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“コンテンツの定義”を見つけた!――ドワンゴ川上量生氏との対談企画「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」第4回
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印刷2012/02/10 00:01

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“コンテンツの定義”を見つけた!――ドワンゴ川上量生氏との対談企画「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」第4回


 連載第4回めとなる川上量生氏との対談企画「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」だが,今回のテーマは“コンテンツの定義”について。絵画や音楽,映画,アニメ,漫画,小説,そしてゲーム。あらゆるコンテンツに共通するものとは,いったいなんなのか――と,なんか大上段に構えたテーマですが,内容はまぁ,ぐだぐだです。

 また後半では,「Age of Empires」や「Diablo」などといった黎明期のネットワークゲームについても言及。アナログモデムやISDNなど,遅い回線で必死にゲームを遊んでいたあの頃。「テレホーダイ」や「ニフティサーブ」という単語に反応してしまう人なら必見(?)です。

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ネットワークゲームの黎明期時代に日本で大ヒットした「Age of Empires」


コンテンツの定義を見つけた


川上氏:
 ついに僕の中で答えが見つかりました!

4Gamer:
 えーと……,いきなりなんの話でしょう?

川上量生(仮):川上氏が昔ハマったという「Age of Empires」より。
川上氏:
 いや,実は最近,「コンテンツ」というものは結局なんなんだろう?ということをずっと考えていて。例えば,昔の名作っていうのは本当に名作なのか?とか,名作はなんで名作なのか? 一言で名作といっても,芸術品だけじゃなくて技術品にも名作と言われるものはあるし,工業製品とかでも「名機」って言われるようなものがあるじゃないですか。――そう考えると,名作ってどういう観点で捉えればいいのだろう? とか。
 そんなことをつらつらと考えていたんですけど,この間,僕の中でついに「コンテンツの定義」と言える答えが見つかったんです。だから,今日はまずこの話からしたいなと思って。

4Gamer:
 コンテンツの定義,ですか。確かにそれはちょっと面白そうな話ですね。

川上氏:
 その前にですけど,「コンテンツの定義」ってどう考えています?

4Gamer:
 そうですね……。なんか一般論にはなるかもしれませんが,「感情が動くもの」という感じでしょうか。だから,それが小説であれ,映画であれ,あるいは美術品であれ,食べ物であれ,とにかく「人の感情に作用するもの」がコンテンツである,というイメージですね。

川上氏:
 でも,それだと「なぜコンテンツで人の感情が動くのか」の説明はできないし,普遍的な美だとか,普遍的な面白さって本当にあるのか? みたいな疑問の答えにもならないですよね。

4Gamer:
 そこは確かにそうですね。けど,じゃあ川上さんの見つけた答えってどういうものなんですか?

川上氏:
 僕が見つけた答えというのは,コンテンツとは「分かりそうで,分からないもの」である,という定義です。

4Gamer:
 分かりそうで,分からないもの?

川上氏:
 はい。これが,ほぼすべてのコンテンツに共通する定義なんじゃないかな。絵でも,音楽でも,映画でも,漫画でも,アニメでも,ゲームでも,あらゆるコンテンツがなぜ人を惹き付けるのかと考えたときに,この「分かりそうで,分からないもの」だという答えはどれにもちゃんと当てはまる。で,さらになぜ人は「分かりそうで,分からないもの」に惹かれるのか?の原理については,生物の「進化」や「順応」ってところから答えが導けると思うんです。

4Gamer:
 えー。……どういうことでしょう。

川上氏:
 「人間の情報処理」という観点からコンテンツを考えてみると,要するにコンテンツっていうのは,外部からの情報を人間が五感を通じて処理することで,そこに何かしらのパターンを見出したり,あるいは見出せなかったりして,それに対して感情が喚起されるというものですよね。

4Gamer:
 なるほど。確かにそういう捉え方ができますね。

川上氏:
 で,人間ってなんらかの「新しい情報」に遭遇したときって,自分の記憶だとか経験だとかを駆使しながら,「それが一体どんなものなのか/どんなことなのか」を理解しようとするじゃないですか。例えば,これは食べられそう/食べられないっていうのを,見た目や匂い,あるいは過去の記憶……「それに似たもの」の情報などを拠り所にして,判断しようとするわけです。

4Gamer:
 真っ赤なキノコとか,食べたいとは思いませんし。

川上氏:
 そう考えると,人間っていうのは,いろんな情報を日々選り分けながら生きているわけです。そういう情報を処理する,分からないものを分かろうとする機能というのは,本来生存するために必要な能力なわけですよ。

4Gamer:
 そうですね。

川上氏:
 自分にとって,あまりにも理解の限度を超えたものは,もう「関係ない」って関心がなくなっちゃうけれど,微妙なもの……つまり,「分かりそうで,分からない」ものって,とりあえず気になって「記憶に留めておく」と思うんですよね。なぜ記憶に留めておくかというと,そうした方が生存率を上げられるから。だって,分からないものをそのままにしておいたら,危険じゃないですか。

