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Access Accepted第515回:投資が利益になり得る,新しいクラウドファンディング「Fig」
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印刷2016/10/24 12:00

業界動向

Access Accepted第515回:投資が利益になり得る,新しいクラウドファンディング「Fig」


 ゲーマーにとっての「クラウドファンディング」は,気になるゲームのプロジェクトに少額を投資して,開発を応援するというものだった。しかし,2015年8月にスタートし,2016年9月にSEC(アメリカ証券取引委員会)の認可を受けた新たなクラウドファンディングサービス「Fig」は,これまでとはかなり毛色が異なっている。今週は,inXile EntertainmentやDouble Fine Productionsなど,独立系のゲームデベロッパによって支援されたこの新たなサービスについてチェックしてみたい。


ゲーム開発におけるクラウドファンディングの問題点


 2016年10月11日に掲載した記事でもお伝えしたように,デベロッパのinXile Entertainmentは,新作RPG「Wasteland 3」開発のための資金調達をクラウドファンディングで行い,わずか3日間で目標の275万ドル(約2億8500万円)の獲得に成功した。文明が崩壊した核戦争後の世界を舞台に,治安維持と復興を目指す組織の一員となって活動するという内容の作品だが,そんな同作の開発資金調達の立役者となったクラウドファンディングサービスが,ゲームを専門に扱う「Fig」だ。

新たに登場したクラウドファンディングサイト「Fig」でのキャンペーンに成功したinXile Entertainmentの「Wasteland 3」 。基地を拠点にさまざまな冒険に出かけていくという,オープンワールドタイプのデザインで,発売は2019年第4四半期と,かなり先のことだ
Access Accepted第515回:投資が利益になり得る,新しいクラウドファンディング「Fig」

 「Kickstarter」「Indiegogo」など,我々ゲーマーにとってもすっかりおなじみになったクラウドファンディング。バッカーと呼ばれる投資者が,気になるゲームプロジェクトに投資し,代わりにゲームそのものや,デジタルアイテム,グッズなどをリワード(報酬)として受け取るというのが標準的なサービスで,読者の中には,これまでいくつかの作品に投資したという人もいるだろう。

 開発者にとっては,パブリッシャに頼ることなく自分達の作りたいゲームを作ることが可能になり,また,バッカー達と直接,意見交換しつつ,作品を作っていけるところも大きなメリットになる。小規模なデベロッパにとっては魅力的なサービスであり,この5年ほどを振り返ってみても,さまざまなゲームプロジェクトがクラウドファンディングによって実現されてきた。

 しかし,普及につれていくつかの問題も表面化している。本連載の第439回,「クラウドファンディングに見られる陰り」でも紹介したように,Kickstarterでは,目標額が50万ドル以上の大型プロジェクトが資金調達に失敗しやすいという状況にある。その傾向は現在でも続いており,さらに,2014年以降は,2年連続でクラウドファンディングに成功したゲーム作品が減り続けている。

 その理由はさまざまあるようだが,リサーチ会社のICO Partnersのレポートでは「バッカー達が,より確実なプロジェクトを求めるようになった」ことが挙げられている。パブリッシャのプレッシャーがないことからか,開発に時間がかかりすぎたり,途中で挫折してしまったりするプロジェクトも多く,せっかくの投資が無駄になるケースが増えれば,応援しようという意欲も失われていくというわけだ。
 従来のゲーム開発なら,パブリッシャがゲームを完成させるためのサポートやガイダンスを与えてくれたが,クラウドファンディングに成功した開発チームには,そうした存在が欠如していたといえる。


ゲームが成功すれば投資家にも利益が配分される


 2015年8月にスタートした新たなクラウドファンディングサイトFigは,資金調達だけでなく,通常はパブリッシャが行っていたさまざまなサービスを開発者に提供することを目的に設立されたもので,Double Fine Productionsのチーフオペレーションオフィサーを務めた経験を持つジャスティン・バイリー(Justin Bailey)氏が発起人となり,ベンチャーキャピタルの投資を受けて設立された。Double Fine Productionsのティム・シャーファー(Tim Schaefer)氏,inXile Entertainmentのブライアン・ファーゴ(Brian Fargo)氏,そしてObsidian Entertainmentのファーガス・アークハート(Feargus Urquhart)氏が賛同人として名を連ねており,さらに,Boss Key Productionsのクリフ・ブレジンスキー(Cliff Breszinski)氏なども個人資産を提供している。

右からジャスティン・バイリー氏,ファーガス・アークハート氏,ブライアン・ファーゴ氏,そしてティム・シャーファー氏。Figの名前は,2015年のE3で彼らが宿泊したHotel Figueroaから来ているらしい。ちなみに,同年の4Gamer取材班も同じホテルに宿を取っている

 多くのクラウドファンディングではガイドラインを設けたり,審査を行ったりしているが,Figも同様で,完成にこぎ着けられるかどうかを見きわめるためにまず,プロジェクトの審査を行う。そして,開発が無事にスタートすれば,技術的な部分を含めた開発や広報,マーケティングなどのサポートを行い,学生プロジェクトや,まだ経験の浅い開発者を手助けしてくれるという。

 何よりも興味深いのは,従来型のリワードだけでなく,出資者に利益配分が行われる投資型のシステムが併用されている点だ。2016年9月にはSEC(アメリカ証券取引委員会)の認可を受け,投資家として認められていない個人でも一定額をゲームプロジェクトに投資できるようになった。つまり,Figのクラウドファンディングは,ゲームが成功すれば金銭によるリターンが得られるのだ。Figでは現在,すでに380万ドルの資金を集めたDouble Fine Productionsの「Psychonauts 2」のキャンペーンが行われており,同作への投資が可能になっている。

「Wasteland 3」同様,期待が高まるDouble Fine Productionsのアドベンチャー「Psychonauts 2」。発売予定は2018年第3四半期と,かなり先だ
Access Accepted第515回:投資が利益になり得る,新しいクラウドファンディング「Fig」

 これまでは,例えば「1000ドル提供してくれれば,プロデューサーとして名前をクレジットに載せる」といったことで大口投資に期待していたが,実際問題として,サイン入りのパッケージや開発者達とのディナーパーティに魅力を感じる人はそこまで多くはない。そのため,クラウドファンディングで得られる投資額には限界があり,1億ドル以上の開発費がかかる,といわれる大手パブリッシャの大型タイトルなみの資金を集めることは難しかった。

 今のところ,「Fig」は1か月に1本程度のペースでクラウドファンディングキャンペーンを行っており,知名度も高いとは言えない。しかし2012年,Kickstarterに「Broken Age」(コードネームはDouble Fine Adventure)が登場して,突然ゲーマー達にクラウドファンディングというサービスが認知されたように,大きな話題になるような作品がFigに登場すれば,状況は一変するかもしれない。

 いずれ,一般の個人が「楽しむだけではなく,利益を得るためにゲーム開発に投資する」という時代が来るのかどうか。不安な部分もないわけではないだけに,クラウドファンディングの次の着地点として,今後もFigには注目したい。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。

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