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[インタビュー]切迫する世界情勢を反映した「大戦略SSB2」のシナリオは,いかにして生み出されたか。執筆した丸谷元人氏に,その狙いと込められた思いを聞いた
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印刷2026/02/26 12:10

インタビュー

[インタビュー]切迫する世界情勢を反映した「大戦略SSB2」のシナリオは,いかにして生み出されたか。執筆した丸谷元人氏に,その狙いと込められた思いを聞いた

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 1985年の誕生以来,国産ウォー・シミュレーションゲームの金字塔として歩み続けてきた「大戦略」シリーズ。その最新作となる「大戦略SSB2」PC / PS5 / Switch 2 / Switch)が本日(2026年2月26日),発売を迎えた。

 2022年発売の前作「大戦略SSB」に続き,システムソフト・ベータが開発・販売を手がける本作は,シリーズの原点回帰を志向しつつ,プレイアビリティを刷新する数々の新要素を盛り込んだ正統進化作だ。

 厳選された300種以上の兵器と,50に及ぶ完全新規マップ。さらには兵器をより精細に表現するための高度区分の細分化や,兵站の重要性を高める「工業力」「保有燃料」といった新パラメータの導入といったシステム面の改修も加わって,前作以上にリアルで緊張感にあふれる戦場体験が味わえる。

 そして本作の進化をさらに強く印象づけるのが,現実世界を反映した状況設定の元で戦う「シナリオモード」の存在だ。現時点で公開されているのは2本のみだが,今後のアップデートで順次追加され,最終的には全17本の実装が予定されているという。
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 1985年から続く現代兵器ウォー・シミュレーション「大戦略」シリーズの最新作「大戦略SSB2」が,システムソフト・ベータから2026年2月26日に発売となる。原点回帰を目指した「大戦略SSB」の続編にあたる本作だが,一体どんな“深化”を遂げたのだろうか。新要素を中心に,その魅力を紹介していこう。

[2026/02/25 12:00]
 公開されている情報だけでも,現実に起こり得る緊迫感と濃密さがひしひしと伝わってくる「シナリオモード」だが,その狙いとコンセプトはどこにあり,どんなメッセージが込められているのだろうか。シナリオの執筆と設定を担当した,危機コンサルタントの丸谷元人氏に話を聞いて来た。
 またシステムソフト・ベータ代表取締役社長の平岡三知氏,ディレクターの黒木孝行氏にも同席いただき,開発の舞台裏について補足してもらっている。今後のアップデートの情報あるので,本作のプレイヤーはじっくり読み進めてみてほしい。




危険と隣り合わせの世界と「大戦略SSB2」


4Gamer:
 本日はお時間をいただき,ありがとうございます。まずは自己紹介も兼ね,簡単に経歴をお聞かせいただけますか。

丸谷元人氏(以下,丸谷氏):
 アルファ・リードという会社で代表取締役をやっています丸谷と申します。
 経歴としてはオーストラリアの大学院を出まして,そのあとパプアニューギニアで7〜8年ほど,さまざまな仕事に携わりました。非常に治安の悪い国ですので,大臣クラスの要人警護や,24時間体制の武装警備などが主な業務でした。

アルファ・リード代表取締役の丸谷元人氏。海外危険地域でのテロ対策,情報収集分析や,大手IT企業でのリスク/危機管理部門長などを経験。防衛省や陸上自衛隊をはじめ、各種団体・企業・高等学校などで講演を行う
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4Gamer:
 それはまた,すごい決断ですね。そんな若い頃から紛争の最前線を選ばれるとは。

丸谷氏:
 はい。そんな中で,中国やオーストラリア,アメリカなどの地政学的な動きを肌で感じ,これではいけないと感じるようになりました。その後もナイジェリアでテロ対策や,日本人の駐在員警護などに関わりまして,帰国後は外資系IT企業のセキュリティ部門責任者などを経て,今は危機管理コンサルタントとして独立したというわけです。

4Gamer:
 危機管理コンサルタントというのは,つまり紛争地域などの危険な場所に出かけていくビジネスマンに,心構えや自衛の方法を教える……といったお仕事なわけですよね。

丸谷氏:
 そうですね。一言で言えば,「企業内の情報参謀」といったところでしょうか。米国の海兵隊やイギリスの民間軍事会社で訓練を受けた経験を生かして,誘拐や監禁といった現実に起こりうる危険への備えをレクチャーします。ほかにも陸上自衛隊の特殊作戦群における訓練支援や,防衛省での情報分析支援などにも関わりました。

