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Access Accepted第511回:モバイル市場参入で感じる任天堂ソフトのパワー
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印刷2016/09/12 12:00

業界動向

Access Accepted第511回:モバイル市場参入で感じる任天堂ソフトのパワー

画像集 No.001のサムネイル画像 / Access Accepted第511回:モバイル市場参入で感じる任天堂ソフトのパワー

 Appleの新製品発表イベントで,iOS専用アプリ「ス―パーマリオラン」がアナウンスされた。ローンチは2016年12月が予定されており,ダウンロード無料のタイトルになるという。マリオがスマホの画面を走ることにまず驚き,さらに,任天堂の宮本 茂氏がステージに登壇してプレゼンテーションを行ったことに同社の強い意思を感じた。今回は,ダウンロード数が5億に達したという「Pokémon GO」の話題を含めて,任天堂ソフトのパワーについて考えてみたい。


宮本 茂氏が,Appleのイベントに登壇することの意味


 北米時間の2016年9月7日,Appleはサンフランシスコでイベントを開催し,iPhone 7Apple Watch Series 2などの新製品を発表した。しかし,最大のサプライズは,任天堂の宮本 茂氏が登壇して,iOS向けアプリ「スーパーマリオラン」を発表したことだったかもしれない。
 「スーパーマリオ」のフランチャイズが任天堂以外のプラットフォームに登場するのは初めて。開発にはDeNAが協力を行っており,この12月,基本プレイ料金無料のゲームとして100か国以上で同時配信されるとのことだ。

Appleのプレスカンファレンスに登壇し,「スーパーマリオラン」をアナウンスする任天堂の宮本 茂氏
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 「スーパーマリオラン」は,タッチスクリーンでのプレイを前提に,自動的に移動するマリオをタイミングよくジャンプさせたり方向を変えたりしてゲームを進めていく作品だ。
 「Pokémon GO」に続く任天堂のモバイルゲーム市場参入発表に,株式市場も好感触を覚えたようで,同社の株価は一時的に29%も上昇した。2倍以上の上昇を記録した「Pokémon GO」のローンチ時ほどではなかったとはいえ,2017年に発売されるという新型コンシューマ機,NXも控えており,欧米ゲーム市場における任天堂への期待感は高まり続けている。

 任天堂のモバイルゲーム市場への参入そのものは,2015年にiOSとAndroid向けにローンチされた「Miitomo」以降,「ファイアーエムブレム」「どうぶつの森」などがあり,まったく初めてというわけではない。しかし,今回の「スーパーマリオラン」の発表では,任天堂の顔であり,世界中のファンに敬愛される宮本氏自らがわざわざAppleのイベントに登壇し,ジョークを交えながら任天堂のものではないハードウェアを触って見せたのだ。

 宮本氏がほかの企業のイベントで発表を行うのも初めてのことらしいが,ここからは任天堂の強い意志が伝わってくる。ステージの宮本氏は幾度となく,「世界中のプレイヤーが楽しめる」ことを強調しており,モバイルゲームのパブリッシャとしての立ち位置を明確に印象づけた。

 Appleのティム・クック(Tim Cook)氏は,「任天堂が,モバイルゲームにおけるマリオの第1歩として,我々を選んでくれたことを光栄に思う」と壇上で述べており,iPhone 7の話題性をアップしたいAppleと,任天堂双方の思惑が合致したとも言えそうだ。


「ARゲームというジャンルが船出する機会が来た」


 任天堂が新たに発表したところによると,Nianticの「Pokémon GO」は,7月のローンチ開始から2か月足らずで,実に5億ダウンロードを記録したという。また,トレーナー達が走行した総距離は46億キロ,つまり地球から冥王星までの距離に匹敵するというから驚きだ。海外メディアのBloomberg(電子版)は,7月中旬にピークを迎えて以降,アクティブユーザー数は下降傾向にあると伝えているが,夏休みが終わった学生達が学校に戻っていることを考えれば,人気が衰えたというわけでもないだろう。

Bloombergに掲載されたリサーチ会社Apptopiaの「Pokémon GO」における月間アクティブユーザー数の推計。7月中旬以降,緩やかながらもユーザー数が下降しているのが分かる
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 「Pokémon GO」の社会現象とも言える欧米でのヒットぶりは,本連載の第508回「『Pokémon GO』フィーバーに見るARゲームの躍進」でも紹介しているが,影響は,その後も欧米ゲーム業界に広がりつつある。
 新作「ピートとドラゴン」を8月に公開したディズニーは,映画に出てきたドラゴンを探すというモバイル向けARゲーム「Dragon Spotting」の無料配信を開始した。さらに,ディズニー・ワールドのハロウィン企画として,「Mayhem at the Mansion」を公開。ミッキー・マウスに誘われる形でテーマパークに散らばる「スペクトル」というアイテムを探し,それをお化け屋敷に持ち込むことで何かが起こるという,シーズン限定のイベントゲームだ。

 また,ソニーのCEOである平井一夫氏は,The Financial Timesのインタビューで「『Pokémon GO』は,ゲームチェンジャーである」としている。“ゲームチェンジャー”というのは,アメフトの試合に途中から登場し,それまでの状況を一気に変えてしまうような控え選手のことを指す。日本のサッカーで言う”スーパーサブ“といったところだろうか。新商品の登場によって状況が変わりやすい産業で良く使われる用語だが,平井氏は「Pokémon GO」を「人々の移動の仕方を根本から変えてしまう」と評しているのだ。

 以前も書いたように,「Pokémon GO」は“ポケモン”という任天堂と関係の深い優れたIPに良くマッチしたゲームであったからこそ成功したのであり,そのエッセンスをコピーすることは,ディズニーでもソニーでも,至難の業だ。
 ソニーはこの3月に行われたSony Interactive Entertainmentを核とする再編成の際,ソニーのIPを利用してアジア地域でモバイルゲーム市場への参入することを表明し,その目的のための専用スタジオForwardWorksを設立した。「Pokémon GO」から何かを学び,軌道修正を加えていくということなのか,平井氏も上記のインタビューで「ARゲームというジャンルが船出する機会が来た」と話しており,AR要素を今後のプロジェクトに生かしていくことを示唆している。

「Pokémon GO」は,Appleが発表したApple Watch Series 2への正式対応もアナウンスされている
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 最近の任天堂の動きを見るにつけて,マリオとポケモンという同社の誇るソフトパワーが持つ潜在能力の高さに驚かざるを得ない。過去数年,欧米ゲーム業界で大きな存在感を示しているとは言いづらかった任天堂だが,「Pokémon GO」で再浮上を果たし,「スーパーマリオラン」でその流れを継ぎ,NXにまでつなげていくという道筋が見えてきた。果たして彼らの思惑は成功するのか,今後1年ほどの任天堂の動きには,注視せざるを得ないだろう。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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