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Access Accepted第382回:次の時代に躍進しそうな欧米のゲームメーカー
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印刷2013/05/13 12:00

業界動向

Access Accepted第382回:次の時代に躍進しそうな欧米のゲームメーカー

画像集#001のサムネイル/Access Accepted第382回:次の時代に躍進しそうな欧米のゲームメーカー

 浮き沈みの激しい欧米ゲーム業界では,誰にも注目されることのない長い下積み生活を経て,一つの作品,技術,サービスから突然多数のファンの絶大な支持を得るというシンデレラストーリーが少なくない。こうした出来事はコンシューマ機の世代交代の時期に起こりやすく,市場が大きく変わるタイミングで斬新なアイデアや技術力で勝負をかけ,成功をつかみとったパイオニアが現在の欧米ゲーム市場を牽引しているのだ。もちろん,今年2013年もそんな変わり目の年となるはず。今週は次の世代で注目される(かもしれない)ゲームメーカーを紹介したい。


世代交代にさしかかったゲーム業界


 PlayStation 4に続き,次世代Xboxの発表も迫るこの頃だが,欧米では「第8世代」とも呼ばれる次のコンシューマ機の時代が2013年末から始まりそうだ。発売されれば,ゲーム技術や開発手法などを含めて,欧米ゲーム市場が大きく変化することになるだろう。もっとも,「第7世代」,つまりWii,Xbox 360,そしてPlayStation 3が相前後して発売されたときにはコンシューマ機と携帯ゲーム機に独占されていたゲーム市場には現在,スマートフォンやタブレットPCなど,さまざまな“マイクロコンシューマ機”が存在しており,さらにFree-to-Playを武器にしたPCゲームが再注目されるなど,競争はかつてないほど激化している。ゲーム市場が2013年以降,どのような方向に進むのかはまだまだ分からない。

日本時間の2013年5月22日早朝に,Microsoft本社で発表会が行われる予定の次世代Xbox。先行して発表されたPlayStation 4に対して,どのようなハードウェアをぶつけてくるのだろうか
画像集#002のサムネイル/Access Accepted第382回:次の時代に躍進しそうな欧米のゲームメーカー
 ゲームメーカーの過去を見れば,PlayStation 2(つまり「第6世代」)が市場を制していた時代に無名だった企業が,「第7世代」の登場後に躍進した例は少なくない。Bethesda SoftworksやCrytek,Gearbox Softwareなどは,そうしたメーカーだろう。コンシューマ機のライフサイクルが世代と共に伸びていることもあり,「第6世代」から,長く続いた「第7世代」を経て,業界地図は大きく塗りかえられた。

 同じことは今回の世代交代によっても起きるかも知れない。今週は「第8世代」の到来で活躍しそうな新しいメーカーや,彼らの作品を紹介したい。メーカーの選択は,基本的に筆者の見聞きした情報をベースにしているが,客観的な判断材料としては,Free-to-Playや他メディアとの融合など,今後注目されそうな分野に強いメーカーであることが挙げられる。果たして,彼らは次の業界地図を塗りかえることになるだろうか?


高い技術力で急成長

CD PROJEKT RED
代表作:「The Witcher」「GoG.com」

 ポーランドに本拠を置くCD Projekt REDは現在,人気の高いアクションRPGシリーズの第3弾となる「The Witcher 3:Wild Hunt」と,テーブルトークRPGをベースにした「Cyberpunk 2077」という2つのプロジェクトを進めている。また,DRMフリーのちょっとレトロなゲームを配信する「GoG.com」を運営しており,多くのPCゲーマーに親しまれるメーカーだ。このように,PCゲームに強い印象があったが,The Witcher 3:Wild HuntをPCのほか,PlayStation 4でもリリースすると発表して(関連記事),メディアを驚かせた。

