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年末恒例企画「ゲーム業界著名人コメント集」。177人が振り返る2023年と,2024年に向けた思いを語る
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印刷2023/12/28 00:00

企画記事

年末恒例企画「ゲーム業界著名人コメント集」。177人が振り返る2023年と,2024年に向けた思いを語る




声優
磯村知美

代表作:BLAZBLUEシリーズ(マコト),「Wonderland Wars」(マメール),「ペルソナ5」(東郷一二三

X(旧Twitter):@isocchi_la_al
YouTube:@isocchi
Instagram:@isocchi_la_al
画像集 No.538のサムネイル画像 / 年末恒例企画「ゲーム業界著名人コメント集」。177人が振り返る2023年と,2024年に向けた思いを語る
<質問1>2023年に発売されたゲームの中で、最も感心させられた(あるいは衝撃を受けた)タイトル

「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」ですかねぇ…?
「ですかねぇ…?」というのは10時間位しかまだプレイしてないからなのですが、根拠のない「ですかねぇ…?」ではございません!「ティアキン」プレイ前にせっかくだから前作から遊ぼうと思い「ブレワイ」をプレイしてその時点でゲームの面白さ、物語、キャラクターにハマり、更に深掘りしたくなって(特にミファーとかミファーとかミファーの事を)100年前の世界を描いたスピンオフ作品「ゼルダ無双」をプレイしてからの「ですかねぇ…?」なのです!(早口)前作のシーカーストーンを使った謎解きも凄い発想でしたけど今作はまた違った角度からの謎解きですね!特にウルトラハンドとトーレルーフは良くこんな事を思いついて実装したなという能力で冒険の続きをプレイするのが楽しみです。
あとは「ファミレスを教授せよ」が、思ってたのと違う…!(いい意味で)というストーリーで、世の中にちょっと疲れてしまったら夜中にプレイしてムーンパレスに思いを馳せて欲しいなって思える作品でした。
2023年発売ではないけれど「OMORI」も情緒が不安定になるくらい良かったデス…。

<質問2>2023年に発売/公開されたエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品

アニメ「葬送のフリーレン」「呪術廻戦」2期です。劇場版並みのクオリティを毎週ご家庭で観れてしまうなんて!今の若い世代の方々がめちゃくちゃ動くテレビアニメを“当たり前”だと思ってしまったらどうしよう…。アニメーション業界の皆さんはただでさえ大変そうなのに視聴者の目が肥えてハードルが上がってしまう!と、ちょっと心配になっちゃいます。

<質問3>2023年に、個人的に注目した(している)人物

イーロン・マスク氏ですね。Twitterをどうしたいんだ!(もうXだけど)という思いから2023年はずっと追いかけていたような気がします。ゲーム業界でも宣伝に使っているツールですし、そんな急に仕様変更したら困るんですが!不具合が出た日と広告を打った日が被った企業の皆さんは大丈夫だったんでしょうか…?(大丈夫じゃない)マイナス面が目立ちがちですが良い新仕様もあるので2024年には皆で盛り上がれるSNSになるようにお願いします!

<質問4>2024年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。

ご時世的に声の収録はしたものの開発が中止されてしまった作品もあってしょんぼりしちゃう事が多かったんです。そういった波は大なり小なり自分が関わらせて頂いたタイトル以外にもあったかと思います。
「この世に生まれて来てくれてありがとう」という気持ちで全てのゲームの発売に感謝したい!2024年もゲーム業界を応援していきたい!
…2024年に向けてなのにちょっと暗いですかね?昨年は何を書いたんだっけ?と確認したら「十三機兵防衛圏」のオーケストラコンサートについて書いておりました。そうそう、好評につき再演するんですよ!その名も「十三機兵防衛圏オーケストラコンサート2024 -ReSTART-」!新作「ユニコーンオーバーロード」の曲も演奏されるとか。今回もMCとしてお供させて頂ける事になりました。来場される皆さんとゲームの世界にどっぷりと浸かりたいです!生演奏はいいぞ!




声優
岡本信彦

代表作:「僕のヒーローアカデミア」爆豪勝己

X(旧Twitter):@ok_nobuhiko
画像集 No.539のサムネイル画像 / 年末恒例企画「ゲーム業界著名人コメント集」。177人が振り返る2023年と,2024年に向けた思いを語る
<質問1>2023年に発売されたゲームの中で、最も感心させられた(あるいは衝撃を受けた)タイトル

ドラゴンクエストモンスターズ3

ジョーカーではなくナンバリングの正統続編が出ることに驚きました。枠も3枠がなくなり、2枠と1枠のみになり、わかりやすくした印象です。ストーリーもピサロ視点なので、魔族のために奮闘するという今までと違った面白さがありました。
個人的には虹の卵のマラソンが大変なので、ウルトラガードSPなどを配布希望なのと、現在の対戦環境が休み、混乱、マヒ、眠りが猛威をふるっているので、Lサイズだけでも状態異常無効にしてもらえたら嬉しいです。

<質問2>2023年に発売/公開されたエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品

葬送のフリーレン

出演していたというのもあるのですが、金曜ロードショーで初回をやる力の入れようと、作り手の皆様の「絶対に良い作品を作るんだ」という気概を感じました。
絵も音楽も演出も、妥協を許さない素晴らしいものでした。
関わることができて幸せです。

<質問3>2023年に、個人的に注目した(している)人物

藤井聡太さんです。前人未到の八冠おめでとうございます。将棋のプロになれる方は天才と言われておりまして、その中でも10人しかなれないトップA級棋士は怪物級の超天才と言われております。
しかし藤井聡太八冠はA級の中でもダントツの強さです。
もはやなんと形容したら良いのかわかりません。
ラジオでお話しできる機会がありまして、とても貴重な時間を過ごせました。

<質問4>2024年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。

2023年に作ったゼロベースのものが2024年で始まったりするので、新しいことに挑戦した際の学びにできたら良いなと思っております

声優の仕事でいいますと、12年前の2011年にアニメ化された青の祓魔師の新シーズンが2024年1月から始まります。

みんなで気合い入れて作っているのでぜひ見てください。




無職
神谷英樹

代表作:「バイオハザード2」「デビルメイクライ」「ビューティフルジョー」「大神」「ベヨネッタ」「ザ・ワンダフル101」「ソルクレスタ」

X(旧Twitter):@HidekiKamiya_X
Instagram:@hidekikamiya_insta
YouTube:@HidekiKamiya_Channel
画像集 No.590のサムネイル画像 / 年末恒例企画「ゲーム業界著名人コメント集」。177人が振り返る2023年と,2024年に向けた思いを語る
<質問1>2023年に発売されたゲームの中で、最も感心させられた(あるいは衝撃を受けた)タイトル

『EGGコンソール』

本題に入る前に、まずは他の皆さんも当然言及しているであろうハムちゃん(株式会社ハムスター、業界ではこう書く)による歴史的アーケードゲームのアーカイブ(記録保存、未来への伝達)化プロジェクト、「アーケードアーカイブス」について、ごく簡単にではありますが、僕も触れておかないわけにはいかないでしょう。

2021年のナムコの電撃参入(「パックマン」と「ゼビウス」)以来、ナムコ黄金期のアーケードタイトルの移植は順調に継続され、この2023年も年始早々の「ギャラガ」を皮切りに、「タンクフォース」、「フェリオス」、「グロブダー」、「スカイキッドDX」、「3DサンダーセプターII」、「ナバロン」、「ディグダグII」、「コズモギャング ザ ビデオ」、「ギャラガ'88」、「ローリングサンダー2」、「超絶倫人ベラボーマン」、「スプラッターハウス」、「ポールポジション」、「キング&バルーン」、「爆突機銃艇」、「ボスコニアン」、「ファイネストアワー」、「バーニングフォース」、「ワープ&ワープ」、「ポールポジションII」と続々とリリースされ、我々のゲームライフを充実させてくれるとともに、ナムコの本気を確と感じさせてくれて、疑い深い厄介なゲームジジイたちを心の底から安心させてくれましたが、まだまだ他にも「ジービー」、「ボムビー」、「キューティQ」、「海底宝探し」、「タンクバタリアン」、「メルヘンメイズ」、「クエスター」、「ミズ・パックマン」、「ニュージグザグ」など、移植を期待されているタイトルは山ほどありますから、ナムコ&ハムちゃんには来年も変わらず頑張って頂きたいと期待をかける一方で、コアランドテクノロジーを前身とするバンプレストのタイトルの方は、参入第一弾である「マジンガーZ」以降すっかり音沙汰がなく、あれっ? 「ガルディア」、「機動戦士SDガンダム サイコサラマンダーの脅威」、「機動戦士ガンダム」、「ガルディア」、「超時空要塞マクロス」、「ウルトラ警備隊 空想特撮ゲーム」、「ガルディア」はどうなってるんだろう? …の波が優しく寄せては返し、一抹の不安を禁じ得ないというのが正直なところではあります。

…が、そこは社長自ら毎週YouTubeで生配信を続けるほどユーザーに誠実なハムちゃんのことなので、無条件で信頼するとして、それよりも一向に高まる気配のないセガのアーケードアーカイブス参入の気運の方こそが真に案ずるべきところであり、前回も述べたように、バンプレストすなわちコアランドから想起される「ペンゴ」、「ジャンプバグ」、「ブロックギャル」、「モンスターランド」、「青春スキャンダル」、「ごんべえのあいむそ〜り〜」、「ガルディア」を、今こそアケアカに投入するだけでなく、その機に乗じて「モナコGP」、「ターボ」、「スタージャッカー」、「ZOOM909」、「ピットフォールII」、「忍者プリンセス」、「テディーボーイ・ブルース」、「フォートレス」、「ギガス」、「ピタゴラスの謎」、「ファンタジーゾーン」、「ハングオン」、「スペースハリアー」、「アフターバーナーII」、「パワードリフト」、「ギャラクシーフォースII」、「エンデューロレーサー」、「SDI」といった、ゲーム史を紐解けば必ず名前の挙がる名作群も、セガお得意の独自フォーマットで商品化したいであろう気持ちを痛いほど理解した上で尚、ゲーム文化の継承のために是非とも「アーケードアーカイブス」にラインナップして、他の名作タイトルと同一フォーマットで記録保存しようという英断を下して欲しいと、切に願うばかりであると同時に、返す刀でセガ同様に独自路線を貫くカプコンに対しても、キミそれではまるでファミコン時代に、任天堂が「リンクの冒険」の中に “ユウシャ ロト ココニネムル” というメッセージをイースターエッグで仕込み、それを受けてかスクウェアが後日発売した「ファイナルファンタジー」に “リンク ここにねむる。” というメッセージを仕込んでそれに続いたにもかかわらず、肝心のドラクエが、固唾をのんで見守る全世界数十億人のゲームキッズたちの期待を裏切って、 “ひかりのせんし ここにねむる” 的なメッセージを今に至っても実装せず、「眠り合えよ、この野郎」と僕から罵声を浴びせられるに至ったあの悲劇が如き愚行ですよと、声を大にして訴えたいというのが偽らざる本音です。

ともあれ、ハムちゃんの社長、濱田倫氏が移植を目論むタイトルが記された “濱田メモ” には、全800ものタイトル名が並んでいると言われていますから、氏には是非とも長生きをしていただき、「クラッシュローラー」、「コロスケローラー」、「ミサイルコマンド」、「マーブルマッドネス」、「ガルディア」、「ビーストバスターズ」、「ザ・グレイト・ラグタイムショー」、「シスコヒート」、「ピンボ」、「フィールドコンバット」、「ニューヨークニューヨーク」、「リバーパトロール」、「ガルディア」、「シェリフ」、「スペースフィーバー」、「スペースファイアバード」、「ポパイ」、「B-WINGS」、「マッドエイリアン」、「ファイティングファンタジー」、「ガルディア」、「ミスタージャン」、「スパルタンX」、「ロットロット」、「R-TYPE」、「バスター」、「ギャラクティックウォーリアーズ」、「RF-2」、「新入社員とおる君」、「急降下爆撃隊」、「ブラックパンサー」、「WECル・マン24」、「チェッカーフラッグ」、「ガルディア」、「アルカノイド」、「プランプポップ」、「スカイデストロイヤー」、「オペレーションウルフ」、「レインボーアイランド」、「スラップファイト」、「ワイバーンF-0」、「ガルディア」、「ビューポイント」、「TX-1」、「ロックオン」、「ザインドスリーナ」、「平安京エイリアン」、「麻雀狂時代」、「リアル麻雀 牌牌」、「麻雀CLUB90's」、「華の舞」、「ガルディア」を含む、野望のタイトルを全てコンプリートするという偉業を達成していただきたいわけですが、それというのも、例えば上記から「コロスケローラー」を取り上げて説明るならば、操作キャラに見られる “イカが(スミで?)通過した地面をペイントする”、“離れた場所へワープする” といった、某有名海生軟体動物陣地取りゲームと酷似したその挙動が、もしかしたらこの作品こそがその着想の源流になったのだろうか? あるいは深層心理レベルで本作の強烈な印象がくだんの作品に影響を及ぼすに至ったのか? はたまた偶然が生んだ奇妙なシンクロニシティなのか? …と、大ヒット作誕生の因果論に一石を投じることになり得たりであるとか、または「アルカノイド」を例にとれば、1996年にゲームセンターに登場したタイトー社製アーケード筐体を卓上サイズ化したミニチュアゲーム機「EGRETII mini」に内蔵されたバージョンが、いざ遊んでみると冒頭のステージ1からオリジナルとは遥かにかけ離れた見苦しいレイアウトに変更されていて全ゲームキッズを「これ、なんぞ?」とゼウス隊隊長 剣 剣介(つるぎけんすけ)の如き虚ろな目でモニターを見つめざるを得ない事態に陥らせ、姑息にも発売後になってメーカーサイトにこっそり付言された説明によれば “本製品は完全移植を謳った製品では御座いません”、“「アルカノイド」「アルカノイド リベンジオブ DOH」の2タイトルにつきましては、他社との権利関係の事情で一部ステージ内容が異なっております” という、大人の事情という名の超えられない強固な壁との正面衝突で全日本パドル愛好会の善良な会員全員に致命傷を負わせたあの悲劇を二度と繰り返さないよう、アーケードアーカイブス版には気の利いた「コンストラクション・モード」を(プロジェクトのお作法としては例外的に)実装していただいて、「ステージレイアウトをプレイヤーの手で自由にデザインできますよ」、「尚且つそれを保存しておけますよ」とすることによって、うっかりオリジナルの基板バージョンと全く同じデザインをコンストラクションしてしまう人も中にはいるかも知れないものの、それは制作側の責任範囲ではないので無視するとして、お客さまの無限の創作意欲を引き出してクリエイティビティを育み、未来のゲームデザイナー誕生への布石を打つといった、人手不足に悩まされるゲーム業界にいる人間としては何よりもありがたい施策へと繋げていただくだけでなく、遊ぶために必須のデバイスとなるパドルコントローラーが、 “作る作る詐欺” で一向にアケアカタイトル専用デバイスを作る気配のない某乗っかり企業をアテにしなくとも、男気溢れる有志によって作られて、オールドゲームの盛り上がりを更に加速させる流れを生んだりであるとか、ほかにも例を挙げればきりがありませんが、ともかくゲーム史を語る上で非常に重要な意味を持つ作品が一つでも多く世に広く認識されることで、より一層のゲーム文化発展に繋ってほしいと願えばこそであり、要約すれば「濱田さん、長生きして800と言わず1000でも2000でも、たくさんリリースしてね」ということに尽きるわけです。

