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あれから9年。元EQプレイヤーが読む「エバークエスト 連合帝国の興亡」
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印刷2008/05/13 19:49

企画記事

あれから9年。元EQプレイヤーが読む「エバークエスト 連合帝国の興亡」

EverQuest
 4月25日にアスキー・メディアワークスより,MMORPG「EverQuest」(以下,EQ)の公式小説邦訳第1弾「エバークエスト 連合帝国の興亡」が発売された(関連記事は「こちら」)。このような形で,EQ関連の小説が翻訳出版されるのは今回が初めてのことで,EQプレイヤーの筆者としては,最初にプレスリリースを見た瞬間から,やきもきしながら刊行を待ちわびていたのだ。

 もちろん,発売されるやいなや飛びつくように読ませてもらったが,かつて自分がEQにかけた想いなども甦ってきて,実に楽しく読み進めることができた。EQ経験者はもちろんのこと,ファンタジー小説が好きな人にもじっくりと読んでもらいたい一冊なので,当時のEQ小話やスクリーンショットなどを交えつつ,本書を紹介しよう。


かつて栄華を誇った“連合帝国”の

興亡にまつわるエピソード


 この小説のタイトルにある“連合帝国”(Combine Empire)とは,EQ1の時代よりも遥か昔に,ノーラス上に存在した勢力である。この帝国は“カッタ皇帝”と“セル将軍”という二人のヒューマンにより政治と軍事が分担されているのが特徴で,彼ら一代によるものとは思えないほどのハイペースで,その版図を拡大していった。
 連合帝国の最大の強みは,種族や思想の垣根を越えた,いわば“共同体”であること。この物語が始まる時点で,すでにテュナリア(のちのアントニカ)やフェイドワーといった大陸を支配下に収めており,ゆくゆくはノーラス全土をも覆い尽くすかに見えた。

 しかしそんな中,連合帝国はとある事件をきっかけに,崩壊の一途をたどる。
 発端となったのは,連合帝国にイビル系種族のダークエルフを迎えるべきかどうか,という議論であった。カッタ皇帝はあらゆる種族を受け入れる準備を整えているが,一方のセル将軍には何らかの思惑があり,どうしてもカッタ皇帝に反対したいようだ。そして二人の意見が平行線のまま迎えた“大連合首脳会議”の席上において,取り返しのつかない事件が起こってしまうのである……。

EverQuest
EQの世界は,グッド/イビル系種族やモンスターなど,さまざまな勢力が存在する。当時の連合帝国はこれらの大半を支配下に収めようとしていたのだ
EverQuest
EQでは各派閥に対する評判値があり,仮に敵対種族の拠点へ入ろうものなら,町中のNPCから追い回される。連合帝国の志は,薩長同盟のスケールアップ版のようなものか
EverQuest
拡張パックSoLにおいて,冒険者の活動はLuclin(月)へと移る。ちなみに中央に映っているのは月ではなく,月から見たノーラス

 物語の重要人物であるカッタ皇帝とセル将軍について,もしかするとピンと来ないという人もいるかもしれないが,実はEQのゲームに深く関わっている。EQプレイヤーであれば,EQの3番目の拡張パック「Shadows of Luclin」(以下,SoL)において,“Katta”と“Seru”の名が冠された複数の派閥(Faction)があったのを覚えていると思う。彼ら二人は,まさしくアレの親分なのである。
 SoLにおいて両派閥が激しく対立し合っていたという点から,何が起こったのか薄々想像がつくかもしれないが,当時の因縁は数百年が経過したのちも,月(Luclin)に場所を移しなおも続いているのだ。

 これまでEQプレイヤーにとっては,かつて連合帝国という強大な勢力があったという伝説を除き,多くの情報が不明のままとされてきた。このあたりの顛末がついに明らかにされたというのが,本書「エバークエスト 連合帝国の興亡」における,最大の見どころの一つといってよいだろう。

EverQuest
本書の重要人物であるセル将軍は,物語の数百年後である拡張パックSoLにて,なんとRaid対象として登場する。そして一方のカッタ皇帝はというと……
EverQuest
SoLにて細々と活動するカッタ派のゾーン“Katta Castellum”。Luclinではカッタ/セルの両派閥が対立しながら,それぞれ独自の文化を築き上げていった


ノーラス各地で暗躍する主人公アータルタール。その思惑とは?


