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[CEDEC 2022]スクウェア・エニックスの過去資産サルベージプロジェクトの“今”が語られた「実践!資料保存活動の現場編」聴講レポート
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印刷2022/08/26 18:51

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[CEDEC 2022]スクウェア・エニックスの過去資産サルベージプロジェクトの“今”が語られた「実践!資料保存活動の現場編」聴講レポート

 ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2022」の最終日となる2022年8月25日,「資料を資産へ、スクウェア・エニックスにおけるゲーム開発資料発掘プロジェクト[実践!資料保存活動の現場編]」と題されたセッションが開かれた。スクウェア・エニックスの三宅陽一郎氏が,同社のゲーム開発資料保存プロジェクト「SAVE」の現在を語った講演をレポートする。

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「CEDEC 2022」公式サイト

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 ゲーム開発資料保存プロジェクト「SAVE」とは,スクウェア・エニックスにある過去資産(膨大なゲーム開発資料)をサルベージするプロジェクトだ。その詳細は,昨年のCEDEC 2021で三宅氏が行ったセッションのレポート(関連記事)を見てもらうのが早いが,資料目録の作成や,アナログ資料のデジタル化,それら情報の社内・社外への公知などを目的としている。

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 SAVEはこれまで3年間活動しており,その結果,社内だけでなく社外にも認知され,ゲーム業界内外と連携することもあるなど,活動の広がりを見せているという。
 社内においては,動画サイトにおける解説や,Webでのアナウンス,一般Web(主にCEDECの記事)などで知った社員から連絡が来るようになり,今では十数件の相談を受けているそうだ。

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 社外への認知としては,昨年のCEDECが大きな契機になったという。海外からも声がかかり,SIGGRAPH ASIAではタイトーと合同で招待講演や展示を行っている。

SIGGRAPH ASIAでの展示の様子
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 また,ゲーム業界の保存活動に対して,文化庁や立命館大学が関心を持ち,アカデミズムとの連携も行われるなど,さまざまな垣根を越えて展開するプロジェクトとなってきているという。

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 さて,そんなSAVEだが,実作業は誰がどのように行っているのだろうか。メンバーは少人数なうえに,本業と兼務する形となっているので,保存作業にじっくり取り組むことは時間的にもコスト的にも厳しい。
 かといって,扱うすべてが機密情報であり,興味がある人からすれば,よからぬ誘惑を受ける宝の山なので,社外での短期雇用も難しく,社員が行うしかない。

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 資料整理の専門業者を呼ぶにしても,一般企業の社史資料とは異なる特殊なものばかりで,そもそもゲーム資料専門の業者自体が存在しない。
 また,作業内容を考えると,知見を持つ定年退職した元開発者は適任かもしれないが,ゲーム産業自体が若い業界なので,スクウェア・エニックスであっても該当者はごくわずかだ。

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 そんな中で挙がったのが,グループ会社のスクウェア・エニックス・ビジネスサポートに相談してはどうかという案である。同社は,膨大な資料に対して,正規雇用の社員が継続的に本業務として対応可能だということで,現在はSAVEと同社の協業で作業が進んでいる。

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 続いては,「開発資料保存の現場から」として,スクウェア・エニックス・ビジネスサポートの小林一弘氏松永圭一郎氏阿部拓人氏が,実作業の詳細を紹介した。

スクウェア・エニックス・ビジネスサポートは,スクウェア・エニックスグループの特例子会社だ。特例子会社とは,「障がい者の雇用の促進および安定を図るために特別な配慮をした子会社」であり,障がい者雇用促進法で定められている
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 開発資料の保存には,資料をスキャンするための複合機,資料を撮影してデータとして残すためのデジタルカメラ,そしてノートPCを使用している。人員構成としては,作業者が4名,不備がないか確認する人員が3名。ただし,ほかの業務もあるので全員がかかりきりではなく,1名が常に作業に取り組む形だ。作業ペースとしては,1か月に5〜10箱だという。

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 作業チームは,資料の入った段ボール箱を数十箱受け取り,以下のような手順でデータ化を進めていく。

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 作業現場からのさまざまな声も紹介された。作業のノウハウの共有だけでなく,機材の台数やスペックによる制約で困っているという意見や,若い社員はカセットテープやネガフィルムを見たことがない,知らないため,作業に時間がかかるという話など,現場ならではの声が面白い。

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 セッション後半は,三宅氏が過去資料のさまざまな記録メディアへの対処を紹介していった。
 記録メディアをバックアップしていくと,とくに便利になるのが紙メディアだ。OCR処理(文字の画像データのテキストデータ化)とPDF化で,検索性や閲覧性,保存性が格段に高まり,死蔵されていた情報にアクセスできるようになったという。

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 紙以外の記録メディアは,音楽や映像,データなどが,さまざまなものに焼き付けてある。そうなると,外観からは記録された情報が何か分からない。しかも1990年代,2000年代はメディアが劇的に変わった時代であるため,中身を確認するには,専用の再生機械が必要という問題が発生する。