4Gamer:
 そもそもなんですが,危機管理に興味を持たれたきっかけはなんだったのでしょうか。

丸谷氏:
 中学2年生のときに訪れた中国で,民主化運動の学生たちと仲良くなったのがきっかけです。ただ彼らとは,それから暫くして連絡が取れなくなってしまい……ショックでしたね。元々,正義感は強いほうでしたが,あれで火が点いてしまったように思います。

4Gamer:
 なるほど。日本にいると,そういった海外の現実は,どうしても遠く感じてしまいますね。

丸谷氏:
 おっしゃるとおりです。ナイジェリアで3か月,24時間交代制で働いて日本に一時帰国すると,成田に着いた途端,テレビ画面の中でアイドルが踊っていたりする。平和ボケと言ってしまうと語弊があるのでしょうが,紛争地帯のひりつくような肌感覚と,日本国内の空気感との間にある“認知のズレ”に愕然としてしまいます。こんな中にいたら現地に戻っても,誘拐だの爆破だのと隣り合わせの仕事に復帰できなくなってしまうのではないか。そう考えると,気も休まらなかったですね。

4Gamer:
 そんな丸谷さんが本作のシナリオモードを手がけることになった経緯を伺いたいのですが,これはシステムソフト・ベータ側からオファーがあったわけですよね。

平岡三知氏(以下,平岡氏):
 そうですね。きっかけとしては,弊社会長の北角(浩一氏)が丸谷先生のファンだったのが大きいと思います。日本一ソフトウェア・グループは日本以外にも事業を展開していますし,国外の出来事にも強い関心があります。丸谷先生が発信している「月刊インテリジェンスレポート」も購読しているとのことでした。
 そんな中,本作の開発が決まり,これは緊迫した海外の状況をゲームを通じて伝えられるよい機会だと。そこでゲームとして遊べるものでありながら,現実に起こりうる切迫したシナリオを用意していただける方として,丸谷先生にお力添えをお願いしたわけです。

丸谷氏が別名義で発表した小説作品「結界」(リンクはAmazonアソシエイト)。現実の情勢を背景にした政治サスペンスもので,各陣営の思惑が絡み合った国家規模の陰謀劇が描かれる
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丸谷氏:
 非常に光栄です。私自身,ゲームはほとんどプレイしないのですが,危機管理の仕事の一環として「机上演習」はよく行っていました。これはリアルなシナリオを用意することで,“今そこにある危機”に備えるものですが,本作はこれに通じるものがあります。
 またゲームでこそありませんが,別名義で小説なども書いていましたので,その経験も生かせるのではないかと考えました。

4Gamer:
 ウォー・シミュレーションゲームには,多かれ少なかれランダムな要素が含まれるものですが,ここで言う「机上演習」もそうなのでしょうか。例えば,ちっぽけな織田信長の手勢が,大軍勢の今川義元を討ち取ってしまうといったような。

丸谷氏:
 ありますよ。2002年に米軍が対イラン攻撃のシナリオを,まさに机上演習でやりましたが,最初の48時間でアメリカの航空母艦2隻が撃沈される衝撃的な結果になったそうです。より楽観的な想定でやり直したようですが,それでは意味がありません。ミッドウェー海戦前に日本海軍がやったのと同じで,それは受け入れがたい結果を都合のよい解釈で書き換えているに過ぎない。
 机上演習の鉄則は,希望的観測に頼らないことです。なるべく悲観的な見方をして,見えてしまったものに目をふさがないこと。そうしないと,痛い目に遭いかねない。

平岡氏:
 そうした丸谷先生の経歴を踏まえ,また実際にお話してみて本作のコンセプトに賛同をいただけたことで,開発チームとして正式にオファーを出すことになりました。もしかすると,日本一ソフトウェアの本社が岐阜県各務原市の航空自衛隊基地のすぐ近くにあるというのも,少しは関係しているかもしれません(笑)。

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シナリオモードが描き出す「5つの火種」


4Gamer:
 ではそのシナリオについてですが,いただいた資料によると,現時点では5本のシナリオが用意されているとのこと。以降,アップデートで順次追加されていくそうですが,実装のペースはどのようになるのでしょうか。

平岡氏:
 シナリオモードは全部で17本を予定していまして,うち「ペルシャ湾炎上」「オペレーション・アイスブレーカー」は発売日にプレイできるよう,準備を進めているところです。すべてのシナリオが揃うのは2026年末になる見込みですが,なるべく早くお届けできるようにしたいですね。

