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CeBIT 2008から見えてきた,ハイエンド電源ユニットのトレンド
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印刷2008/03/11 18:03

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CeBIT 2008から見えてきた,ハイエンド電源ユニットのトレンド

2008年3月4日の記事でお伝えしたIntelブースのPCゲーム大会会場は,週末,ご覧の人だかりに
画像集#002のサムネイル/CeBIT 2008から見えてきた,ハイエンド電源ユニットのトレンド
 6日間の会期を終え,現地時間2008年3月9日に閉幕したCeBIT 2008。ご存じの読者も多いと思うが,CeBITの開催された欧州という地域は,“地球にやさしい”エコの意識がほかの地域よりも強いため,電源ユニットメーカー各社の展示は,Ecos Consultingによる認証プログラムで,業界標準になりつつある「80 PLUS」に適合した製品が主流となっていた。
 しかし同時に,欧州は世界最大のPCゲーム市場といって過言のない地域でもあり,NVIDIA SLIやATI CrossFireへの関心も高い。そうした背景もあり,Cooler MasterやSilverStone Technology(以下,SilverStone),Corsair Memoryといった電源ユニットメーカー各社は,1000W以上の出力を持ちながら高い電源変換効率を実現すると謳う製品ユニットを出品してきたのだ。

Cooler Masterの新シリーズ「Ultimate」。DC-DC変換回路などのサブ基板が密集し,内部はかなりの密度になっている
画像集#003のサムネイル/CeBIT 2008から見えてきた,ハイエンド電源ユニットのトレンド
画像集#004のサムネイル/CeBIT 2008から見えてきた,ハイエンド電源ユニットのトレンド
 3社の電源ユニットに共通しているのは,AC-DC変換を12Vのみとすることで電源変換効率を高め,5Vと3.3Vは12VからのDC-DC変換で生成するというアプローチを採用している点。一般的な電源ユニットの場合は,AC(交流電源)から12V,5V,3.3Vの各DC(直流)出力を生成する。

 Cooler Masterの「Ultimate UWP 1100W」は12Vを6レール持つ1100W電源で,3-way NVIDIA SLIなどにも対応。筐体も,新たに独自性の強いデザインを採用している。
 SilverStoneの「ZEUS 1200W」も12Vを6レール持つが,本体横の封止シールを破ると,12V 6レールをシングルレールに切り替えるスイッチにアクセスできるのが特徴だ。また,Corsair Memoryの「CMPSU-1000HX」は,12Vを2レール持ち,片方の12Vが3.3V,もう片方が5VへのDC-DC変換を担当するという,少し変わった設計になっている。
 3製品はいずれもDC-DC回路やスタンバイ電源回路などを持ち,一般的な電源ユニットよりもサブ基板が大きくなる。いきおい,電源ユニットのサイズが大きくなったり,コンポーネントの密度が高くなったりしがちなため,動作音(≒ノイズレベル)はやや高めになるようだ。

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SilverStone新型1200W電源ユニット「ZEUS 1200W」。12Vを6レール備える
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ZEUS 1200Wの製品ボックスには,内部構造の写真が公開されている
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ZEUS 1200Wの側面にある封止シールを破る(※メーカー保証が無効になる)と,12V 6レールをシングルレールに切り替えるスイッチが姿を見せる
画像集#008のサムネイル/CeBIT 2008から見えてきた,ハイエンド電源ユニットのトレンド
Corsair Memoryの1000W電源ユニット「SMPSU-1000HX」。電源ケーブルはモジュラータイプとなる


あまり積極的な動きのないESA対応電源ユニット

原因は製造工程におけるハードルの高さにあり?


TopowerのESA対応電源ユニット「Silent Charger 900W」。3.5インチベイに取り付けるタイプのESAユニットを採用する
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 NVIDIAの提唱する「ESA」(Enthusiast System Architecture,関連記事)に対応する電源ユニットとしては,電源メーカー各社へのOEM供給などで実績豊富なTopower Computer Industrial(以下,Topower)が出品していた。同社は顧客(となる電源ユニットメーカーの)ニーズに合わせ,“ESAカード”内蔵タイプと外付けタイプを用意する。ほかにもThermaltake Technology(以下,Thermaltake)やTagan TechnologyがESA電源ユニットを展示していたが,しかしCeBIT 2008展示会場を見渡した限り――「nForce 780i SLI」チップセットが登場し,ESAを利用できる環境が存在するにもかかわらず――全体としてESA対応製品はそれほど増えていない印象を受ける。

TopowerのESAユニット。コネクタ類は色分けされており,電源ユニット本体から伸びる同色のコネクタを接続すれば利用できるようになっている
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Topowerの「PowerESA 1400W」。こちらはESA基板をユニット内部に内蔵している。電源ケーブルはモジュラータイプ
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 TopowerでESA対応電源ユニットの開発を担当したJohnny Kao(ジョニー・カオ)氏は,「ESA対応製品は,アナログ信号で送られる電圧や電流値,ファン回転数などの情報を正しく表示できるよう,一つ一つシステムを組んで調整しなければならない。このことが,ESA対応を難しくしている」と,製造工程に重大な障壁があることを示唆する。この障壁が,多くのベンダーを,ESA対応製品の開発に消極的にさせている,というわけだ。

既存のPCケースをESA対応にする「COMMANDER ESA Edition」
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 ところでESA対応PCケースについて少し述べておくと,今回はThermaltakeが動作デモを披露していたが,SilverStoneは別のアプローチでESA対応を果たす。具体的には,5インチベイに格納可能なESAユニット「COMMANDER ESA Edition」で,同社製の全PCケースをESA対応できるようにしたい考えだ。しかし,PCケースに搭載されるファンはそれぞれ異なり,当然のことながら回転数も異なってくる。そのため,COMMANDER ESA Eitionを使った場合,ESAユーティリティから確認できるファン回転数が“パーセント表示”になってしまうという制限を持つ点には注意が必要だろう。

COMMANDER ESA Editionは,五つのファンコネクタと4本の温度センサーを装備。ESAユーティリティからチェックすると,ファンの回転数はパーセント表示になる
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 3-way NVIDIA SLIやATI CrossFireXといったマルチGPU環境の実現で,ハイエンドのゲーム用システムでは,1000W超の高出力電源の需要がますます高まっている。その半面,世界的に叫ばれる環境保全や省電力性実現のため,PC用電源ユニットも変革のときを迎えているのは確かだ。電源メーカーの関係者は、CeBIT 2008で披露されたDC-DC変換併用タイプの電源ユニットこそ,電源変換効率を90%前後まで高める手段として,主要メーカーで開発が進められているトレンドだと指摘する。
 ただ,新技術に付き物の不安要素もあり,高密度実装から来る熱対策は,DC-DC変換併用タイプにおける最大の課題となり得る。そこでNVIDIAが,「ESAでユニット内部の温度を的確に制御できれば,ハイエンドの電源ユニットでも高電源変換効率と省電力性を実現しやすい」というシナリオを描いている(あるいは,いた)のも確かなようだ。

 変わりゆく電源技術とESA。次世代ハイエンドシステムの動向には,当面の間,この二つの技術が密接に絡んでくることになりそうである。
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