ハイクオリティのビジュアルで描かれる「A1」とは？　NDC 2016のセッション「最高クラスのゲームビジュアルを誇るプロジェクト『A1』のゲームアートを初公開！」をレポート

　Nexon Developers Conference 2016の2日めとなる2016年4月27日，「最高クラスのゲームビジュアルを誇るプロジェクト『A1』のゲームアートを初公開！」と題されたセッションが行われた。果たして，この「A1」とは，どんなゲームなのだろうか？

パク・ソンソプ氏

　セッションを取材する前に，「A1」という作品の情報を調べたのだが，分かったのは「Unreal Engine 4」を使ったPC向けのタイトルであることだけ。ジャンルなどは不明で，実は韓国においても，一般公開されるのは今回がほぼ初となるようだ。
　ちなみに，本稿では「A1」としているが，これはプロジェクトの名称であり，正式タイトルはおそらく違うものになるだろう。

　ともあれ，セッションで紹介されたゲームの内容と，公開されたスクリーンショットの直撮り画像を中心に，この謎のタイトルに迫ってみたい。

　セッションに登壇したのは，本作のアートディレクターを務めるパク・ソンソプ氏だ。これまで「マビノギ」のグラフィックスチームリーダー，「マビノギ英雄伝」のアートリーダーなどを担当し，約10年間，Nexonの開発現場で活躍してきたという。

　自己紹介のあと，パク氏はさっそく，本作のゲームジャンルが「MOBA」になることを明らかにした。球状のマップが使われ，ゲーム画面はクォータービューになるという。平面ではなく，「球状のマップ」というのがよく分からないが，その点についての詳細は明らかにされなかった。
　リリースは2017年内を目標にしているとのことだが，これは確定とは言えないようだ。


　続いてパク氏は，本作のビジュアルコンセプトを紹介した。本作の背景となるのは，映画「スター・ウォーズ」シリーズのような未来世界で，軽めのSFになるという。ちなみに開発チーム内では，本作は“スペースオペラ”だとされているそうだ。

　開発が始まった頃，韓国ではあまりSFモノのゲームが制作されておらず，それを残念に思っていたパク氏は，いつかSFタイトルを作ってみたいという願望があったという。また，MOBAの世界観はほとんどがファンタジーなので，差別化を図れるという考えもあったそうだ。もっとも，ありがちなことに，現時点ではいくつかのSFタイトルが登場しており，状況は昔とは異なっているとのこと。

　パク氏は，SFタイトルを作るなら，世界的にポピュラーなハリウッド映画を参考にすべきだと思った。ハリウッド映画のビジュアルをゲームに取り入れることができれば，SFタイトルでも人気が獲得できるだろう。そうした理由から本作は，ハリウッド産スペースオペラから，多くのインスピレーションを得ているという。

　そういうわけで，ゲームに出てくるキャラクターは，スパイダーマンやスーパーマンのように目立つ衣装を着ている。もっとも，どのキャラクターも映画のような見た目になると，戦闘中，自分のキャラクターがどこにいるのか分からなくなるそうなので，衣装はハリウッド風だが，ゲームに適したアレンジが加えられているという。

キャラクターの見た目は，ゲーム的というよりはハリウッド映画風になるらしい。パク氏は，80％はフォトリアルで，残りの20％にゲーム的な誇張表現を施し，印象に残るビジュアルを目指していると話す

　本作のキャラクターモデルは上記のように「Unreal Engine 4」を使ったクオリティの高いグラフィックスで描かれ，モーションもかなりリアルだという。ここでパク氏は会場に向け，「クォータービューのオンラインゲームなのに，それほどのビジュアルは必要なのでしょうか？」と問いかけた。
　確かに，そこまでやる必要はないように思えるが，パク氏は「それはアーティストとしての欲であり，チームの戦略でもある」と述べた。
　「League of Legends」はアーティスティックなキャラクターとアートワークを持っている。「Dota 2」は個性たっぷりのキャラクターが登場する。そして，「Heroes of the Storm」には，多くのファンがいるBlizzardのキャラクターが出てくる。では，「A1」はどのような要素で差別化を図ればいいのかと考えた結果，クオリティの高いグラフィックスを選んだというわけだ。果たしてそのアイデアがうまくいくのか，パク氏は「ある意味，無謀な挑戦」と述べる。

　以下，セッションで公開された画像をいくつか掲載したい。

2014年にモデリングしたキャラクター。当時は，本当に美女だと思っていたそうだが，1年経つとそのバージョンは使えなくなり，現在（2016年バージョン）はかなり様変わりしている。ただ，この2016年バージョンも完成状態ではないとのことだ

腕の動きに連動して，身体のほかの部分も自然に動くというデモ

日陰になっている場所に，さらに影が描かれることで，キャラクターが浮かないような工夫がされている

本作には昼と夜の区別がある。これがどのように影響するのかは，発表されなかった

　というわけで，新タイトルの紹介をお届けしたが，パク氏が「トリプルAクラス」と言うように，キャラクターモデルが体を動かしたときの髪の毛の流れやマントのたなびき方など，グラフィックスに力が入っていることは十分に理解できた。

　ただ，パク氏が会場に問いかけたように，俯瞰視点でプレイすることがほとんどのMOBAで，これだけのグラフィックスを使うのは正直，もったいない話。このグラフィックスが映えるような仕掛けが何か用意されていると考えるのが自然だろう。今後の情報公開に期待したい。