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印刷2010/01/08 12:44

業界動向

奥谷海人のAccess Accepted / 第247回:ゲーム業界にデフレ懸念? 〜 オンライン流通のもたらす変化

奥谷海人のAccess Accepted

 実物パッケージの売買を行なわないデジタル配信(オンライン流通)による販売額が,これまで一般的だったパッケージ販売の総額を超えたとも言われる2009年。年末のセールス期間には新作ソフトも次々と大幅値引きが行なわれ,多くのゲーマーに勇気と希望を提供した。激変する欧米ゲーム業界は,2010年も目が離せない。今年初となる今回は,デジタル配信システムから見た欧米ゲーム業界の現状をお伝えしよう。

第247回:ゲーム業界にデフレ懸念? 〜 オンライン流通のもたらす変化

 

2009年末,ゲーマーを熱狂させたPCタイトルの激安セール
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Steamのホリデーセールの恩恵にあずかり,筆者が購入したソフトの一つが「Torchlight」。「ダンジョンは深いがゲーム性は浅い」という感想は持ったものの,アイテムをエンチャントしてダンジョンにひたすら潜っていくというシンプルな内容に引き込まれた。このような新作ゲームが(ホリデーシーズン限定とはいえ)わずか5ドルで楽しめるのだから,すごい世の中になったのかもしれない

 Valveの運営するデジタル配信システム「Steam」は,2009年11月の感謝祭を皮切りに「ホリデーセール」と称するPCタイトルの激安販売を,2010年1月3日まで断続的に実施し,多くのゲーマー達を歓喜させた。例えば,あの「S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl」がたったの1.99ドル(約185円)。アメリカでは3年近く前にリリースされたソフトとはいえ,中古ソフトをオークションサイトで買うより安い価格で良質のゲームが遊べるのであるから,まさに常識破りなセールだったのだ。

 このセールで注目されたのは,このS.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobylだけではなく,その続編となる「S.T.A.L.K.E.R.: Clear Sky」をはじめ,Electronic Artsの「Mirror's Edge」や,ディアブロ風RPG「Torchlight」など,比較的“旬”なゲームも4.99ドル(約460円)で販売されたのだ。
 このほか,思いつくままに挙げていくと,「Far Cry 2」や「Street Fighter IV」が9.99ドル(約920円),「Champion Online」が10.19ドル(約930円),年末に発売されたばかりの「Operation Flashpoint: Dragon Rising」が19.99ドル(1850円),さらには「Dragon Age: Origins」が37.49ドル(3450円)だったほか,「Hearts of Iron III」にいたっては7.49ドル(約690円)でのセールスが行なわれるなど,もはや「正規のパッケージ版や公式サイトで買うのがバカバカしい」とさえ思える状態になっていたのだ。(※以上は北米での状況。日本からは購入できなかったタイトルも含まれます)

 Steamの,こういった思い切った特価攻勢は,2008年のホリデーシーズンと比較するとはるかに規模が大きい。2008年の目玉タイトルは「BioShock」と「Portal」の4.99ドルだったが,そのほかで10ドル以下で販売されていたものといえば,拡張パックやインディーズゲームがほとんどで,種類もそれほど多くはなかった。

 こうしたセールが定期的に始まったのは2009年の9月あたりからで,同10月には発売されて1か月にもならないParadox Entertainmentの「East India Company」や「Majesty 2: The Fantasy Kingdom Sim」が,わずか5.00ドル(約460円)で販売されてゲーマーを驚かせた。
 パブリッシャの同意があっての低価格販売であるはずなので,Steamに参加する各メーカーの間でも「激安売りのメリット」は認識されているのだろう。

 

オンラインセールで大成功したWarhammer 40Kの事例
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Warhammer 40,000: Dawn of War IIは,躍進しつつあるデジタル配信市場でも,2009年最高の成功例だった。Warhammer 40,000というマニアックなミニチュアゲームがベースになっているため,コアプレイヤー向けのゲームと思われがちだが,純粋にRTSとしてのレベルの高さが光るタイトルだ。画像は,今年3月にもリリースが予定されている,拡張パックの「Warhammer 40,000: Dawn of War II - Chaos Rising」

 2009年3月にリリースされたTHQの「Warhammer 40,000: Dawn of War II」は,7月に価格を従来の定価の半分である25ドル(約2300円)に引き下げたのが功を奏し,その週のSteamおよび,Stardock Entertainmentの「Impulse」での週間売り上げでそれぞれ1位を獲得,IGN Entertainmentの「Direct2Drive」でも2位につけるなどの成功を収めた。THQはバンドルパックでも先陣を切った会社の一つで,Warhammer 40,000シリーズなどのTHQ作品を詰め込んだ,「THQ Complete Pack」も,この頃に販売が始まっている。

