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「Game of Dreams Powered by Game8」聴講レポート。2022年のゲーム業界とビジネスのキーワードは“メタバース”や“アプリ外決済”
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印刷2021/12/21 18:07

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「Game of Dreams Powered by Game8」聴講レポート。2022年のゲーム業界とビジネスのキーワードは“メタバース”や“アプリ外決済”

 2021年12月14日,ゲームエイトが主催するゲーム業界向けフォーラム「Game of Dreams」の第1回オンラインフォーラム「Game of Dreams Powered by Game8」が開催された。本フォーラムは,ゲームエイトがゲーム業界で活動する人々や,それを取り巻く業界全体の発展に貢献するべく立ち上げたフォーラムで,今回開催された「Game of Dreams Powered by Game8」は記念すべき第1回となり,今後も定期的に開催を予定している。ここではその都度最新の知見共有だけでなく,中長期的な業界の動向も含めた幅広い情報発信を目指している。


 第1回の今回は,ゲームエイト取締役の沢村俊介氏がコーディネーターとなり,オープニング・セッションではスペシャルゲストにThirdverseの代表取締役である國光宏尚氏を迎え,VRやメタバースなどをキーワードにした「メタバース/Web3.0がもたらす新しいゲームの世界を予測」というテーマでトークを交わした。メインセッションではゲームエイトCOO室室長の中坪知幸氏がコーディネーターとなって,LIONAの矢野慶一氏とMOTTOの佐藤基氏をスペシャルゲストに迎え,「アプリ外決済を徹底解剖」というテーマで外部決済や仮想通貨を軸にディスカッションを行った。

株式会社ゲームエイト取締役COO 沢村俊介氏
画像集#001のサムネイル/「Game of Dreams Powered by Game8」聴講レポート。2022年のゲーム業界とビジネスのキーワードは“メタバース”や“アプリ外決済”

株式会社Thirdverse代表取締役CEO 國光宏尚氏
画像集#002のサムネイル/「Game of Dreams Powered by Game8」聴講レポート。2022年のゲーム業界とビジネスのキーワードは“メタバース”や“アプリ外決済”

 オープニング・セッションがスタートすると,さっそく沢村氏からWeb3.0についての國光氏がどう認識しているのかが問われた。國光氏はこれについて,見る人の軸によって大きく変わることを前置きし,iPhoneなどのスマートフォンや,Twitter,Facebookといったソーシャルメディアの登場。そしてAWSなどクラウドサービスが普及し始めた2007年前後がとても大きかったと話し,それからの10年はほぼスマホ,ソーシャル,クラウドという3つに尽きると加えた。

 また,認識として元から大きかったと勘違いしがちなGAFAMについても,2010年頃から急速に時価総額が伸びていることにも言及し,これらが伸びた要因は,スマホ,ソーシャル,クラウドという波に乗った結果だと話した。
 これらが成熟期に入ると,いわゆる“おいしいところ”というのは先にやったところに入り,残っているのはニッチなものだけという状況が現在であることから,近年の若者世代は受難の時期だが,大きな変化としてVR・AR,ブロックチェーン,AIが台頭してきたことにより,これからの十数年はこれが大きなトレンドになるのではと語った。

 テーマであるメタバースとWeb3.0は,國光氏によるとシンプルで,メタバースはVR,ARのリブランディング。Web3.0は仮想通貨,暗号資産のリブランディングであると言えるようだ。VRではOculus Questの登場で一気に急拡大し,仮想通貨においても,ゲーム領域ではゲーム×ブロックチェーンのPlay-to-Earn型のようなものが急成長していることが大きいと話した。

 ゲーム業界では,これまでPay to Playが主流だったところからスマホとスマホアプリの登場でFree to Playのモデルが確立。さらにはeスポーツの拡大によりPlay for Watchが登場し,現在最先端で到来してきたものがPlay to Earnということで,この流れがWeb1.0〜3.0までの流れとリンクするように来ているという認識で問題ないようだ。