…といったところで、甚だ簡素ではありますがご挨拶はこの辺にして、ぼちぼち本題に入りましょう。

今回僕が挙げたのは、2023年9月28日に第1弾タイトル「レリクス(PC-8801)」のリリースとともに始まった、プロジェクトEGGによるオールドPCゲーム復刻プロジェクト、「EGGコンソール」です。
「アーケードアーカイブス」を“歴史的アーケードゲームのアーカイブ化プロジェクト”とするならば、こちらは“歴史的オールドPCゲームのアーカイブ化プロジェクト” といったところでしょうか。

公式サイトによれば、 “Nintendo Switch に懐かしのレトロPCゲームが登場! プロジェクトEGGがNintendo Switch に参入! 1980〜90年代にPC-8801・PC-9801・MSXなどで発売された名作PCゲームは、今のエンタテインメントに大きな影響を与えました。 弊社はゲームを愛する方々へのリスペクトを忘れずに、これからもより多くの皆様に楽しんでいただけるよう復刻を行っていきます” とのことで、 “レトロ” というのは復古 “調” を意味する、例えば「ロックマン9」のような “前時代的味わいを復古したもの” を指す言葉であり、真に “歴史的に古いゲーム” は紛れも無いオリジナルであって、復古したもの(=レトロ)などでは断じて無いというスタンスを取り、ゲーム文化を正しく伝えていくべき側にいる者として歴史的作品たちへの尊崇の念も込めて「オールドゲーム」、その中でもとりわけ名作とされるものは「クラシックゲーム」と呼ぶなどして慈しんでいる僕としましては、同じ業界サイドの団体が “レトロPCゲーム” などという安易な表現を無闇に使っているというのは甚だ残念に感じるところではありますが、単語一つに対する個人的な評価はさておきまして、その取り組みそのものとそれに当たっての信念自体は、控えめに言っても素晴らしいものであり、間違いなくゲームを愛するすべての人間が待ち望んだものであると断言できるでしょう。

プロジェクトEGGといえば、すでに以前よりPC向けに多くのオールドPC作品の復刻を行うも、 “継続的に定額料金を支払ってサービスに加入しつつ、更にそれぞれ作品ごとに代金を支払え” という、どこか未知の並行世界に迷い込んだのか? と錯覚するような異世界的珍妙集金システムで、僕を含む多くのオールドPCゲーム愛好家たちの購買意欲を削ぎ落し続けてきているわけですが、この「EGGコンソール」では、全方位360度から懸念ビームの集中砲火を浴びる中、一転して単品売り切り型という、至極当たり前の商法でリリースを敢行してくれたので、リリース開始前からX(旧ツイッター)で「単品売り切りにしてくれたら今後リリースされる作品全部購入する」と豪語していた某白金的企業元副社長現無職おじさんは、うれしい悲鳴を上げているところです。

そうした中、EGGコンソールは「レリクス(PC-8801)」を皮切りに、「テグザー(PC-8801mkIISR)」、「ザナドゥ(PC-8801mkIISR)」と、立て続けに有名作品をリリースして好スタートを切り、さらに「シルフィード(PC-8801mkIISR)」、「ハイドライド(PC-8801)」、「メルヘンヴェール(PC-8801mkIISR)」、「イース(PC-8801mkIISR)」、「アルゴー(PC-8801mkIISR)」、「A列車で行こう(PC-8801)」、「は〜りぃふぉっくす(PC-8801mkIISR)」、「琥珀色の遺言(PC-8801mkIISR)」、「ラプラスの魔(PC-8801mkIISR)」、「リグラス(PC-8801)」、「妖怪探偵ちまちま(PC-8801)」のリリース予定も抜かりなく発表して、面倒くさい我々ネガティブジジイたちを歓喜させてくれたばかりか、この原稿の提出期限をとうに過ぎてキーボードを叩き続けている間にも、上記のタイトルの中から「シルフィード」と「ハイドライド」を早くも配信開始したために、僕は宇宙の帝王ザカリテの「グロアールある限り貴様らごときに倒されはせぬ」という挑発に易々と乗せられ、倒され続けることを余儀なくされて原稿が更に遅れている始末です。

せっかくなので「シルフィード」に関してもう少し付け加えますと、この作品の特筆すべき点は、何を言ってるのか分からないあの珍妙で愛すべき音声合成はもちろんですが、何といっても当時先進的で未来的だったそのグラフィックにあると言えるでしょう。

…というかそれ以外のゲームデザイン面で言えば至極オーソドックスなシューティングゲームに過ぎないという事実にはここではいちいち言及しないのが大人の振る舞いなので黙っておくとして、1986年という時代に、CPUは4MHzのZ80Aが実質一個、RAMはメインメモリが64KBとVRAMが48KB、サウンドはFM音源3和音+SSG音源3和音+BEEP音のYAMAHA製音源チップYM2203一個という、現代では考えられないほど限定された、それでも当時としては高いスペックを誇ったホビーパソコン「PC-8801mkIISR」向けにリリースされたこの「シルフィード」は、製作陣の創意工夫によりポリゴンを用いての3D描画を実現した意欲的な作品であり、日本で初めてのポリゴンシューティングであるとも言われています。

縦スクロールとも横スクロールとも3Dビューともクオータービューとも違う、少し傾斜のかかった奥行きのある視点のプレイ画面も新鮮でしたが、リリース当時高校生だった神谷少年が…いえ、きっとこのゲームを遊んだPCゲームキッズの誰もが魅了されたのは、ゲームを起動すると同時に始まる、ワイヤーフレームで描かれたシンプルかつスタイリッシュなオープニングデモ映像です。

「Presented by GAME ARTS」と言ってるに違いない珍妙な音声合成を感性で聞き取ると、目の前に暗く冷たい星の海がゆっくりと浮かび上がります。途端に押し寄せる、まるでモニターの向こうの宇宙空間に放り出されたかのような感覚。と同時に、YM2203が生み出す厳かなイントロが流れ始めると、そこに「A long time ago in a galaxy far, far away」みたいなことを言ってるに違いないカッコいい英文が現れ、それもまた感性で読み取ると、無限の暗闇の向こうからぼんやりと何かが見えてきます。

ブルーの線だけで描画された、人工的な立体物。徐々にこちらへ迫ってくるそれは、なんと大型の宇宙空母。カメラは尚も近付いていき、開いたゲートをくぐって場面は艦体の中へ。そして長い通路を更に奥へ奥へと進んでいくと、ガッチャンガッチャンとけたたましいディスクドライブの駆動音…ではなく敵機来襲のエマージェンシーコールがきっと鳴り響いてるであろう中、悠然と浮上して今まさに緊急発進しようとする、銀河連邦の最新鋭戦闘機にして人類の最後の希望、、開発ナンバーSAX-0029 スーパー・ドックファイター シルフィードの雄姿が…!

そう、誇張抜きで、それはまるで自分の部屋にアトラクションがやって来たかのような興奮でした。2D表現が一般的で、 “ワイヤーフレーム” というものがまだ新しかった時代に、小さな箱のブラウン管の向こうに現れた三次元空間に誰もが胸を躍らせ、そして部屋の電気を消してその真っ暗な宇宙空間に身体を融かし、繰り返し繰り返し、それこそフロッピーディスクが擦り切れるほど、この発進シークエンスに見入っては、帝王ザカリテとの戦いに想いを馳せました。シルフィードを起動したゲームキッズたちの家には、雄大な宇宙空間が確かに出現したのです。

現代のAAAタイトルのゲームに見られるような、超絶フォトリアルのリッチなグラフィックには遠く及ばないかも知れません。でも、情報量が簡素であったからこそ、人々は無限の想像力でそれを補い、思い思いの宇宙を頭に描き出しました。それゆえ、ゲーム体験自体は現代のゲームに比べてなんら劣るところはなく、それどころか見方によってはどんな高級なエンターテイメントよりも上質な体験を得ることができたと言えるのではないでしょうか。そんな楽しみ方ができたのも、あの時代に生きたからこその宝物なのかも知れません。

そんな思い出を呼び起こしてくれたEGGコンソールですが、実際に遊んでみた今、一つだけ、強く要望したいことがあります。ソフトウェアの再現度については、少なくとも僕の目から見た限りでは申し分ないのですが、どうしても足りないと感じてしまうのが、ハードウェア面の再現度です。“体験の再現度” と言ってもいいのかもしれません。具体的に言うと、先ほども少し触れた、“ディスクドライブの駆動音”。その再現度が、圧倒的に足りないのです。

当時、実機で遊んでいた人ならば、誰もが体験したディスクドライブの “光” と “音”。当時のPCのゲームソフトは、フロッピーディスクと呼ばれるペラペラのプラスチック製磁気ディスクを記録媒体として提供され、これを一基あるいは二基のディスクドライブにセットし、データを読み込ませてゲームを起動するという仕組みだったのですが、その読み込みの際、ディスクドライブのアクセスランプはピカピカとせわしなく明滅し、そして何よりもメカニカルに駆動する磁気ヘッドがガチャガチャと騒々しい音を立て、それもまたゲーム体験の(欠かしたくても)欠かせない一部となっていました。

本来ならば「シルフィード」も、PC-88の実機で遊べば前述したオープニングデモの機体が旋回する辺りの場面で、貧弱なメモリへデータをじゃんじゃん流し込むために磁気ヘッドが激しく駆動して、ガッチャガッチャンガチャガチャガッチャンガッチャとやかましい音を盛大に鳴らし散らかし、ドライブがブッ壊れるんじゃないかとヤキモキさせられつつも、次第にそれが「おぉ、俺のマシンがメチャ頑張ってるぜ」と頼もしくすら感じられてきて、ゲームプレイの興奮を高めてくれたわけですが、Nintendo Switchで遊ぶと、アクセスランプを模しつつも何故かPC-88実機とは全然違う位置にレイアウトされたUI表示こそピカピカと申し訳程度に明滅してみせるものの、あの躍動する生命エネルギーが如きドライブ駆動音は鳴りを潜め、そのためゲームの面白さすら半減させてしまっているのです。

“ゲームを愛する方々へのリスペクトを忘れずに、これからもより多くの皆様に楽しんでいただけるよう復刻を行っていく” ことを標榜するのであれば、そして “ゲーム体験” を真の意味で復刻するのであれば、ソフトウェアの外であれほどの存在感を放ったハードウェアの挙動にもこだわって、是非ともそれを再現していただきたいと切に願う次第です。

ちなみにハードウェアの挙動の再現というところでは、過去にも他の作品で試みられた例があり、ニンテンドー3DSでリリースされた「3D スペースハリアー」では、オリジナルのアーケード筐体の「ローリングタイプ」が備えていた、キャラクター操作と連動して前後左右に動くムービング機構をソフトで疑似的に再現し、ゲーム画面の中で筐体が動いて、且つその駆動音も再生されるという、 “ムービング筐体疑似再現モード” が実装されていて、それはまさにオリジナル版がリリースされた1985年当時のゲームセンターの臨場感を垣間見せてくれる、画期的な試みと言えるものでした。

特に、可動機構を持たない廉価版の “シットダウンタイプ”の筐体でしか「スぺースハリアー」の入荷がなかった長野県松本市育ちの僕にとっては、 “可動するスペースハリアー” というのは非常に貴重な存在であり、加えて当時から40年近くの月日が経った今となっては、整備が行き届いて正常に可動するコンディションで現存する筐体自体とても希少なものになっているわけですから、たとえソフトウェアの中の疑似表現であっても、“製作者が目指した本来あるべきスペースハリアーの本当の姿” を味わうことができるというのは、当時それを体験したくてもできなかった僕の満足のためというだけではなく、これからゲーム文化を継承していく未来のゲームキッズたちにとって、かけがえのない歴史の語り部となるという意味においても、大変意義深いものでした。…が、その後、Nintendo Switchのプロジェクト「SEGA AGES」にて移植されたバージョンでは、セガはなぜかその “ムービング筐体疑似再現モード” をオミットするという理解に苦しむ愚行をやらかし、僕の中でのセガの評価は元通りの定位置に落ち着くという悲しい結末で、この物語は幕を閉じるわけです。

