お知らせ
「4Gレビューコンテスト」最終結果を発表。応募総数130作品の頂点に選ばれたのは?
……と,その前に,まずは軽くコンテストの概観を振り返ってみたい。1次通過作品の発表時にもお伝えしたとおり,今回は過去最高の130作品の応募があった。内訳を見てみると,「コンシューマゲーム部門」での応募が77作品と,全体の約60%を占めている。
逆に,最も応募数が少なかったのはハードウェア系の「周辺機器部門」「モバイルデバイス部門」で,こちらは2部門合わせて全体の約2%に留まった。まあ,ハードウェア系のレビューはハードル高いよね……。残る「PCゲーム部門」「PCオンラインゲーム部門」「スマホアプリ部門」は,ほぼ同数となっている。
次に,レビュワー人気が高かったタイトルを見ると,今回ぶっちぎりで多くのレビューが寄せられたのは,ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアから発売中のPS3用ソフト「The Last of Us」。また,「rain」「ブラザーズ:2人の息子の物語」(PC/PS3/X360),「艦隊これくしょん -艦これ-」「League of Legends」「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」(PC/PS3),「グランド・セフト・オートV」(PS3/X360)といった作品にも,たくさんの応募があった。
ひと言でこの傾向をまとめると,心動かされる世界観やシナリオ,ゲームシステムを備えた,ある意味で分かりやすいタイトルや,大ヒット作品にレビューが集中したといえる。しかし,レビューコンテストにおいては,同じタイトルに複数の応募があった場合,どうしても同一タイトルのレビュー同士で見比べてしまうため,そのぶん応募者にとっては競争が厳しくなる側面がある。
もちろん,最後に残るのは本当に優れた作品のみではあるが,誰もが書きそうな“普通”のタイトルではなく,自分の持ち味を活かせる“個性的”なタイトルを選ぶのも,作戦の一つとしてはアリだろう。
というわけで,いよいよ最終結果を発表する。今回は,大賞1作品,佳作6作品が選出された。各賞の受賞者には,審査員一同,心より賞賛を送りたい。
●PCゲーム部門
<大賞>
津雲回転さん「HITMAN ABSOLUTION」
→作品は「こちら」
<佳作>
HayanieMozuさん「ブラザーズ:2人の息子の物語」
●PCオンラインゲーム部門
<佳作>
らーずぐりーずさん「Aces High」
<佳作>
Stemonitisさん「艦隊これくしょん -艦これ-」
●コンシューマゲーム部門
<佳作>
torotoroさん「古色迷宮輪舞曲 〜La Role de fortune〜」
<佳作>
すししさん「Unicorn Makeout Mania」
●スマホアプリ部門
<佳作>
ニカイドウレンジさん「ガンスピリッツ」
●周辺機器部門
該当なし●モバイルデバイス部門
該当なし選評
津雲回転さん「HITMAN ABSOLUTION」(大賞)
→作品は「こちら」
今回送ってもらった作品は,みなどれもよく出来ていて,そのうち何割かは「このまま原稿を発注したいな」と思わせる人達ばかりだったが,その中でも頭1つ抜けていたのが,この津雲回転氏の「HITMAN ABSOLUTION」だ。6名の審査員全員が「この人に何か賞を」となんらかの得点を入れており,私もご多分に漏れず「大賞」の評価を入れておいた。
本来「レビュー」とは“評論/批評”のことであり「紹介記事」ではないのだが,とはいえ商業メディアのレビューにおいては,一般的には紹介部分がないと読者が置いてきぼりになってしまう(意図的に置いてきぼりにすることもあるが)。かといって紹介部分だけだったら,それは単なるプレスリリース(メーカー公式の公開情報)の延長に過ぎず,私がよく編集部内でキレる「ただの紹介記事じゃないか」という原稿が出来上がる。そのバランスは,実際に書いてみると意外に難しい(そしてプロのライターであっても,この罠にはよくハマる)。
少なくともゲームメディアにおける一般的なレビュー記事は,うるさくない程度に全貌が分かる紹介と,そこに対する自分の考えや感想,評価などを,過不足なく入れ込むことが重要だと思っているのだが,それを高いレベルでまとめあげているのが,この応募作品が大賞を取ったゆえんだろう。
しかしこれ,一読すると非常に地味に思うかもしれない。ましてや腕に自信があって応募してくれた人などはとくに,そういう感想を抱きがちな気がする。とりたてて面白い文章ではないし,Hitmanに対する“あふれる愛情”があるわけでもないし(なにせ初めてHitmanを遊んだらしい)。松本隆一のようなクスリとさせられる文体でもないし,まるで親の仇(かたき)のようにゲームを酷評しているわけでもない。
