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Access Accepted第681回:Appleの参入でVR市場は新たな激動の時代に
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印刷2021/03/29 00:00

業界動向

Access Accepted第681回:Appleの参入でVR市場は新たな激動の時代に

画像集#001のサムネイル/Access Accepted第681回:Appleの参入でVR市場は新たな激動の時代に

 どちらかといえばAR(拡張現実)技術に重点を置いている印象の強いAppleだが,最近あちこちから,同社がVR対応HMDを早ければ2022年内にリリースするというウワサが聞こえてくる。VR対応HMDはゲームが牽引する市場だけに,4Gamerとしても気になる話だ。果たしてどのようなデバイスになるのか? 今ある情報をまとめつつ,少し気が早いが,今後の展望を考えてみたい。


ベールを脱ぎ始めたAppleのVRプロジェクト


 2020年にリリースされたiPad ProやiPhone 12 Pro/Pro Maxなど,いわゆる「iPhone 12ファミリー」で採用された新たなテクノロジーが,「LiDAR」(Light Detection and Ranging/ライダー)だ。これは,主にレーザー光を使ったリモートセンシング技術で,地質や地形,大気の観測などにも広く利用されている。
 iPhone 12ファミリーでは赤外線を使用し,3Dスキャンや夜間撮影の距離測定などに使われており,すでに,その機能を使ったアプリがいくつもリリースされている。その1つである「DSLR Camera」では,デジタル一眼レフカメラを模倣してボケ味のある写真が撮れるし,「IKEA Place」では,購入予定の家具を部屋に置いて,その様子をチェックできる。また,「Warby Parker」を使えば,購入したいメガネをかけた自分の顔の撮影が可能だ。

 以上のようにAppleは,どちらかと言えばAR(Augmented Reality/拡張現実)に重きを置いているように感じられるのだが,最近は,VR(Virtual Reality/仮想現実)を使った新たなデバイスについてのウワサがよく聞こえてくるようになった。

グラフィックデザイナーのAntonio DeRosa氏(ADRStudio Design)がレンダリングしたAppleの新VRデバイスの想像図。詳しくは後述するが,本当に150グラム以内に抑えられるならすごい
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  2021年1月,ハードウェアエンジニアリング部門シニア副社長だったダン・リッチオ(Dan Riccio)氏が別の部署へ異動したことをAppleが発表した。異動先が伏せられていたため,話題になったApple Carを任されたのではないかという推測も出たが,その後,北米メディアのBloombergが「ARとVRに特化した新しい部署への異動」だと報じている。

 Bloombergの記事によれば,リッチオ氏の新部門の最初のプロジェクトは,AR機能も持つハイエンドなVR対応ヘッドマウントディスプレイで,コードネームは「N301」。メガネ型のARデバイス,「N421」の開発も同時に進められており,すでに1000人を超えるハードウェアおよびソフトウェアのエンジニアが開発にあたっているようだ。「N301」の発売は2022年を予定,その後,「N421」の開発を本格化させるという。

この図は,2020年6月にBloombergが報道したAppleの特許出願資料から
画像集#004のサムネイル/Access Accepted第681回:Appleの参入でVR市場は新たな激動の時代に

 この情報を補足したのが,20年以上にわたってApple関連情報を扱っているメディア,MacRumorsだった。掲載された記事はいずれも,香港の天風国際証券(TF International Securities)で情報アナリストを務める,郭明䥓(Ming-Chi Kuo)氏が寄せたもので,アジアのサプライチェーンに精通しているという同氏は,過去,何度も予想を的中させてきた実績があり,Appleユーザーの間では信頼性の高い情報源だと見なされているようだ。
 3月以降,盛んにAR/VR関連情報を語り始めた郭氏だが,3月7日に投稿した記事では,VRデバイスのリリース時期を2022年中期に絞り込む一方,眼鏡型ARデバイスは2025年頃になるとした。郭氏はさらに,2030年代にはコンタクトレンズ型のARデバイスに発展したものが登場するだろうと述べている。
 真偽のほどはともあれ,「Apple TV」「Apple Arcade」などのインフラを活用しつつ,本命であるらしいARデバイス「N421」に先立ち,実現可能性の高いハイエンドなVRヘッドマウントディスプレイの開発を目指すことは,話としても十分に理にかなっているようには聞こえる。


