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国内新体制で不振からの脱却を目指すMSIジャパン
……正直,それだけであれば,PCゲームサイトである4Gamerでお伝えしなくても,PC/IT系メディアの記事を読めば十分だろう。しかし今回は,3月に新しくMSI-J代表取締役に就任した鄭 志明(てい しめい)氏,そして本社の上級副社長であるHenry Lu(ヘンリー・ルー)氏がMSI-Jの不振を詫び,原因を説明し,そして2008年の日本市場シェア奪還計画を述べるという,異例の内容。グラフィックスカード市場でのシェア10%獲得が宣言されるなど,ゲーマーにとっても非常に興味深いものとなったので,説明会の模様をダイジェストでお伝えしたい。
2007年のMSI-Jが不振だった理由とその対策
世界に目を向けると,MSIの2007年は四つのビジネスユニット(※ノートPC,グラフィックスカード&マザーボード,サーバー&ベアボーン,家電)が好調で,売り上げ,利益とも過去最高を記録したとのこと。PC関連メーカーとしては,GIGABYTEグループを抜いたそうで,そのなかにあって日本だけが落ち込んでしまったというわけである。
本来であれば,前年度の実績に基づいてマーケティング予算が削られるのだが,Lu氏いわく「向こう6か月は,台湾から100%,いや,120%のサポートを行っていく」。半年間の特別予算が計上され,鄭氏を介して,Lu氏――台湾本社の“かなり偉い人”――が半ば直接的にMSI-Jの再興を指揮していくという。
また,ユーザーサポートに関しても大きく手が入る。かつてMSI-Jはユーザーサポートの品質に定評があったのだが,2007年にはかなり縮小されてしまっていた。この点新体制では,さっそく4月1日より,以前の体制に戻ることになる。
今後登場予定の新製品と,MSIのフォーカス
「販売の施策に誤りがあった。2007年は,海外だとZalman Techと組んだりし(て,オリジナルクーラー搭載モデルを投入し)ているのに,なぜ日本では投入されなかったのか理解できない」と,“2007年のMSI-J”を批判した鄭氏は,「市場のスタンダードではないもの,『MSIにしかないもの』を,タイミングを見て積極的に投入していく」と明言する。「GeForce 8800 GSのメモリ384MB版」(同氏)などといった,ある意味イレギュラーなラインナップを用意するとのことだ。
かつてのMSI-Jは,GeForce 4〜FX世代(※だったと筆者は記憶している)に,国内企画のファンレス仕様グラフィックスカード「寂、」シリーズを投入したりしていたが,また,特殊な仕様のグラフィックスカードなどが復活するかもしれない。
なお,Q&Aセッションでは,短いスパンでGPUやチップセットの新製品が投入され続けていることを歓迎するかどうかという質問が出ていたが,Lu氏のスタンスは「開発能力の高さが求められるので歓迎する」というもの。MSIが抱える1万6000人の社員のうち,約10%に当たる1600名ほどが製品開発に携わっており,複数の開発リソースを持つことができるからだそうだ。多面的な製品開発を行える大手にとって,最近の新製品ラッシュは,そうつらいことではないようである。
このほか,BIOSの置き換えを狙う「EFI」(Extensible Firmware Interface)の現状については「EFIの実装については提唱者のIntelよりもMSIのほうが進んでいる。競合と比べた場合にも6か月のリードがある」という話があったり,ニッチを狙うことによって事業開始から3年で黒字化を果たしたMSIのノートPC部門が,UMPCや,ASUSTeK Computer製「Eee PC」対抗となる「Wind PC」を用意していたりといったことなども説明会では出ていたが,今回は割愛する。
会場のセッティングを行っていたMSI-Jの某上級スタッフは,説明会の開始前に「ようやく落ち着きました」と笑顔で語っていたが,おそらく本心からの言葉ではなかろうか。足元の固まった大手の日本法人がこれからどんな策を打ってくるのか,楽しみに待ちたい。
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