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大人から子供まで楽しめるボードゲームの祭典,「ゲームマーケット2014大阪」会場レポートをお届けします
カードゲームやボードゲームの人気が定着してきた昨今,大阪で開催されたゲームマーケットもまた,東京に勝るとも劣らない盛り上がりを見せた。今回はその模様を簡単に紹介したい。
「人狼」,いまだ強し
まずは,もはや定番となった「人狼」系の作品。プレイヤーの中に紛れ込んだ「人狼」(カードによって秘密裏に決定される)を,話し合いと推理を通じて暴き出すのが目的のゲームだ。「正体隠匿系ゲーム」と呼ばれることもある。
「人狼」はルールが簡単で,かつプレイヤーの交渉能力や推理力が要求される作品であるため,多くの熱狂的なファンを獲得するジャンルとなった。「人狼会」と呼ばれる,主に人狼をひたすらプレイするゲーム会が開かれることもある。動画配信サイトへのプレイ動画投稿数も伸び,テレビ番組でも取り上げられている。
正体隠匿系ゲーム「裏切りの工作員」。人狼とは完全に異なったゲームで,もともとは中国産 |
「ブラッドバウンド」の試遊卓。普通の「人狼」よりも,理詰めによる推理がより強く表に出ている。が,こっそりとそこに詭弁が混じったりするのも「人狼」系ならでは |
「人狼」は,オリジナルの役割を追加したり,役割の名称を変更したり(「人狼」を「殺人鬼」に置き換えれば,スプラッタ・ホラーな展開にできる),はたまたより短時間で決着するようにルールを変更したりと,さまざまなバリエーションを生んできた。その勢いは,大阪ゲームマーケットでも衰えを見せない。
とりあえず最も目立っていたのは,バンダイが出品した「カイジ×人狼」だろうか。役割を決定するのはカードではなくチップ,また「ペリカ札」も用意されているなど,原作の世界観をよく伝えるゲームになっている。
同様に,こちらは本会場での新作というわけではないが,「ダンガンロンパ」と人狼のコラボ作品「ダンガンロンパ1・2 超高校級の人狼」も,試遊卓はほぼ常に満員状態だった。
ゲームシステムの改造という面では,「ブラッドバウンド」が人気を集めていたようだ。これも本会場での新作ではないが,プレイヤーにより高いレベルでの推理を要求するデザインとなっており,知恵を絞る系のゲームが好きなプレイヤーが眉間にシワを寄せながら楽しんでいたのが印象的だった。
これ以外にも正体隠匿系ゲームの新作はいくつも発表されており,「人狼」は一時期のブームを越えて,定番ジャンルとなった感がある。より遊びやすくするための,システム面からの工夫も積み重ねられており,これからも多様な展開が期待できそうだ。
世界から注目される日本のゲーム
もう一つ,大阪ゲームマーケット2014で目立ったのは,海外参加者である。東京での開催時も海外参加者は多かったのだが,大阪ではその比率がより高くなっている印象がある。
その代表例として,カナイセイジ氏デザインによるカードゲーム「ラブレター」の世界的なヒットが挙げられる。「ラブレター」は,世界最大のボードゲーム情報サイトであるBoard Game Geekにおいて長期間にわたり「ユーザーが注目するゲーム」のランキングでベスト5圏内を維持し続けた。
またシンプルながら奥の深いゲームシステムと,独特のアートデザインが冴えるOink Gamesの作品もまた,英語圏のみならず,フランスでも高い評価を集めている。これ以外にも,日本のボードゲームが海外に進出したケースは,この数年で急増した(ドイツで開かれる世界最大のボードゲームイベント,エッセン・シュピールに日本からブースを出すグループがあるが,用意したゲームは完売するとのこと)。「世界市場に進出したインディーズゲーム」という観点に立てば,ボードゲームはPCゲームに先んじているとすら言える。
ちなみに国際的な評価という点で言えば,ウォーゲームの分野において最も権威ある賞「チャールズ・ロバーツ賞」も,日本人デザイナーが受賞したことがある(中村徹也氏)。ボードゲーム,カードゲームというと,どうしても「アメリカ・ヨーロッパが本場」なイメージがあるが,その本場において,日本のゲームは高く評価されているのだ。
「ガルパン」「艦これ」の効果は絶大
さて,ボードゲームが大盛況な傍ら,ウォーゲームに対する注目も,改めて高まっている。