 これらを受けて,國光氏はこれからのゲーム業界の大きなトレンドは「メタバース」と「Web3.0」,要するにブロックチェーンゲーム(=Play to Earn)だと話す。國光氏はThirdverseでVRゲームを制作し,アドバイザーとして関わりがあるdouble jump.tokyo?ではブロックチェーンゲーム「マイクリプトヒーローズ」にも携わっており,VRとブロックチェーンのどちらも経験豊富で見識が広く,「間違いなくここから10年間のトレンドなので,ここに早いうちに挑戦するというのは,ゲーム会社にとって極めて重要」と語った。

 その後,話は國光氏が捉えるブロックチェーンの本質に及び,國光氏はゲームに絞った形で自身の考えを口にした。そこでは,ブロックチェーンゲームの中には重要な3つのゲームがあるとし,それらは「クリプトキティ」「マイクリプトヒーローズ」「アクシー・インフィニティ」だという。

 それぞれの特徴を挙げていくと,「クリプトキティ」は登場するネコ1匹1匹がNFTで価格が存在し,集めて交配することで,運が良ければレアリティの高いネコが生まれ,高値で売れる可能性があるというシンプルなもの。「マイクリプトヒーローズ」はこれにゲーム性を加えたもので,「アクシー・インフィニティ」はここからさらにPlay to Earnにしたもので,デッキを組んでミッションやバトルをし,仮想通貨となっているゲームポイントを稼いで換金できる。これにより,ゲームを遊びながらお金が稼げるというスタイルを作り上げている。この「アクシー・インフィニティ」だが,國光氏によると1年間の総売上は40億ドルにものぼるようで,トークンの時価総額は3兆円だという。聞くと驚きの金額だが,ブロックチェーンゲーム系の会社で数千億というのはあまり珍しくはないようだ。

 一方で,運営側がそれほど利益を取れないのでは? との沢村氏のイメージに対しては,國光氏も同調。多くはコミュニティに還元することが大きく,Play to Earn型の大きな特徴の1つとして,初期からプレイしているユーザーがメリットを受けやすい(宣伝や運営へのアドバイス,他プレイヤーの勧誘などでヒットした際,NFTの価格上昇によってメリットを受けられる可能性もある)とし,それが新しい部分でもあると話した。

 ゲーム以外のIPにおいても,YouTubeやTikTokなどの広告モデルを始め,投げ銭モデル,サブスクモデル,クラファンモデルといったすべてのモデルは,プラットフォームやインフルエンサーは儲かるが応援しているファンにはメリットがない。これを,応援しているファンにもメリットがあるような形にすると,クリエイターエコノミーは加速度的に拡大する可能性があると話し,ユーザーも巻き込んだ新しい形の組織体としてDAO(自律分散型組織)がブロックチェーン業界では話題になるという。

 ただし,インセンティブ設計をしっかりと行わなければ意味がなく,トークンモデルを1つとっても,運営側が売り抜ける気配が見えてしまえば,応援するユーザーはいなくなってしまう。そのため,透明性を持った形は絶対条件と言えるだろう。その結果,ユーザーが自発的にコミュニティに貢献しようという気持ちが生まれることがトークンの良い部分であるため,そこをしっかりと理解することは重要だといえる。

 だが,一方で日本の場合特有の課題もあるようだ。國光氏によると,仮想通貨を直接発行することはできず,ゲームが発行するには,ゲームの運営元が暗号資産交換業に登録する必要があるため,ゲームがトークンを直接発行することは簡単ではなく,さらに上場会社の場合,発行するトークンの時価評価や会計監査をどうするか,といった問題も浮上してくるという。

 ほかにも,ゲームに絡めた場合の大きな課題としてゲーム性とのバランスが挙げられた。ソーシャルゲームによくあるカードバトル系などは,パラメーターのインフレが必要になるが,NFTの場合はカード1枚1枚に資産がついているため,あとから登場したカードのパラメータがインフレしていくたびに,それまで持っていたカードの価値が暴落。資産価値が大幅に減ってしまうため,こうした形で長期運用に成功している会社は無いという。

画像集#003のサムネイル/「Game of Dreams Powered by Game8」聴講レポート。2022年のゲーム業界とビジネスのキーワードは“メタバース”や“アプリ外決済”

