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印刷2011/03/22 15:08

業界動向

奥谷海人のAccess Accepted / 第297回:GDC 2011総括〜〜4つのトレンドから見た,急変する欧米ゲーム業界

奥谷海人のAccess Accepted

 PlayStation 3,Xbox 360,そしてWiiといった現世代のコンシューマ機が発表されて4〜5年が経過し,成熟期を迎えつつある。その一方,モバイルゲームやブラウザゲームといった新ジャンルが盛り上がり,ゲームを遊ぶ環境や入手方法が多様化しつつある。今回は,2011年2月28日〜3月4日に開催されたGame Developers Conferenceの総括として,4つのトレンドから見た欧米ゲーム業界の最新事情をまとめよう。

第297回:GDC 2011総括〜〜4つのトレンドから見た,急変する欧米ゲーム業界

 

25年周年を迎えたゲーム開発者会議
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いつもなら静かなGDC初日だが,今年はソーシャルゲームやモバイルゲームなどを中心に,各サミットやチュートリアルが大盛況だった。第1回の開催から25年,欧米ゲーム産業の多角化はますます顕著になり,そのことをよく表すイベントになった

 2011年2月28日から3月4日まで,世界最大のゲーム開発者会議Game Developers Conference(以下,GDC)がサンフランシスコで開催された。25年という節目の年であり,もともとの名称であったComputer Games Developers Conferenceから現在のものに名前を変えてから14年,インディーズ系のゲーム開発者にスポットライトを当てたIndependent Games Festivalが始まって13年,開発者や専門家が投票で選出するゲーム賞,Game Developers Choice Awardsの開始からは11年,そして,巨大化するイベントの宿泊施設などの便宜を図る目的で,メイン会場をサンフランシスコに移動してから6年目の開催となる。

 25年間,ゲーム業界の最新トレンドをテーマにしつつ成長してきたGDCだが,2011年はセッション数450,参加者19000人という史上最高の数字を記録した。もっとも,人気の高いセッションでも例年のように「満員で入れなかった」ということはなく,反対に,いつもなら聴衆がそれほど多くない最初の2日間の,いわゆる“サミット”と呼ばれる専門コースが人気を集めていた。サミットでは,やはりソーシャルゲームやモバイルゲームなどに人が集まっており,3日目からの通常セッションと,興味がうまく分散されていたようだ。
 以下,今回のGDCに参加して感じた,欧米ゲーム業界の最新トレンドを紹介したい。

 

トレンド1:黄金時代を迎えたモバイルゲーム?
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モバイルゲーム出身のIPとしてほぼ初めてブランド化に成功したRovioの,「Angry Birds」。グッズ販売や映画化など,幅広いフランチャイズに成長した

 「今後,Angry Birdのようなブランドが,モバイルゲーム市場から次々生まれてくることになるだろう」
 これは,現在までに世界累計で5000万本という大ヒットになっているモバイルゲーム,「Angry Birds」(アングリーバード)を開発したフィンランドのメーカー,Rovioを率いるPeter Vesterbacka(ぺテル・ベステルバチュカ)氏の言葉だ。モバイルゲーム市場に向けてリリースされるゲームアプリが,キャラクター性もゲーム性もない"使い捨て商品"であるとの批判に対する反論であり,今後は「継続したサービス」としてプレイヤーにに愛されるようになっていくというのだ。

 実際,2010年から2011年にかけてのモバイルゲーム市場は,Unreal Technologyを使用したハイクオリティな3Dゲーム「Infinity Blade」や,長らくモバイルゲームランキングの1位に居座り続けたAngry Birdsに,ついに取って代わった「Fruits Ninja」,Zyngaのモバイルゲーム市場参入に大きな役割を果たした「Words with Friends」などの話題作が次々とリリースされている。
 GDC 2011では,Sony Ericssonの「XPeria Play」のようなゲーマーの話題をさらいそうな新製品も登場したし,GDCの発表ではなかったが,前モデルに比べて9倍高い性能を持つというiPad 2も発表されている。モバイル向けのゲームアプリは,さらなる進歩が見込まれるということで,専門家の意見は一致しているようだ。

 

トレンド2:インディーズゲームが熱い!
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昨年のGDC 2010では,「Minecraft」や「LIMBO」の名前はどこからも聞こえてこなかった。写真はMinecraftの作者,Markus Persson氏

 “インディーズゲーム”とは何か,についてはとくに決まった定義があるわけではなく,筆者も(そしてGDCも)恣意的に使っている部分があるのだが,出自に絞って見ると,2つのカテゴリに分けられそうだ。
 まずは,もともとゲーム関連企業に就職するつもりがなく,個人レベルでゲーム開発を続けてきた「ローンウルフ」(Lone Wolf)タイプ。そして,企業の体質や束縛を嫌い,独自のスタジオを立ち上げてゲーム作りを行う「スリッカー」(Slicker)タイプだ。前者に属するメーカーが制作したタイトルとしては「Minecraft」や「LIMBO」があり,後者には「World of Goo」や「Skulls of the Shogun」のような作品がある。