2月19日に掲載した記事でお伝えした通り,「ペルシャ湾炎上」と「オペレーション・アイスブレーカー」の2シナリオは,共に発売日当日の実装が決定している。なおシナリオの実装形態はプラットフォームによって差異があり,Steam版はシナリオマップのみになるという。詳細は関連記事を参照のこと。
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 システムソフト・ベータは本日,2026年2月26日に発売予定の現代兵器ウォー・シム「大戦略SSB2」最新情報を公開した。今回は,発売後に無料アップデートで追加される新ゲームモード「シナリオモード」の情報が紹介されている。シナリオモードでは,ペルシャ湾炎上など現実に起こりうる危機が描かれる。

[2026/02/19 10:00]
4Gamer:
 なるほど。今ある5本以降のシナリオは,これから執筆されるわけですね。共通するコンセプトのようなものはありますか?

丸谷氏:
 共通しているのは“世界の火種”――つまり,いつ現実になっても不思議ではない場所を選んだことですね。例えば2026年1月にアメリカがベネズエラを攻撃して世界の度肝を抜きましたが,これはなにも降って湧いた話ではありません。インテリジェンスをしっかり追っていれば,その素地があったことは分かるわけです。

4Gamer:
 となれば今ある5本のシナリオも,いつ現実になっても不思議ではないということですね。

丸谷氏:
 はい。例えば「オペレーション・アイスブレーカー」は,グリーンランドにおける仮想の米中対立を描いたシナリオです。まさか中国が,と思われるかもしれませんが,オスロの国際平和研究所で専門家に聞いた話では,これも十分にあり得る話だと思います。

「オペレーション・アイスブレーカー」は,米偵察衛星が氷床下トンネルの奥に中国の原潜基地を発見したことに端を発する,米軍と中国軍の激突を描いたシナリオだ。グリーンランド自治政府とデンマーク政府が沈黙を貫くなか,米軍がNATO抜きで単独攻撃を決断したという想定である
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4Gamer:
 グリーンランドは昨今なにかと話題ですが,中国が出てくるのは確かに少し意外でした。

丸谷氏:
 それこそが,日本にいるがゆえの“認知のズレ”なんですよ。地政学的な背景に第三勢力の思惑が絡むと,何かのきっかけ一つでパッと火の手があがりかねない。そうした“今そこにある危機”を身近に感じてほしいというのが,このシナリオの狙いでもあるのです。

4Gamer:
 それでいうと,「ペルシャ湾炎上」も,ものすごくタイムリーなシナリオですね。米軍艦が何者かに攻撃され……という,どこかで聞いたような話でもありますし。どこからともなくUSAコールが聞こえてくるようです。

丸谷氏:
 9-11が記憶に新しいですが,自作自演の捏造はアメリカもずいぶんやってきましたからね。ベトナム戦争介入のきっかけとなったトンキン湾事件がそうですし,古くは「リメンバー・ジ・アラモ(アラモ砦を忘れるな)」とか,「リメンバー・ザ・メイン(メイン号を忘れるな)」もそうでした。そういった言葉を使って,彼らは世論をうまく誘導してきたわけです。

「ペルシャ湾炎上」は,イラン南部での米軍とイラン軍の激突を描いたシナリオ。ペルシャ湾で米軍艦が攻撃された事件(実はイスラエルの自作自演)をきっかけに,米軍が報復に打って出るという筋書きである
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4Gamer:
 残りの3シナリオについても,簡単に見どころを教えてください。「第二次米墨戦争 - Drug, Border, and Empire」は,まさに先ほど話に出た南米が舞台ですね。不法移民や麻薬の流入をきっかけに,米軍とメキシコ軍が対峙するという。

丸谷氏:
 アメリカが対麻薬紛争をやるとしたらメキシコですよ。ベネズエラの件も,アメリカは麻薬だって言っていますけど,本当の狙いは石油です。ベネズエラからアメリカに流れ込んでる麻薬は数%に過ぎませんから。一方で,メキシコのこの辺り(テキサス州エル・パソとメキシコのシウダー・フアレスの間)はカルテルがいっぱいで,かなり危ない場所だったりします。

