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制作を手がけた「LIMINÆL」(リミナル)は,第四境界メンバーのほか「東京侵蝕2025」の空間演出やイベント運営を担当したメンバーが会社の垣根を越えて終結したクリエイティブユニット。これまでも第四境界名義で「事故物件鑑定士試験」や「残置物展」,「都市伝説解体・センター試験」などのリアルイベントを手掛けている。
本稿では,開催に先駆けて行われたプレビューの模様をお伝えする。
記事の後半には,第四境界 総監督の藤澤 仁氏に対するメディア合同インタビューの模様も掲載しているので,気になる人はチェックをお忘れなく。
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本展のエリアは大きく5つに分けられており,まず電話の変遷をたどる「歴史の展示室」を経て,次に「問いかけの部屋」にて時空を超える力を持つ謎の男「案内人」から崩壊した2つの世界に関する調査依頼を受ける。
ここで来場者は「Black」と「Red」のうち,どちらの世界を調査するかを選択することとなる。当然ながら,どちらかを選択すると“もう一方”の世界は調査できない。
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Black「崩れ去る巨塔(バベル)」は,未来の希望だったはずの「人と人との意識をつなぐ技術」が世界のあり方を変えてしまった世界だ。
もう一方のRed「怪物(モンスター)が見た夢」は,孤独と怒りによっていくつもの事件を生み出し「怪物」と呼ばれるようになった少年により,おぞましい姿へと変貌した世界である。
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3つ目のエリアとなる「BlackとRedの展示室」では,展示されている電話機に残された「通話の記憶」を聞き,選択した世界がなぜ崩壊したのかを調査していく。具体的にはさまざまな人物の会話をつなぎ合わせ,事件の真相を推理しつつ,未来を変えるための修正点を見出していくこととなる。
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調査・推理は,入場時に渡される本展専用の「時空のテレホンカード」と紐付けた来場者自身のスマートフォンに表示されるミッションを遂行する形で進めていく。
まずやるべきことは,テレホンカードを用いて展示されている電話機に残された通話を聞くことだ。
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ここで重要なポイントとなるのがテレホンカードの使用回数,つまり通話を聞ける回数が最大20回であること。しかし展示されている電話機は20数台あるので,基本的には1回の体験ですべての通話を聞くことはできない。
とくに初見の場合,どの電話機にどんな内容の通話が残されているのかなんてことはまったく分からないので,来場者自身の取捨選択が迫られる部分である。
なお,すべての通話を聞きたい来場者に向けて,展示室では追加用のテレホンカードも販売されている。限られた回数の中で“自分の選択”を楽しむもよし,すべての通話を聞いて物語の全体像を追うもよし。楽しみ方は来場者に委ねられているようだ。
![]() 時空のテレホンカード。スマホにかざすと表示されるリンクからWebサイトに飛ぶと紐付けできる。絵柄は4種類で入場時にランダムで1枚もらえる |
![]() 電話機に接続されているデバイスにテレホンカードを置き,受話器を取ることで残された通話の記録を聞ける |
またこのエリアには,歴史の展示室同様,さまざまな年代の電話機が展示されている。それらの電話機を実際に手に取り,通話を聞く体験からは,それぞれの時代の空気に触れているかのような感覚を得られる。
たとえば往年の黒電話1つとっても,筆者と同じ年代の人達は「こんなんだったな」と懐かしく思うだろうし,20代の人なら「画像や映像でしか見たことない」「こんなので連絡を取り合っていたのか」といった新鮮な驚きを得るかもしれない。
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続くミッションでは,数々の通話から導き出した推理をもとに,来場者が電話の相手とリアルタイムで会話することとなる。用意された選択肢を選ぶのではなく,自分の言葉で登場人物に投げかけるので,かなりの没入感を得られる。
そして「最後の電話の部屋」で,それぞれの世界の「運命を握る人物」に,やはり来場者自身の言葉を電話で伝える。最後の「エンディングの電話」では,電話を通じて,自らの選択により変化した世界を見届けることに。
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本展が提供する体験は,あたかも「世界を救うゲーム」をプレイするようなものであり,そこにかつて「ドラゴンクエスト」シリーズのディレクターを務めた藤澤氏の知見やノウハウが活用されているのは間違いない。
記事冒頭で記したとおり本展は8月16日まで開催されているが,入場にはチケットの購入が必要となる。興味のある人は,公式サイトをチェックしてほしい。
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第四境界 総監督 藤澤 仁氏へのメディア合同インタビュー
──本展を開催する運びとなったきっかけを教えてください。
藤澤 仁氏(以下,藤澤氏):
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その流れで一度「人のワンルーム」という小規模イベントを開催したんですけれども,その結果を受けてより大きなイベントをやっていこうということになりまして,その第一弾が本展となります。
──本展ならではの見どころや魅力を教えてもらえますか。
藤澤氏:
昨今,さまざまな展示会が増えているように感じるのですが,我々はただ何かを展示するだけではないものを目指しました。
本展では,ただ電話機を展示するのではなく,電話が辿った歴史や,電話を使って行われた通話の記録,通話した人たちの営みのようなものを展示しており,そのメディアとして電話機を使っています。
