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[OGC 2009#01]秘訣はユーザー/運営両者のコミュニティ意識の高さ,「価格.com」成長の要因となった「クチコミ」とは?
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印刷2009/01/29 11:24

インタビュー

[OGC 2009#01]秘訣はユーザー/運営両者のコミュニティ意識の高さ,「価格.com」成長の要因となった「クチコミ」とは?

画像集#001のサムネイル/[OGC 2009#01]秘訣はユーザー/運営両者のコミュニティ意識の高さ,「価格.com」成長の要因となった「クチコミ」とは?
 2008年12月に,1728万人のユニークユーザーを記録したという「価格.com」。いわずと知れた価格比較の老舗として知られる同サイトだが,PCパーツの購入後に発生したトラブルの解決や,あるいは取り扱いの少ない特殊なパーツがどのショップに入荷したのかなど,関連するさまざまな情報をチェックする場としてお世話になっている4Gamer読者も多いことだろう。
 そうした,ユーザーが情報を交換するコミュニティとして設けられた「クチコミ」の利用者は,上記のユニークユーザー数のうち実に800万人以上になるという。
 OGCにおいて,価格.comの核となるコミュニティについての講演を行う,カカクコム 取締役COOの安田幹広氏に事前に話を聞いてみた。

カカクコム 取締役COOの安田幹広氏
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 さて,今ではCOOとしてカカクコムグループ全体を見ており,その中の一つであるコミュニティ部門にも深く関わる安田氏だが,そもそもカカクコムにはCTO,すなわち技術部門のトップとして入社した人物だ。価格.comが抱えていた「掲示板が重い」などといった技術的な問題の解決,さらなるサービス拡大に伴う新システムの導入などを手がけていた安田氏は,2006年当時「ブランドマーケティング部」が立ち上がった際にコミュニティ関連にも携わるようになったという(注:現在,ブランドマーケティング部は存在しない)。

 「コミュニティは,価格.comにおいて1番もしくは2番目に位置するほど重要なコンテンツです。もともと価格比較から始まったサイトですが,今のようなデフレの時代には,同じものを少しでも安く買いたい,失敗しないよう事前に自分で情報を収集したいという需要があってコミュニティの重要性が高まっています」(安田氏)

 そもそも価格比較サイトは,主に耐久消費財の価格を比較検討するためにあり,購入前にチェックするものというイメージが強い。ところが価格.comは,購入後も引き続き利用できるコミュニティコンテンツとして,クチコミを用意した。そこで行われるユーザーの情報のやり取りは,従来からある価格やスペックといった“定量的”なデータの比較に留まらない。すなわち,購入後のよかった悪かったといった主観的な感想,トラブル発生時の対処法といった,いわば“定性的”な情報が含まれることで,よりバランスの取れた商品の比較ができるようになったのだ。とくに「買ってよかった」という情報には,それを読んだユーザーの購買意欲を掻き立てる傾向が見られるとのことだが,これは読者諸氏も自身の体験からうなずけるところではないだろうか。

 そうしたクチコミの大きな特徴として,個々の書き込みがジャンルやブランドといった括りだけでなく,より詳細な製品固有の型番と紐付いていることが挙げられる。とくにPCやデジタルカメラ,AV機器といった専門性/趣味性が高い分野においては,必要な情報を無駄なく効率的に収集できる点がユーザーから高く評価されているわけだが,このスタイルも11年に及ぶ価格.comの歴史の中で幾度か変遷を遂げてきた結果だ。

価格.comのクチコミはなぜ成功したか?


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 クチコミのベースとなった掲示板は,価格.comのシステムでは把握しきれない,さまざまなショップの特価情報を交換する場として1997年に設置された。続く1998年には,「Windows 98」発売により,PCや関連商品を購入する人が増大した。それに伴って相談やトラブルも増えるだろうという予測から「PCなんでも掲示板」を設置したところ,大盛況となったのだという。
 なぜマイクロソフト本体があるのに,価格.comの一掲示板が盛り上がったかについて正確なところは不明だが,「いわゆるマニアがさまざまな質問に答えられる場を,タイミングよくシステムとして提供できたことが,成功の要因だったのではないか」と安田氏は推測する。
 さらに2000年に入り,現在の型番に紐付いたスタイルのクチコミが登場。その後,マイナーリニューアルを繰り返し成長を続けた結果,2005年にID制が導入された。導入に伴い,一時的に書き込みの全体数は減少したものの,主に運営が削除対象と判断するような内容が減ったことにより書き込みのクオリティは向上。その後,順調な右肩上がりの推移を見せ,現在累計の書き込み数は890万件に上る成長を遂げた。