やはり最大の理由は「艦隊これくしょん -艦これ-」のヒットであろう。もともとウォーゲームはあまりとっつきの良いものではなかったが,太平洋戦争をテーマとした作品の試遊卓には,提督とおぼしき人々が次々に足を止めていた。
また「World of Tanks」経由とおぼしき戦車兵もちらほらと見られ,まさに「ありがとうガルパン! ありがとう艦これ!」的な状況であった。
とはいえ,現状手に入るウォーゲームのほとんどは,ボードゲーマーにとってすら,いささかハードルが高い。試遊卓でも,インストラクターが付きっきりになればプレイできるものの,「ルールを説明するので,あとは皆さんで遊んでください」的な展開は絶望的だった。
このことはウォーゲームのデザイナーも痛感しており,ボードゲームやカードゲーム並に簡単なルールで,どんなに長くても30分程度で決着がつき,かつウォーゲームとして面白い,そんな無理な要望を実現したゲームも作られている。
あいにく,現時点では「ガザラの戦い」という,普通の人には「なんじゃらほい」な戦いを扱ったゲームしかないが,同じシステムで1942年の太平洋戦域を扱ったゲームがもう完成しているとのこと。提督諸氏は期待して待ちたいところだ。
世代を越えて楽しめる環境へ
最後に,大阪ゲームマーケット2014で個人的に最も大きな成功ではなかったか,と思ったコーナーについて触れておこう。
大阪ゲームマーケット2014でも,子供がゲームを楽しめるコーナーが用意されていた。もとよりこのイベントは小学生以下は参加無料だが,ボードゲームのようにプレイヤーがしっかりとルールを把握している必要のあるゲームにおいては,「遊んでいってね」ではうまくいかないのは言うまでもない。
一方で,子供用のゲームコーナーを作ったはいいが,肝心のお子様がいらっしゃらない,という事態も珍しくはない。「ゲームの未来のために,子供にも遊んでもらおう」と意気軒昂になっても,実態が伴っていかないことは,非常に多い。
大阪ゲームマーケット2014では,子供用のゲーム卓がきちんと機能していて,大きなお友達ではなく,ちゃんと子供達がゲームを楽しんでいたのが,とても印象的だった。来場者の中には,家でも親子でボードゲームを楽しんでいるという参加者も多く,親と一緒に来場していた子供がゲームを指さして「これ,この前に遊んだやつだ!」などと歓声をあげていたのは,それだけボードゲームが子供世代にも普及しつつある,という一つの証拠となるだろう(もちろん,イベントの特性からいって,全体で見れば特例寄りなのは事実であるにしても)。
面白いゲームは,ある日突然どこからか生えてくるわけではない。何気なくリリースされたゲームが,いきなり世界的な大ヒットに成長するような事例にしても,その背後には長いゲーム文化の蓄積がある。
子供達の世代がボードゲームやカードゲームを楽しく遊ぶこと,それは確実に,将来において傑作が生まれる揺籃(ようらん)となる。自分達がまだ見ぬ傑作にいつか巡りあう,その可能性のためにも,ぜひこの企画は継続していってほしいと思う。
会場で見かけたそのほかのゲーム
同じ時間を何度も繰り返す,いわゆる「ループもの」を扱った「惨劇RoopeR」を作ったBakaFirePartyの新作は,推理と駆け引きが鍵となる「OWACON(オワコン) / 終わった世界と紺碧の追憶」 |
「サルガッソーからの脱出」は協力型ゲーム。プレイヤー全員で協力して,全員の勝利を目指す。正体隠匿系ゲームでの疑心暗鬼に疲れたら,こういうゲームもまた楽しい |
「バイブルハンター」はその名のとおり,聖書を題材にしたカードゲーム。罰当たりな! と思うかもしれないが,発売元はキリスト新聞社で,日本聖書協会の推薦付きという,由緒正しい一品。一種のシリアスゲームと考えることも可能か |
東方Projectは二次創作が自由なことで知られており,東方のキャラをあしらったカードゲームはいくつも見受けられる……が,シューティングゲームを再現ですって? |
隠れた巨大ジャンル,「猫ゲー」(たった今,命名)。いろいろなブースで,猫が登場するゲームが,密やかに販売されている |
往年のファンなら見逃せない,ゲームブックを販売しているブースも |
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