そこが一般的な展示会ではない,本展ならではの見どころになっているのではないでしょうか。
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──第四境界のコンテンツは,体験したあとに「この体験について誰かと話したい,共有したい」という感情を抱く人が多いように見受けられます。本展では,そういった共有したくなる体験をどのように設計したのでしょうか。
藤澤氏:
確かに我々自身,コンテンツやイベントの制作にあたり,自分の体験を他人に伝えたくなることを重視しており,その中で一番重要になるのが「人によって体験が異なること」だと捉えています。
それを踏まえて本展では2つのルートを用意し,どちらを選択するかで体験が変わるという構造上の大きな差を設けました。またルート選択後も,ただ電話に残された通話を聞くだけでなく,自分の言葉で何かを伝えることによってリアクションを得ることになりますから,まさに人によって全然体験が変わります。
それらによって,おそらく体験を人と共有したくなるのではないかと考えています。
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──第四境界のコンテンツには「実際に手で触る」という体験を重視しているものも多いと思います。今回はテレホンカードを介したり,受話器を手で持ったりと,現代の若年層が経験していないような電話を使った通話体験にフィーチャーされていますが,“なぜ電話だったのか”という点を詳しく知りたいです。
藤澤氏:
最初にお話ししたように,我々は人と人をつなぐメディアを使って物語を表現するという試みに挑戦しています。
おっしゃるように,電話は時代によって使い方やスタイルが変わります。僕が若い頃は各家庭に黒電話が1台だけあり,それを家族で共有するという時代でしたし,それ以前もまったく違うスタイルでした。それらをまとめて体験できること自体がなかなか稀有ですから,得難い体験になるのではないかという我々なりの仮説のもと,本展を企画したわけです。
実際にいろんな時代の電話機を並べてみて,久々に黒電話の受話器を持ったときは「こんなに重かったっけ?」と僕自身懐かしく思いましたし,その一方で若い人たちにとっては「こんな重たいものを持って通話していたのか」という発見があるかもしれません。
そういったところが,我々の紡ぎたい物語と相性がよかったのではないかと捉えています。
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──展示会として内装や雰囲気作りでこだわったポイントを教えてください。
藤澤氏:
雰囲気作りに関しては今回少し悩んだ部分で,そもそも展示会は「展示物を見る」ということが主体ですから,まず「電話機を見ていただく」ためのスペースは作ろうと考えました。
その先に我々なりの「何が起こるか分からない」という展開を作るべく,「ただ電話機を展示するだけではない体験」が待っているという構造を,最初にイメージしたんです。
──リアルイベントとなると,推理の難度設定も難しかったかと思います。難しすぎても簡単すぎても,多くの来場者を楽しませることはできないかと。
藤澤氏:
難度設定については,今なお悩んでいます。「ここが最良ではないか」という我々なりの落としどころを提示してはいますが,開催期間が1か月と長いですからね。来場した皆さんが分かりづらいと感じたところは分かりやすくする,よりエキサイティングな展開を作れる見込みがあればチャレンジするといったように,会期中も進化させていきたいです。
あとは第四境界のコンテンツ全般にそうなんですけれども,難度が少々高めです。そこを楽しむ覚悟で来ていただけると幸いです。
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──藤澤さんご自身もプレビューの会場に顔を見せていましたが,実際に体験している来場者を見てどのような手応えを感じましたか。
藤澤氏:
まず感想として,多くの人が並んで電話の順番を待っている光景を久しぶりに見たなと思いました(笑)。
僕の若い頃は,電車が止まったりすると公衆電話のボックス前に何十人,場合によっては百人単位の行列ができたんです。そんな時代を不意に思い出すくらい,皆さんが電話機の前に並んでいるという状況をエキサイティングだと思って見ていました。
また体験を終えた皆さんに感想を聞いてみたんですけれども,一様に「面白かった」とおっしゃっていただけました。ただ内容が新鮮だっただけでなく,物語にしっかり入り込めたという感想をいただけてよかったなと。
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──第四境界は今や熱心なファンを多数抱える存在で,次にどんなコンテンツが提供されるのか注目される状況となっています。その理由を,どのように分析していますか。
藤澤氏:
人が何をもって物事に熱中するかというと,「こんな体験したことない」という思いを抱くからだと考えています。
第四境界には「一度やったことは,もうやらない」という鉄の掟があります。これは自分たちで首を絞めることになるので,最近はあまり表に出していなかったのですが(笑)。この鉄の掟によって我々自身も毎回見たことがないものを作れていますし,そうなると当然,世間的にも誰も経験したことのないものが作れていることになります。
もしかしたら第四境界を支持していただけているのは,そういった我々の姿勢にあるのかなと捉えています。
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──来場を楽しみにしている方も数多くいます。ぜひメッセージをお願いします。
藤澤氏:
東京駅直結という非常に利便性の高い会場でイベントを開催することは,我々にとって非常に大きな挑戦でしたし,ぴあ様のご協力なしにはできない試みでした。
また今回は,もちろん総監督としてクオリティのチェックなどをしていますが,今回は第四境界の滝沢 桃が監督としていい仕事をしてくれています。私だけではなくクリエイター集団である第四境界としても本当に注力しているプロジェクトですので,ぜひ多くの皆様に足を運んでいただければと思っております。
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