また、こうした “仕様のオミット”という点に関連した話では、2023年2月22日に発売となった、「ワンダーボーイ アルティメット コレクション」についても触れないわけにはいかないでしょう。
これは歴代のワンダーボーイシリーズが収録されたコレクションソフトで、公式サイトによると、 “シリーズ全6ゲームと移植版を収録した、日本限定コレクション” と景気のいい言葉で謳われています。更に公式曰く、“レトロゲームファンに当時の体験を提供するため、本作にはさまざまなバージョンのタイトルが含まれています。6ゲームすべて収録したのはもちろん、移植版も収録し、合計13バージョンが収録されます” とのことで、嗚呼、こいつも “レトロ” ゆーてもうてるのね、という件はさておき、この言葉だけを見れば、うるさ型のシリーズファンはもちろん、これからシリーズに触れるユーザーに対してもきっと満足を与えてくれる内容で、思い出に残るアレもコレも遊べるんだろうな、と誰もが信じるに違いないところであり、実際に僕も発売を心待ちにし、リリース当日にダウンロード購入したわけです。

僕の目当ては、シリーズ二作目となる「ワンダーボーイ モンスターランド」で、オリジナルのアーケード版は、アーケードアーカイブスには与しないと意固地になって孤高を気取るセガの独自路線「SEGA AGES」の方で既にリリースされていましたから、まずは家庭用ハードのセガ・マークIIIに移植されたバージョンの「スーパーワンダーボーイ モンスターワールド」を、Nintendo Switchならではの寝ころびプレイのお供にセレクトして、さっそく遊び始めました。

…が、開始早々流れてくるのは、セガ・マークIIIでFMサウンドユニットを装着した際のBGMではないですか。以前にも述べたように、苦難を乗り越えてやっと手にしたFMサウンドユニットが奏でる音は、僕にとっては特別なものですから、まずは内蔵音源であるPSG音源のバージョンから楽しみたいと思い、オプション画面を開いて設定項目を探してみたのですが…ない。音源を選択する項目がどこにもありません。

ん…? “レトロゲームファンに当時の体験を提供するため、本作にはさまざまなバージョンのタイトルが含まれて” いるんだよね? ボクのPSG音源版は一体ドコにあるの…? と混乱しながら、ここでネットから情報を得ようと調べてみると、驚愕の事実が明らかになりました。
なんとこの商品、海外では「ワンダーボーイ アニバーサリー コレクション」という名前で発売されているバージョンがあり、収録作品は“6タイトル、全21バージョン” となっているではないですか。

“日本限定コレクション” とやらの「ワンダーボーイ アルティメット コレクション」の収録作品は、6タイトル、全13バージョン。
海外販売の「ワンダーボーイ アニバーサリー コレクション」の収録作品は、6タイトル、全21バージョン。

“アルティメット” なのに、全13…? “アルティメット(ultimate [ʌ́ltəmət])” って、日本語でどういう意味でしたっけ…?

すみません、話題がちょっとアカデミックになり過ぎましたので、話をEGGコンソールの方に戻して改めて整理しますと、まずはアクセスランプの表現を現状のデバッグ表示のようなやっつけデザインではなく、きちんと実機を模したグラフィックに整えた上で、ディスクドライブの駆動音の再現機能を実装し、更にはそれらをSR、MR、MH、MA等、実機のバリエーションに応じたものに変更できるようにするなど、オールドPCのゲームを遊ぶことの臨場感をさらに向上させるアップデートを実装し、本当の意味での “ゲームを愛する方々へのリスペクト” 溢れるプロジェクトとして洗練されていくことを期待したいところです。

また、ソフトラインナップの方に話を向けて、極めてパーソナルな観点からではありますが、まずは「ハイドライド3」について触れさせていただきますと、この作品は、まさにこの原稿を書いている最中に発売された「ハイドライド」の、シリーズ第3作目となるタイトルで、実はわたくし神谷英樹が愛機PC-8801MAを購入して初めて手に入れたゲームでもあります。

僕がPC-8801MAを購入したのは、1987年の高校一年生の時、コンシューマではまだファミコンが主流で、ぼちぼちセガや任天堂の新ハードの噂(スーパーファミコン、メガドライブ)が出始め、PCエンジンがそれら新世代ハードの先陣を切って発売されるかされないか、といった頃だったと思います。

インターネットも存在しない時代に、“パソコン” というのは、廉価で生活の中に普及しているような位置づけのものではなく、ビジネスシーンで使われていたPC-9801シリーズや、ホビーユースに特化したNECのPC-8801シリーズ、シャープのX1シリーズ、富士通のFMシリーズ、MSXシリーズなど、いずれもOSやソフトなどで相互に共通性を持たない独自仕様の機種が乱立して、ごく少数の大人や少しニッチでこだわりの強い人たちの間で使われているのみで、小中学生にとっては「アタマのいい人たちが華麗にプログラムを組んだり、少しニッチでこだわりの強いお兄さんたちが複雑でマニアックなゲームを遊ぶ高級なもの」と認識されていて、実際、14,800円のファミコン本体をどうにか買ってもらい、お年玉や誕生日プレゼントなどの限りあるチャンスを駆使して約5,000円もするゲームソフトをやっと掴み取っていたようなゲームキッズたちにとっては、例えば本体価格198,000円のPC-8801MA(+定価39,800円のモニターPC-KD853)というのは、それはもう非現実的な異次元の存在でした。

そんなパソコンという存在に僕が初めて触れたのは中学生の頃のことで、野々宮神社の近くに住んでいた同級生の鈴木君の家で、恐らく初代PC-8801だったかと思われる、厚めのブルーレイレコーダーほどもある鉄の箱で、確か「検非違使(ケビイシ)」という名前の、平安京エイリアンのクローンのようなゲームを遊んだのが僕の最古の記憶です。
データレコーダーに、ゲームのプログラムが記録されたカセットテープをセットし、ガーガーピーピー音を鳴らしながらデータがロードされるのをコロコロコミックを読みながら15分ほど待ち、たまに読み込みエラーとなったらまた最初から15分のデータロードをやり直して、その末にようやく現れるゲーム画面は、単色の簡素なグラフィックでしたが、そこに到達するまでの儀式のような長大な手順も相まって、「特別な尊いものなんだ」というワクワクと充足感を与えてくれました。

それから時を経て高校生になるまでには、PCのスペックも徐々に高度になっていきましたが、どのホビーPCも、ゲーム専用機には当たり前のように搭載されていた、キャラクターを滑らかに動かすためのスプライト機能や、画面全体をスムーズに動かすスクロール機能といったものは与えられずに独自の進化を遂げ、同時にそれらに対応するゲームソフトの方も、「信長の野望」や「大戦略」に代表されるシミュレーションゲームや、「デゼニランド」や「ポートピア連続殺人事件」のようなアドベンチャーゲーム、また「ウィザードリィ」や「ウルティマ」のようなRPGといった、当時のアーケードゲームやコンシューマゲームなどにはまだ登場していなかった、異国情緒と高尚な雰囲気をビンビンに醸し出す未知のジャンルのゲームたちが隆盛を誇り、僕はパソコン雑誌やパソコンショップでそれらの画像を眺めては、手の届かない高嶺の花への憧れを募らせていきました。

そして高校生になった僕は、今こそそのパソコンを手に入れようと決心して、高校初めての夏休みに勉強と遊びを犠牲にして時給500円の弁当工場でのアルバイトに全力を注ぎ、ベルトコンベアーで続々流れてくるプラスチックの弁当容器に素早くコロッケをセットしたり、ご飯のド真ん中にどれだけ正確に梅干しセットを決められるかを自分の中で競ったり、ウォーターカッターで切られているために密着していて中々離れないゆで卵をなんとか二つに分けようとイングリモングリしてるうちに弁当容器がどんどん過ぎ去っていって「すいませーん!」と叫んでベルトコンベアを緊急停止してもらい、下流へ走って「すいません、すいません」と謝りながらゆで卵セットをリカバーしたり、クタクタになって帰ってきてから宿題をやろうと机に向かうと宿題帳が右へ右へと流れていく錯覚に襲われたり、夢の中でベルトコンベアを緊急停止させて謝り続ける悪夢に苛まれたりと、毎日楽しく働きながら目標金額を稼ぎ出して、当時トップシェアを誇ったPC-8801シリーズの最新機種「PC-8801MA」をついに手にしたのです。

実は、そこに至るまでには葛藤もありました。というのも、ちょうどその年の3月に、中枢となるCPUにコナミのバブルシステムやセガのシステム16、SNKのMVS(業務用ネオジオ)など、当時のアーケードゲーム基板で広く使われていた、日本ではホビーパソコン史上唯一の採用例となる、モトローラ社のMC68000を搭載し、音源チップにも同様にアーケードゲームでの採用例が多いYM2151(+ADPCM)を備えた、最強にして今なお孤高の存在として語り継がれる伝説のホビーパソコン、その名も「X68000」が発売されたからです。

このX68000については、既に以前も話したような気がするのでここでは深く触れませんが、「アーケードゲームをそのままご家庭にお届けできますよ」と言わんばかりのスペックを引っ提げて登場したこの怪物マシンは、実際にコントローラーを手に取って遊ばずにゲーム雑誌でスクリーンショットを眺めている限りではオリジナルのアーケード版と寸分たがわぬグラフィックでゲームキッズたちの度肝を抜いた、伝説のバンドルソフト「グラディウス」のインパクトも相まって、瞬く間にゲームキッズたちの垂涎の的となったのですが、さすがに本体369,000円+専用モニター129,800円という馬鹿げた価格は、ゲーミングドリームと現実のはざまでフラフラと揺らめきかけた僕の心を完膚なきまでに粉砕し、また何としても僕を勉学に励ませようと無駄な努力を続ける両親を「高校の情報処理の授業で使うものと同じ機種だから」という名目で説き伏せなければならないという理由も重なって、最終的にはPC-8801MAを選択するということで心を決めたわけです。

結果的には、その選択のお陰でそれまで自分が入れ込んでいたものとは全く違う作品群に触れることができたので、こうして無職になる以前のゲームクリエイターとして輝いていた頃の自分にとっては、かけがえのない財産となるインプットの機会を得ることができたと、その巡り合わせには心から感謝しています。

…というわけで、ザックリとした経緯の説明ではありましたが、こうして新たなゲームプラットフォームを自宅に迎えた僕が、さっそく行きつけのゲームショップ「シマコー」に出向いて真っ先に手に取ったのが、ファンタジーの世界観を題材にした、トップビューのアクションRPG「ハイドライド3」でした。
アクションと言っても、ジャンプをしたり激しいコンボ攻撃をしたりということはなく、ボタンを押せば装備した武器を単発で振る程度の簡単なものでしたが、購入の決め手となったのは、当時の家庭用ハードでは到底実現できないほど美麗だったそのグラフィックでした。特に当時のゲーム雑誌の記事でよく目にしていた「水のお城」はまるで絵画のように美しく、僕はこんな世界を冒険することができるのかと期待を膨らませて、実際に遊べる日をずっと楽しみにしていたのです。

初めてプレーした時の感想は、正直なところをいうと「ガクガク…」という戸惑いでした。画面のスクロールもキャラクターたちの移動も、PC-88がハードウェアでそれ専用の機能を持っていないため、キャラクター単位(8ドット?)で描き替えられ、粗いコマ送りの映像を見ているかのようにガクガクとぎこちなく動くのです。
“パソコンのゲームとはそういうものだ” という予備知識は、店頭デモなどである程度は持っていたものの、やはり改めて目の当たりにすると面食らうものがありました。…が、それも慣れてしまえば、それ自体がゲームの面白さを左右するものではありません。むしろ家庭用ゲームにはないそうした特性が、「嗚呼、俺はついにパソコンゲームの世界へ入門したんだ」と、一つ上のステージへと上がったような高揚感に浸らせてくれました。
そして何よりも、640×200ピクセル&512色中8色モードの強力なグラフィック機能が生み出す、ゲーム雑誌で憧れたままのそのビジュアルは、ゲーム内のどこをとっても息をのむ美しさで、さらにそのゲームプレイを、ファミコンを遥かに凌ぐYM2203による重厚なFM音源が臨場感たっぷりに演出し、僕は瞬く間にこの未体験のPCゲーム界に引き込まれていきました。

そして僕にとって生涯初のPCゲームとなったこの「ハイドライド3」は、期待を超える驚きの新体験に満ちていました。体力、魔力、精神力だけでなく、機敏さ、器用さ、教養など、細かく設定されたパラメーター、加えて職業の概念、食事の概念、睡眠の概念、所持品の “重量” の概念…。
表現力が飛躍的に向上してゲームデザインも高度に進化した現代においては、それほど珍しい仕様ではないかも知れませんが、80年代当時にそうした遊びを採り入れていたのは、驚くべき先進性と言えるのではないでしょうか。
そして、それらの数値がただ複雑に設定されているわけではなく、ゲームプレイにおける攻略にしっかり結びついていて、お腹が空いて体力を失う前に食事をしたり、睡眠をとるタイミングを考えて行動スケジュールを立てたり、アイテムの重量に気を配って冒険に備えて持ち物を整理したり…と、そのやりくりを工夫するのが実に地味オモで、それらに没頭するうちに、いつしかゲームの舞台となるフェアリーランドの世界の営みさえ感じられてきたのでした。

ファミコンでは、この前年に当たる1986年に、それまでのコンシューマにはなかった “ロールプレイングゲーム” というジャンルの先駆けとなる「ドラゴンクエスト」が発売されて大変な話題となっていましたが、その製作陣はファミコンのメインターゲット層には馴染みの薄い/敷居の高いこのジャンルの作品を成功させるために、まず1985年に「ポートピア連続殺人事件」をリリースし、「文字が出るゲーム」や、「コマンド入力」などに慣れさせるなど、RPGへの入門への導線を丁寧に作ったと言われています。

