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印刷2019/12/02 12:00

業界動向

Access Accepted第629回:VRとクラウド。最新テクノロジーに揺れるゲーム業界

画像(001)Access Accepted第629回:VRとクラウド。最新テクノロジーに揺れるゲーム業界

 欧米の一部地域で,Googleクラウドゲームプラットフォーム「Stadia」のサービスが始まった。また2020年には,Microsoftの「Xbox Scarlett」(コードネーム),Sony Interactive Entertainmentの「PlayStation 5」が発売されることが明らかになっており,ゲーム業界も本格的に次世代へ向けて動き出した。果たして2020年代はゲーム業界にどのようなことが起きるのだろうか。


VRゲームは誰が求めているのか


 2019年もあと1か月ほどで終わり,来年は次の区切りの年,2020年となる。2010年代を振り返ると,ゲーム業界にもさまざまな動きがあり,新しい技術が次々と登場した。PCゲーム市場では,レイトレーシングなどのビジュアル効果によって,グラフィックスがさらに進化し,モバイルプラットフォームでは「Pokémon GO」の大ヒットに代表されるARゲームも盛り上がった。だが,2010年代に飛躍的な進化を遂げたものとして,VRゲームを忘れてはならない。

 ここ3年の間に,Sony Interactive Entertainmentの「PlayStation VR」だけでなく,Facebookの「Oculus」やGoogleの「Daydream」,さらにMicrosoftのAR/VR併用を念頭にした「Windows Mixed Reality」などVR関連商品が登場し。それぞれの違いを把握するだけでも一苦労である。

 そんななか,VRゲームに否定的な発言をしたとされているのが,MicrosoftでHead of Xboxという役職でチームを統括するフィル・スペンサー(Phil Spencer)氏だ。オーストラリアのメディア「Stevivor」が2016年に行ったインタビューでは,「VRゲーム市場はまだデモや実験的な作品が多い」と発言しており,その3年後となる2019年11月26日に掲載された記事の取材では,以下のように答えている。

Microsoftのフィル・スペンサー氏。2016年の発言に「ちょっと言い過ぎた」と話しながらも,さらに言い過ぎな発言を重ねてちょっとした物議を醸している。だが,しっかり読めば発言の意図が別のところにあるのは分かるだろう (写真はフィル・スペンサー氏のTwitterアカウントのもの)
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 「VRについては問題を感じています。VR(のゲーム体験)は孤独なものですが,本来のゲームはコミュニティで楽しみ,同じ時間を共有すべきものだと考えています。私たちには,顧客が求めるものに応える責務があり,現状,VRゲームは誰が求めているものでもありません。我々の顧客の多くは,VRゲームをプレイしたいと思ったとき,どうすべきかを分かっています。そして実際に彼らは,PCやほかのVRプラットフォームで遊んでいます。」

 「VRゲームは誰も求めていない」という小見出しを読むとかなり辛辣に見え,誤解してしまう人も少なくないようだ。しかし,「私たちの顧客」という表現から見ても,ゲーム市場全体ではなくXbox/Windowsユーザーに限定していることが分かる。さらに,MicrosoftがVRゲーム市場に乗り遅れてしまったことを認めているとも読み取れるだろう。メディアに対してあえてこのような発言をするのは,「Xbox Scarlett」ではVRゲームを推進してはいないことの意思表示と言える。

VRゲーム界きっての大ヒット作品となった「Beat Saber」は,2019年3月に100万本を達成。2019年11月26日には,開発元のBeat GamesがFacebookに買収された
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 「VR元年」と謳われた2016年から3年が経っているが,VRゲーム市場は思ったほど盛り上がっていない。ポーランドのゲーム開発者会議GIC(Game Industry Conference Poznan)で,「Detached」(2017年)と「Telefrag VR」(2019年)というアクションゲームを生み出したAnshar StudiosのCEOであるルーカス・ハクラ(Lucasz Hacura)氏の講演が行われ,同社がVRゲームの開発から離れることを宣言したのは,以前お伝えした通りだ。

 その講演の中でハクラ氏は,開発費や収益を赤裸々に公開した。VRゲーム市場が当初期待されていたスピードで拡大していない一方で,ハードウェアが進化していくのに合わせてユーザーが求めるクオリティも高くなっており,採算が合わないメーカーが多いというのだ。基本的に“あまり売れていない”ため,収益面での期待は乏しい。


新しいゲームテクノロジーのメインストリーム化


 クラウドゲームも2010年代に頭角をあらわしてきた新たな技術なのだが,こちらも苦戦が見込まれる。本命とも言えたGoogle「Stadia」のサービスが始まるなり,いきなりつまづいてしまったからだ。発表時からアピールされていた「4K解像度と60fps」というクオリティに達していないという報告が多く,Googleは対応に追われている。なお,モバイルアプリの情報を扱うリサーチ企業のSensor Towerは,Stadiaのローンチから3日ほどで,Androidアプリが17万5000ダウンロードに達していることをレポートしているのだが,それが実際にユーザー数と結びついているのかどうかが見えてこない。

海外でよく見かける出所不明なXbox Scarlettのモックアップ画像には,ご丁寧にVRヘッドセットまで描かれているものもある。果たして,次世代機はどのようなルックスになるのか。V字型のモックアップ画像が公開されている「PlayStation 5」とともに,正式な発表が待ち遠しい
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 Microsoftも2020年にクラウドサービスである「Project xCloud」を,日本も含む複数の国々で展開することを発表している。MicrosoftにはGoogleと同規模のデータセンターを構築できる資本と能力はあるだろう。だが,回線状況の良い自宅だけで遊ぶのであれば,あえてクラウドゲームを選択する理由としては弱い。ゲームをプレイするハードウェアの選択の幅が広がるというメリットはあるが,5Gネットワークが完全に整備されるまで,クラウドゲームはメインストリームにはならないと筆者は考えている。

 VRゲームにせよクラウドゲームにせよ,ゲーム体験を一新させるような新しいテクノロジーは,それほど急速に市場に浸透していくわけではない。2Dグラフィックスから3Dグラフィックスへの切り替わりや,オンラインゲームの普及もかなり時間がかかったものである。VRゲームやクラウドゲームは発展途上であり,その進化の過程そのものを楽しむという段階だろう。

「PlayStation VR2」についても,海外メディアで頻繁に報じられるようになっている。この特許申請書が本物であれば,HMDにカメラが装着され,ワイヤレス化が進められるのだが……
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 なお,物議を醸したスペンサー氏の言葉を受けてかどうかは定かではないが,SCE Worldwide Studiosの吉田修平氏は,自身のTwitterで「we oftentimes work hard to make things that no customers are asking for them」(我々はときおり,顧客が望んでいないものを作ることに必死になっていることもあります)とツイートしている。

 自動車産業のパイオニアであるヘンリー・フォード氏も,かつて「当時の顧客に望むものを聞いたなら,より早く走れる馬だと答えていたでしょう」といった言葉を残している。イノベーションは市場調査からは起きないことを示唆しているものだろう。

 PSVRをPS5でも使えるようにすることを明言したSony Interactive Entertainmentと,「Xbox Scarlett」でVRゲームに力は入れないことを示唆するMicrosoftの,次世代機をめぐる競争もまた興味深く見守りたい。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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