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地方公務員が市民の社会参画を促すボードゲームを開発。「ゲーミファイ・ネットワーク 第13回勉強会」聴講レポート
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印刷2021/01/25 16:38

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地方公務員が市民の社会参画を促すボードゲームを開発。「ゲーミファイ・ネットワーク 第13回勉強会」聴講レポート

 2021年1月22日,日本デジタルゲーム学会(DiGRA JAPAN)のゲーム教育部会(SIG)は,「ゲーミファイ・ネットワーク 第13回勉強会」をオンラインで開催した。
 このセミナーでは,NPO法人「6時の公共」代表理事の仁平貴子(にひら たかこ)氏が,同団体がリリースした「まちづくり学習」のためのボードゲーム型教材「僕らの基地がほしいんだ」の開発経緯や,今後の展望などを紹介するセッション「公務員がボードゲームをつくった訳」を行った。

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仁平貴子氏
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 6時の公共は,地方公務員によって構成されているNPO法人で,「自分たちのまちは自分たちでつくる」というミッションを掲げて活動している。セッションで紹介されたボードゲーム型教材「僕らの基地がほしいんだ」は,その一環として2019年5月に開発がスタートした。

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 教材は主に中高生を対象としており,ゲームを通じて“社会づくり”を主体的に学ぶことで,ゆくゆくは実際に社会参画してもらうことを目指して開発されている。
 その背景には,2021年度には中学校に,2022年度には高等学校に“新学習指導要領”がそれぞれ導入されることがある。

 しかし,教員も社会づくりの専門家ではないので,教科書をなぞって「まちづくり」「社会参画」と言うだけでは,生徒達はピンと来ないかもしれない。
 そこで,生徒達に自立した主体として社会づくりに参画することを教える新たなアプローチとして,ゲーミフィケーションの手法を採り入れて楽しく学べるボードゲーム型教材を開発することになったというわけだ。
 そのほかにも「教員だけに学校教育を任せたままでいいのか」といった課題意識や,「学校以外の教育の場にも応用できるのではないか」という展望もあったという。
 仁平氏は「『一見難しそうに見えても,できるからやってみなよ』と背中を押すような教材にしたかった」と話していた。

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 “ゲーミフィケーションを採用した教材”と一口に言ってもさまざまなタイプがあるが,今回ボードゲーム形式が採用された理由として,「研修で使い勝手が良い」「改変しやすい」「強調したい部分をデフォルメして伝えやすくなる」という3点が挙げられていた。

セッションでは,開発がどのようにして進められたかが紹介された。現在は予約を受け付けている段階で,販売は2021年3月頃から行われる予定だ
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こちらは開発が決定するまでの経緯。仁平氏は,ビジュアルで何かを伝えることを学ぶべく3DCGの講義を1年間受けたり,ワークショップ型のゲーム教材を体験したりする中で,ゲーミフィケーションを使った教材の構想を固めていったという
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「僕らの基地がほしいんだ」のビジュアルやUIの変遷
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「僕らの基地がほしいんだ」キービジュアル
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 中高生を含めた若年層,とくに18歳未満の人は,まだ選挙権がないといった理由から「まちづくりは政治家や役所,大人がやるもの」と考えるかもしれない。
 本教材では,政策実現のための「流れ」「必要な力」「関わる人や連携」を把握し,「請願」制度を使うことで中高生でも社会に参画できることを学べる。仁平氏は「請願をモチーフにしたこと,知識を学ぶだけでなく体験型にしたこと,『まちづくりの主役は市民である』ということを大きくアピールして,完全にオリジナルな仕組みの教材になった」と語っていた。

6時の公共のメンバーである地方公務員をはじめ,政治家や民間の経営者,中学校や高校の教員,そしてアナログゲーム編集者の石神康秀氏が開発に参加・協力した。とくに石神氏は,「僕らの基地がほしいんだ」で伝えたいメッセージを徹底的に引き出してくれたとのこと
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 また仁平氏は,今の日本人が地方自治に関心を持つために必要な2点についても語った。
 1つ目は,今存在する街作りの仕組みを使いこなすこと。2つ目は,それらの仕組みを使いこなしたうえで,市民各自が主体的に考えて新しい制度を作り出す感覚や基礎体力を備えることだという。
 そう考えると,市民が市政についての要望や意見を議会に提出できる請願は,ボトムアップで公的な制度や政策を作り出す地方自治の土台作りにもってこいの制度というわけだ。仁平氏は,「請願という制度があることやその使い方を伝えたいわけではなく,皆で街作りの基礎体力を付けようと呼びかけたい」と説明した。

 「僕らの基地がほしいんだ」はストーリー仕立てになっており,舞台となるのは未来の街。安心・安全というお題目のもと,がんじがらめに管理された生活を送る主人公達は,あるとき公園内に秘密基地を作りたいと考えた。しかし大人達は,「定められたルールに則っていないからダメ」と言う。
 そこで子ども館のおばさんに相談したところ,主人公達は規則に沿って「セイフ」に要望や意見を提出し採択されれば,その要望・意見の実現に向けて真摯に取り組んでくれるようになる「セイガン」という制度を知る。主人公達はセイガン書の提出を目指し,街の大人達の協力を仰ぐべく行動を開始する。

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 ゲームは2人1組で行い,最大4組が参加可能。1プレイの所要時間は30分程度で,学校の授業の時間内に収まるようになっている。プレイヤーは,ゲーム内の12か月という期間内にさまざまな大人の協力を取り付け,アイデアをそろえて3つの課題を突破し,議員から印をもらってセイガン書を提出する。チームの中で最初にセイガン書を提出した組が勝利だ。

ゲーム中には,4組の主人公が登場
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主人公達は普段は関わらないような大人達と出会い,足りない力を補ってもらう
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 プレイ後はワークショップで,セイガン書が採択されたあとの公園像について議論したり,公園の改修案をパブリックコメントとして公募したり,予算の決定や関連する条例などの改正をしたりといった過程を経て,公園が整備されることを解説していく。

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 そのほか,プレイ中のストーリーやキーとなった登場人物を振り返り,自分達にはどんな力を貸してくれる人が必要なのかを考えさせるワークシートなども現在準備しているという。今後の課題としては「授業や研修を運営するファシリテーターの養成」が挙げられていた。

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今後は教材の販売に加え,販促用の体験会開催や講師の育成と派遣,模擬請願の実施などを通じて,具体的な街作りにつなげていく
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教材のさまざまな活用例も示された
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 前述の通り「僕らの基地がほしいんだ」は,「請願」をモチーフにしてはいるものの,その存在や利用方法を伝えるものではない。市民が主体的に社会参画できることを伝え,ゆくゆくは地方自治への理解・関心を高めてもらうための教材である。仁平氏は,その狙うところや取り扱う用語,事象の正しい情報をプレイヤーに正しく伝える指導マニュアルと,効果的なワークや振り返り(評価)の確立が必要だとした。
 また,「限られた授業時間内で1人の教員が運営するのはなかなか大変だ」という意見も寄せられているそうで,ストーリーやプレイ方法を紹介する動画など支援ツールの制作も考えているという。

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事実を補う補足説明をする必要性や,政治的な中立性を保ったうえでのプレイを行うといった取り扱い上の注意点も挙げられた
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 最後に仁平氏は,「政策実現や世の中の仕組みを変えることは,自分達の力でできる! ということを感じられるゲームになったと思っています」とアピールしてセッションをまとめた。

6時の公共 公式サイト

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