一方で、ゲーム業界の最深部でグツグツと煮え滾っていたPCゲーム界では、そのようなむせかえるような特濃仕様が、リミッターオフ&フルスロットルで容赦なく押し寄せてくるのが当たり前でした。もちろん全てのPC作品が「ハイドライド3」のように高度なレベルで面白さが組みあがっていたわけではなく、それこそ良くも悪くも個性の尖った作品がごった返す、玉石混合の市場だったというのが実態でしょう。でも、そんな地球誕生後の生命のスープというか、様々な生物の可能性が試されたバージェス頁岩動物群というか、そのようなところもひっくるめて、PCゲーム界というのは、選ばれた者のみが足を踏み入れることができるアンダーグラウンド秘密クラブのような、危険な魅力を放っていたのです。

…ちょっと何を言ってるのか分からなくなってきたので話を戻しますと、僕は愛機PC-8801MAを「学校の情報処理の授業に役立てる」という出まかせで親を丸め込んで購入した手前、大っぴらにゲームを遊ぶわけにはいかなかったので、シマコーで買ってきたこの「ハイドライド3」をタンスの奥に隠して、暫くの間親の目を欺かなくてはなりませんでした。夜な夜な、親が寝静まったのを見計らって、タンスの奥からゴソゴソと禁断のパッケージを取り出し、中のビデオテープ…いやフロッピーディスクをビデオデッキ…いやディスクドライブに挿入して、ドキドキしながら再生ボタン…いやリセットボタンを押す。そんな背徳感も、きっと僕の興奮を高めてくれたのでしょう。「ハイドライド3」をクリアした僕は、今度はドラゴンスレイヤーシリーズの第五弾となる、同じくファンタジーを題材としたアクションRPG「ソーサリアン」を購入して、PCゲーム界の更なる深淵へと身を沈めていくことになるのです。

…と、滑らかに「ソーサリアン」の話に移る前に、最後に一つ、「ハイドライド3」を例としてEGGコンソールにリクエストしたいことを申し上げておきたいと思います。先ほどもご説明したように、ひとくちに “オールドPC” と言っても、いまと違って当時は各社から独自仕様の多種多様なPCがリリースされていて、それらに対応するゲームソフトも、それぞれのハードの特性に合わせた多数のバージョンが作られていたというのが、現在ではあまり見られない、オールドPC界ならではの光景でした。
「ハイドライド3」も、僕が親しんだPC-88版だけでなく、98版、X1版、X68000版、MSX版、MSX2版と、同じゲームでありながらグラフィックや音楽などが各機種向けに作り変えられた複数のバージョンが存在し、PC-88ユーザーの僕、X1ユーザーの高木、MSXユーザーの長澤の間でも、お互いの機種版の欠点をあげつら…いや、違いを興味深く観察し、それについて醜い言い争い…いや、アカデミックな議論を繰り広げたものでした。
EGGコンソールでも、是非すべてのバージョン違いを取り揃えていただき、遊び比べて悦に入る、なんてことが出来たら大変ありがたく思うわけです。

さて、当時ファンタジーに傾倒していた僕が二本目に選んだアクションRPG「ソーサリアン」ですが、こちらは「ハイドライド3」とは打って変わって、サイドビュースタイルのゲームです。操作にジャンプが導入されて、ほんの少しアクション性が高くなっているのも特徴の一つ。そして、そんな親しみやすそうな外見を持ちながらも、その内側にはアンダーグラウンド秘密クラブにふさわしい鋭い “牙” をしっかりと備えた、PCゲームの名に恥じない存在感と矜持を声高に主張している作品でもありました。

その“牙” のまず一つ目は、「魔法」です。魔法と言えばファンタジー系の作品には定番の要素で、この「ソーサリアン」でも敵との戦闘やステージギミックなど、攻略において欠かせない存在です。…が、他のRPGのように、「レベルが上がったら新しい魔法を習得!」などという生易しいものではありません。
「ソーサリアン」の世界には、火星、水星、木星、月、太陽、金星、土星という、7つの魔法要素(星)があり、この星をアイテム(武器、防具)に「掛ける」ことによって魔法の能力が宿り、そうすることで初めて魔法が使用できるようになるのです。

この “星を掛ける” という行為には少々手間が必要で、町にいる魔法使いの店にアイテムを預けて、そこに星を一つ掛けてもらうのですが、「星を掛けたらハイ、魔法完成!」とはいきません。魔法を宿すためには、星を一つだけでなく、複数を掛け合わせなければならないのです。例えば、地を這う爆弾の攻撃魔法「BOMBARD」を獲得するには、「水星、木星、月、太陽、金星」の五つの星を掛け合わせなければならない、という具合です。そして、そうした「掛け合わせのレシピ」は、全120種類の魔法の数だけ存在するのです。

しかし話はまだ終わりません。必要な星をただ掛けるだけならまだいいものの、実は7種類ある星の中には相互に干渉しあうものがあり、あろうことか掛け合わせ次第で星が消えたり、または別の星に変化したりするのです。そのため、例えば先に挙げた「BOMBARD」の魔法を獲得するには、星のレシピは「水星、木星、月、太陽、金星」でも、実際には「月、月、水星、木星、太陽」と星を掛けなければ完成しないのです。

…もう誰も読んでないとは思いますが、ここまでの話に付いて来れていますか? 説明している僕も、魔法が最初から掛かってるアイテムを拾って使ってただけのニワカ派なので、星に関しては正直いまネットで調べながら書いてるだけでさっぱり分かってません。ともあれ、話を続けましょう。

“星を掛ける” ために、町にいる魔法使いの店にアイテムを預けるというのは先ほど説明した通りですが、実はそれだけではありません。星がアイテムに掛かるには、店に預けてから最低でも一年の “時間” の経過が必要なのです。

“時間”、この概念こそが、「ソーサリアン」のもう一つの “牙” です。
このゲームは、プレイヤーの行動によって時間が経過していきます。例えば、プレイヤーはパーティーを組んで、いわゆる “クエスト” へと出発し、ボス討伐や報奨金、経験値の獲得などに挑むのですが、そのクエストから帰って来ると、一年という時間が経過する、という具合です。
よって、アイテムに “星を掛ける” には、そのアイテムを預けてクエストに出かけ、帰ってきて一年という時間が経過したところで返してもらう、これを複数回繰り返すことで、ようやく魔法が完成する、というわけです。

更に追い打ちをかけるように、このゲームには “年齢” の概念が存在します。ここで「ソーサリアン」は、猛然とその “牙” を剥き出しにして襲い掛かってきます。時間の経過により、マイキャラクターは容赦なく歳を取っていくのです。

ゲームを開始するとまずキャラクターメイキングを行い、与えられた既定のボーナスポイントを攻撃力、防御力、知力、カルマなどの項目に任意で割り振るのですが、この時“年齢” も設定することになります。年齢に応じて各能力値は変化し、またキャラクターのグラフィックも変わります。
そしてゲームが始まり、プレイヤーがクエストに出て、そして帰ってくると一年が経過して、マイキャラも一つ加齢。これを繰り返すうちにマイキャラは青年から壮年へと成長していき、それに合わせて能力数値も上昇、そして中年を経て高年齢化していくと、能力数値は緩やかに低下していって、やがて死にます。

そう、「ソーサリアン」のマイキャラは、ゲームプレーを続けていくうちに寿命が尽きて死ぬのです。クエストで無駄足を踏み続けたり、星を掛けることだけにかかずらっていたりしたら、何も得ないままマイキャラが死んでしまうことになるのです。
マイキャラが死ぬと、装備と所持金を引き継いだ新世代キャラクター(子供)が新たに誕生しますが、レベルはゼロリセット、能力値もすべて規定値に戻されます。クエスト出発のために結成するパーティーの人数は4人で、種族は人間、ドワーフ、エルフなどあり、それぞれ寿命が違います。4人パーティーで何度もクエストに挑んでいると、キャラクターたちはそれぞれに齢を取っていき、やっと育て上げたキャラクターが老衰で死に、その損失を他のキャラクターで補いながら新世代キャラを育てていると、ようやくそのキャラが育った時にまた一人老衰で倒れ、それでもまた生まれてくる新世代キャラを育てて頑張っていると、育ち切った新世代キャラがまた老衰で死ぬ…そのサイクルが延々と繰り返されます。「ソーサリアン」は、まさに “時間との勝負”でもあるのです。

…少々力み過ぎて「ソーサリアン」のネガティブキャンペーンのようになってしまいましたが、結局みんなマイキャラが死ななくなる “不老不死”の裏技を使っていた、という話はここでは敢えてしないでおくとして、この「ソーサリアン」の非常にユニークな特徴についてもお話ししておきましょう。

この時代のPCゲームは、カートリッジを採用していたMSXシリーズの例を除けば、ほぼ全てのタイトルが「フロッピーディスク」というメディアで供給されていましたが、この「ソーサリアン」はフロッピーディスク5枚組という大作で、その内訳は中枢となる「システムディスク」が一枚、データセーブ用の「ユーザーディスク」が一枚(市販のブランクディスクでも代用可)、そして「シナリオディスク」が3枚という構成でした。

この「シナリオディスク」が面白い仕掛けになっていて、3枚あるシナリオディスクの中にはそれぞれ5本、合計15本のシナリオ(今でいうクエストのようなもの)が収録されていて、プレイヤーはどのディスクの、どのシナリオからでも遊ぶことができるようになっていたのです。

15本のシナリオをザッと挙げると、「消えた王様の杖」、「暗き沼の魔法使い」、「天の神々たち」、「失われたタリスマン」、「ロマンシア」、「氷の洞窟」、「ルシフェルの水門」、「紅玉の謎」、「メデューサの首」、「呪われたオアシス」、「暗黒の魔道士」、「囚われた魔法使い」、「盗賊たちの塔」、「呪われたクイーンマリー号」、「不老長寿の水」。
興味をそそるタイトルが並んでいますが、シナリオはどれも独立したストーリーになっていて、単純にボスを倒す目的のものもあれば、推理小説のような謎を解き明かすもの、隠された秘宝を持ち帰る目的のもの、ボスとの戦闘が必須ではなく回避できる自由度があるものなど、個性に富んだものが揃っていて、次にどれに挑戦しようかとワクワクさせてくれました。

また、シナリオをプレーすることで、プレイヤーを成長させるための経験値が得られますが、ほかにも星の掛け合わせでは作れない特別な魔法を宿したアイテムが入手出来たり、またそれを持って別のシナリオに挑戦したり…と、何度も繰り返し遊べる工夫がされていました。

遊びやすいように、難易度に応じてレベルが1から5まで設定されていましたから、大半の人がまずは初歩的な「消えた王様の杖」を遊んで、王様の杖を大事に持ち帰ってきたのではないでしょうか。もの悲しいメロディが印象的な「呪われたオアシス」や、美しい竪琴の旋律が心を打つ「天の神々たち」、船員が次々と殺されていくミステリー仕立ての「呪われたクイーンマリー号」など、古代祐三氏、石川三恵子氏らによる名曲の数々に惹かれて、同じシナリオを何度も遊んだ人も多いことでしょう。

更に、本作リリースから暫く経った頃、“ソーサリアンは進化する。” というキャッチコピーとともに、「魔性の島」、「いけにえの神殿」、「悪魔に魅入られた花」、「ああ、ジョセフィーヌは今何処」、「アマゾンの剣」の、計5本の新たなシナリオを収録した、その名も「追加シナリオVol.1」と、特別なアイテムが購入できたり、簡単に魔法を獲得できたり、キャラクターやアイテムの名称を変更できたりと、様々な拡張機能を搭載した「ユーティリティ Vol.2」が同時発売されました。
これは、システムディスクとシナリオディスクが独立している「ソーサリアン」だからこそ出来る芸当で、現在のアペンドディスクの走りとも言われ、この拡張性こそが「ソーサリアン」の真骨頂といえるものでした。

シナリオの拡張はさらに続き、追加シナリオ集第2弾となる「戦国ソーサリアン」は、その名の通りファンタジーの世界から一転して日本の戦国時代が舞台となり、「壱 武田信玄の章」、「弐 織田信長の章」、「参 豊臣秀吉の章」、「四 真田幸村の章」、「五 徳川家康の章」と、我々もよく知る戦国大名たちに取り憑いた魔物たちを相手に5つの冒険を繰り広げる…というストーリーでユーザーを驚かせ、それに続く追加シナリオ集第3弾、「ピラミッド・ソーサリアン」では、古代エジプトを彷彿とさせる孤島サンダース島を舞台に、フロッピーディスク2枚分の大長編シナリオを展開したりと、本作リリース時のコピー「シナリオの数だけ世界がある」の言葉は伊達じゃないというところを次々と見せつけてくれました。

ほかにも、SFを題材とした「宇宙からの訪問者」、古代メソポタミア神話をモチーフにした「ギルガメッシュ・ソーサリアン」、一般公募のシナリオコンテストの受賞作を製品化した「セレクテッド・ソーサリアン」と、本編開発元である日本ファルコム以外のメーカーによって製作された追加シナリオ集もリリースされるなど、そのゲーム内容だけでなく、商品展開の面でも前例のない様々な独創的な試みを成功させたこの「ソーサリアン」は、ロールプレイングゲームというジャンルだけに囚わない不朽の名作として、ゲーム史に残る唯一無二の金字塔を打ち立てたと言えるでしょう。

…なんだかもうEGGコンソールで発売されたかのようなテンションで書いてしまいましたが、まぁこの「ソーサリアン」が登場するのは時間の問題でしょうし、追加シナリオ集等も今ならDLCという形で問題なくリリース出来るでしょうから、ここでご紹介したこの作品を魅力を余すところなく味わえる日を、皆さんも安心して待ちましょう。