 そこに対するアプローチは現在どこも模索中だろうと話したうえで,そういう意味ではあとから出てくるところが何か発明すればチャンスはあると言う。そこで國光氏は,現実的な資産(服や車など)は時間の経過で劣化,破損などが存在するため,NFTも同様に劣化や破損があってもいいのではと,例を挙げていた。

 確かに,使用することで劣化・破損が起こる現実の道具と同様に,ゲーム内で購入した武器や防具などが劣化・破損する現象は納得できる部分もあり,NFTではないがそういったゲームは実際に存在もする。劣化や破損が嫌なら飾っておけばいいという國光氏の意見もあり,ゲームデザインやゲームシステムによっては,飾っていたものにアンティーク価値が付加される可能性もある。

 そうした考えも含めて,まだ始まったばかりであり,イノベーションの余地も豊富にあるとしたうえで,ゲーム会社としてはこれまで変化してきたビジネスモデルのように,大きくビジネスモデルを変える必要があり,そこは新たなゲームモデルの発明が必要になるだろうと國光氏は話す。

 そして最後に國光氏は,VR,ブロックチェーン問わず流行っているゲームは実際プレイしてみることから始めるのがいい。この3つは技術的な成熟度によって短期的には交わることはないが,3〜5年後には両方を融合させることを意識し出すのではないかと話し,オープニング・セッションは終了した。


新たなビジネスモデルの可能性も秘めた

アプリ外決済の期待と課題


株式会社ゲームエイトCOO室室長 中坪知幸氏(画面左上),株式会社LIONA 矢野慶一氏(画面右上),株式会社MOTTO代表取締役 佐藤 基氏(画面下)
画像集#004のサムネイル/「Game of Dreams Powered by Game8」聴講レポート。2022年のゲーム業界とビジネスのキーワードは“メタバース”や“アプリ外決済”

 「アプリ外決済を徹底解剖」と題したメインセッションは,中坪氏による「外部決済」のおさらいから始まった。
 「外部決済」はアプリ内コンテンツを別のプラットフォームで決済する事で,現在は一部のアプリを除き,アプリ内コンテンツ購入はアプリ内課金のみ利用が可能になっている(Apple,Googleともに規約で禁止している)。しかし,外部決済が可能になると,アプリ内コンテンツ購入の際,アプリ内課金以外の方法で販売が可能になるというものだ。

画像集#005のサムネイル/「Game of Dreams Powered by Game8」聴講レポート。2022年のゲーム業界とビジネスのキーワードは“メタバース”や“アプリ外決済”

 今回この「外部決済」がテーマとして提示されたのは,アメリカでEpic GamesがAppleを提訴したことがきっかけであり,判決としてAppleにAppStore以外での支払いオプションを許可するように命じる(規約の改定を求める)判決が出たことが大きな話題となったからだ。
 2021年12月8日にAppleが出したアプリ決済規約改定期限延長の申し出が受理されているため,この裁判に関しては現在も続いており動向が注目されているところでもある。

 そこで,仮に外部決済が容認された際,期待と課題はどんなところにあるのかが挙げられた。
 まずは外部決済が容認されることで,メーカーからプラットフォームへの手数料(Appleの場合30%)を回避でき,結果的に利益率の向上が見込め,その分ユーザーサービスの向上にもつながる可能性があり,これはユーザーにとってもメリットとなりうる要素だろう。

 そうしたメリットが考えられる一方で,外部決済をメーカー自身で担うとなった場合,超える必要があるハードルも存在する。その大きなハードルが情報漏えいのリスクと不正決済のリスクだ。現在はこれらデメリットに当たる部分をプラットフォーム(AppleまたはGoogle)がすべて管理しており,手数料はそのコストという見方もできる。

 矢野氏はデベロッパ側からの視点として,売上の3割という数字は高いと感じつつも,ダウンロード後すぐに決済が可能であったり,プラットフォームの大きさからくる安心感などユーザーとしての利便性があると話し,手数料が安価になることによる利益率を確保できるに越したことはないが,外部決済を自社で管理・運営するのは大変であり,先に挙げられたデメリットなども考慮すると,ある程度は致し方ない部分もあるのかもしれないと話した。