 CD Projekt REDは,もともとCD Projektという名称で2002年に設立されており,当初はポーランド国内向けに海外タイトルのパブリッシングを手がけていたが,2007年に「The Witcher」をリリース。The Witcherは,大人向けの設定が受けて,PC専用タイトルでありながら200万本のヒットを記録した。2008年には,ゲーム開発部門を分社化させたCD Projekt REDを立ち上げる。一方で,2009年にポーランドのメーカーMetropolis Softwareを傘下におさめるなど,買収も盛んに行い,現在の従業員数は100名を超える。

 PlayStation 4向けタイトルの開発は,5年かけて開発したゲームエンジン「RED Engine」を使った「The Witcher 2:Assassins of Kings」(2010年)の高い技術力が評価されてのことだろう。GoG.comで鍛えたデジタル配信技術も,オンラインとの親和性が今以上に求められる次世代コンシューマ機における強味になりそうだ。

The Witcher 3:Wild Hunt
画像集#003のサムネイル/Access Accepted第382回:次の時代に躍進しそうな欧米のゲームメーカー

「The Witcher 3:Wild Hunt」公式サイト(要年齢認証)



2012年に躍進したエピソディックゲームの大家

Telltale Games
代表作:「Sam&Max」「The Walking Dead」など

 一時期もてはやされた「エピソディックゲーム」とは,1つのゲームをテレビ番組のように複数のエピソードに分けてリリースするもので,分割して配信することで,次のエピソードの開発費を稼ぎ,同時にプレイヤーの興味も維持できるといった利点が挙げられていた。しかし,成功例はあまりなく,期待されていた「Half-Life 2」のエピソードシリーズも中途半端な形で長期にわたって中断している。そんな中,唯一の例外と呼べそうなのが,このTelltale Gamesの制作する数々のタイトルだ。

 Telltale Gamesは,LucasArts Entertainmentで「Sam&Max」シリーズに関わっていたメンバーが中心になって,2004年,カリフォルニア州サンラファエルに設立された。そして,LucasArtsで開発中止になっていた「Sam&Max Save the World」のIPを買い取り,2006年10月から2007年4月にかけて,6つのエピソードをリリースしたのだ。

 2011年には,「Back to the Future」「The Jurassic Park」といったライセンスものをリリース。2012年4月に配信を開始した「The Walking Dead」は発売後20日間で100万本のセールスを記録し,現在,全エピソード(6本)の合計で850万本という大ヒット作になっている。
 次世代コンシューマ機ではゲームのデジタル配信がメインになるという見方があり,エピソディック形式のアドベンチャーゲームもオプションの一つとして改めて注目を集めるだろう。

The Walking Dead
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Telltale Games公式サイト



ベラルーシから世界を相手に戦う東欧の雄

Wargaming
代表作:「World of Tanks」

 ベラルーシのゲームメーカーWargamingは,2010年に正式サービスを開始した「World of Tanks」の大ヒットによって,現在は世界中の従業員が1400人を超える大企業になり,日本の新たにオフィスが作られた模様だ。ヨーロッパのゲーム市場にFree-to-Playというビジネスモデルを浸透させるきっかけの一つとなったWorld of Tanksは現在,4500万を超えるアカウント数を誇っている。

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 2000年にミンスクで創業されたWargamingだが,当初はPC向けのRTS「Massive Assault」(2003年)や「Order of War」(2009年)などを制作していた。これらの経験を元に作られたWorld of Tanksは,ゲームを無料で遊ばせて,インゲームアイテムなどの販売で利益を得るという,当時ヨーロッパではほとんど知られていなかった手法を思い切って採用し,結果的に大成功を収めた。2012年には,約2億2000万ユーロ(約290億円)の収益を得ている。

 この潤沢な資金を使い,2012年にはゲーム向けミドルウェアを開発していた「BigWorld」を買収したほか,「F.E.A.R. 3」のDay 1 Studiosや,「Dungeon Siege」シリーズのGas Powered Gamesなどアメリカの開発会社を次々と傘下に収めるという拡大ぶりを見せている。現在開発中の「World of Warplanes」「World of Warships」で,陸,海,空のオンライン対戦ゲームが揃うことになるが,これらのサービスを統合しようという壮大な計画も持っているという。傘下に収めたメーカーからの新作発表も続きそうであり,PC,コンシューマに関わらず,その存在感を高めていくのは間違いない。