4Gamer:
  ちなみに,このシナリオを書かれたのはいつ頃だったのでしょうか。

丸谷氏:
 今ある5本のシナリオは,どれも2025年10月から12月頃にかけて書いたものですね。ただご存じのとおり世界情勢がものすごい速さで動いていくので,かなり難儀した覚えがあります。最新の情勢に合わなくなって,急遽差し替えたものもありました。

麻薬と不法移民をめぐる,米軍とメキシコ軍の激突を描いた「第二次米墨戦争 - Drug, Border, and Empire」。米墨が強硬姿勢を崩さない中,メキシコ訪問中の米大使がカルテルに誘拐される事件が発生したことで,事態は取り返しのつかない方向へと発展していく
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4Gamer:
 先のベネズエラなんて,まさにですね。では「バルト三国救援」はいかがでしょうか。スヴァウキ回廊をめぐるドイツ・ポーランド連合とロシア軍の激突を描いたシナリオとのことですが,この時代設定が2027年4月というのは,何か理由があるのでしょうか。

丸谷氏:
 ウクライナ戦争の終結後という想定です。2026年中に戦闘が片づくとして,ロシアが動くならこの時期だろうと。このスヴァウキ回廊というのは,リトアニアの南の国境を通ってロシアの飛び地カリーニングラードにつながる陸路ですが,これが欧州の火薬庫と言われる要衝なのですよ。

4Gamer:
 ロシアがウクライナを片付けて,その後にバルト三国を取りに来ると?

丸谷氏:
 そうです。にもかかわらず,NATOは小田原評定で何も決められない。アメリカはウクライナと同じで軍を送るつもりなんて端からないわけで,結局目の前に危機が迫ったドイツとポーランドのみで苦しい戦いに挑むことになります。

4Gamer:
 開戦のきっかけが,「エストニア政府がロシア語を禁止した」という誤情報の拡散というのも,先の世論誘導に通じるものがありますね。

丸谷氏:
 そのとおりです。これは戦争にとって,大義名分がどれだけ大事かということでもあります。イラク戦争でアメリカが主張した大量破壊兵器は結局どこにもありませんでしたが,世論のうねりを引き起こせさえすれば,あとからボロが出てもお釣りがくる。
 各国の思惑が複雑に絡み合った状況において,説得力のある大義名分がいかに簡単に均衡を打ち崩す雪崩を引き起こすのか。今回の5本のシナリオは,どれもそれがテーマになっています。

孤立するバルト三国を救うべく動いたドイツとポーランドが,ロシアの脅威に立ち向かう「バルト三国救援」。後戻りできない問いを突きつけられた両軍の機甲部隊が,スヴァウキ回廊で激突する
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4Gamer:
 「ベンガル湾の死闘」は,バングラデシュ暫定政府がセント・マーチン島を中国に租借したことで,インド軍と中国軍の軍事衝突が起こるという海上航空戦がメインのシナリオですが……この中国が租借って,ありえるのでしょうか?

丸谷氏:
 ありえます。この島は2年前から物議を醸している場所でして,バイデン政権時代にアメリカが租借する話がまとまりかけましたが,トランプ政権になって梯子が外されてしまった経緯があります。ノーベル平和賞受賞者でもある,バングラデシュ暫定政府の主席顧問ムハンマド・ユヌス氏を,トランプ氏が毛嫌いしたためです。

4Gamer:
 ええ。ここまでは現実の話ですね。

丸谷氏:
 一方で,2024年の政変で国を追われたハシナ前首相は,お隣インドで一定の勢力を保っている。そこでユヌス氏は,以前から仲のよかった中国にセント・マーチン島を差し出すことで,助けてもらおうと考えた。しかしインドはそうさせまいと動いて……というのが,この仮想シナリオの内容です。

4Gamer:
 なるほど……。ちなみにシナリオモードでは,難度を調整したりできるのでしょうか。

黒木孝行氏(以下,黒木氏):
 通常マップであれば,使用する勢力(国家)を変更したり,軍資金を増やしたりで難度を調整できますが,シナリオモードは登場する戦力や配置が固定で,どちらをプレイヤーが受け持つかもあらかじめ決まっています。
 ただシナリオごとに難度は異なっていまして,例えばアメリカ軍を操作する「ペルシャ湾炎上」は比較的簡単ですし,一方で陸海空軍がすべて出てくる「ベンガル湾の死闘」はやや難しい。とはいえ本当に難しいシナリオは,後半までは出さないつもりです。

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4Gamer:
 丸谷さんとしては,最初の5本のシナリオだと,どれが難しいと思いますか。