 続いて中坪氏が佐藤氏にマーケティングの立場からユーザーなどの声も含めて現在の状況について聞くと,佐藤氏はスマホがスタートしたころからシステムが変わっていないため,自分達を含めた業界人はもちろん,ユーザーとしてもあまり違和感を感じたことがなく,意識したこともなかったのではないかと話した。
 また,手数料に関してもスタートからそのままだったこともあり,ほとんどが“当たり前”で注目されにくい点でもあったことを指摘し,外部決済が可能になったら,様々な意味で大きな変化になると意見を述べた。

 加えて佐藤氏は,ビジネスの都合でモバイルゲームのサービス終了などが存在することは,ユーザーにとっては良くない体験とし,仮に手数料が20%や10%になったり,外部決済によって利益率が上がることがあればそれを回避できる可能性もあることから,そういう意味では期待値は高いと話した。

 ほかにも,外部決済が導入された際のマーケティングにおいては,ビジネスにおけるコストカットについて,現在のスタイルではコストカットできる手段があまり多くなかったことを明かし,そこを少しでも改善でき,開発・運営とマーケティングが協力してコストカットできる余地が増えるのであれば,広告投資などに回せる可能性もあるため,マーケティングとしても期待できる重要な点だという。

 だが,プラットフォームがだめだということはなく,あくまで自由化ではないかと佐藤氏は言う。これはデベロッパ側もユーザー側も,どちらを使うのかを各自の都合で決められるということで,選択肢が増え,選択肢が増えることでデベロッパ側は新たな利便性が提供できる可能性もあり,新たなビジネスが生まれる可能性もある。ともすると,これが業界が変わりうる1つの大きなファクターになるかもしれず,楽しみであるとも話していた。

 続いて,開発の視点から矢野氏に外部決済システムの実装や運用に関しての課題について問われた。矢野氏によると,実装や運用に関する課題はとても多く,中でも一番大きい課題は国内運用のみかグローバル運用を見据えているかという点だという。
 日本国内だけであれば,日本の決済だけで考えればよいが,グローバルの場合は各国の決済方法全てに対応するのは不可能だという。だが,AppStoreなら各国の決済がユーザー側から簡単にでき,開発側も提供しやすく,これが最大のメリットだと話す。

 また,決済方法が自由になると,ほかのプラットフォームの使用だけでなく自社による決済システムの導入も考えられるが,いずれにしてもそれらを実装する際のテストや実装後のストア運営も含めたコストの増加も考える必要があり,それが複数の決済システムにまたがったりグローバルも考えるならさらに増加することに言及。それらを包括して,確固たるメリットがあるのかどうか。利益を追い求める代償として釣り合うのかどうか,考えることはとても多いと語った。

 前述していたように,これまで“当たり前”に感じ使用していた決済システムが,外部決済によって選択肢が増えることで,ユーザー側は選ばなければいけない。どれがいいのか。どこがいいのか。大小問わず迷うことになるだろう。さらに言うと,迷った時点でやめてしまうユーザーもおそらく存在する。そういったリスクも考えながら,どのようなユーザー体験をさせるのかという部分も,矢野氏によるとデベロッパとしては大きな課題になるという。

 中坪氏がこれまでの話を聞いたうえで,外部決済によって開発側とマーケティングが一緒になってユーザーエクスペリエンスを拡張できるようなもの作りができる可能性が生まれそうだと話し,佐藤氏に意見を求めると,佐藤氏は「新しいビジネスモデルだと捉えてもいい」と答え,ビジネスモデルが変わればゲーム体験も変わってきた今までのゲーム業界を見て,新しいものが生まれる可能性が拓けるのではないかと期待を含ませていた。

 一方で,これまで出ていたさまざまな課題やそれ以外にも多くの課題が存在していることも事実であり,業界としては引き続き注目していく必要があるとの見解は一致している。

 それも踏まえて,矢野氏は「使いやすくユーザーも安心できるプラットフォームが生まれればすごくメリットがありますし,そこにいろいろな付帯サービスができると思います」とし,サービスの可能性が広がると話した。佐藤氏は「やはりいちばん大事なのはお客様なので,お客様にとって良いサービスを提供できるように」と最後にコメントし,記念すべき第1回の「Game of Dreams」オンラインフォーラムは終了した。

ゲームエイト[Game8]公式サイト

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