頭と終わりが比較的シンプルにまとめられており,本文も,若干荒削りな部分はあるが十二分にキレイに流れている。内容を一通り紹介しつつも,要所要所で自分なりの感想/批評を挟み,単調にならないようにしてあるのも評価ポイントだ。また,小見出しの分け方,バランス,キャプションなどもソツなくキレイにまとまっており,全体的な完成度が非常に高い。熱くなりすぎず,一歩引いて書いてあるのも,とても好感が持てる。確かに地味だが,とにかくバランスがよいのだ。
そういったわけで,(良い意味での)商業ゲームメディアにおけるレビュー記事の1つの理想型を提示してくれている津雲回転氏の作品に,大賞を贈りたいと思う。(編集長:Kazuhisa)
HayanieMozuさん「ブラザーズ:2人の息子の物語」(佳作)
「ゲームである必然性がある」ゲームが好きだ。
レビューを見る限り,「ブラザーズ:2人の息子の物語」はかなりユニークなゲームらしいので,まずは題材の選択が良かったと思う。開発者の意図を汲みとる視線も確かだし,メディアの記事を引用して自分の意見の傍証とする手際も巧みだ。なにはともあれ,読んでいたらなんだかプレイしてみたくなった。広く知られているわけではないゲームの記事を読ませるために,冒頭のフックは重要になるが,そこはもう一ひねり欲しかった。(松本隆一)
らーずぐりーずさん「Aces High」(佳作)
「敵機発見!」敵はほぼ同高度、こちらは位置エネルギーを運動エネルギーに変えるために降下しながら接敵する。敵も同じように降下しながらこちらに近づいてくる。HO(ヘッドオン)である。
ミリタリーゲームなどの“濃い”題材をテーマに取り上げるときに,ついやってしまいがちなのが,難しい専門用語を乱発して読者を置いてきぼりにしてしまうことだ。とはいえ,適度な専門用語の使用は,読者の知的好奇心を刺激する大切な要素でもある。らーずぐりーずさんのレビューはその点を,ゲームを“リプレイ風”に紹介することでうまくクリアしている。文章力も高い。ただ,現役のオンラインゲームであるとは言え「Aces High」はちょっと渋すぎる。(ginger)
Stemonitisさん「艦隊これくしょん -艦これ-」(佳作)
これまでのウォーゲームでは,艦艇や資材は,さらなるリソースや勝利を得るための手段として位置づけられてきた。「艦これ」もまた,艦娘や資材を使い潰すゲームではある。しかし「艦これ」が描く世界では,これらの要素に,個性や,歴史や,プレイヤーの経験…といった単なる手段として以上の「重み」を与えることに成功している。
こういったタイプのゲームを扱ったレビューは,システムの説明がどうしても必要になるが,それだけで終わってしまうとレビューとして成立しない。その点,Stemonitis氏の原稿は,単にシステムが紹介されているだけでなく,他作品とのシステム的な比較が分かりやすく明示され,なにを面白く感じたのかといった考察もよくまとめられていた。また冒頭で提示したテーマが途中でぶれていなかったのも評価のポイントになったといえる(多少強引な部分はあったが)。(noguchi)
torotoroさん「古色迷宮輪舞曲 〜La Role de fortune〜」(佳作)
静かな寒い日には、暖かい紅茶を飲みながら童話の世界を楽しむのはどうだろうか。
赤く彩られた迷路を彷徨う童話を――
レビューに限らず何か文章を書くときに,出だしをどうするかはいつも頭を悩ませる問題だ。引用したのはこの作品の冒頭部分だが,torotoroさんのレビューの場合,そこをうまくゲームの世界観と絡めながら,ほんの短い文章で読者に「おやっ?」と思わせる力がある。読者はついこの“フック”に引っかかり,続きを読みたくなってしまうのだ。また,ゲームのポイントとなる部分を絞り込み,それについて丁寧に記述されていた点も好印象だ。(ginger)
すししさん「Unicorn Makeout Mania」(佳作)
「子供から大人まで遊べるちゅっちゅペロペロ対戦型格闘ゲーム」といえば、より正確だろうか。
基本的に,こういったトリッキーなタイトルの紹介は難しい。事実を淡々と語ってもゲームの面白さは分からないし,内容に合わせて本人が妙なノリになると,読者を置いてきぼりにすることにもなりかねないからだ。その点,このレビューのバランスは良いと思う。最後の結論はある意味無茶だが,つい「なるほどね」と思わせてくれる。(松本隆一)
ニカイドウレンジさん「ガンスピリッツ」(佳作)
たったの100円。それさえ払ってしまえば、あとは君を縛るものはなにもない。銃を両手に持ち、大空へ飛び立つのだ。
好きであるがゆえに独りよがりになってしまったら,伝わるものも伝わらなく
なってしまう。その点このレビューは,「ガンスピリッツ」への愛情に溢れてい
るのみならず,ゲームの各要素をきれいに整理して紹介したうえで,ちょっとし
た遊び方指南までしてくれている。少々冗長な印象もなくはないが,それでも読
み手の存在を常に意識し,「最後まで読ませよう,そしてこのゲームで遊んでも
らおう」という志を感じられた。(TeT)
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