ちなみに「ソーサリアン」を遊ぶのが待ちきれないという人は、基本シナリオ15本プラス「戦国ソーサリアン」、「ピラミッド・ソーサリアン」もリッチに収録して携帯アプリとして移植された「アドバンスド ソーサリアン」が、「G-MODEアーカイブス30 ソーサリアン」のタイトルでNintendo Switchに移植され、500円という破格の値段で販売されていますので、こちらを先に遊んでから後でオリジナルとの違いを比べてみるのもいいでしょうし、あるいはすべて完全新規となる10本のシナリオを収録したメガドライブ版ソーサリアンを「メガドライブミニ2」で遊ぶのも一興かも知れません。

というわけで、駆け足で2タイトルほど触れさせていただいたわけですが、わたくし神谷英樹的にEGGコンソールに真に期待したいタイトルは、実はほかにあるのです。むしろ、ここからが今回の本題かも知れません。

現状発表されているタイトルを見ると、当時オールドPCで話題をさらった有名作品が名を連ねていますが、ここで敢えて注目し、述べておきたいのは、アーケードゲームや家庭用ハードのゲーム等、PC以外のプラットフォームから移植されたゲームたちです。
というのも、先にもご説明したように、当時“ホビーパソコン”と呼ばれて独自に進化したオールドPCたちは、スプライト機能やスクロール機能など、激しい動きを必要とするゲームを実現するための機能は有しておらず、それゆえにアクションゲームやシューティングゲームといったジャンルは、本来は決して得意とはしていませんでした。

…が、人間の果てしない探求心と好奇心は、たとえそのような機能の限定されたマシンであっても、アーケードゲームであろうとコンシューマゲームであろうと問題なく動かすことができるんだ、俺たちだってやればできるんだと、多くのチャレンジャーを狂気へと駆り立てて移植へと突き動かしてきた…のか否かは分かりませんが、実際、無謀な挑戦による怪作…いや創意工夫に満ちた傑作の数々が、当時の市場を賑わせていたのもまた事実です。

例えば、まずアーケードゲームからの移植作の中から幾つか紹介するならば、「スペースハリアー」などは、内容については以前すでに詳細を語ってますのでここでは割愛するとして、「手が出ないほど高価でハイスペックな業務用のゲームを、何としても家庭に届けたい」という情熱と使命感に駆られた産物なのか、国内PCだけでもPC-88版、X1版、FM77AV版、PC-6001版、X68000版と、ハードの特性に合わせて独自の表現手法が凝らされて競い合うように移植され、そのどれもが、オリジナルのアーケード版とは似て非なる、しかしそれぞれ創意工夫に満ちた作品に仕上がっていて、ゲームデザイン学を学ぶ教材としても非常に意義深いであることに疑いの余地はないですし、あるいは「パックマン」、「ディグダグ」、「ギャラクシアン」、「ゼビウス」、「マッピー」、「グロブダー」、「イシターの復活」、「ドラゴンバスター」といったナムコの移植作品群などは、同社が当時黄金期を迎えて繁栄を極めていた様子を雄弁に物語る生き証人とも言えます。

また、コンシューマゲームからの移植作に目を向ければ、「任天堂のゴルフ」、「任天堂のテニス」、「アイスクライマー」、「エキサイトバイク」、「バルーンファイト」などは、“任天堂作品のPCへの移植作”という、今では考えられない希少な前例として歴史の教科書に載ってもいい逸品たちですし、任天堂に関連して続けるなら、「マリオブラザーズ スペシャル」、「スーパーマリオブラザーズ スペシャル」、「パンチボール マリオブラザーズ」、「ドンキーコング3 大逆襲」などは、移植を担当したハドソンによってユニークな独自のアレンジが施されていて、オリジナルと比較することで新たな魅力を紐解くための鍵としても非常に価値のある作品ですし、しかもそれら任天堂移植タイトルが巡り巡ってまた任天堂ハードに帰ってくるということになれば、それこそこれ以上ないそのドラマティックな凱旋に世間が熱狂することは間違いないわけです。
きっとライセンスを握る各社も、ゲーム文化の未来を考えれば移植に快く協力してくれることは間違いないので、大船に乗った気持ちで待ちたいと思います。

…以上を踏まえまして、後はわざわざここで申し上げることでもないのですが、これからのEGGコンソールにつきましては、僕の愛機だったPC-88系列のソフトだけでも、「サンダーフォース」、「ヴォルガード」、「野球狂」、「サラダの国のトマト姫」、「ジェルダ」、「ジェルダII」、「ヒロトンウォーズ」、「ザ・ブラックオニキス」、「ウィザードリィ」、「ナッツ&ミルク」、「夢幻の心臓」、「デーモンクリスタル」、「ザ・コックピット」、「ドラゴンスレイヤー」、「Emmy2」、「ファンタジアン」、「ハイドライドII」、「プラズマライン」、「EGGY」、「ドアドアmk2」、「TOKYOナンパストリート」、「ザ・キャッスル」、「アメリカントラック」、「ホットドッグ」、「トリトーン」、「クリムゾン」、「サイキックソルジャー」、「サイキックウォー」、「ルナーボール」、「超次元戦士エプシロン3」、「ボンジャック」、「チャンピオンプロレス スペシャル」、「ぺんぎんくんWARS」、「走れスカイライン」、「ロードランナー」、「SeeNa」、「フォーメーションZ」、「スーパーランボー」、「クルーズチェイサー ブラスティー」、「忍者くん 魔城の冒険」、「覇邪の封印」、「ロボレス2001」、「アルファ」、「グラディウス」、「グーニーズ」、「殺人倶楽部」、「マンハッタン・レクイエム」、「スパイ VS スパイ」、「ウィバーン」、「カサブランカに愛を」、「太陽の神殿 アステカII」、「ロマンシア」、「まじゃべんちゃー・ねぎ麻雀」、「うっでいぽこ」、「トップルジップ」、「ロットロット」、「ディーヴァ」、「スーパーピットフォール」、「夢幻戦士ヴァリス」、「ハングオン」、「パチコン」、「1942」、「魔界村」、「戦場の狼」、「ヴァクソル」、「ジーザス」、「上海」、「ガンダーラ」、「ロウ・オブ・ザ・ウエスト」、「ガイアの紋章」、「雀ボール」、「キングスナイト スペシャル」、「くりぃむレモン スタートラップ」、「デジタル・デビル物語 女神転生」、「リバイバー」、「コムサイト」、「ルクソール」、「ヨコスカウォーズ」、「テスタメント」、「アイドロン」、「スーパー大戦略」、「リトル・コンピュータ・ピープル」、「ゼリアード」、「F-15 ストライクイーグル」、「DOME」、「アルギースの翼」、「スカイフォックス」、「イースII」、「WANDERERS FROM Ys」、「レプリカート」、「スタークルーザー」、「ARCUS」、「ラストハルマゲドン」、「アンジェラス」、「エグザイル」、「アクロジェット」、「マスターオブモンスターズ」、「サイオブレード」、「テトリス」、「コラムス」、「スナッチャー」、「ヴェイグス」、「サバッシュ」、「ウルティマ1」、「ディガンの魔石」、「スタートレーダー」、「デリンジャー」、「Xak」、「死霊戦線2」、「ファイアーホーク」、「BURAI」、「シュヴァルツシルト」、「プラジェーター」、「エメラルドドラゴン」、「ドラゴンスレイヤー英雄伝説」、「ルーンワース 黒衣の貴公子」、「ミスティ・ブルー」、「ガンシップ」、「ティル・ナ・ノーグ 禁断の塔」、「ダイナソア」、「クラックス」、「ぽっぷるメイル」、「ファイナル・クライシス」、「神羅万象」、「デス・ブリンガー」、「R-TYPE」、「天使たちの午後」、「聖女伝説」、「聖女ぱにっく」、「エリカ」、「177」、「クリスチーヌ」、「口説き方教えます」、「その後の慶子ちゃん」、「フェアリーズレジデンス」、「美しき獲物たち」、「悪女伝説II セーラー服ラプソディ」、「今夜も朝までPOWERFULまぁじゃん」、「麻雀狂時代SPECIAL」、「カインドゥギャルズ 〜口説き方教えます2〜」、「セーラー服美少女図鑑」、「美少女写真館」、「スターシップランデブー」、「カオスエンジェルズ」、「Genji」、「不思議の壁」、「スカポン探検隊」、「リップスティックアドベンチャー」、「ポッキー」、「きゃんきゃんバニー」あたりは間違いなくリリースした上で、MSX、X1、FMシリーズ(TOWNS含む)、MZシリーズ、X68000、PC-98、PC-6001のタイトルの移植の方にも取り組んでいかれる腹積もりであるということは、私のような無職のゲームジジイが案ずるまでもなく明らかなのはもちろん理解しておりますが、心配性な全世界のオールドPCゲームキッズを代弁して、念のためここに言及しておく次第です。

ちなみに僕は、以前X(旧Twitter)上で、EGGコンソールのタイトルは全部買うと約束しておりますが、上記タイトルがすべてリリースされたとしても(仮に一本の価格を880円として単純計算しても)合計15万円程度の出費に過ぎず、もうすぐ僕のところにYouTube上でリクエストした一億円の仕事のオファーが殺到することを考えれば、その数百倍のタイトル数はリリースしていただかないとお金を持て余すことになってしまうので、お互い気合を入れてこの問題に取り組んでいきましょうと、EGGコンソールにエールを送りたいと思います。

あとはそうですね、いつまでたってもなくならない恥ずべきキャッチザマネー商法は、早く滅びて未来のゲーム史における笑い者になってほしいと切に願うばかりです。

<質問2>2023年に発売/公開されたエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品

『映画 プリキュアオールスターズF』
『映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』


2023年の幕開け早々、タカラヅカ初観劇を飾ろうと意気込んでチケットを押さえていた花組公演の「ミュージカル・ロマン 『うたかたの恋』/タカラヅカ・スペクタキュラー 『ENCHANTEMENT(アンシャントマン) −華麗なる香水(パルファン)−』」が、公演関係者から新型コロナの陽性が確認されたとのことで、ちょうど僕が観劇する予定だった日を含む一週間ほどの期間が急遽公演中止となり、出鼻をくじかれる形になってしまったのは、誰を責めることもできない不測の事態だったものの、7月の「オペレッタ・ジャパネスク 『鴛鴦歌合戦(おしどりうたがっせん)』/ネオ・ロマンチック・レビュー 『GRAND MIRAGE!』」はしっかりと観劇することができたと思ったら、チケット自体は公演の一ヵ月以上前から購入してあったために、まさか観劇したその翌々日にプラチナゲームズ全社員を集めて「僕、会社を辞めます、ごめんなさい」を告げなくてはならない事態となる、そのようなタイミングにこの観劇をブッ込んでくるとは、タカラヅカの神様も粋な計らいをしてくれるものだと、感動に打ち震えました。

さて、そのタカラヅカはいま、大変な問題で社会的にも大きく注目を集めています。その問題については、とても悲しい出来事で、僕がここで軽々に触れていいものではないので控えますが、想像を超える重圧の中で日々懸命に努力され、正しい道を歩もうとされているタカラジェンヌの皆さんにおかれましては、少しでも早くこの問題が決着し、心から信頼が置ける環境を取り戻して、また素晴らしいパフォーマンスに打ち込んでいただきたい、と、思うところあって無職になった僕としても少なからぬシンパシーゆえに、心からお祈り申し上げたく存じます。

来年2月に上演される、花組トップスター柚香光さんの退団公演となる「『アルカンシェル』 〜パリに架かる虹〜」のチケットもしっかり押さえていますので、いちタカラヅカファンとして、純粋に観劇の日を楽しみに待ちたいと思います。

というわけで本題に移りますと、今回は趣向を変えて、アニメ映画を二本挙げてみました。

まずは、「映画 プリキュアオールスターズF」。この作品は、親戚の一種の小娘姉妹の子守りの一環として、貴重な休日を費やして鑑賞させられ…いや、させていただくことになったものですが、「プリキュア」というものに興味がない人間であっても、さすがにこれは鳥肌モノだと感嘆せざるを得ない展開、演出がてんこ盛りで、あまつさえ涙ぐみすらさせられる場面もあり、鑑賞しながら、これは創作活動をする上で実に有益なインプットになるなぁ、というようなことを、無職であるにもかかわらず生意気にも考えながら、子守りであることを忘れてしっかり楽しみました。

ネタバレにならない程度に説明するならば、そのタイトル通り歴代プリキュア大集合的な作品で、当然これまでのプリキュアなどほとんど知らない僕としては、「あぁ、これはきっとこのキャラクターの定番の決めゼリフなのだろう」とか、「この回想シーンはどれも各プリキュア作品のキーポイントとなる場面なのだろう」とか、知識が足りない部分を自分の想像で補うセルフアシストをしながら、制作サイドが用意してくれた燃えポイントをきちんと踏んでいったのですが、一緒に鑑賞した小娘ズもいたく感激していて、「王道展開に性別は関係ないんだ」という気付きを得て、「ビューティフルジョー」や「ザ・ワンダフル101」という作品も、さぞかし女性からの支持が多いんだろうなと、今後に対する自信を無職にもかかわらず大いに強めた次第です。

さて、次に「映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ」ですが、やはりこちらも子守りの一環として付き合わされ…いや、楽しく鑑賞させていただいた作品です。

この映画は、詳しく申し上げるのは控えますが、今の僕にとっては実に考えさせられる内容で、プラチナゲームズを辞めた直後にこの映画に出会うとは、なんともタイムリーというか、因縁深いというか…と感慨に浸ると同時に、同じクリエイティブな業界にいるこの映画の製作陣も、自身の置かれた環境に対して色々思うところはあるんだろうか、などと想像を巡らせてしまいました。

ともあれ、「プリキュア」も「すみっコぐらし」も、このような作品が幼い子供たちに届けられているなら、エンターテイメントの未来は明るいなぁと、頼もしく感じさせてくれる映画でした。製作陣の皆さま、良い作品をありがとうございました。