時代や現場によって,さまざまに使われてきた記録メディアの数々。たしかに,移り変わりが激しい
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 メディアに記録されているのならそのままではいいのではないか,と思う人もいるかもしれないが,時間経過によるメディアの劣化のため,このままでは情報が失われる可能性は高い。そのため,過去資料をサルベージして,現在の保存形式にバックアップするのが望ましい。

メディアによって,寿命は異なる。フィルムや光磁気ディスクなどの古いメディアは意外に長く,50年前後は記録できる。一方,デジタルメディアは短く,HDDは5年前後だ。時間が経つにつれ,勝手に失われていくデータは増えていくのである
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 メディアの中身を確認するにあたって,再生時の物理的破損も問題となる。HDDやフラッシュメモリなど,近年のメディアなら物理的に破損することはほとんどないが,フィルムや時期テープなどの古いメディアの場合,再生するだけでもリスクが高い。仮に見つけたとしても,うかつに手を出せない資料となってしまう。

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 そのため,破損する可能性があるメディアは,データをサルベージする専門の業者への依頼が選択肢に挙がる。しかし,そうした業者にお願いすると高額で,「想像されるよりもちょっと高い」そうだ。そのため,破損する可能性があるメディアであっても,ものによっては自分たちでバックアップしてもいいかもしれないと,三宅氏は述べる。

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 例えば,フィルムは専門業者に依頼すべきメディアだ。むき出しのため,自分たちで扱うには懸念があり,量も多い。また,もともと高価なメディアなので,説明書や広告用の画面写真,パッケージイラストなど,マスターデータとして使われていたケースが多く,資料として残しておきたいデータだからだ。

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 磁気テープも,オープンリールのものは専門業者に依頼すべきだろう。再生機器が少なく,古いテープメディアなので物理破損もしやすい。こちらも高額なメディアで,テレビCMのマスターテープとして使われていたという。

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 一方,VHSなどの安価な磁気テープの場合,再生機器がある程度入手可能だ。しかも安価なメディアであり,一時納品用や確認用の仮データ,デバッグ録画など,それほど重要でないデータが記録されている可能性が高い。それなら,高額な費用をかけて専門業者に依頼せず,自分たちでバックアップするのは1つの手だろう。

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 磁気テープの中でも,音楽を記録しているDATは,業者に依頼すべきものだ。音楽用のマスターメディアとして使われていたので,重要なデータが含まれている可能性がある。
 逆に,コンパクトカセットであれば,おそらく重要ではない音楽データが記録されているので,専門業者に依頼するかは悩ましいところだ。

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バックアップの方針としては,保存データの重要性で専門業者に依頼するか,自分たちで対応を検討するかを決めているという
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 では,自分たちでバックアップする場合,三宅氏たちはどのようなことに気を付けているのだろうか。ゲーム業界の場合,各種資料はダンボールに詰め込まれて20年経過しているなど,保存状態が悪いことが多いのではないかと三宅氏は予想する。そうなると,癒着やカビなど,さまざまな問題が立ちはだかるのだ。
 テープメディアの場合,最大の問題となるのは癒着だという。癒着してしまうと,破断や伸張を引き起こし,修復が難しくなっていくからだ。

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 カビはどうなのかというと,直接的な問題にはならないが,癒着を引き起こすので,結局癒着への対応が問題になる。なお,カビているものを再生すると,その後に再生したメディアにも伝染するといった事態を引き起こすらしく,実際にやってみて判明するミスもあるようだ。

癒着への対応は手作業でどうにかしているという
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 三宅氏によれば,SAVEの活動を通した考察として,ゲーム開発資料を見ていくと,「この頃はこういう全体の動きで作られていたんだな」といった空気のようなものを感じられるという。情報をファックスで伝えていたり,メールがなかったり,ワープロを使っていたりと,それぞれの時代にいろいろな制約があり,開発チームによって情報の伝達速度や連携の仕方が違っていたことがわかる。
 また,伝統だと思っていたことが過去を見るとそうでもなく,昔のほうが自由にやっていて,今は可能性を狭めているのかもしれないと気づくなど,新たな発見もあるそうだ。

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 ゲーム会社が,今の時代に刺さる最新のタイトルを作り,プレイヤーに届けることは,もちろんビジネスとして大切なことだ。
 一方で,ゲーム開発の歴史を紐解き,公開していくことは,文化として広く長く社会にゲームを受容してもらうために必要な作業である。つまり,企業にとっては,ゲームを開発するのとは違う方向で,社会に根付く基盤を自分たちで作ることができる。
 三宅氏は,SAVEの活動でそうした実感を得ており,これからも続けていきたいとして,セッションをまとめた。

SAVEの活動において,他社からの協力で助かったこともあり,知見を共有していきたい,仲間を募集したいと三宅氏は話していた。ゲーム開発の歴史を再構築する動きが,業界内で拡大していくことに期待したい
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