 安田氏は,クチコミが成長した大きな要因の一つとして,ユーザーのネットリテラシーの高さを挙げる。どうやらそれはユーザーの年齢層に起因するようで,内訳を見るとユーザーの8割以上が30代以上,中でも30〜40代が全体の6割強に達し,また20代より50代のほうが多いとのこと。これはある程度可処分所得があること,そして購入の決定権があることなどが理由だが,結果として成熟した層,すなわち“大人”として意見をいえるユーザーが多いことにも繋がっているわけだ。
 そうした“大人”達によって構築された雰囲気はすぐに伝播し,若年ユーザーや新規ユーザーであっても「ここはこういう場なんだ」と認識して既存ユーザーに倣った行動を取るようになるという。たとえ論争が起きたとしても,第三者が火に油を注ぐような真似をすることはほとんどないそうだ。
 そうした状況について,「そもそも削除対象となる内容が書き込まれないような雰囲気を,ユーザーと一緒に作りあげてきたことこそが成長の大きな鍵」と,安田氏は分析する。

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 無論,スタッフの尽力やシステムの改善も重要な要因だ。書き込みは,10人前後のスタッフが逐一目視でチェックし不適切な内容でないか確認。また何をどう聞けばいいのかすら分からないような初心者には,適切な回答を得やすい質問のテンプレートを用意したり,あるいは「初心者マークをつけている人には親切に答えましょう」と呼びかけたりするなど,システム的にトラブルを起こりにくくしている。
 また,常連となったユーザー同士は,必然的に世間話を始めやすくなってしまうそうだが,これも掲示板の規則に則って,その製品とあまりに関係のない展開であれば削除される。クチコミはあくまでも,前向きな買い物にまつわる情報交換の場という態度を貫いている。
 「とはいえ,ユーザー増加に伴って世間話も増える傾向にあるので,時事ネタや生活ネタを扱える,ゆるい括りの掲示板も用意したんですよ」(安田氏)
 こうした雑談用掲示板は,特に運営側で誘導しなくとも,ユーザーが自主的に棲み分けして新たな盛り上がりを見せているそうだ。

 また,価格.comのユーザー同士で外部コミュニティが生まれるケースもある。バイク関連ではオフ会として一緒にツーリングに行ったり,あるいはゲーム関連でも,ユーザー同士がオンラインのマルチプレイを一緒に楽しむためにサークルを結成したりといった例が結構見られるという。
 ちなみに,ゲーム関連のクチコミユーザー率は,価格.com全体の中でも比較的上位にあるそうだ。例えばニンテンドーDSが品薄だった時期には,在庫情報がリアルタイムでモバイルから書き込まれ,盛り上がりを見せたとのこと。

 さまざまな面で発展を見せる価格.comのコミュニティだが,実際に運営を担当するスタッフが配慮しているのは,ユーザーとの距離感を保つことである。必要以上に介入しない,論争が起きても中途半端な仲裁をしない,場を盛り上げるためにスタッフがサクラ的な書き込みをすることも厳禁という姿勢を保っている。投稿者/閲覧者/運営それぞれにメリットがあるようなシステムを提供することに注力しているとのことで,当面の目標は,質問に対する有効な回答の割合を100パーセントにすることだという。ちなみに現在でも93.5パーセントと極めて高い数字を見せているので,その志の高さに大変感心する次第。

ネットショッピング全般への展開


画像集#007のサムネイル/[OGC 2009#01]秘訣はユーザー/運営両者のコミュニティ意識の高さ,「価格.com」成長の要因となった「クチコミ」とは?
 さて,今後の価格.comはどういった方向に展開していくのだろうか?
 「ネットショッピング一般で見ると,その中心は,PC/デジカメ/家電といった耐久消費財の購入で,全体の2割を占めています。当然,我々もその支援ができるよう重点を置いてきました。しかし最近は残り8割のフード・ドリンクをはじめとする消費財についてもネット上の価格を横断的に検索できるようにしています。将来的には,耐久消費財同様の支援ができるよう力を入れています」(安田氏)

 現在は,まだ価格一覧が出るだけだが,将来的にはPCなどと同じく,価格比較やクチコミが利用できるようになるとのこと。またユーザー個人のマイページには,その人のレビューの傾向などを確認できる──つまりレビューの信用性を判断する資料となる──機能もあるのだが,利用率を高めるために強化するなど,マイナーリニューアルも随時行っていく予定だという。


 価格.comは,日本でインターネットが一般に普及する以前から存在している息の長いサービスである。価格.comができた当時といえば,PCの平均価格も高く,必然的にPCに関心が強くリテラシーの高い有識者がコミュニティに集まってきたはずだ。
 価格.comのクチコミはそうした雰囲気を色濃く残しており,また,それを維持できるよう運営側がユーザーのニーズをきちんと汲み取って,それとなく誘導しているのが読み取れる。数ある価格比較サイトの中でも,有用性の高さで評価されているのはその由縁であろう。
 無論,先行者利得という面もあるだろうが,注目すべきはインタビュー中に見られるようにユーザー/運営スタッフともに大変意識が高い点である。ゲームの場合,そもそもが嗜好品であることや,ユーザーの年齢層が全般に低めであることから一概に丸ごと真似できるとはいえないが,今回のOGCにおける安田氏の講演は,何かのきっかけでどうにも荒れてしまいがちなゲーム関連のコミュニティの運営にも大きなヒントとなりそうだ。
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