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[SQEXOC]「使わせてよ」といわれるゲームエンジンを目指す〜スクエニの次世代ゲームエンジンLuminous Studioとは
では,Luminous Studioとはどのようなゲームエンジンなのだろうか。カンファレンスのでは,橋本善久氏からこのエンジンの紹介がされた。開発中ということもあり,かなり概念的な紹介に終始していたのだが,興味がある読者も多いだろう。セッションの内容を簡単に紹介しておきたい。
目指すは開発者に愛されるゲームエンジン
そんな部署が開発しているゲームエンジンとはどんなものなのか,橋本氏がコンセプトとして示すのが次のスライドだ。ひとことでまとめるなら,簡単に,素早く,高品質のゲームを開発でき,高い柔軟性を持つゲームエンジンといったところだろうか。
橋本氏がとくに強調していたのは,まず「ジャンルを問わない」という点。例えば,RPGに向いているというように,エンジンを使用するジャンルを固定しないということだ。「ジャンルは重要じゃない。重要なのはシチュエーション」だと氏は語る。ここでいうシチュエーションとは,例えばゲーム中で空を飛ぶか? といったことである。
さまざまなシチュエーションに対応するために,Luminous Studioはフレームワークとモジュール構造を採用しているという。ゲーム開発者は,Luminous Studioのすべてを使うという選択肢だけでなく,フレームワークだけ,あるいはモジュールの一部だけを使うという具合に,シチュエーションに応じて必要なものを使うことができる柔軟性を持たせるのだそうだ。
「高効率でAAAタイトルが作れること」を目指すというLuminous Studioだが,同時に「凄いだけじゃ駄目,いいものが受け入れられるとは限らない」とも語る。ゲームエンジンが社内ゲーム開発者に受け入れられてこそ,初めて意味があるというわけだろう。
例として挙げていたのがiPhoneだ。「(完全にお客様の大小あらゆるニーズを満足させる商品・サービスは滅多になく,あの)iPhoneにさえも“イケてない”部分がある。それでも,好きなものはやっぱり好きであること,Appleであることがあったりする。その好きというところをうまく実現できないかということを考えている」そうだ。つまり,開発者に愛されるゲームエンジンということだろうか。
セッションの最後では,実働しているツール群が紹介されたが,残念ながら撮影不可なので詳しくは紹介できない。全体にUnreal Editorのような統合環境で,ビジュアルプログラミングツールが用意されていたり,Unityのようにツール開発に使えたりと,既存のゲームエンジンのいいとこ取りが行われているような印象だ。
ただ,橋本氏がいうようにツール群は気持ちいい動き(iTunesを意識した動きらしい)を取り入れていたのが印象的だった。次の課題としては「AIやアニメーションの技術追求。次のファーストステップはそこになる」と語っていた。AIやアニメーション技術がグラフィックスに追いつくことが重要だとしていたので,グラフィカルなビルダーでAIやアニメーションを作成できるようなツールの開発も考えているようだ。
というようなわけで,内容が内容だけにコンセプトの概念的なところが主で,さらに「完成時期は非公開」としているように,いつどのタイトルにLuminous Studioが使われるかも明らかにはされなかったのが残念だが,数年後には「少し変わったぞ」と思えるスクウェア・エニックスのゲームタイトルが現れるかもしれない。そのタイトルには,Luminous Studioが使われているかもしれないのだ。同社の研究開発に期待しよう。
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