4Gamer:
 確かに。

川上氏:
 だから,「分かりそうで,分からないもの」に出会った時への対応として,人間というのは,その場では分からないけど,気になるから“とりあえず記憶に留めておく”っていう処理をすることにしたんだろうと思うんです。今は分からなくても,後で分かるようになるかもしれないし。
 逆に一度理解したものへのは関心っていうのは薄れていって,次々に興味が移るというのも,同じように生存競争の中で人間が獲得した,いわば“特性”なんじゃないかって気がしていて。

4Gamer:
 なるほど……。

川上氏:
 そう考えると,芸術とか美術とか,あるいは宗教とかっていうのは,そこになんらかのパターンなり理屈を見出すんだけど,完全には理解しがたいものだと思うんです。そしてそういうものに惹かれるという性質を,人間は持っていると思うんですよね。

4Gamer:
 そういう視点ですか。

“コンテンツの定義”を見つけた!――ドワンゴ川上量生氏との対談企画「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」第4回
川上氏:
 逆に多くの人間が「理解しているもの」って,基本的には芸術性(コンテンツ性)を帯びないと思うんですよ。例えば,ここにコーヒーカップがあるけれど,これが2000〜3000年くらい前にあったら,きっとこのコーヒーカップはもの凄い芸術的作品だと思うんです。「こんなに綺麗な幾何学模様は見たことがない!」とかいって。めちゃくちゃ貴重な品として扱われると思う(笑)。

4Gamer:
 きっとそうなりますね。

川上氏:
 それってつまり,2000〜3000年前の人達からしたら,このコーヒーカップがどうやって作られているのかが分からないから,「この幾何学模様はどうやって書いたんだ?」とか「完全な円はどうやって作るんだ?」とか感じるわけですよ。で,そういうものに神秘性を見出して,尊いと感じてしまう。なぜそこに興味を持つ(尊いと感じてしまう)のかといえば,さっき説明したように,それが生物としての人間の特性だからという。
 一方で,現代の人はこのコーヒーカップが工場の機械で簡単に作れてしまうことを知っているから,凄いとも,貴重だとも思わないんです。

4Gamer:
 ああ,そういう意味なら「オーパーツ(※)」なんかも,同じような話ですよね。僕らの常識では「古代の技術力で,こんな水晶球を作れるはずがない!」って思ってしまうから,そこに神秘性や魅力を感じる。

※「Out-of-Place Artifacts(場違いな工芸品)」から来た造語で,発見された時代/場所とはそぐわない品物などを指す

川上氏:
 そうそうそう! まさにそんな感じですよね。たぶんだけど,人間がコンテンツに対して興味を抱くっていうのは,元々はそういう機能だったんだと思うんですよ。その副産物として,人間は芸術(コンテンツ=分かりそうで,分からないもの)を尊ぶようになったんじゃないか。それが,最近の僕のコンテンツってものに対する解釈で。

4Gamer:
 さっきの「感情に働きかける」という定義でもそうなんですが,楽しいだとか,嬉しいだとか,あるいはストレスを感じるであるとか。結局,そもそもなぜ感情がわき上がるのか?といったら,結局はそれも,本能的なものが根底にあるとは思うんです。でも,あるものは高尚とされ,あるものは低俗とされる。その差はいったいなんなんでしょうね。

川上氏:
 それは,その感情が人間の欲求のどこに結びつくかで決まるんじゃないかな。

4Gamer:
 どこに結びつくか?

川上氏:
 そう。食欲だったり,恐怖だったり,あるいは知的好奇心だったり,恋愛感情だったり。そもそも人が何かに興味をひかれる瞬間って,数学の勉強をしている時とかにも当てはまるわけじゃないですか。一般的に娯楽とかコンテンツとは呼ばれてないものでも,そういう“興味をひかれる”と思う感情はわき上がるわけですよね。

4Gamer:
 それはそうですね。

川上氏:
 僕はその“興味をひかれる”という部分がどういう感情に結びついているかを,コンテンツ(≒分かりそうで,分からないもの)の機能性って勝手に呼んでいるんですけど,どういう機能性があるか,その性能が高いか低いかによって,コンテンツの”大衆性”が決まると思っています。そして,コンテンツが高尚なのか低俗なのかは大衆性とはあまり関係なく,分かりにくいか,分かりやすいかで決まります。当然,分かりやすいものが低俗です。

4Gamer:
 しかし,人は“分かりそうで分からないものに惹き付けられる”と考えると,それってつまりは,「普遍的な名作」みたいなものは存在し得ないってことになりませんか?