<質問3>2023年に、個人的に注目した(している)人物

『ダメ派遣男まさお』さん
『DOOVA(ドゥーヴァ)』さん
『ゲーム芸人フジタ』さん


まず「ダメ派遣男まさお」さんからお話ししますと、このYouTubeチャンネル、12月に入ってからたまたま見つけて見始めたもので、僕はまだニワカもニワカなんですが、まさおさんの愛くるしいルックスと穏やかな人柄、そしてクセになる独特なナレーションの語り口調にハマり、時間を見つけては過去に投稿された動画も掘り返しながら、毎日少しずつ見ています。
まさおさんは中々波乱万丈な人生を歩んでこられた方のようで、今はとても質素な節約生活をされてるんですが、そんな中にあっても、仕事に出かける前や帰ってきた後にはしっかり食事を作っていて、そのこなれた手付きと美味しそうな料理が見ていてとても楽しいチャンネルです。

僕自身も、最近無職になって無限に時間ができたせいか、なんとなく「家カレーが食べたいな…」という欲求が湧き上がって、学生時代以来何年振りかとなる料理…というのもおこがましい、“何か口に入るもの作り” に挑戦し、ジャワカレーを作ってみたら、根っからの欲張り気質のために少々具を多く入れ過ぎてカレーが表面張力で鍋から溢れ出しそうになるプチハプニングはあったものの、さすがのハウス食品パワーのお陰で無事おいしいジャワカレーが完成し、今では “何か口に入るもの作り” が少し楽しくなってきて、椎茸やら玉ねぎやらピーマンやら、主に自分の好きな食材をとりあえずフライパンに放り込んで後はノリで何とかする、という行為を楽しんでいるのですが、「みりんってよく耳にするけど一体何のために入れるものなんだろう?」とか「キャベツからイモ虫が出てきたりはしないんだろうか?」とか、疑問や心配の尽きないキッチン初心者の僕にとって、まさおさんの料理動画はまさに教科書のようなもので、特にまさおさんが好んで使う、“業スー” (業務用スーパー)の「スライス玉ねぎ」や「冷凍いんげん」などの食材は、今や僕の買い物リストのトップに記されていて、来年は僕も業スーデビューしようと楽しみにしているところです。

ちなみにまさおさんが節約生活をされているのは、僕もまだ過去の動画を見進めていないので詳細は分からないのですが、どうやら以前飲み屋の女性に入れ挙げて、1200万円の借金を作ってしまったようで、僕も若かりし頃には、彼女にフラれてヤケクソになって合コンを繰り返すも、恐縮にも銀河で5本の指に入れさせていただく面食いのためにどうもシックリ来ず、「あれ…地球のかわいい女の子ちゃんたちはみんなどこへ行ってしまったの?」と思っていた矢先に、悪友たちに誘われて試しに向かったショーパブのドアを開けた瞬間、「ここにおったんやぁ…」と全身の筋肉が弛緩し、そこから夜の町にハマって週3、4ペースで通うことになり、ある時には同僚社員(女性)と一緒にショーパブを訪れて散々遊んだ挙句に帰りに駐車場でお金を払おうとしたら財布の中にショーパブのチップしか入っておらず、断腸の思いで「お金貸して…」を言わざるを得なかったりと、そのようなことを繰り返していたら、おかげさまでヒットを記録した「バイオハザード2」や「デビルメイクライ」の収益リンクボーナスとして頂いた、ちょっとした国産高級車が買えるくらいのお金を大事に貯金しておいた銀行口座の残高がいつの間にかゼロになっていて、「iPodも中古で我慢してたのに、僕のお金はどこへ消えたの?」と嘆いても後の祭り、そうしてロシア人のバネッサ、ルーマニア人のダナ、ジャネット、クラウディア、中国人のハイエンちゃん、その他大勢の女の子ちゃんたちに見させていただいた目くるめく夢のような日々と外貨流出にピリオドを打ったという大変有意義な経験をした身として、まさおさんへの多大なるシンパシーを禁じえず、このイチ再生が少しでもまさおさんの足しになればと、夜な夜なノンアルビールを飲みながら視聴を楽しんでおります。

それからもう一人、DOOVA氏は、この2023年はもちろん、この先も継続して注目していきたいクリエーターです。DOOVA氏はプラモデルのモデラーとして活動されている方で、初めて氏の作品と出会ったのは、遥か昔に「グフ」(ご存じ、MS-07 改良強化新型モビルスーツ)の改造作例をインターネットで検索したのがきっかけだったと思います。

グフと言えば、言わずと知れた「機動戦士ガンダム」に登場する人気モビルスーツですが、その高い人気にもかかわらず、80年代当時にアニメを見て熱狂したガンダムキッズたちを満足させる立体物(模型)がついぞ出なかったことでも有名で、まず一番最初に、空前のガンプラ(ガンダムのプラモデル)ブームの最中の1980年11月に登場した1/144モデルは、どっしりとマッシブだったアニメのイメージとはかけ離れ、痩せ細った体に散水ホースのように貧相な動力パイプと、まるで病人のように変わり果てた姿で登場して子供たちを奈落の底に突き落とし、続いて1981年12月に発売された1/100モデルでも、「ただ病人がデカくなっただけ」という有様で、万策尽きたかと更なる絶望がもたらされたまま第一次ガンプラブームは終焉を迎え、そこから遥かに時が過ぎた1990年、ガンプラ10周年を記念して当時の技術水準で設計された全く新しい1/144HGガンダムがリリースされた際には、「この流れでついにアニメで見たグフが来る!」と全国数千万のグフファンを歓喜の渦で包むも、その後Zガンダム、ZZガンダムのリリースが続いたものの肝心のグフには一向に辿り着かず、またも時を経た1995年7月には、更に蓄積された技術を投入してガンプラを再立ち上げするというコンセプトの元、「マスターグレード」と銘打って1/100MGガンダムが新登場し、放送当時の設定画をそのまま高解像度に仕上げたかのような出来栄えで、全グフファンたちを「今度こそアニメで見たアレが来る!」と狂喜乱舞させるも、やはり肝心のグフは商品化の順番待ちをするモビルスーツたちの列の後ろの方に追いやられ、そうこうするうちに1997年7月には、テレビの中の “安彦ガンダム”を再現するというこれ以上ないコンセプトで「可動戦士ガンダム」が登場し、アニメから飛び出したかのような躍動感あふれるスタイルと可動を実現したばかりか、「君はいい友人であったが、君の父上がいけないのだよ」「シャア、謀ったなシャア!」のセリフで知られる名エピソード「ガルマ散る」の作画のイメージでボリュームたっぷりに造形された「可動戦士 シャア専用ザク」も続けて登場し、「このコンセプトでグフが作られたら、今度こそついに…!?」と誰もが固唾をのんで見守る中、結局ジオン側のモビルスーツはザクのリデコでお茶を濁されるばかりでグフ到達など夢また夢、未だに「嗚呼、あの時グフが発売されていたら…」と全グフファンの間で語り継がれる悲劇となり果てたのち、2000年4月にやっと順番が回ってきてリニューアルされた1/144HGUCグフは、テレビで見た “あのグフ” から遥かにかけ離れた、小顔&足長の現代っ子体形に睨みのきいた吊り上がった目(モノアイ窓)という目を疑う変わり果てた姿で、全グフファンを「え…お前、誰?」の濁流に放り込み、その上マスターグレード誕生から5年もの月日が経過した2000年10月にようやく登場した1/100MGモデルも、その見苦しい現代っ子グフをまたしてもそのままデカくしただけのようなやっつけ仕事で、全グフファンを窒息させて虫の息に陥れ、「バンダイ、もう現代っ子グフはお腹いっぱいなんだ、頼むから俺たちが憧れたあの中年体形グフを出してくれ!」と全グフファンがのたうち回りながら懇願する地獄絵図と化した2009年5月、初代マスターグレードグフを9年の時を経てリニューアルし、「Ver.2.0」の名を冠して登場した1/100MGグフVer.2.0は、さすがにあのおぞましい現代っ子グフの面影は少々和らぎ、ほんの少しだけ “あのグフ” に近付いたものの、何だか煮え切らない “折衷案グフ” の域を出ず、全グフファンの心に「バンダイの限界」という大きな影を落とし込み、そこから更に7年後の2016年4月、ガンプラ35周年を記念してHGUCモデルをフルリニューアルするという名目で「REVIVE」の名を冠した新ブランドで、奇しくもグフのモビルスーツナンバー “MS-07” と同じ “第7弾”商品として1/144HGUC-REVIVEが登場すると、今度はこれまでのどのバージョンとも違う見たこともない顔の珍妙グフで、全グフファンを呆気にとらせると同時に混迷の渦の中にあるバンダイの身を心の底から案じさせ、その混乱も冷めやらぬ2016年7月には、完成品トイ「ROBOT魂 ver. A.N.I.M.E.」のラインナップに1/144相当のグフが登場し、こちらは理想と寸分たがわず、とはいかないものの、「ver. A.N.I.M.E.」というブランド名のもと、バンダイなりに最大限の底力を見せてくれたのかも知れないと、長き戦いに傷つき疲弊した全グフファンたちの心を一筋の希望の光で照らしたかと思ったその矢先の2023年11月11日、「GUNDAM FIX FIGURATION METAL COMPOSITE」の第16弾(多分)として、“満を持してTVアニメ版のグフを立体化” という謳い文句を引っ提げて姿を現したその最新版グフは、あろうことかかつての小顔&足長という身の毛もよだつ醜悪な “現代っ子グフ” に逆戻りしてしまい、これにはさすがの僕も「グフはもう終わったんだ…」と戦意喪失し、年末年始は田舎に帰省して思う存分ヤケ食いして更なる体重増加も辞さない構え、というのが現時点でのステイタスです。

聞くところによると、あるガンダムシリーズのOVAで、「グフカスタム」とかいう新規バリエーション機が、よく分からない何とかいうデザイナーによってデザインされたらしく、それが小顔&足長&吊り上がった目というルックスで、ニュージェネレーションのガンダムファンたちの間で好評を博したんだそうです。…が、それはそれ。「グフカスタム」は「グフカスタム」であり、「グフ」は「グフ」なわけで、そのよく分からない何とかいうデザイナーは、前述したマスターグレード等、バンダイのガンダムモデルに冠する新規事業に参加し、監修を行ったらしいのですが、「グフ」にまでその「グフカスタム」とかいう機体のデザインエッセンスを持ち込んだのだとしたら、それこそ愚の骨頂です。

これは全グフファンが当たり前のように心得ていることなのですが、「グフ」を思い浮かべると、頭の中では吊り目で鋭い視線をしたグフの顔が浮かびがちで、それもそのはず、グフと言えば “ザクとは違い”、ボディカラーはもちろんのこと、肩のスパイクや、武器・盾といった装備など、大小さまざまなザクとの違いがある中、そうした違いの一つに“モノアイ窓の形状”があり、ザクが正面から見て長方形のような形状だったのに対して、グフのモノアイ窓は、ちょうどモノアイが位置する窓中上辺が尖ったように突出していて、まるで睨んでいるかのような形状を演出しているため、睨んでいる=吊り上がっているという錯覚に誘われてしまうのです。
しかし錯覚に惑わされずに注意深く観察すると、モノアイ窓全体が目を吊り上げたように変形しているわけでは決してなく、むしろ目じりは緩やかに垂れ下がったように造形されていて、そのある種の穏やかさこそがグフの顔の特徴であることが分かります。

目つきを厳しくした方がかっこいい、そのような感性で、新世代のモビルスーツをデザインするのは自由です。流行りは時代とともに移り変わるもので、人々の求めに合わせて柔軟に対応する必要もあるでしょう。しかし、それを古き良き既存のものにまで流し込むのはまさしくリスペクトの欠如であり、そうして改悪されるのを見るのは心痛に堪えません。しかし残念ながら、この改悪の波は前述の通り呪い如くグフに付きまとい、かつて我々がテレビで見て熱狂した心に残る“あのグフ”は、今に至るまで一切世に出ていない、というのが、グフを巡る悲しい現実です。

こうして全グフファンたちの希望は粉々に打ち砕かれ、今や声を上げる者もなく散り散りになっている…と思いきや、全ての希望がなくなってしまったわけではありません。グフを取り巻く阿鼻叫喚の巷で、決して僕のように取り乱すことなく、粛々と成すべきを成している最後の良心、それがDOOVA氏です。

先にも申し上げた通り、DOOVA氏の作品との出会いは記憶にないほど遥か昔に遡ります。
マスプロダクトとしてのグフは、よく分からないデザイナーの忌むべきエゴに侵され、もはや正しい解釈に基づいて作られることは永遠にないんだ…と悲嘆に暮れていたある日、ふとインターネットで “グフ/改造” と検索したことが、氏を知るきっかけではなかったかと思います。

“プラモデルの改造”というのは、男の子なら誰しも一度は挑戦したことがある娯楽の一つで、僕も小学生の頃から、「ぼくがかんがえたさいきょうのモビルスーツ」の実現に何度も挑み、幾つものキットを無計画に切り刻んだり、使い慣れないパテやプラ板でクチャクチャにしたまま放置してきたものです。それはさておき、今やインターネットを少しでも覗けば、プロアマ問わず腕に自信のあるモデラーの方々の様々な改造作例が溢れていて、我々の目を楽しませてくれますが、そんな中でひと際の威光を放ち、即座に僕の視線を奪ったのがDOOVA氏のグフだったのです。

それは、2000年10月に発売された1/100MGの見苦しい現代っ子グフを芯としつつ、それはもう芯も残らないほど入念に手が加えられ、隅々まで改良が施された、この世に二つと存在しない見事な創造物でした。
逞しくうねり上がった動力パイプ、ビルドアップされた筋肉質の体を思わせるがっしりとした体躯、強靭なバネを秘めた足腰、そして何よりも、グフのアイデンティティとも言える、睨んでいるようにも脂下がっているようにも見える独特な目つきと、力強く下方へ延びる口(ダクト)。作画の揺れのためにブレがちなグフのイメージを、重要なポイントを押さえて統合し、TVで見たままの、いやそれを更に高解像度化して実在する兵器のように仕上げた、全グフファンの理想郷がそこにあったのです。

更に、作例に添えられた氏の解説には、その当時は僕自身も言語化できていなかった、グフを端的に表す鋭い言葉がありました。
「グフはタレ目なんです」
そうだ、そうなんだ。グフはタレ目なんだ。それを心得ているからこそ、氏はこの偉業を成し遂げたのか。これほどまでに、全グフファンが夢見る理想像に応えてくれたグフはあっただろうか? いや、ない(反語)。

氏のグフを見て、僕はようやく巷に溢れる偽グフがなぜ偽グフなのかという要点の気付きを得、同時にグフが本来あるべき姿であるための大切なものの気付きも得ることができました。そしてそれ以来、様々な機会にそれを世に訴え続けてきたわけですが、なんと奇妙な運命のいたずらか、僕は近年になって個人的にDOOVA氏とお知り合いになるという、身に余る幸運に恵まれたのです。
その上、僕がSNS上でグフに関してみっともなく罵詈雑言を垂れ流しているのを目にされてか、DOOVA氏自ら、新しいグフを丹精込めて作り上げ、わざわざ僕に送って下さったのです…!