 いずれにせよ,GDC 2011におけるインディーズゲーム,そしてインディーズ開発者達の勢いは,長年GDCに参加してきた筆者にとっても強く印象に残るものだった。
 3月2日に行われたGame Developers Choice Awardsで3部門を受賞したMinecraftや,大賞を含めて7部門にノミネートされたLimboなど,昨年までならインディーズゲーム専門のIndependent Games Festivalに出てきただけで終わるはずのタイトルに強いスポットライトが当たっており,彼らの勢いを裏付けていた。
 インディーズ関係の参加者はレクチャーでも多く見かけたが,スウェットシャツとジーンズといったラフな格好に身を包み,仲間と談笑している若い開発者の目が,「俺達が新しい時代を作っているんだ」と言いたげに輝いていた。もはや,“インディーズ”は「ゲーム業界の隅っこにいる」のではなく,停滞する欧米ゲーム業界に活力を与える中心的な存在へと成長しているのだろう。

 

トレンド3:クロスプラットフォーム化の流れ
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モバイル,コンシューマ機,そしてPCという,異なる3つのプラットフォームでのクロスプラットフォームマルチプレイを実現する「Dungeon Defenders: First Wave」

 GDC 2011の会場で話題になっていたのが,「Dungeon Defenders: First Wave」というゲームだ。マルチプレイのアクションRPGに,タワーディフェンススタイルのストラテジー要素を加えた作品で,すでにAndroidおよびiOS版がリリースされており,さらににXbox LiveとPlayStation Networkでの配信,そしてPC版の発売が予定されている。
 このDungeon Defendersで最もユニークな点は,Android版,PlayStation 3版,そしてPC版において完全なクロスプラットフォームでのマルチプレイを実現することだ。入力方法のまったく異なる3つのプラットフォームでそれを実現するのは,ゲーム史上おそらく初めてのことだが,さらにデータファイルも共有させる計画で,会社の休み時間にモバイルで遊び,家に帰ってPCで本格的に遊ぶ,といったことが可能なのである。

 また,GoogleはGDC 2011の開催前に Google ChromeがWebGL 1.0をサポートすることを明らかにし,「ゲームのプラットフォームは従来のハードウェアではなく,今後,ブラウザが中心になっていく」としている。WebGLはChromeだけではなくFireFoxやOpera,Safariといったブラウザにも搭載されることになっており,ブラウザゲームの開発者にとって新たな技術革新が訪れたといえそうだ。

 ゲームを開発する側にとっては,今後,どの市場に向けて自社のマンパワーを投入していくのかについて難しい判断を迫られることになるのだが,見方をを変えれば,「ゲームを売るさまざまな手段が開かれつつある」わけで,このようなクロスプラットフォーム化の流れはさらに加速していくだろう。

 

トレンド4:「不気味の谷」を超えられるか?
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「不気味の谷」を超えるか? Unreal Technologyの最新アップデート版は,近未来のゲーム表現を予感させる

 25年というマイルストーンを記念して,今回のGDCでは「パックマン」「Prince of Persia」「Populous」,そして「Bangeling Bay」といった歴史的タイトルを取り上げたセッションが数多く行われた。とはいえ,昨年までゲーム産業の中核的存在だったコアプレイヤー向けタイトルについては,過去の話以外の話題が乏しいように感じられたのも事実だ。
 もっとも,数は少ないながら,PC分野での技術革新をテーマにしたカンファレンスや展示もあった。

 Electronic Artsから今月中旬にリリースされるFPS,「Crysis 2」だが,エキスポ会場にプレイアブル展示されていた同作のグラフィックスは相変わらず最高レベル。何万本もの草木や,緻密なモデルとテクスチャーが利用されたバギー,そしてモーションキャプチャーで制作されたアニメーションのデータ分析機能など,新たなフィーチャーも発表されている。
 また,この2011年秋に欧米でリリースされることが発表された,「Battlefield 3」で使われる,EA DICEのゲームエンジン「Frostbite 2」も話題になった。Battlefield 3ではリアルな破壊効果が使われており,建物の倒壊などの物理シミュレーションも圧倒的。さらにEA SPORTSのタイトル向けに開発された,スムーズなアニメーションを実現する「Ant System」も注目された。

 さらに,Epic Gamesは,Unreal Technologyの最新アップデート版を公開し,関係者を驚かせている。12人のアニメーターが2か月をかけて制作したデモプログラム「Samaritan」は,リアルタイムで作動しているのが信じられないほど緻密なグラフィックスになっており,Depth of Field(被写界深度)やネオンサインの反射,背景から光が射したときのオブジェクトの輪郭の透明感,モデルのモーフィングなど,先進的な技術が使われている。
 一般のPCで表示するのはほとんど無理だが,DirectX 11世代もここまで来たかと唸らずにはいられないほどのデキだった。将来的に,このレベルのグラフィックスが標準化するなら,コアプレイヤー向けのタイトルもまだまだ進化するだろう。

 

 

※本稿は2011年3月14日に掲載予定でしたが,諸般の事情により,本日掲載となっています。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。サンフランシスコ在住の4Gamer海外特派員。ゲームジャーナリストとして長いキャリアを持ち,多様な視点から欧米ゲーム業界をウォッチし続けている。2004年に開始された本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,4Gamerで最も長く続く連載だ。
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