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韓国最大規模のゲーム開発者向けイベント「Nexon Developers Conference 2016」が開幕。「多様性」をテーマにした基調講演の模様をレポート
Nexon Koreaの主催ではあるが,スピーカーや参加者は同社のグループ企業にとどまらず,他社の開発者も多く訪れるイベントとなっている。
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「Nexon Developers Conference 2016」公式サイト
Nexon Developers Conferenceが初めて開催されたのは,2007年のこと。最初は33セッションのみの小規模なイベントだったが,近年は,200名以上のスピーカーが100を超えるセッションを行うほどに成長した。
今年は10周年ということで,いくつかのセッションで日本メディア向けの通訳が用意された。というわけで,その内容を紹介していきたい。まずは,NDC 2016のテーマである「多様性」について語られた基調講演の模様をお伝えしよう。
![]() 本社のあるパンギョは,NCSOFTやNHN Entertainment,Neowiz Gamesといった,オンラインゲーム系の会社が集まる地域だ |
![]() NDC 2016のセッションリスト。3日間にわたって,開発者向けのさまざまなセッションが行われる |
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マホニー氏は,人工知能「AlphaGo」の開発で知られるデミス・ハサビス氏や,Facebookを開設したマーク・ザッカーバーグ氏,アップルのスティーブ・ジョブズ氏らが,ゲーム開発に関わっていたことを例に挙げ,ゲーム開発やゲームプレイに影響を受けてイノベーションを起こした人物は数多くいると説明した。
こうした影響をなぜゲームが及ぼすのかといえば,ゲームが「ユーザー自身が深く考え,自分自身に挑戦しつつ,解決策を生み出し難題を乗り越えていく,アートとテクノロジーが融合したエンターテイメント」であるからだという。そして,ゲームをプレイすること(とくにオンラインゲーム)は,プレイヤーが自分自身でストーリーを描くことのできる唯一のアートであり,さまざまな人にインスピレーションをもたらすのだ。
マホニー氏は,ゲーム開発者達は社会に革新を生み出していく存在とし,NDCがゲーム業界をさらに成長させていくための機会となれば幸いだと述べ,スピーチを終えた。
続いて,Nexon Korea副社長のジョン・サンウォン氏による基調講演が行われた。その内容は,新しいものを生み出そうとする開発者達に,「多様な視点で見る」ことの大切さを伝えるものだ。
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最近のモバイルゲームは,開発チームの重要度が落ちており,ゲームの内容よりも広報活動やCMなどがヒットのために重要になってきている。これではまるで,創作というよりは工業製品だ。スーパーマーケットの商品は同じようなものが並んでいるので,広告で知っているものや,棚の取りやすい位置にあるものを取るのと変わりはない。
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加えて,モバイルゲームはオンラインゲームに比べて,プラットフォーマーやパブリッシャなどに多くマージンを取られてしまう。流通が力を持ち,開発チームの影響力が落ちているのではないか。サンウォン氏は,こうしたゲーム開発者の嘆きをよく聞くという。
このような現状で,開発者はどのようなゲームを作っていくべきか。もともと,生物学を専攻していたというサンウォン氏は,いくつかの生物学的な例を示した。
例えば,生物の生殖手段には,無性生殖と有性生殖がある。無性生殖のほうがシンプルに新たな個体を生み出せるのに,なぜ花を咲かせたり,彼女を見つけたりといった苦労をして有性生殖を行うのか。それは,多様な遺伝子の個体を生み出して,変化していくためだ。これをゲームに当てはめると,無性生殖のように繰り返し同じようなゲームを作っていくだけでは,新しいものは生まれないことになる。
一方,恐竜は完璧に環境に適応した生物だったが,結局は環境の変化に対応しきれずに滅んでしまった。一度適応したとしても,その環境が変化しないとは限らないのだ。何かに特化したゲームを開発したままであれば,変化が訪れたときに終わってしまうというわけだ。
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こうした例を踏まえ,ゲーム会社がやるべきことは,さまざまな挑戦を行うということだと,サンウォン氏は言う。“さまざま”といっても,数撃てば当たるという考えで似たようなプロジェクトを複数走らせるのではなく,視野を広く持ち,理解できないことにもチャレンジすることが大事だと述べる。
フードコートのように,各店が自慢のおいしい料理を作り,それを客が選べるような形で展開するのが,やりやすいのではないかとのことだ。
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しかし現在,オンラインゲームで発展してきたことは裏目に出ている。オンラインゲームで成功したため,それに力を入れていた会社は,新たな市場であるモバイルゲームへの参入を躊躇したというのだ。新しいことに挑戦しなくても,やっていけると考えていたわけだ。
現状を見れば,その考えは反省しなければならない。あらゆることにアンテナを張り,視野を広く持たなければならないとサンウォン氏は述べた。
最後にサンウォン氏は,「ゲーム開発者は,思わぬところで新たな成功を探せる,楽しいサプライズを味わえる仕事だ」と話した。今は市場になくても,ユーザーの興味を引ける新しいものを探し求めなければならない。そのために,今やっている仕事が正しいと信じ,勇気を持って開発に挑んでほしいと述べ,講演を締めくくった。
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