AppleのVRは150グラム? 価格予想はバラつきあり


 IT関連の情報サイトThe Informationが報じるところでは,Appleの新型VRデバイスは視線追跡やハンドトラッキングのために12基以上のカメラセンサーを実装しており,片眼で8K解像度のディスプレイを搭載しているという。販売価格は3000ドルになるだろうと予想しているが,事実なら一般のゲーマーが簡単に手を出せる価格ではない。

 ディスプレイについては2020年10月,ソニーがヘッドマウントディスプレイ用OLED(有機EL)をAppleに提供すると日本工業新聞が伝えており,このあたりが記事の裏付けにもなりそうだ。もっともソニーは,PSVR2と呼ばれる“PlayStation 5向け新型VRシステム”の開発を進めているようで,TechRaderなどのメディアは「2022年のリリース」を予想している。対応機種がまったく異なるとはいえ,つまりAppleはソニーのライバル製品を同時期にリリースすることになるわけだ。
 ただし,PSVR2はゲーマー向けの製品なので,こなれた価格に抑える必要があり,そう考えれば,ソニーがAppleに提供するものとは異なるOLEDパネルが使われる可能性も高い。

ソニー・インタラクティブエンタテインメントは3月18日,PlayStation 5向け新型VRシステムの新たなVRコントローラを公式Blogで発表した(関連記事)。正式発表に期待が集まる
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 さて,「N301」に関して最も驚くべき情報は,上記の郭氏が「150グラム以下になる」述べていることだろう。研究開発中のフォームファクタ(デバイスを構成する各部品のサイズや材質など)が揃えば,という条件付きではあるものの,多くのユーザーに軽いと評価されるFacebookの「Oculus Quest 2」が503グラムであることを考えれば,150グラム以下という重量は驚異的だ。しかも,高値を予想する他メディアとは異なり,郭氏の述べる販売価格は1000ドルで,「安い」とは言えないまでも,コアなゲーマーなら射程圏内に入る。

 統計サイトのStatisticaは,2020年に188億ドルであったVR産業の市場規模は今後急速に成長し,2024年には2969億ドルに拡大すると見積もっている。統計上の予測とはいえ,3年で15倍の成長というのは,さすがに盛りすぎのように思えるが,今後,モバイル端末接続型のVR対応デバイスが普及し,没入感の高いVR配信などのエンターテイメントが発達すれば,規模が急激に拡大していくことは事実だろう。Appleが参入すべき市場だと判断しても,おかしくはない。

「Road to VR」が報じた,次世代VALVE INDEXの特許出願資料より。ワイヤレスのスタンドアロン型になるようだ
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 しかし現在,VRアプリの4分の3以上がゲームであることからも分かるように,Appleの新型VR対応デバイスもゲームを十分に意識しなければ,メインストリームとはまだ呼べない現在のVR市場で戦うのは難しいはずだ。つまり,Apple TVやApple Arcadeといったデジタルエンターテイメントとの連携は必須で,それにより,これまでゲーム業界とはやや離れた場所にあったAppleのイメージも,今後,変わってくるかもしれない。

 先行してVR/AR分野に投資してきたFacebookやソニー,Microsoft,Valve,HP,さらにHTCといった企業も,Appleの新型VR対応デバイスを無視できないはずだ。2022年以降,新たな技術革新を背景に,再び激動期を迎えることになりそうなVR市場。ウワサの真相は分からないものの,ゲーマーの立場から,しっかりと注目しておきたいトピックだろう。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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