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アータルタールの強さには「マルチクラスかよ!」と突っ込みたくなるが,その謎も最後に氷解する。ちなみに彼は,神への信仰を失いつつあることからクレリック系魔法だけは苦手だ(画面はただのShadow Knightです)
 物語は主に,“アータルタール”(Aataltaal)という名のダークエルフの主人公を通じて展開される。アータルタールはこれまで数千年にわたり姿を変えながら生き続けてきた,剣術,魔術,死霊術などあらゆる技能に卓越した人物。物語で描写されるその強力無比な姿は,さながらダークエルフ版“Firiona Vie”といったところだ。


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フェイドワー大陸の出身者にとって,Clan Crushboneは初めて挑戦する本格的なダンジョンであった。それにしてもまさかあのNPCに,このようなストーリーが秘められていたとは……
 中でも,彼が得意の変身術を駆使しながら,ノーラス上の数多くの出来事の裏で糸を引いてきていたという事実は,EQプレイヤーにとって驚きの連続だろう。ネタバレしない程度にさらりと紹介すると,アータルタールはカッタ皇帝の相談役をはじめ,EQ1最大の拠点“Freeport”の創設や,フェイドワー出身者には憎き“Emperor Crush”(&近辺にいる,通称「土瓶」)の誕生になどにも直接関わっている。まさしくノーラス中を股にかけた八面六臂の大活躍であり,このあたりのエピソードが一つずつ明らかにされるたびに,EQプレイヤーは思わず唸らされてしまうだろう。


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冒険者は神の使徒を手に掛け,やがては本拠地であるPlaneへも乗り込んでいく。ここまで強大な力を持った冒険者を,神はどのように見ているのか?
 果たしてアータルタールが,いったいなぜそのような活動を行っているのか? ここは物語中最大の焦点なのだが,ちょっとだけヒントを述べると,すべては神と戦うための伏線なのである。神々が抱える矛盾に運命を狂わされた過去を持つ彼は,世界各地で暗躍しながら,数百年単位の壮大な計画を練っていたのだ。

 “神と戦う”というのは,少なくともEQ経験者にとって特別な想いが込められたテーマだろう。かつてLady VoxやLord Nagafenというドラゴンを皮切りに始まったRaidは,次第にInnoruukやCazic-Thuleなどといった,ノーラスの神々へとシフトしていった。EQの4番目の拡張パック「The Planes of Power」(以下,PoP)では,まさにそれがメインコンセプトに据えられていた。
 日夜Raidに明け暮れる冒険者にとって,神とは単に信仰するだけの相手ではなく,いずれ倒すべき敵でもあった。そして神にとっては,自らが産み出したはずの種族が,次第に自分を脅かす存在になりつつあるわけで,この両者の激しい攻防も本書の見逃せないテーマの一つだ。


EverQuest
Lady VoxとLord Nagafenの登場により,MMORPGの本格的なRaid史は幕を開けたといっても過言ではない。彼らと初めて戦ったときのことを,今でもはっきり覚えているという人は多いはずだ
 ちなみに,強大な力を持ち数千年を生きるアータルタールにとって,例えばヒューマン一人分の人生など取るに足らないものである。そのため最初は,アータルタールのことを冷酷無比だと感じるかもしれないが,物語を読み進めるにつれ,単純にそうではないことに気付かされるだろう。仮に彼をアライメントで表そうとすると,トゥルー・ニュートラルなのか,それともローフル/イビルなのか悩んでしまうはずだ。
 このあたりの,勧善懲悪に終わらない複雑かつ魅力に富んだキャラクター描写は,「これぞ欧米ファンタジー」といったところ。筆者個人としては,EQでのメインキャラがダークエルフだったこともあり,アータルタールにはたっぷりと感情移入してしまった。


拡張パックPoPの導入により,主な活動の場は本格的にPlaneへと移り変わる。いったいなぜ冒険者は神と戦うのか? その一つの解答が本書に込められている
EverQuest EverQuest EverQuest
PoPでは街の構造やクエスト,そしてUIに至るまで,ありとあらゆる環境がRaid向けに調整されている。強大な力を得た冒険者に対する目標として,より強い敵を登場させるのは仕方が無かったものの,これは長期運営されるMMORPGに共通する課題として残されることに
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神々のほかには,ドラゴンもEQのRaid対象として欠かせない存在。新たな拡張パックが出されるたび,“Veeshan's Peak”“Temple of Veeshan”“Sleeper's Tomb”といった,ドラゴンを主とするハイエンド向けRaidゾーンが追加されていった
EverQuest EverQuest EverQuest