僕以上にグフを愛し、“ホンモノのグフ” を追及し続けている氏のグフは、僕がわざわざ言葉にして説明するのもおこがましいほど、“あのグフ”そのものの仕上がりでした。個人の手によって生み出されたその創造物は、間違いなくこの宇宙に一つしか存在しない唯一無二のものであり、この手で触れるにはあまりにも大きすぎる存在感を放ちながら、見れば見るほど、このようなものを僕一人で享受してよいのか、いつかこうした完成度のものがマスプロダクトとして、“あのグフ”を待ち望んでいる世の中の全グフファンの手に渡る日がこないだろうかと、様々な夢想を頭の中に巡らせてくれます。

DOOVA氏の本懐はグフだけに留まるものではもちろんないのでしょうけれど、これからの氏の益々のご活躍を願ってやみません。

後は、最後になりましたがゲーム芸人フジタ氏ですね。原稿の提出締め切りが迫って催促も激化していますので、橋本真帆ちゃんや芽吹幸奈さんへの熱い気持ちを断腸の思いで割愛して手短に済ませますと、ご結婚おめでとうございます。これからも変わらず面白く、そしてお幸せに!

<質問4>2024年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。

ゲームを作ってご飯が食べられる職に就きたいです。



作曲家
菊田裕樹

代表作:聖剣伝説2など

X(旧Twitter):@Hiroki_Kikuta
画像集 No.540のサムネイル画像 / 年末恒例企画「ゲーム業界著名人コメント集」。177人が振り返る2023年と,2024年に向けた思いを語る
<質問1>2023年に発売されたゲームの中で、最も感心させられた(あるいは衝撃を受けた)タイトル

「Backpack Battles」
既存の対戦パズル的なゲームシステムから、余計なものをすべて取り除いて、遊びの構造の骨子だけ残し、シンプルな面白さを追求したところが好感で、マッチングも戦闘もほとんど自動で行われ、すべてが最短で済み、プレイヤーに時間的負担を強いないところも素敵です、もちろん、もっとこうすればいいのにという要求点はいっぱいありますが、これだけ工夫できて、趣向が尽きないのは、さすが、設計の妙だと感じて、楽しく遊んでいます。

<質問2>2023年に発売/公開されたエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品

昨今ドラマ化されたりして、にわかに人気が高まっていますが、双龍氏の「こういうのがいい」という漫画にとても惹かれています。もともとちゃんとした漫画というよりは、ネットで発表された断片的な設定やシーンを繋げていったもので、成り立ちからして非常に現代的というか、作中の登場人物の設計も、今という時代の価値観を率直に表現するような、得難い魅力に満ちています、個人的にとてもオススメです、あと、2023年発売ではないのですが、BLZ氏の「姫騎士さんとオーク」という漫画が素晴らしく、その新鮮さ溢れた筆致を含めて、世界観、切り口、知識量、見識、すべてに驚かされ、個人的に星雲賞をあげたいぐらいの傑作SFだと感じました、これもオススメです。

<質問3>2023年に、個人的に注目した(している)人物

実は2023年は僕にとって、ゲーム配信を見ることにハマった一年でした、格闘ゲーム熱の再燃という切っ掛けから、日々の仕事、作曲作業の合間に必ず、格ゲーマーやストリーマーやVTuberのゲーム配信を見るようになり、その魅力の虜となっていったのは、自分でも意外としか言いようがありませんが、彼ら彼女らの人間性や関係性を理解するにつれ、その出会いや絡みを、同時性を持って体験していくのが、どんどん面白くなっていき、これはエンタメとして圧倒的な魅力だと感じました、常々チェックしている配信者は、格ゲー界の王たるウメハラ氏をはじめとして、加藤純一氏、釈迦氏など、大勢いるのですが、中でも魅力的なのが、赤見かるび嬢で、お肉の国のお姫様という設定もさることながら、天性の才能としか言いようがない魅力を振り撒きながら、周囲を混沌の渦に巻き込んでいくその求心力は、追いかけるだけの価値があり、一言一句全てがコンテンツとして成立する、奇跡のような存在だと、個人的に推しまくっている次第です。

<質問4>2024年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。

2024年には、いよいよ「聖剣伝説 VISIONS of MANA」が発売になります、僕でなければ表現できない音楽の世界を、存分に感じていただければ幸いです。




シナリオライター / チームグリグリ取締役
祁答院 慎

代表作:コープスパーティーシリーズ・Death end re;Questシリーズ

X(旧Twitter):@Kedwin / @Medwin_Toris
画像集 No.564のサムネイル画像 / 年末恒例企画「ゲーム業界著名人コメント集」。177人が振り返る2023年と,2024年に向けた思いを語る
<質問1>2023年に発売されたゲームの中で、最も感心させられた(あるいは衝撃を受けた)タイトル

タイトル:『STRAYスペシャルエディション』(PS5)
キービジュアルにひと目惚れをして、思考する間もなく買ってしまったゲームとの出会いは中学生の時以来なのですが、そんな「STRAY」がスペシャルエディションとして、満を持して日本国内でもパッケージ版が発売される朗報を聞き、再購入しました。「可愛い猫を、はぐれてしまった家族の元へ帰すため、古代の謎を解き、忘れ去られた都市から脱出する」とプロットからユニークな印象を抱くこのゲームからは、「製作チームの愛するものを沢山詰め込む」とても大事な姿勢を、改めて学ばせて頂いています。

<質問2>2023年に発売/公開されたエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品

タイトル:『凶遡咽び家特別公演【スケアリストMoreOver】』
音楽ライブや演劇、発売記念などリアルイベントに活気が戻りつつあるのが嬉しいなか、役者と観客の距離が最も近い「イマーシブ演劇」が面白いです。観客が劇の中に巻き込まれ、登場人物としてストーリーが進行して行く構成なのですが、こちらの「凶遡咽び家」様というお化け屋敷で不定期に行われるイマーシブ公演【スケアリストMoreOver】は、様々なタイプのキラーから逃げ回るサバイバーとして演劇に入るという、ホラーゲーム好きにはたまらない世界観を実体験できるユニークなイベントです。無限の可能性を感じますので、ゲーム開発者の方は特に、体験されることをおすすめします。

<質問3>2023年に、個人的に注目した(している)人物

クトゥルフ神話TRPG界隈では知らぬ者はいない、最強エンタメ集団「驚天動地倶楽部」代表の【ディズムさん】には今年もお世話になりました。チームや個人でのご活躍のほか、【カタシロrebuild 侵蝕】、【舞台ロールシャッハシンドローム】といった作品の舞台化など、圧倒的な行動力に敬服するばかりです。物語を作られる際の考え方にも共感を覚えますので、今後もまた様々な形でご一緒出来るように願っております。

<質問4>2024年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。

本年はナンバリング最新作『コープスパーティーII Darkness Distortion』、百合特化型ダンジョンRPG『ウィッチアンドリリィズ』の開発と、株式会社DONUTS様の近未来戦国×ダーク楽曲メディアミックスプロジェクト『マガツノート』にメインシナリオライターとして参加させて頂き、更に方南町お化け屋敷オバケン様のイマーシブホラー演劇『スケアリストMORE OVER』や、最強エンタメ集団「驚天動地倶楽部」代表・ディズム様の『舞台ロールシャッハシンドローム』といった、演劇公演に演者として出演させて頂くなど、非常に学びの多い一年を過ごさせて頂きました。皆様有難うございます。
来年に向けて、上記以外にも沢山のゲーム等の作品を準備し始める年にもなりました。近くまた発表出来るかと思いますのでどうぞお楽しみに!

そして、『祁答院のVTuberデビュー(?)』のその後ですが、とうとう4周年を迎えました。支えて下さる皆様に感謝したします。メドウィン(@Medwin_Toris)の中に入って、普段話せないゲーム制作の裏側、コープスシリーズの制作秘話(?)などを展開しているので、宜しければ『ホラーアカデミアン』( https://www.youtube.com/@HorrorAcademian )まで遊びにいらして下さい!

画像集 No.560のサムネイル画像 / 年末恒例企画「ゲーム業界著名人コメント集」。177人が振り返る2023年と,2024年に向けた思いを語る
「コープスパーティーII Darkness Distortion」
(C)Team GrisGris/MAGES.
画像集 No.561のサムネイル画像 / 年末恒例企画「ゲーム業界著名人コメント集」。177人が振り返る2023年と,2024年に向けた思いを語る
「マガツノート」
(C)MAGATSUNOTE PROJECT
画像集 No.562のサムネイル画像 / 年末恒例企画「ゲーム業界著名人コメント集」。177人が振り返る2023年と,2024年に向けた思いを語る
「舞台ロールシャッハシンドローム」
(C)2023 Dizm
「ウィッチ・アンド・リリィズ」
(C)Stromatosoft / (C)Bandai Namco Music Live
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音楽クリエイター
ヒャダイン


X(旧Twitter):@hyadainmaeyamad
Instagram:@hyadain_maeyamada
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<質問1>2023年に発売されたゲームの中で、最も感心させられた(あるいは衝撃を受けた)タイトル

ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム

前作があまりにも素晴らしすぎて完全無欠だと思っていたので超えるのは無理だろうと思っていましたが、大幅に超えてくるとは驚愕です。製作陣の意地を感じましたし、クリエイティブの可能性は無限大であることを思い知らされました。何事も限界などないんですね。

<質問2>2023年に発売/公開されたエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

スーパーマリオをアニメ化するには2023年の技術が必要だったんだな。ゲームをリスペクトし、そして再現して更なる高みまで持っていった製作陣が見事でした。音楽も素晴らしく、原作オマージュ具合が最高でした。4回観ました。

<質問3>2023年に、個人的に注目した(している)人物

永野さん

コントチャンネルで発表するコントがどんどん万人受けから遠ざかり、わかる人には深く突き刺さる内容になっていて、もはや現代アートまで昇華している点。コンプラの世の中で清々しくエログロナンセンスを突き通し、皮肉的にお笑い業界やエンタメ業界、ひいては現代社会を揶揄している点。

<質問4>2024年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。

今年も一年お世話になりました。最近はリングフィットばっかりしています。2024年もすでにおもしろ案件が決まってますので緩く応援よろしくお願いします!楽しく生きます!




ユニバーサルグラビティー代表 / ゲームセンター「ゲームニュートン」オーナー / EVO Japan 2024大会運営委員長
松田泰明


X(旧Twitter):@matsuda4951
画像集 No.559のサムネイル画像 / 年末恒例企画「ゲーム業界著名人コメント集」。177人が振り返る2023年と,2024年に向けた思いを語る
<質問1>2023年に発売されたゲームの中で、最も感心させられた(あるいは衝撃を受けた)タイトル

「ストリートファイター6 タイプアーケード」
自分はアーケード畑の人間なので,家庭用で大人気のスト6を「ゲームセンターで遊べるようにしてくれた」ことに関して,とてもうれしい気持ちになりました。

<質問2>2023年に発売/公開されたエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品

「ゴジラ-1.0」がめちゃくちゃ良かったです。映像クオリティのすごさはもちろんのこと,作り込まれた世界観,主演の皆様の演技も素晴らしかった。今回のゴジラは無機質でめちゃくちゃ怖かったです。

<質問3>2023年に、個人的に注目した(している)人物

「原田勝弘さん(バンダイナムコエンターテインメント)」
SNS上でファンからの突撃質問などへ回答していて,関係ないのにいつもヒヤヒヤドキドキしています(笑)。さまざまな事情があるとは思いますが,回答内容も丁寧で頼もしいです。ほかにも他社メーカー様との対談でもぶっちゃけトークが多くて注目しています。

<質問4>2024年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。

2024年4月27日から29日かけて開催する格闘ゲームの祭典「EVO Japan 2024」の大会運営委員長に就任いたしました。来場するプレイヤー,ギャラリーが最高のイベントだったと思えるものにしていけるよう運営チーム一同全力で臨みます。また,自分はさまざまなゲームイベントの現場にいますので,皆様とどこかでお会いできるのを楽しみにしています。コミュニティ全体で格闘ゲーム,盛り上げていきましょう!
他でも様々なゲームイベントで皆様とお会いできるのを楽しみにしています。
共に盛り上げていきましょう!