丸谷氏:
 ゲームとしての難しさは分かりませんが,指揮官としてやりたくないのは「バルト三国救援」ですね。あれはロシア側でもドイツ・ポーランド側でも,どちらの立場もしんどいと思います。どっちから見ても周りが敵だらけで,指揮官的には厳しい状況です。

4Gamer:
 今ある5本以降の執筆はこれからだと思いますが,現時点で考えているものにはどんなものがありますか。

丸谷氏:
 近々スカンジナビアに行って北極海の調査をしてくる予定なので,グリーンランドから北極海を抜ける,いわゆる北極海航路をテーマにしたシナリオはやってみたいと思っています。これは潜水艦戦か,海上航空戦ですね。
 あとは,また違った場所での麻薬戦争,例えばアメリカ国内で内戦に発展したようなものも面白そうです。中東でももう一波乱ありそうですし,ベトナムと中国,それに印パなど,火種はあちこちに転がっていますから。そこからどれを選ぶかですね。

4Gamer:
 ベトナムや南シナ海を扱うとなると,軍艦ではなく漁船に毛が生えたようなユニットも必要になりそうですね。ゲーム的に面白いかどうかはともかくとして。
 
黒木氏:
 もし実装するとなったら武装した漁船とか,そういったユニットを作るのもありだと思います。ピックアップトラックに砲だけ積んだユニットなんかも,今はありませんが昔の「大戦略」にはありましたし。

丸谷氏:
 いわゆるテクニカルってやつですね。

4Gamer:
 ちなみにですが,丸谷さんにシナリオを書いてもらうに当たって,システムソフト・ベータさん側からマップの規模的な指定はあったのでしょうか。

平岡氏:
 今回は丸谷先生にアイデアを頂戴しようというところから始まっているので,とくにそういった指定はしませんでした。

4Gamer:
 「大戦略」って,シミュレーションゲームの分類で言うと“戦術級寄りの作戦級”といったところですよね。マップによっては戦略級にも見えますが,ユニットの性能が重要で,ZOC(Zone of Control/支配地域)の概念があるという。となると,シナリオもそれに準じた規模でないと実装が難しくありませんか。

黒木氏:
 そうですね。おっしゃるとおり,「大戦略」シリーズはスケールをわざと曖昧にしている部分がありまして,これを利用して小規模な戦闘から大規模な作戦まで対応できるようになっています。なので,丸谷先生には自由にアイデアを出していただき,ゲームに実装の段階で調整するようにしているんですよ。

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ドローンやレールガンが変える,未来の戦場


4Gamer:
 シナリオ以外の部分についても,少しだけ聞かせてください。本作には300を超える兵器が登場するとのことですが,中には「トランプ級戦艦」など現実にはまだ完成していない兵器も幾つかあるそうですね。

黒木氏:
 はい。これは“もしも”の世界を楽しんでいただくために用意した特別なユニットになります。購入特典の「X-2 心神」や,シーズンパス特典の「あすか型試験艦」などは,大幅改修を経て実戦投入されたという設定で作中に登場します。

「トランプ級戦艦」
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「X-2心神」
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「あすか型試験艦」

4Gamer:
 「あすか型試験艦」というと,先日レールガンの洋上射撃実験の映像が公開されて話題を呼んだ艦ですよね。

黒木氏:
 そうですね。作中では「試験艦あすか」と「トランプ級戦艦」がレールガンを搭載しています。

4Gamer:
 非常に夢のある兵器ですが,あれは実際のところ……どうなんでしょうか。将来性がありますか?

丸谷氏:
 レールガンは日本の希望の星ですよ。他国に先駆けて実用化しようとしていて,非常に有効な兵器だと思っています。ドローンと同じように,戦場のあり方を一変させるかもしれない。


4Gamer:
 あれはミサイル防衛用に使うものなのでしょうか。それとも,普通に主砲を置き換えるもの?

