている「Unturned」(約1230万本)の存在だ。メディアへの露出は極めて少ないものの,2014年7月にリリースされたゲームとしては,異例のダウンロード数ではないだろうか。実際,レビューの評価は非常に高く,Free-to-Play型のゲームであるとはいえ,Steamユーザーの約1割がダウンロードしているのは立派だろう。

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 ところが,Steamユーザーには,ダウンロードしたゲームを遊んだことがないという人が意外に多い。無料ゲームをダウンロードしたはいいものの,ほかのゲームを遊んでいるうちに忘れてしまったり,セール価格で購入したまま“バーチャル積みゲー”になってしまったりというケースが多いのである。
 オーランド氏の分析によると,Steamユーザーがダウンロードしたゲームのうち,まったくプレイしていないものは26.1%もあるという。プレイ時間が1時間以下のゲームも含めると,その割合は45%となる。
 逆に,平均プレイ時間が30時間を超えるゲームは13%とのこと。「プレイヤーが熱中した」と呼べるものは,Steamで配信されている4500本近いタイトルのうち,600本程度という計算になる。

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 下のスライドは,「所有しているゲーム」の上位10本が実際にプレイされているのかを,色分けで分かりやすく表示したものだ。「Half-Life 2: Lost Coast」「Half-Life 2: Deathmatch」は,「Half-Life 2」を購入すると無料で付いてきたゲームだが,まったく起動していない人が圧倒的に多いことが分かるだろう。
 なお,Half-Life 2も未プレイの人が半数近いが,これに関しては,前述したように,本作が「2009年3月以前」にリリースされたゲームであることを考慮する必要がある。

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 続いては,「最も遊ばれているゲーム」の上位10本のデータ。こうなると古いゲームがリストから落ちて,「The Elder Scrolls V: Skyrim」や「Sid Meier’s Civilization V」,「Terraria」といった近年の作品がランクインしている。「Steamプラットフォームにおける真のヒット作」といえるものに近いデータではないだろうか。

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 一方,プレイヤー全体の総プレイ時間から算出した上位10本となると,Sid Meier’s Civilization Vが8位から4位にランクアップ。また,「Football Manager 2014」がランクインを果たしている。ストラテジーゲームやマネージメント系シミュレーションゲームは,プレイヤー1人あたりのプレイ時間が長いということが明らかにされているわけだ。

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 驚いたことに,「最も遊ばれているゲーム」の上位13本は,今回の調査対象となったそのほかの4391本と総プレイ時間がほぼ等しい。コンシューマゲームでは以前から知られていたが,PCゲームでも「遊ばれているゲームはごく一部」であることが浮かび上がった。

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 セールス面においても,人気作への偏重傾向は明白だ。セールスの上位15%に入るゲーム,つまり約675本のゲームが全体の80%を占めるという。その一方で,下位75%のゲームは全体の10%を食い合っているのである。
 近年,Steamに対応するゲームが急激に増加したことで,配信してもプレイヤーに認知されなくなっているゲームが多くなっていることは,筆者の連載記事「Access Accepted 第436回:デジタル配信時代に求められる“ディスカバラビリティ”」で解説しているが,こうした点はValveによる改善が求められるところだろう。

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 下のグラフは,オーランド氏が統計を取り始めた2014年4月4日以降,ゲームを購入したプレイヤー1人あたりのプレイ時間の上位10本だ。これによると,Football Managerシリーズの圧倒的な定着度とともに,「Dark Souls II」「Europe Universalis IV」「Arma III」といったタイトルも熱狂的に支持されていることが分かる
 また,新しいタイトルではないが,「Counter-Strike: Global Offensive」「EVE Online」がランクインしているのも見逃せない。

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 今回公開されたような分析を行ったオーランド氏の努力には感嘆するばかりだが,そこから導き出されたデータは衝撃的で,これまでValveが率先して公開することはなかっただけに,極めて興味深い内容といえるだろう。
 オーランド氏は「まだまだSteamの内面を知るためのデータの取り方はある」と述べ,今後も継続して調査することを明らかにしている。ひょっとすると,来年のGame Developers Conferenceで,その最新データを公開してくれるかもしれない。

GDC公式Webサイト

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