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Access Accepted第743回:MicrosoftによるActivision Blizzardの買収が難航。16の国や地域で審査され,アメリカでは独占禁止法違反による提訴も視野に
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印刷2022/12/05 13:30

業界動向

Access Accepted第743回:MicrosoftによるActivision Blizzardの買収が難航。16の国や地域で審査され,アメリカでは独占禁止法違反による提訴も視野に

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 2021年7月にセクハラや不均等な雇用条件などの問題が明るみに出て多くの幹部が退社するなどし,上層部への突き上げや株価低迷などに苦しんだ挙句,半年後にはMicrosoftに買収されることになったActivision Blizzard。その話題から1年近くが経過したが,あまりにも大きな買収であるため,各国での独禁法審査も厳しく,進みは悪いようだ。年始に話題を集めたMicrosoftとActivision Blizzardの買収についての現状をまとめておこう。



イギリスではより厳格な審査を開始


 MicrosoftがActivision Blizzardと約687億ドルにおよぶ巨額買収を行うことをアナウンスしたのは,今年初めの1月18日のことだ。これは,2020年9月にアナウンスされたMicrosoftによるBethesda Softworksの買収額である75億ドルの9倍を超える金額であり,これまで数多の企業を買収してきたMicrosoftにとっても過去最高の買収額である。もちろん,ゲーム業界にとっても史上最大の買収劇である。

 こうした巨額の買収が行われる際には,どんなビジネス分野であっても必ず独占禁止法への抵触が審査され,アメリカの場合であれば連邦取引委員会(FTC/Federal Trade Commission)が,買収によって不公正な市場競争に陥ってしまわないかどうかを法的にチェックしていくことになる。
 こちらの関連記事でも紹介しているように,MicrosoftとActivision Blizzardは当初から,FTCによる審査が終了して買収合意に許可が出るのは「2023年第2四半期」と見積もっているようだ。

今回の買収によって最も注目されているのが,Activision Blizzardの一翼を担うKing.comだ。「キャンディクラッシュ」でMicrosoftの弱みだったモバイルへの足掛かりとなってくれるだろうか
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 もっとも,現時点ではMicrosoftとActivision Blizzardの“旗色”はあまりよくはないようだ。イギリスの競争・市場庁(Competition & Market Authority)は9月15日付けで,Microsoftから競争上の懸念に対する対応策が提示されなかったことを理由に,より厳格な調査を開始した。これは,ゲーム機だけでなく,ゲームのサブスクリプションサービス(Game Pass)やクラウドゲーミング(Xbox Cloud Gaming)などの市場で,競争が大きく抑制されかねないという懸念によるもので,買収による市場への影響がより多くの資料をベースに調査されていくことになるという。

 MicrosoftによるActivision Blizzardの買収については,プラットフォームホルダーのライバルであるSony Interactive Entertainment(SIE)も懸念を示すところで,同社CEOのジム・ライアン(Jim Ryan)氏が,MicrosoftのXbox部門を率いるフィル・スペンサー(Phil Spencer)氏のインタビュー記事に対して公式に見解の齟齬をアナウンスしたことは,当連載の第735回で紹介したとおりだ。
 ゲーム市場に数多存在するフランチャイズの一つではあれど,「コール オブ デューティ」(CoD)は世界有数の売り上げを誇る巨大IPだ。並べて書くのもどうかと思うが,たとえば今年公開されたトム・クルーズ主演の映画「トップガン マーヴェリック」は,映画史上初めて世界での興行収入が10億ドルに到達したことがローンチから1か月後にアナウンスされたが,「Call of Duty: Modern Warfare II」はリリース後の10日間で10億ドルを売り上げている。
 この数年間は,「CoDのメインプラットフォームはPlayStation」というイメージが定着していたこともあり,SIEに与える影響は計り知れない。

ローンチ5日間で2500万アカウント獲得がアナウンスされた「Call of Duty: Warzone 2.0」
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二十数年ぶりにMicrosoft対FTCの裁判が勃発か


 MicrosoftとActivision Blizzardの“合体”が市場に与える影響については,イギリスだけでなく現在EUを含む16の国や地域で独占禁止法抵触の審査が行われているという。もちろん,その中には連邦取引委員会が監督するアメリカも含まれている。
 政界情報誌のPOLITICOが11月23日付けの記事(外部リンク)で伝えるところによると,今回の買収を阻止するために,FTCの会長であるリナ・カーン(Lina Khan)氏はMicrosoftに対して訴訟を起こすことを辞さないようだ。FTCは,PC市場の独占において1990年代にMicrosoftと激しくやり合った末に煮え湯を飲まされた経験もあるだけに,今回はその第2幕と見る人も少なくない。

Microsoftを独占禁止法で訴訟に持ち込む構えという連邦公正取引委員会(FTC)
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 バイデン政権下で,2021年に33歳という若さで会長に就任したばかりのカーン氏は,MicrosoftによるActivision Blizzardの買収にかなりの関心を示している様子で,2022年6月に行われた,民主党エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)議員の公開質問状に対して,「FTCと司法省は“違法な合併や行為が労働者にどのような形で損害をもたらすのか”を精査するためにさらなる努力を行っており,両省合同で競争と労働市場に焦点を当てたワークショップを主催し,合同公開質問状では,より良い対応を促すためにパブリックコメントを求めている」という公式書簡を投稿している(外部 リンク)。
 その内容からもわかるように,ウォーレン議員による公開質問は「合併による労働者への影響」を問題視している。競争力を高めるため相応の人員整理が行われることを懸念し,今回の件に限らず,ディスカバリーによるワーナーメディア,AmazonによるMGMの買収などへの調査努力を増すとともに,合併ガイドラインの改訂も検討していると話しているわけだ。

 こうした多方面からの圧力を感じたのか,The New York Times(外部リンク)のインタビューに答えたスペンサー氏は,11月10日時点でSIEに「CoDシリーズを10年間提供する」という契約を提案をしたと述べている。これについてのSIE側のコメントはないが,スペンサー氏は「Game PassにサインアップしなくてもPlayStationでコール・オブ・デューティをプレイできる環境を保証する」と伝えているといい,多くのゲーマーにとっては安心できる部分ではあろう。
 Microsoftの姿勢も時代の流れとともに大きく変化しており,Activision Blizzardの雇用者たちが労働組合を結成しようと動いていたことに関して,2022年6月には「労働者たちの意志を尊重する」と発言し,本社の規則改訂に向けて動き始めている。このことで,IT関係の組合組織を管轄するCommunications Workers of America(CWA/アメリカ通信労働組合)は,MicrosoftによるActivision Blizzardの買収を支持することをFTCに対して表明している。

「ディアブロ II リザレクテッド」の開発を経て,現在はBlizzard Albanyという社名に変更した旧Vicarious Visionsは,社内での95%の賛成票により労働組合の組織化を決定した。これまで労働組合とは距離を置いていたアメリカのゲーム/IT業界も変わりつつある
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 2021年夏にActivision Blizzardで明るみに出たセクハラや雇用不均等問題から急展開となり,半年後には買収のアナウンスがなされたことにゲーム業界では衝撃が走ったが,ゲーム市場最大規模というだけあってその動きは鈍化している。当初設定されていた審査終了期日の「2023年第2四半期」までまだしばらくあるが,その期日に間に合わない可能性も懸念されており,その動向については今後も注目していきたいところである。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。

※来週(12月12日)の週刊連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,著者取材のため休載します。
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