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印刷2009/09/18 12:12

業界動向

奥谷海人のAccess Accepted / 第233回:アウトソーシングから見る,近未来のゲーム産業

奥谷海人のAccess Accepted

 今,欧米のゲーム業界で最もホットな話題の一つがアウトソーシングだ。不況の折,業界もゲーム開発にかかる経費の削減を考えざるを得ず,企業外部,とくに国外に活路を求めつつあるのだ。しかし,人件費がかかり過ぎるという理由で活躍の場が狭まりつつあることに危機感を覚えたアメリカのゲーム開発者達も,黙って指をくわえて見ているわけではない。新たなビジネスモデルの追求も始まっているようで,その動きは,ゲーム大国である日本にも影響を及ぼすだろう。

第233回:アウトソーシングから見る,近未来のゲーム産業

 

ゲーム開発に不可欠になったアウトソーシング
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Epic Gamesが中国に進出した理由は,テクスチャやモデリングの制作で経費を節約することが主な目的である。しかし,中国の潜在的なゲーム開発者は余剰気味であり,同社はAtlas Technologyという会社を中国で手に入れ,Unreal EngineのMMOG対応などを可能にしている。画像は,多くのアートが中国で制作された「Unreal Tournament III」(2007年)

 アウトソーシングとは,業務工程の一部を外部の企業に委託するという,とくに情報産業においてなくてはならないオプションの一つである。日本のゲーム開発は「工房」とも呼ぶべき,常駐の精鋭チームで行うことがまだ多いようだが,欧米では,80%以上の企業が現在,何らかの業務を他社に委託しているという。「そういえば,最近ゲームを起動するたびに長々と企業ロゴが続くなあ」などと思った人も多いはずだ。実際には,名前がクレジットされない開発チームも少なくなく,最近のゲーム開発は非常に複雑化していると見て良いだろう。

 欧米のゲーム業界で多いアウトソーシングは,モデリングやマップなどのアート,モーション・キャプチャー,ネットワーク関連,テスト/デバッグ,さらには他のプラットフォームへの移植や各国向けの翻訳作業といった作業工程に多く見られる。
 「Mass Effect」のPC版移植がDemiurge Studiosに,あるいは「Bioshock 2」のマルチプレイモードがDigital Extremeによって開発されるといったように,アウトソーシング先を国内企業に求める場合もあるものの,やはり中国やインドといった人件費の安い地域を対象にしたアウトソーシングが増えている。
 開発費の高騰が避けられない現行ゲーム機の普及と共に需要は延びており,Microsoft Game Studios(成都),Epic Games(上海),そしてUbisoft Entertainment(上海)のように数年前から専門のオフィスを中国に設置するケースも目立つようになった。

 アウトソーシングがポピュラーになっているのは,やはりコストの削減が効率的に図れるからである。アメリカや日本,欧州3か国(イギリス,ドイツ,フランス)といった地域は先進国ということもあり,給与から開発機器の準備,光熱費まで含めて1か月にかかる経費は,一人当たりの平均で80万円から90万円にもなる。Epic Gamesの幹部ジェイ・ウィルバー(Jay Wilbur)氏によれば,それが中国では半分以下の月35万円程度に抑えられるというのだ。
 ゲーム開発はゲームデザインやプログラム,アートといった工程に分けられるが,それぞれの進行速度やピークの時期が異なる,例えばマスターアップの直前のアーティストは,ほとんど手持ち無沙汰だ。
 以前,現代都市を舞台にしたアクションアドベンチャーを制作していたイギリスのあるメーカーのプロデューサーと話していたときに,「車のようなオブジェクトは全部インドの専門会社に委託したけど,マフラーなど車体下部まで作り込んでくれたのは有難かった。車がひっくり返ったりするシーンなんてないのに。ウチの会社には常駐のアーティストが二人しかいないので,もし自分達で行っていたらそこまで手は回らなかっただろうね」といったことを語っていた。開発工程で重要になる「必要なところに必要な人員を必要な時間だけ配置する」という“スケーラビリティ”の問題も,アウトソーシングで解消できるというわけだ。

 

世界のいたるところでゲームが作られる時代
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アウトソーシングの受注が盛んな中国やインドでは,ゲーム大国になるために不可欠である下地,つまりゲーム開発者の数が急速に増えている。この動きは,本連載の第231回「Gamescomで見た,世界に広がるゲーム産業」でも触れたように,イランのような中東の国々にまで広がっている。画像は,インドのFX Labsが開発中の国内初の3Dゲーム「Ghajini」。ゲームとしてはGTA風のものになるようだ

 もっとも,ロシアや中国,インドといった人件費が安価な地域でアウトソーシングを行っても,プロジェクト単位の開発費全体としては,どう多めに見積っても20%程度の違いに収まるという。
 そうなると,国内に常駐する開発者に仕事を任せ,より満足のいく作品に仕上げるか,もしくはコミュニケーション問題や,希望したものとは違った仕上がりになる可能性も考慮して海外に仕事を振るかというのが,ゲーム開発における大きな焦点になっていく。いずれにせよ,そこそこのタイトルの開発にさえ50億円近くかかるという現在では「コスト管理」が非常に厳しくなっており,そのことが,欧米の80%近い企業がアウトソーシングに頼っているという現状につながっているのは間違いないだろう。