 これまで欧米のゲーム業界では,「最初の6週間の売り上げが,そのタイトルの売り上げの半分を占める」と言われてきたが,オンライン流通システム特有の「ロングテール効果」が,その常識を覆しつつあるようだ。オンラインでは,パッケージの制作費や,店舗の棚を確保するための“ディストリビューション料”などがかからず,時間が経つにつれて「売れば売るほど儲かる」状態になる。Warhammer 40,000: Dawn of War IIはそういったデジタル配信システムの特徴を利用して成功したソフトであるといえるだろう。

 ちなみに,THQ Complete Packは,Warhammer 40,000: Dawn of War IIのほかに,「Company of Heroes」「Red Faction」,そして「Titan Quest」といったヒット作が18本もバンドルされたものだ。すべてをバラバラに購入すると400ドル(約3万6800円)にもなるが,Steamでの通常価格は99ドル(約9100円)。さらに11月にはその半額,新作ゲーム1本分の49ドル(約4500円)という価格にまで下げられ,バンドルパックとしては珍しく,Steamの週間売り上げトップ10に食い込んだ。

 

メーカーにとって逆風にもなりかねない値引き合戦
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デジタル配信のデパートとも言えるSteamでは,ホリデー期間の激安セールや,メーカーごとのComplete Packのほか,ネットを利用したシステムならではのさまざまなアイデアが見られる。最近では,「Star Trek Online」のように「デジタル・デラックス版」と呼ばれるレアアイテムなどを挿入した特別版の販売や,予約時点での値引き,さらには「Borderlands」のように友人と共同で4本買えば1本分が無料になるというようなサービスが次々に登場している

 事例として紹介したS.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobylも,Warhammer 40,000: Dawn of War IIも,THQが販売を手掛けるソフトだ。とはいえ,THQのみがとくにアグレッシブだったわけではなく,各社のこうした激安攻勢がゲームタイトルの全体的な価格を下げ,安価な販売が普通のことになってきた印象が強い。
 THQがこうした思い切りのよいセールに踏み切った理由の一つとしては,「S.T.A.L.K.E.R.: Call of Pripyat」(2月発売予定)と,「Warhammer 40,000: Dawn of War II - Chaos Rising」(3月発売予定)という新作が控えていることもあるだろう。
 つまり,時間が経って売れゆきの鈍ったソフトを安価に売りさばくことにより,次回作の宣伝に使ってしまおうというわけだ。そうして買った人の中からファンが生まれ,次回作を買ってくれるのであれば,役目は十分に果たせることになる。

 しかし,こういう安値攻勢には当然副作用があり,消費者は,出たばかりの新作タイトルを定価で買うことに躊躇してしまうようになる。もともと39.99ドル(約3700円)のEast India Companyが,一時的にせよ,わずか1か月で5ドルで販売されるのが分かっていれば,それくらいの時期は待つと考える人が多いのではないだろうか。さらには,「日本語版の発売を待たなくても,がんばって格安の英語版をプレイしよう」と考える人も少なからず存在するはずで,問題は欧米のゲーム市場だけにはとどまらない。

 こういう激安戦略は,ゲームの単価そのものが下がってしまうということにもつながり,長期的に見れば,ゲーム企業にとって喜ばしいことではないはずだ。
 「安いゲームが売れる」という傾向は,すでにほかのプラットフォームで顕著になっており,例えばApple StoreにおけるゲームアプリTOP10の平均は,わずか1.69ドル(155円)だったという統計もある。そして,オンラインであるがゆえに手軽に買えるという状況が,薄利多売のトレンドをさらに加速させている。

 この流れが続けば,開発費の削減や開発者達の士気の低下も起こり得るだろう。その結果,ゲーマーがワクワクするような新作も少なくなってしまうなどの,ゲーム業界版“デフレスパイラル”に陥ってしまう可能性もある。もちろん,ゲームの適正な価格がどのへんにあるのかという根本的な問題もあるわけだが。
 いずれにせよ,欧米ゲーム業界にとっての2009年が,衰退するパッケージ販売に取って代わる形で,デジタル配信ビジネスが大きく発展したマイルストーン的な年であったことは間違いない。続く本年(2010年)は,欧米のゲーム企業各社にとって,変化を続けるビジネスモデルに対応するための努力がさらに求められていく年になりそうだ。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
サンフランシスコ在住の4Gamer海外特派員。ゲームジャーナリストとして長いキャリアを持ち,多様な視点から欧米ゲーム業界をウォッチし続けてきた。業界に知己も多い。本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,連載開始から200回以上を数える,4Gamerの最長寿連載だ。
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