World of Warplanes
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>Wargaming公式サイト



ゲームエンジンビジネスに乗り出したスウェーデンの新興メーカー

BitSquid
代表作:「BitSquid Engine」

 2009年にストックホルムで設立されたBitSquidは,「BitSquid Engine」という独自のミドルウェアでエンジンビジネスへの参入を図っている。すでに,Fatsharkの「War of the Roses」やArrowheadの「The Shadowdown Effect」など,スウェーデン国内の中堅メーカーがBitSquid Engineを使用したソフトをリリースしており,ライセンス料の安さも手伝って,今後もビジネスを拡大していきそうだ。

 BitSquidは,1997年にストックホルムで起業したGrinというデベロッパをベースにしている。2006年の「Tom Clancy's Ghost Recon Advanced Warfighter」によって名前が知られ,「ファイナルファンタジー」の外伝的作品となるはずだった,「Fortress」(仮称)という作品も手がけていたという。しかし,スペインやインドネシアに開発チームを置くなど,スタジオ拡大を急激に行ったことや,2009年にリリースした「Bionic Commando」「Terminator Salvation」の評価が芳しくなく,Grinはその幕を閉じることになった。

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 Grinに所属していた開発者達は,Fatsharkや「Payday:The Heist」のOverkill Softwareなどのデベロッパを立ち上げているが,BitSquidもGrinの遺産を受け継いだメーカーの1つであり,とくに技術関係のメンバーが中心になっていたため,ゲームエンジンの開発に乗り出したという経緯のようだ。BitSquid EngineはPCからモバイル機用ソフトまでを開発できる汎用性の高いものになっているという。
 ゲームエンジンビジネスは現在,Epic Gamesの「Unreal Engine」がほぼ一人勝ちで,それをCrytekなどが追っているという状況だ。しかし,Unreal Engineが現在の地位を築いたのが「第7世代」の登場によるものだったことを考えれば,世代交代によって,エンジンビジネスにも大きな変化が起きる可能性もある。性能とライセンス料によっては,BitSquid Engineにもチャンスがあるはずだ。

画像集#009のサムネイル/Access Accepted第382回:次の時代に躍進しそうな欧米のゲームメーカー

BitSquid公式サイト



PlayStation 4発表会に登場したシンデレラボーイズ

Lukewarm Media
代表作:「Primal Carnage」

 Lukewarm Mediaは,2012年9月に「Primal Carnage」というゲームをローンチした新興のインディーズ開発チームで,同作は人間チームと恐竜チームが戦うというクラスベースのオンラインゲームだ。人間側は銃を使い,恐竜側は噛みつきという一風変わったゲームだが,「Unreal Engine 3」をライセンスしたグラフィックスの美しさもあって,PCゲーマーの間ではそれなりに高い評価を得ている。

Primal Carnage
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「Primal Carnage: Genesis」公式サイト


 そんな無名に近いメーカーであるはずのLukewarm Mediaが,Game Developers Conference 2013においてSony Computer Entertainmentが行ったデベロッパ向けのカンファレンスで,新作「Primal Carnage: Genesis」を公開したのだ。当然ながら対応機種はPlayStation 4だが,ゲームの詳しい内容は今のところ公表されておらず,南の島で恐竜が暴れるという物語をエピソディック形式で配信するという。
 PlayStationエクスクルーシブを前提に,開発費のサポートやロイヤリティの減免などを行うSonyのプログラム,Pub Fundを適用した作品で,立ち上がったばかりのデベロッパとしては破格の扱いを受けているように思われる。

 シンデレラボーイズとなったLukewarm Mediaにとっては,ヒットさせなければならないという重圧があるはずだが,それをはねのけられれば,次につながっていきそうだ。


著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。


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