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[GDC 2011]NGPの開発にも対応したSCEの最新ゲームエンジン「PhyreEngine 3.0」
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印刷2011/03/05 00:00

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[GDC 2011]NGPの開発にも対応したSCEの最新ゲームエンジン「PhyreEngine 3.0」

 2011年3月1日の記事でお伝えしたとおり,ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下,SCE)は,PlayStationプラットフォーム向けゲームエンジンの最新版「PhyreEngine 3.0」を発表した。すでにβ版のダウンロード提供が始まっており,完全版は4月のリリース予定だ。

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 PhyreEngineは,Sony Computer Entertainment Europe(以下,SCEE)が制作しているゲームエンジンである。なにかとプログラム制作の難しさが指摘されることの多いPlayStation 3(以下,PS3)のSPU(Synergistic Processing Unit)周りなど,並列化が必要な部分が最初から作り込んであり,手軽にPS3の性能を引き出せるのが特徴だ。PS3やPSPだけでなく,“ソニー製なのに”PCにも対応するマルチプラットフォーム仕様になっているという,変わったエンジンでもある。
 国内タイトルだと,「Demon's Souls」「トトリのアトリエ 〜アーランドの錬金術士 2〜」「マリシアス」などがPhyreEngineベースで作られているとのことなので,名称がどこまで一般的かはともかく,エンジンとしては比較的お馴染みといっていいのではなかろうか。


NGP向けタイトルの開発で注意すべき点と

PhyreEngine 3.0の実装


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 発表されているとおり,PhyreEngine 3.0は,開発コードネーム「Next Generation Portable」(以下,NGP)こと次世代PSPに対応しており,現地時間3月3日に開催されたPhyreEngine 3.0の解説セッションでは,後半を使って,NGPに向けた開発の話があった。
 講演の前半はPhyreEngine 3.0の新機能や変更点に関する話だったが,やはり気になるのはNGPということで,今回は後半から先に紹介してみたい。

 というわけで,セッションではまず,NGPの概要が下のスライドに示したとおり紹介された。なにぶんタイルベースのアーキテクチャであるから,一般的なGPUとは考え方を変えなければならない点についての注意がなされている。

 ちょっと見慣れない「Tile-based Deferred Renderer」(タイルベース遅延レンダラー,以下 TBDR)というのは,PowerVR系グラフィックスコアが持つ特徴のようなもの。イマドキのゲームタイトルでよく使われている「Deferred Rendering」(複雑な光源のシーンなどで,さまざまに使われることになるデータを,前処理でまとめておく最適化技法)のようなことを,すべてのシーンで当たり前のように処理することが要求されるので,この点は抑えておきたい。

NGPのハードウェア概要
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Matt Swobida氏(R&D Principal Engineer, Sony Computer Entertainment Europe)
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 セッションで登壇したSCEEのエンジニア,Matt Swobida氏は,PhyreEngineをNGPに対応させること自体は,さほど難しくなかったと回顧する。
 ユニットテストと接続部の移植は1日で終わり,基本的なレンダリング機能の移植も2週間で終えたとのこと。「『移植元』としては,PS3版よりはPC用マルチスレッド対応版のほうが適していた」というが,PS3はかなり特殊な構成のハードウェアなので,これはうなずける話だ。ちなみに,CPU部分のコードは,PC版のものがほぼそのまま使えたとのこと。

 シェーダ部分も,「もともとPS3版とPC版で共通の基盤を作っていた」(Swobida氏)こともあって,あまり苦労はなく,PS3&PC版からほとんど変更せず持って来られたという。とくに,NGP対応の初期バージョンでは,PC版のシェーダをそのまま使っていたそうだ(もちろん先述のとおり,GPUアーキテクチャはかなり違うため,パフォーマンスのチューンは必要になるのだが)。
 現在,シーン探索やアニメーション,可視判定,自己遮蔽削除はCPU側に,スキニングはGPU側にそれぞれ移して実装されているという。

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 使用する形状データやテクスチャに関してSwobida氏は「PS3版と状況が似通っている」と述べていたが,NGPの場合,TBDRを徹底しないとパフォーマンスが出ないアーキテクチャであるため,形状データの場合はスキニングを減らしたり頂点データ形式を最適化したりなどといった対応を行い,テクスチャの場合は,テクスチャ圧縮やLoD――と氏は述べていたが,要は「距離によってデータを軽くすること」なので,Mip-Mapの意と思われる――を積極的に使っているという。
 ピクセルシェーダは長くなりがちなので,多くの光源を扱うのは難しいとのこと。そこで,(光源が多いとき多用される)一般的な意味でのDeferred Renderingも,次のバージョンでサポートされる計画になっているようだ。


PhyreEngine 3.0の新機能


 ということで話を戻して,PhyreEngine 3.0の新機能について,以下,軽く紹介しておこう。とはいっても,もともとPCゲーム情報サイトだった4Gamerでは,以前のバージョンを紹介したことはなかったりするが,そこは寛大な心でチェックしてもらえれば幸いだ。

●NGPのサポート

 思いっきり繰り返しだが,対応プラットフォームに変更があり,PSPに代わって,NGPがサポートされることとなった。

●レベルエディタの追加

 「Maya」「3ds Max」などで作った部品を配置して,AI制御用のナビゲーションメッシュなどを設定できる。エディタ上でゲームを動かすことも可能。

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●新しいオブジェクトモデルの導入

 Entity/Componentモデルのデータが導入されたという。Entityはデータの実体,Componentは特定の機能を持った部品の意。データの並列駆動を促進するためのものだそうだ。データはシリアライズされて渡されるため,受け取った側次第で,同じデータでもメモリイメージは変わってくる。

●LUAによるスクリプティングをサポート

 AIの制御などにも使われる。

●Maya&3ds Maxとの連携強化

 データの直接変換に対応。シェーダノードに対応し,ツール上でも同じシェーダが使えるようになった。

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●MLAA(Morphological Anti-aliasing)の導入

 MLAAは,後処理で画像のジャギーをなくすタイプのアンチエイリアシング技法である。2Dベースのアンチジャギー技術と考えてよさそうだ。

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 以上のように,エンジンの基本部分でもかなりの機能強化が窺える。日本のゲーム会社で使われることも多いので,今後の新作タイトルにおける品質向上に期待が持てそうだ。
 もちろん,冷静に考えてみると「SCEE製の開発者向けツールがアップデートされましたよ」以上でも以下でもない話であり,「PhyreEngine 3.0でなければNGP用ゲームは作れない」わけでもない。ただ,PS3とNGP,そしてPCといったマルチプラットフォーム展開がやりやすくなるエンジンということは確かなので,今後の展開には注目しておきたい。
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