タレント


X(旧Twitter):@xxxjyururixxx
画像集 No.542のサムネイル画像 / 年末恒例企画「ゲーム業界著名人コメント集」。177人が振り返る2023年と,2024年に向けた思いを語る
<質問1>2023年に発売されたゲームの中で、最も感心させられた(あるいは衝撃を受けた)タイトル

今年クリアしたゲームは通算202本でした。
そんな私の最推しは「パラノマサイト FILE 23 本所七不思議」です。呪い呪われバトルロワイアルから始まり,思いもよらぬ展開に。
登場人物全員が愛おしくて仕方がないのですが,特に志岐間春恵さんが大好きです。マダム……。
ハマりにハマりすぎて,完全持ち込み企画として「開発陣を迎えたネタバレ座談会」を実施したほどです。どうか続編を。

<質問2>2023年に発売/公開されたエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品

映画「PERFECT BLUE パーフェクトブルー」4Kリマスター版での劇場公開です。
令和になって本作を映画館で観ることが叶うとは思いませんでした。
スクリーンの中で入り乱れる虚構に圧倒され,観賞後はしっかりと体調不良になりました。
この先「インターネット黎明期が舞台となるサイコホラー」が生まれたとして,本作の存在を越えることは出来るのでしょうか。
自分だけの秘密基地をみつけた高揚感と,開けてはいけない箱を開けてしまった恐怖心。私はあの感覚をずっと覚えていたいです。

<質問3>2023年に、個人的に注目した(している)人物

漫画家の米代恭さん。「往生際の意味を知れ!」連載終了から次回作を心待ちにしています。
バキ童こと「春とヒコーキ」のぐんぴぃさん。美少女ゲーム談義がしたいです。
音楽ユニットのザ・リーサルウェポンズ。「夏の日のメガドライブ」で心を掴まれてからのファンです。両国国技館ライブ最高でした。

<質問4>2024年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。

NHK「クローズアップ現代」で,年100本遊んでいるインディーズゲームを紹介するなど,TVやラジオでゲームのお話をする機会に恵まれた年でした。
ゲーマーの皆さんはもちろん,普段ゲームを遊ぶ習慣がない方にも振り向いてもらえるような,そんな活動を続けていきたいと強く思っています。
4Gamer隔週連載「結のほえほえゲーム演説」は,お蔭様で連載9年目に突入しました。もうすぐ10年。引き続き応援よろしくお願いします。うおおお。
ページをスクロールすると今年もヨコオタロウさんワールド全開アンケートが読めるのでしょう。それではヨコオさんどうぞ。




「ええ……はい。ゲームクリエイター、そう名乗っていた時期もあるようですが、本当のところはよくわからないようなんです。何せ記憶を全部なくしたそうで。」
ヨコオタロウ

代表作:ドラッグ オン ドラグーンシリーズ,NieRシリーズ

X(旧Twitter):@yokotaro
画像集 No.543のサムネイル画像 / 年末恒例企画「ゲーム業界著名人コメント集」。177人が振り返る2023年と,2024年に向けた思いを語る
<質問1>2023年に発売されたゲームの中で、最も感心させられた(あるいは衝撃を受けた)タイトル

Diablo IV
2023年はちいかわにメチャクチャにハマってたんですよ。いや、ちいかわです。以前、周囲がハマってるのを見て、単行本も買わずに面白半分でちいかわコラボカフェに行ったことがあって。その時は「ふ〜ん」くらいの感想だったんですが、2023年になってテレビ放送の影響でグッズやコラボが加速度的に増え始めたじゃないですか。それをなんとなく買ってるうちに気づいたら沼の深度1万メートルくらいに沈んでて。ちいかわって、キュートアグレッションっていうカテゴリの感情を喚起する内容なんですけど、いや、キュートアグレッションは適当に検索してもらうとして、正直そういうちょっと虐待っぽいのが苦手なんですよね。僕はすごい子供が好きで、虐待とか見ると泣いちゃうくらい怒るタイプなんですよ。だからちいかわ見てると「もうやめろー!!」とか、そういう感情になる。普通に泣いたりしてるんですよ。すごくないですか?53歳の男性ですよ?でも、救われて欲しいから目を離せない。正直、早くハッピーエンドになって連載終わってくれ、って思ってるんですけど。いや、グリードアイランド編、大変でしたよね。で、まあ、ゲーム業界の人間なんで、ちいかわのゲームとか気になる訳です。や、もちろん買いましたよ。ちいかわをお世話する液晶ゲームとか。むちゃかわパープルと、むちゃかわピンクですね。両方買いました。ついでに、ちいかわの知育玩具「ちいかわラーニングパソコン」も買いましたよ。ミニゲームが入ってるって言うんで。でも、そうじゃない。そうじゃなくて、もっとちゃんとしたアクションゲームがやりたい訳です。ちいかわやハチワレを操作して敵を討伐するようなやつ。そこでようやく、表題のDiablo IVなんですけど。Diablo IVみたいなハクスラ面白いじゃないですか。っていうか、Diablo面白いじゃないですか。あれの操作キャラをちいかわにしたやつをやってみたいなーって思ってるんですよ。大体一緒じゃないですか。Diabloとちいかわの世界観って。理不尽な世界で、武器を持って、わけわかんない敵と戦わないといけない。おんなじですよ。プレイヤーキャラのね、モデルをちいかわに差し替えるだけで大丈夫です。台詞は「わわっ!」とか「フッ」とか言わせておけば成立しますよ。ハチワレだってなんとかなりますよ。

リリス「地獄の帝王が世界を貪ろうと迫って……」
ハチワレ「わかんない!」
ちいかわ「わわっ!」
ハチワレ「でも一緒にがんばろ!討伐!」
ちいかわ(コクリ)

ほら行けた。なんていうか、こう、ゲーム作るのって、人間のやる事じゃないですか。だから大人が本気になれば出来ると思うんですよね。これBrizzardがちょっとがんばればやれるわけですよ。気持ちの問題なわけです。なんならそれをきっかけに日本の女性子供ユーザーがわーっとおしかけて来ますよ。あのゲロと血にまみれたサンクチュアリの平和を取り戻す為に。お願いしますよ。

<質問2>2023年に発売/公開されたエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品

映画「シアターキャンプ」
経営の傾いたサマー演劇スクールを舞台に、子供と大人が入り混じって(さして協力もせずに)奮闘するコメディ映画。

演劇業界というか、演劇人に対するブラックな皮肉と、何かのテーマに触れてるような触れてないような適当なストーリー回しに翻弄されているうちに、最後のステージが幕を上げる……という、何の変哲もない、よくある映画。

なんだけど、くだらない人間関係を通して、素晴らしいショーが生まれるという、エンタメ業界の構造を表すような内容だった。

2時間を超え、深いテーマを語ろうとする映画が多い中、主人公がいるようないないような変わった構成で、95分に収めているのはテクニカル的に結構すごいのかもしれない。

<質問3>2023年に、個人的に注目した(している)人物

【ゲーム業界】
「ICO」上田文人、「斑鳩」井内ひろし、「ASTRAL CHAIN」田浦貴久、「ボイド・テラリウム」古谷優幸、「嘘つき姫と盲目王子」小田沙耶佳、Limited Run Games(ゲームパブリッシャー)、SUPERDELUXE GAMES(ゲームパブリッシャー)、「Stellar Blade」キム・ヒョンテ

【その他】
「エヴァンゲリオン」庵野秀明、「ファイアパンチ」藤本タツキ、「夢中さ、きみに。」和山やま、「インターステラー」クリストファー・ノーラン土方クロネ(羊毛フェルト人形作家)、グラフィック社(出版社)、「女子攻兵」松本次郎、「野崎まど劇場」野崎まど、「HUNTER×HUNTER」冨樫義博、「怪獣8号」松本直也

正直、今年は悪い意味で注目していた人がいるんですが、それを書いても意味ないな、っていうか、色々問題があるな、という感じだったので例年通りの当たり障りのないリストとなっております。
毎年毎年追加されていく訳ですが、いつものようにゲーム業界の皆様には新作を期待しております、という意味で、特に上田文人さんの新作と、井内ひろしさんのウブスナは永久にお待ち申し上げております。

そして新しく追加になったのは、「HUNTER×HUNTER」の冨樫義博さん。有名すぎて入れ忘れていました。失礼いたしました。続いて「怪獣8号」の松本さん。複雑なマンガが流行る世界で、ストレートなバトルエンタメを押し通すその心意気が凄いです。そして面白い。アニメ化も楽しみです。

続いてゲーム業界からは、SUPERDELUXE GAMESさん。Limited Run Gamesの日本国内版、のような立ち位置でDL系のゲームをパッケージにするビジネスをされているんですが、何よりすごいのがこの会社さんは「ニーア」のローカライズをしてくださった会社さんが母体なんですよね。代表のジョンさんは元々日本のゲームが好きで、翻訳をされていたんですが、熱意があふれてパブリッシャーにまでなってしまったという。すごいなあ。
もうお一人は、今度発売される「Stellar Blade」を作られたキム・ヒョンテさん。キムさんと言えば美少女イラストで有名ですが、いや、好きなんですけど、今度発売する「Stellar Blade」が凄すぎて驚きました。キムさんの美少女キャラクターそのままに、ものすごいクオリティの3Dグラフィックでバトルアクションが出来るという夢のような製品ですよ。発売が楽しみで仕方ありません。

<質問4>2024年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。

若い頃、男友達と話してたら「女の子を口説くのなんて簡単だ」って言い始めたんです。どういう事だって思うじゃないですか。もちろん、「どうやって!?」って聞くわけです。そしたらですね、単にお手紙渡すだけ、って言うんですよ。そんな単純な手、上手くいくわけないじゃん、って言い返したんです。そしたらね、彼は「じゃあ、次に行けばいいんだよ。それを繰り返すんだ」って。彼のロジックによれば、成功確率が1%でも、100回繰り返せば100%に近づく、確率の話でしかないって言ってて。なるほど、と。

本当は、このコーナーでいくつか宣伝したい事があったんですよ。いや、ゲームとかじゃなくて、もう発表されてる他の仕事のやつ。

いやでも、そんな気分になれなくて。2023年を振り返ると、世界が酷すぎたじゃないですか。ウクライナの戦争が終わってもないのに、ガザで新しい戦争が起きて。ユニセフの報告だと、子供が、46日間で5300人以上死んだって言うんですよ。僕は天邪鬼だから、いろんな事をナナメに見る訳です。だから、これが万が一、万が一に、ユニセフが嘘ついてて、10倍に盛って言ってるって想像してみるんですよ、それでも530人な訳です。10分の1ですら、ありえない。というか、50人や、5人ですらダメだ。5300人なんて、ありえていい筈がない。

そんなニュースを毎日見ながら、「酷いよね。大変だよね。でもゲーム作ってるような俺にやれる事なんてないしな」って考えてるんです。上にも書いたんですけど、僕は子供が好きですからね。泣いてるんですよ。ニュースを見て。でもまあ、何もできないですしね、泣こうが笑おうが、意味ない。

思うんですけど、僕はたぶん、一生この問題を解決する方法を生み出せないんですよ。その能力がない。わかった風の理由を言いながら、出来ない理由を探しながら、どこか他人事のように眺める事しか出来ない。それでも、毎日何か解決方法はないかな?って見回してる。薄々、無駄だと思いながら。

そこでね、最初の話なんですけど。女の子を口説くのがどうこうっていうアレ。
無能の現状を、確率の問題にすり替えるのはどうだろう、って思ったんです。僕は無力でダメだったけど、確率を上げる方法はあるんじゃないか。僕じゃない、別の立場や能力を盛っている人なら何かアイデアを考えられんじゃないか、って思ったんです。

「4Gamer読者に向けたメッセージ」って言われて書いてるんで、ここを読んでる人がいるわけです。何人いるかは知りませんが、いるはいる。みんながね、子供を救う方法を今、1分だけ考えたとするじゃないですか。本気で1分だけ考えるんです。本気ですからね。最初から諦めたりせず、とにかく可能性がないか考えてみるんです。100人いたら100分、1000人いたら1000分考えるわけです。そうしたら、誰かがものすごいアイデアを考えられるかもしれない。あるいは、そのアイデアを考えるのは、1000人の中に含まれる僕かもしれない。

そういう事を、今日は思っていたんです。




アーティスト/音楽プロデューサー
RAM RIDER

代表作:「TOKYO AGITOS」「東京論」

X(旧Twitter):@RAM_RIDER
Instagram:@ramrider
Facebook:@ramrider2
画像集 No.544のサムネイル画像 / 年末恒例企画「ゲーム業界著名人コメント集」。177人が振り返る2023年と,2024年に向けた思いを語る
<質問1>2023年に発売されたゲームの中で、最も感心させられた(あるいは衝撃を受けた)タイトル

「8番出口」
オンライン対戦や「XX時間遊べる」が売りのゲームが増える中、このボリュームと価格帯で純粋に面白いゲームがプレイできたのは本当に嬉しかったです。こういう作品がもっと増えてほしいです。

<質問2>2023年に発売/公開されたエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品

映画「Winny」
パソコンなどの小道具から実際のPC画面、衣装にいたるまで、当時のアンダーグラウンドなネットの空気感をしっかりと再現しており、自分の「エモ」はこの時代かと実感させてくれました。警察権力、法廷などのジャンルモノとしても面白く、やるせなく、非常に心を動かされました。今年の個人的主演男優賞は東出昌大さんで決まりです。

<質問3>2023年に、個人的に注目した(している)人物

映画監督の松本優作さん。Winnyの監督でまだ若いのでこれからもどんどんいい作品をとってほしいです。松本さんに限らず、ベイビーわるきゅーれの阪元裕吾監督など、次世代の皆さんの次の作品が楽しみです。

<質問4>2024年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。

2024年はデビュー20周年なのでそれに向けていろいろとやりたいと思います。読者の皆様、4Gamer編集部のみなさまどうぞご協力よろしくお願いします。


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