川上氏:
 はい。ないんじゃないですか。要するに情報って「分かっちゃう」と価値を失っていくんですよ。「飽きられる」と言い換えても良いかもしれない。だから,時代や環境によって,コンテンツ(分かりそうで,分からないもの)の有り様ってどんどん変化していくんです。そしてそうである以上は,普遍的な名作というのはあり得ないと思います。

4Gamer:
 うーん,なるほど。

川上氏:
 もし,古い遺跡や彫刻だとか,そういうものに価値を感じるんだとしたら,それは歴史的な価値だったり,コンテンツそのものの価値とはまた違うものが混じっているんじゃないかな。

4Gamer:
 希少価値というか。

川上氏:
 ええ。もしくは,みんなが知っているという「共通言語としての価値」くらいですよね。


予定調和じゃない面白さ


4Gamer:
 しかし,川上さんの説明を聞いていると,つまりニコニコ動画の“訳の分からなさ”というのも……。

川上氏:
 はい。理屈として説明できますよね。「この人達は一体何を考えているのだろう?」というのが,みんな分かりそうで分からないわけじゃないですか。その状態を維持することこそが大切なんだという(笑)。

4Gamer:
 うーん(苦笑)。

川上氏:
 いやでも,真面目な話,コンテンツとは「分かりそうで,分からないもの」であると定義すると,「分かりそうで,分からないことをする」というのが,“コンテンツの目的になり得る”ってことなんですよ。

4Gamer:
 そう言われると,確かに。

川上氏:
 例えば,実際に小説家とか漫画家みたいな人達というのは,それをテクニックとして使って,物語を書いていたりします。分からないもの……それこそ自分でも分からないものを書く。作者が正解を知らないものって,読者も正解を知り得ない。でも想像はできるから,分かりそうで分からないものにちゃんとなっている。クリエイターというのは,分かりそうで分からないことの境界を探っている人たちなんですよね。

4Gamer:
 以前に伺ったお話(理解できないものがよい)に近い部分ですね。

川上氏:
 「MONSTER」や「20世紀少年」で知られる漫画家の浦沢直樹さんなんかも,あの緻密な物語を事前に全部決めて描いてるいるわけじゃなくて,「自分でも先が分からないまま描いてる」って話をどこかで聞いたことがありますし,そういうもんなんじゃないのかなぁ。

4Gamer:
 そういえば,「風の谷のナウシカ」でも,ナウシカが生き返るシーンを入れることにしたのは制作の最後の方だった,みたいな話がありましたよね。当初は,ナウシカが死んで終わりの予定だったという。

川上氏:
 今から考えると,そんなバカなって話なんですけどね。でも,そういう作者ですらどうなるか分からないドキドキ感だったり,ライブ感みたいなものが,映画にも反映されるんじゃないですか。

4Gamer:
 そういえば,川上さんはご存じかどうか分からないんですが,「水曜どうでしょう」というバラエティー番組でも,やっぱり似たような話が出てくるんですよね。

川上氏:
 ああ,あの北海道の奴ですか?

4Gamer:
 ええ,それです。で,その番組を作っているディレクターの二人が言っているのが,「段取りを組まないことの重要さ」って話なんです。というのも,「水曜どうでしょう」という番組は,一見すると凄いナァナァで作っているように見えるし,実際にそうなんですけど,実はそれを“かなり意図的にやっている”んだという話で。

川上氏:
 あれですよね。要するに“予定調和”にはしないってことですよね。

4Gamer:
 まさにそうです。先にロケ地を下見して,そのうえで段取りを決めて撮影といったことをこなして作っていくと,“段取りで決めた以上の面白さ”には絶対にならないっていうんですね。そうじゃなくて,いろいろなハプニングを含めた“予定調和からは生まれない面白さ”が,「水曜どうでしょう」という番組では重要なんだと。制作ディレクターの二人が,オーディオコメンタリーでそういう話をしていて。

川上氏:
 予定調和がなぜ面白くないかっていったら,先の展開が読めちゃうからですよね。つまりは「分かっちゃう」からです。

4Gamer:
 今回の文脈で言うなら,そういう解釈になりますね。

川上氏:
 あ,あと「分かりそうで,分からない」という視点でスタジオジブリ繋がりの話を一つすると,このまえ「崖の上のポニョ」のブルーレイ版のおまけについている,ポニョの制作秘話みたいな映像を見たんです。15時間もあるので,まだ最初の2時間だけしか見てないんですが,そこで宮崎 駿さんが,ポニョの頭とかお腹の丸い曲線を描くときに,「体で覚えた手の動きに逆らって,歪んだ線で描くように」と指示をしているんですよね。

4Gamer:
 ん,どういう意味ですか?

川上氏:
 つまり,どこか“わざと歪に描く”らしいのです。そうすることで,見る人にとって“引っかかる絵になる”と言うんですよ。そしてそういうのがないと,お客さんは“何も気にせずに流して見てしまう”って言うんですね。

4Gamer:
 それはとても興味深い話ですね。動きや構図でそういう話を聞くことはありますけど,宮崎さんは線のレベルでそれをやるのか……。
 
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