細かい描写一つ一つが「EQしている」

ファンには迷わずオススメの一冊


EverQuest
ネタばれになるので詳しくはいえないが,本書にはEQファンにとって懐かしい種族が複数登場する。そのどれもが,当時のイメージから外れておらず,プレイヤーでも安心して読める
 もちろん,アータルタールをはじめとする重要人物以外にも,さまざまな種族/職業が登場し,それらの一つ一つが,EQならではの要素に満ちた描かれ方をしている。中でも物語のクライマックスとなる“涙の海”(Ocean of Tears)の海戦において,ヒューマン編成によるグループが,準主役級の活躍をしてくれるのは大きな見どころだ。彼らがチームワークを発揮したり,スキルや魔法を使ったりするたび,当時のプレイ体験が蘇ってくるのが非常に面白く,最後まで一気に読ませてもらった。

 それにしても,物語に登場する数多くの単語が,EQと結びつけられているのは凄い。本書の執筆者であるスチュアート・ウィーク氏は,相当なEQマニアなのではないだろうか。また,「フォーゴットン・レルム」系のD&D小説でお馴染みのR.A.サルバトーレ氏が本書の監修を行っており,小説としてのクオリティについても申し分ない。邦訳を担当したのがあの荒俣宏氏だというのも,大きなポイントだ。
 英語版のEQしかプレイしていない人にとっては,もしかすると各固有名詞が翻訳されているのに若干懸念があるかもしれないが,実際にはカタカナでルビが振ってあるので違和感はさほどない。

EverQuest
魔法などの描写も凝っており,EQ経験者にとっては文章とゲーム画面がシンクロするような読書体験ができるかも。ゲームをモチーフとした小説ならではの楽しみ方だ
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2003年には「エバークエスト日本語版」が登場。あのときは,ノーラスの世界観を日本語で堪能できるのが何よりも嬉しかった
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EQの発売から数年間は,このようなしょぼいUIだった。今こうして見ると解像度は低く,キャラクタのテクスチャも粗いが,当時はそのようなことで不満を感じたことは一度もなかった
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EQ初期の名ダンジョン“Lower Guk”の通称“Bedroom”。プレイヤー達が名付けたこういった些細な名称ですら,思わずその背景をあれこれ想像したくなるような世界観であった
EverQuest
個人的にSoL当時は,カッタ/セルの対立よりもRaidのことで頭が一杯だった気がする。これを機にノーラス史をちゃんと調べてみることにしよう

 EQに登場する種族などは,「指輪物語」をはじめとした従来のファンタジー作品から流用されているものが多い。しかし,そのままの形で寄せ集められたわけではなく,Brad McQuaidらのスタッフによる独自解釈がふんだんに盛り込まれ,ノーラスという類い希な仮想世界を形成していた。
 個人的には,そのようにして丁寧に作り上げられた世界観は,年単位の継続的なプレイが前提となるMMORPGに,必要不可欠な要素だと思う。さらに個人的な意見を言わせてもらうなら,EQの世界観は誰が何と言おうと100点満点であり,そのことを改めて強く感じさせてくれた一冊であった。少なくともEQファンならば,メインキャラの種族や職業に関係なく,きっと満足できるので,安心して手に取ってみてほしい。
 最後に,欧米では本シリーズがすでに4冊出版されている。これらの邦訳版の発売日は今のところ未定だが,最初のリリースに「邦訳第1弾」と書かれているので,今後の展開についても大いに期待できそうだ。元EQプレイヤーとして,そして同書のファンとして,まずは邦訳第2弾の発売を楽しみに待ちたい。

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●書誌情報
・書名:エバークエスト 連合帝国(コンバイン・エンパイア)の興亡(原題EverQuest The Ocean of Tears)
・R.A.サルバトーレ 監修/スチュアート・ウィーク 著/荒俣宏 訳
・定価:1,869円 (本体1,780円)
・発売日:2008/04/25
・形態:四六判・ハードカバー(432ページ)
・ISBN:978-4-04-870017-7
・株式会社アスキー・メディアワークス


カバー画像などの詳細情報は以下のサイトをご覧下さい。
アスキー ファンタジー小説サイト
http://www.asciibook.com/dd/
http://www.asciibook.com/dd/other_fantasy.asp
アスキーブックスのEQ小説情報
http://www.ascii.co.jp/books/books/detail/978-4-04-870017-7.shtml


本書を読み終えた今は,一癖も二癖もある仲間達と過ごした日々がたまらなく懐かしい。EQについて誰かれ構わず喋りたい気分だ
EverQuest EverQuest EverQuest

EQはどのゾーンにも景観面での個性がたっぷりとあり,しかもしっかりとしたストーリーが用意されている。今回の連合帝国以外にも面白いエピソードは多数あるので,もっともっと小説化してもらいたいものだ
EverQuest EverQuest EverQuest
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