丸谷氏:
 どちらにも使えると思います。レールガンの優位性はコスト,射程,速度,精度のすべてを兼ね備えているところです。実用化されれば短距離ミサイルなんてもういらなくなるかもしれない。迎撃ミサイルが1発2億から5億円と言われているところを,一発200万円で済んでしまうのだから。射程も何百kmありますし,なにより気軽に撃てるのがすばらしい。

黒木氏:
 ゲーム中でもかなり強いですよ。陸地を狙って艦砲射撃にも使えますし,シースパローの代替として防空にも使える。さらには上空のヘリコプターを落とすのにも有効で,まさに死角のない兵器になっています。

レールガン
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4Gamer:
 それはすごい。「女王陛下のユリシーズ号」に登場した,軽巡洋艦が備える両用砲の連装主砲のようなものですね。現実でも,ぜひ実現してほしいところです。となるとどうでしょう。丸谷さんから見て,この兵器も登場してほしいといったものはありますか。

丸谷氏:
 それはなんと言ってもドローンですね。最近の戦争――とくにウクライナ戦争や中東の紛争を見るにつけ,いかにドローンが戦場を一変させたが分かるというものです。
 とくにトルコのドローンは能力が高いですし,アメリカも攻撃型ドローンや自爆型(神風型)ドローンを年間数十万機も作ろうとしている。イランに至っては,1985年から作っているくらいです。

4Gamer:
 そんなに前から!?

丸谷氏:
 イラン・イラク戦争でアメリカの衛星に一方的に苦しめられましたからね。それに比べたら日本は周回遅れもいいところですよ。2017年くらいに特殊作戦群の隊員が上官に必要性を具申したら,「お前ら,ラジコンで遊びたいだけだろう」と却下されたくらいですから。

4Gamer:
 「大戦略」シリーズでは,ドローンの追加は考えていないのでしょうか。

黒木氏:
 ドローンは,あえて入れていないんですよ。それこそ戦場の風景が一変してしまいますから。ただ,今後は何らかの形で実装すべきとは考えていまして,社内で議論を進めているところです。

平岡氏:
 いくらゲームとは言え,現実とあまりにもかけ離れてしまっては,それはそれで興醒めですからね。

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4Gamer:
 分かりました。今後に期待したいと思います。では最後に,お三方から読者に向けたメッセージをいただけますか。

平岡氏:
 はい。2025年11月にシリーズ40周年を迎えた「大戦略」シリーズですが,今作はその集大成であり,同時に原点回帰であるという位置づけで開発を進めてきました。前作「大戦略SSB」はプラットフォームごとにリリース時期がズレてしまいましたが,今作では全機種同時発売を実現できました。
 「考える楽しさ」「奥深い戦略体験」というシリーズの本質を,現代の表現方法で再現したタイトルとなっていますので,昔遊んでいた方はもちろん,初めてシリーズに触れる方にも,この知的な興奮をぜひ味わってもらいたいです。

黒木氏:
 丸谷先生からシナリオを頂戴したタイミングでは,シナリオに描かれた切迫した情勢にピンとこない部分がありましたが,近頃になってグリーンランドのニュースを頻繁に目にするようになり,私自身,事態の深刻さを実感するようになりました。
 そうしたニュースに追い立てられるように,「ペルシャ湾炎上」と「オペレーション・アイスブレーカー」を発売と同時にお届けできるよう,開発に努めてきました。それが叶うことを本当に嬉しく思っています。どうか皆さん,珠玉のシナリオをぜひお楽しみください。

丸谷氏:
 今回「大戦略SSB2」というタイトルに関わる貴重な機会をいただいたことで,これが普段,我々の行っている「机上演習」と,いかに近しいものであるかを改めて実感しました。つまりこれは単なる娯楽ではなく思考のトレーニング,脳みその筋トレのようなものなのです。
 日本の企業は海外で騙されたり被害に遭ったりしていますが,マスコミはなかなか報じませんし,社内で共有されることすら稀だったりします。このままでは日本は負けるのではという忸怩たる思いの中で今回のオファーを受けたのは,厳しい国際情勢をうまく翻訳して伝えられるのではないかという希望を感じたからでした。

4Gamer:
 先に話題に登った,“認知のズレ”を解消できるのではないか,ということですね。

丸谷氏:
 ええ。紛争の現場で判断を誤れば,自分や仲間の命を危険に晒してしまう。しかしゲームという媒体であれば,何度だって失敗して学びを得られます。これは机上演習でも同じで,とにかく失敗することが大切なのです。それによって状況がよく見えるようになり,意思決定の重みが実感できるようになる。“指揮官の孤独”という言葉がありますが,それを身に沁みて味わえる本作は,多くの人に取って貴重な体験になるはずです。ぜひ,手に取ってもらえたら嬉しいですね。

4Gamer:
 それらはまさに,ウォー・シミュレーションゲームの本質だと思います。皆さん,本日はありがとうございました。

――2026年2月9日収録

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