お気に入りタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

最近記事を読んだタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

LINEで4Gamerアカウントを登録
特集記事一覧
注目のレビュー
注目のムービー

メディアパートナー

印刷2008/08/08 13:02

業界動向

奥谷海人のAccess Accepted / 第183回:アクが強すぎる自主制作ゲーム

奥谷海人のAccess Accepted

 TVや新聞で物議をかもす“コントラバーシャル(議論を呼ぶ)”なゲームと聞けば,「Grand Theft Auto IV」や「Postal 3」といった,暴力表現の多いゲームを思い浮かべる人が多いだろう。しかし,ゲームの自主制作が盛んになりつつある今,いわゆる「暴力ゲーム」の範疇を超えた,さまざまなゲームが現れ始めている。

アクが強すぎる自主制作ゲーム
過去の事件をゲーム化した
「Super Columbine Massacre RPG」
image

バージニア工科大学の事件を扱った「V-Tech Rampage」の登場には,Super Columbine Massacre RPGが話題になったことが少なくない影響を与えているだろう

 「Super Columbine Massacre RPG」がリリースされたのは,2005年だ。1999年にコロラド州ジェファーソン郡で起こったコロンバイン高校銃乱射事件を題材にしたもので,プレイヤーは犯人となり,事件を追体験するという内容である。詳しくは,本連載の第95回,「銃乱射事件とPCゲーム」でも説明しているが,この作品は犯人の立場から事件を考えると共に,“インタラクティブなニューメディア”であるゲームの特性を生かすという文化的実験だと,制作者は主張している。

 実験であることの意義と成果については置いておくにしても,本作には,例えば被害者が実名で登場するなど,無責任,無神経極まりない内容が含まれている。このような,言ってみれば不謹慎な形を強調して事件を再現する意味がいったいどこにあるのか,甚だ疑問である。

 本作は,2007年にスラムダンス映画祭のインタラクティブメディア部門にノミネートされたが,批判によるスポンサー降板でノミネートから外された。また,カナダのドーソン・カレッジで発生した銃乱射事件への関連性が指摘されるなど,ゲームの内容だけでなく存在そのものが悪い意味で話題になった。

 2007年に,32人以上の被害者を出したバージニア工科大学銃乱射事件をテーマにした,「V-Tech Rampage」という,同じようなタイプの自主制作ゲームが登場するなど,その波紋はなかなか収まりそうにない。

 

「Virtual Jihadi」イラク人による反戦活動
image

 アメリカ軍がサダム・フセインを逮捕するまでを辿る「Quest for Saddam」というFPSが2003年に登場し話題になった。さらに続編といえる「Quest for Al-Qaeda」がリリースされたり,シリアのゲーム開発者が「Quest for Bush」(別名: The Night of Bush Capturing)という,ブッシュ大統領を追いつめるMODを開発したりと,戦争に関連したコントラバーシャルなゲームも多い。

 シカゴ在住のイラク系アメリカ人アーティスト,ワファー・ビラル(Wafaa Bilal)氏は,Quest for Bushにさらに手を加え,「Virtual Bihadi」という作品を作り上げた。ゲームの主人公はビラル氏自身で「戦争で兄を失いアルカイダに入隊」したという過去を持っている。アメリカ市民には見えづらい,イラクの実情にスポットライトを当てている。ビラル氏は現在,シカゴで個展を開いており,Virtual Jihadiをそこで公開中だ。

 

幼児虐待を隠蔽する「Pedopriest」
image

 「Pedopriest」は,キリスト教の教会に対する皮肉を込めて制作されたFlashゲームだ。プレイヤーは,エージェントを操作して警官やジャーナリストの関心をひき,教会関係者による幼児虐待の事実を隠蔽して,スキャンダルに発展するのを防ぐのが目的だ。メディアの注目度がゼロになるとミッションクリアで,6人以上の聖職者が逮捕されるとゲームオーバーとなる。

 開発元のMolleindustriaは,イタリアで活動するグループで,ゲームをただのエンターテイメントではなく政治活動や意見を表明するメディアとして捉えているという。以前には,マクドナルドの企業体質を皮肉った「McDonald: The Video Game」を公開したほか,「Faith Fighter」という,6宗教の神仏が登場する格闘ゲームもリリースしたばかりだ。

 

捕鯨活動をゲーム化した「Harpooned」

 2007年にオーストラリアのTantalus Interactiveというゲーム開発会社に勤めるコナー・オケイン(Conor O'Kane)氏が制作したのが,「Harpooned」という縦スクロールシューティングゲームだ。オケイン氏は日本の調査捕鯨に疑問を持っているらしく,彼の信じる「日本側の主張」に基づきゲームを作ってみたという。

image

 Harpoonedは,日本の捕鯨船を操作して前を泳ぐ数種類の鯨に銛を撃ちこんでいく。メディアのヘリコプターやグリーンピースの追跡を逃れながらより多くの鯨を倒す。鯨を捕獲したあとは,鯨の肉を使ったペットフードとクジラバーガーを売り,お金(ポイント)を稼ぐという趣向だ。また,グリーンピースのボートにぶつかるとポイントが減り,氷山にぶつかるとゲームオーバーになる。

 鯨に銛を撃ったときに出てくる血の量は残酷なほど多いが,明確な捕鯨反対のメッセージはいまいち伝わってこない。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。ロサンゼルスで7月に開催された「E3 Media and Business Summit 2008」の取材を終えたばかりだが,今月は「Games Convention」のためにドイツへ行く奥谷氏。もう準備は完璧だと豪語しているが,E3の取材に名刺だけでなく,靴下さえも忘れてきた人の「完璧」をどこまで信じていいものだろうか。とりあえず,行き先だけは忘れないでくださいね。

  • この記事のURL:
4Gamer.net最新情報
プラットフォーム別新着記事
総合新着記事
企画記事
スペシャルコンテンツ
注目記事ランキング
集計:04月25日〜04月26日