 仕事を受ける側にはメリットがある。ゲーム開発の下地が少ない国でも欧米タイトルの開発に関わることでビッグプロジェクトの経験を積み,そうして10年も経てば,ベテランの開発者として,欧米でも大ヒットを望めるゲームを作り出すスキルが身につくことになる。ウクライナで開発された「S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl」(GSC Game World)や,ポーランドの「The Witcher」(CD Projekt)なども,そうした過去を経て誕生しているのである。
 オンラインゲームのアカウント数などから,中国で日常的にゲームをする人口は,少なく見積もっても4500万人程度と試算されており,その中からゲーム開発者として育っていく人材は,毎年1万人以上にのぼると見られる。インドでは,最近はWebやモバイルゲームに偏っているとはいえ,たった3年間でゲーム市場を4倍以上の700億円規模にまで伸ばした。
 この流れは,パキスタン・イスラムやブラジル,スロバキアやベトナムといった国々にも波及しており,こうした国々が開発スキルや競争力を身につけ,S.T.A.L.K.E.R.レベルのゲームを送り出してくるのも,そう遠い未来ではないはずだ。

 

米ゲーム業界に,海外に仕事が流れないようにするための秘策あり?
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古くからアウトソーサーとして知られる会社に,インドのDhruva Interactiveがある。Microsoftの「Forza Motorsport」(2003年)やElectronic Artsの「Battlefield: Modern Combat」(2005年)などで着実に経歴を積み上げるメーカーだ。画像は,同社の新人に研修を行っている様子で,その人数の多さに驚きと勢いを感じる。欧米のメーカーは真剣にゲーム開発のグローバル化に目を向けている

 豊富な人材や市場規模の将来性で新興諸国に太刀打ちできない状況になりつつある中,アメリカでは「販売会社と開発会社」という従来のビジネスモデルを見直す動きが盛んだ。それが,最近耳にすることの多い「ハリウッド・モデル」である。
 ハリウッドで映画制作に携わる人達は,役者から映画監督まで99%が“フリーター”であり,特定の企業には属していない。プロデューサーやライセンスホルダーが,一つのプロジェクトを決定すれば,脚本家や役者が集められて映画の撮影が行われ,終われば解散となる。また,配給や関連商品の販売,映画のDVD化なども,プロデューサーがそれぞれの企業に委託する。

 これをゲーム開発現場に当てはめ,ゲーム開発をより効果的に行おうというわけなのだ。高性能なゲームエンジンや各種ミドルウェアなど,開発ツールが整い始めた現状も,こういった動きを後押ししており,必要なときに必要な人材を確保することで,先ほど説明したような「開発のスケーラビリティ」にも上手く対応でき,コストの削減につながる。
 有能なプロデューサーやプロジェクトマネージャーが,そのプロジェクトに最も適した人材や専門チームを,そのつど雇用してスケジュール調整を行い,ゲームを開発していく。かなり能力主義的な手法だが,それゆえに競争力の高い商品も生み出せるだろう。
 才能あるゲームデザイナーやプログラマーは有名な映画監督のように引っ張りだこになるだろうし,映画界でいう「黒澤組」や「北野組」のような息の合った開発集団が出来るかも知れない。プログラマーやデザイナーも,自らスキルアップを図ることで,新たなプロジェクトに関わることが可能になるはずだ。

 今のところ,このようなハリウッド・モデルを活用しているプロジェクトを筆者は知らないし,いろいろな部分で映画と異なるゲーム業界でこのモデルがうまくいくのかどうかも分からない。しかし,この開発形態が北米のゲーム産業で定着すると,どのようなことが起きるのか想像してみるのは面白い。

 おそらく,フリーのゲーム開発者達は,自分の腕を活かせるような場所を求めて,同業者とコミュニケーションが取りやすいように「一極集中」を進めるだろう。やがては,そこに人材だけでなく資本や周辺産業が集中し,一大産業地域としての「ゲーム版ハリウッド」が誕生することになる。そうなれば,(現在のハリウッドがそうであるように)もはや日本を含めた他の地域では真似のできない世界的な競争力を持つことになるだろう。したがって,アウトソーシングを含めた,こうした欧米ゲーム産業の動きは,ゲーム大国である日本にとっても他人事ではないのだ。

 

※次回9月25日のAccess Acceptedは,都合により休載いたします。ご了承ください。次回の更新は10月2日を予定しております。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
サンフランシスコ在住の4Gamer海外特派員。ゲームジャーナリストとして長いキャリアを持ち,多様な視点から欧米ゲーム業界をウォッチし続けてきた。業界に知己も多い。本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,連載開始から200回以上を数える,4Gamerの最長寿連載だ。
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