夜のとばりに包まれた高層ビルの光、街頭のネオン、道行く車のヘッドライト。暗闇から現れる星屑のような街の断片の中を、一本のビニール傘が舞っていく。持ち主はいない。行き先もない。雨が上がれば忘れられてしまう、どこの街角にも転がっている傘。持ち主が去った後、煌めく都市の断片の中に解き放たれるその姿に、プレイヤーは傘の行方を見届けたくなる--。
プレイヤーはビニール傘を操作し、夜の街を進んでいきます。スコアを競うのでも、謎を解くのでもない。空間に広がる都市の断片を読み取りながら、障害物を回避して進む。それが「NOWHERE UMBRELLA」の唯一のルールです。
傘の行く手を阻む障害物は、都市を象徴するモチーフ群。信号機の色の並び、ビル窓の発光パターンなどが、抽象化された形で眼前に現れます。プレイヤーは、光の振る舞いや、光と周囲の関係性から障害物の輪郭を脳内で補完し、傘が進むべき隙間を見出していく。プレイヤーの知覚そのものが、このゲームのインターフェースとなります。
本作のアイデアは、VR元年である2016年に公開したWOWの360°映像作品「Tokyo Light Odyssey」を源泉にしています。「Tokyo Light Odyssey」は、モーショングラフィックスの新たな可能性を問うWOWの社内プロジェクトから誕生し、360°のVR映像による新たな映像表現を提示しました
。同作に描かれた、暗闇の中に浮かび上がるコンビニのロゴや駅のネオンといった、見慣れた東京の風景や断片から作り出す映像世界が、10年の時を経て「NOWHERE UMBRELLA」へとプレイアブルな形で発展しました。
映像やインスタレーションで視覚体験の深部を問い続けてきたWOWにとって、ゲームという形式は、「鑑賞する」という行為をより能動的な体験へと深化させる新たな表現領域でもあります。グラフィックの美しさを単なる映像美ではなく、仕掛けの一つとして設計することで、認知科学や視覚表現をゲームメカニクスと融合させた、ビジュアルデザインスタジオならではのゲーム体験を探求します。






















